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「とまれ、ヒトマル!」
平・和守(国防系メタルヒーロー・d31867)はライドキャリバーのブレーキをかけ、軽くドリフトしながら皆の前へと停止した。
「皆、この近辺に実体化した都市伝説の存在を確認した。いそぎ現場へ向かい、灼滅任務について欲しい!」
和守の確認した都市伝説は近辺の暴走族の間に広まっていた幽霊武者の伝説である。
夜間に暴走行為や激しい騒音をまき散らす彼らの前に現われ、一人残らず病院送りにしたというものだ。
「これが正義の使者であれば問題は無い。しかし実体化した都市伝説はサイキックエナジーによるハザード現象。必ずや人類への危険につながるだろう」
都市伝説は二つのユニットで構成されている。
武者鎧に身を包み日本刀で武装した侍風の者。
そして意志をもって人々を撥ねたり怪光線を放つ馬鎧風のバイクである。
「これを仮に、サムライダーとマシンブシドーと名付けたい。とても、それっぽいからだ……!」
拳をぐっと握って語る和守には、何か拘りがあるようだ。
「いかなる経緯であっても、人々の生命を脅かす者は放っておけない。国民の平和を守るため、武蔵坂スレイヤー……出動だ!」
参加者 | |
---|---|
新城・七葉(蒼弦の巫舞・d01835) |
神凪・陽和(天照・d02848) |
神凪・朔夜(月読・d02935) |
小沢・真理(ソウルボードガール・d11301) |
蔵座・国臣(病院育ち・d31009) |
高原・清音(白蓮の花に誓う娘・d31351) |
平・和守(国防系メタルヒーロー・d31867) |
クレンド・シュヴァリエ(サクリファイスシールド・d32295) |
●騎乗武士道サムライダー
三人の男女がアスファルトを駆けていた。
唸るエンジン。ドリフトのタイヤ跡が火花と散って、風を巻いて突き抜ける。
二輪装甲車のようなライドキャリバーに跨がった平・和守(国防系メタルヒーロー・d31867)。
馬鎧にも似たキャリバーを操る蔵座・国臣(病院育ち・d31009)。
そしてハート型のシャープな車体で風を切る小沢・真理(ソウルボードガール・d11301)だ。
激しい暴走行為の果てに、三人のキャリバー乗りは車体を傾け、スライドアンドブレーキ。
前方の道路を塞ぐように立つ鎧武者を視認したからである。
鎧武者は刀を抜き、水平に構える。
「暴走厳禁……成敗!」
「全く、何がどうしたらこんな都市伝説が生まれるのか」
国臣たちはバイクの上でカードを翳し、武装を装着。
真理はチューブトップのワンピースとニーハイブーツ。アームカバーを両手にはめ込み、最後にレザーベルト型のチョーカーを首に巻き付けてウィンクした。
「宇宙部四天王、爆発プリンセスの真理。いざ尋常に勝負です!」
「勝負だと? 暴走族風情めが……」
「騙して悪いが、俺たちは暴走族じゃない。宣誓ッ、キャプテンOD!」
和守の全身を覆うように無数の武装が現われ、足や腕、腰や背中にがしがしと装着されていく。最後に現われたヘルメットを自分で被ると、ゴーグルを発光させた。
「正義の使者を被った亡霊よ。超常力の果てへと還れ!」
「笑止!」
素早く馬鎧風バイクのマシンブシドーに飛び乗ると、サムライダーは彼らに突進。
間を抜けて行くサムライダーに、高所から飛び降りる形で神凪・陽和(天照・d02848)と神凪・朔夜(月読・d02935)が立ち塞がった。
「人を苦しめる武士は武士にあらず!」
「僕も武家の一員。迷惑だから消えて貰うよ。行こう、陽和っ」
朔夜は五色彩の浄布を解き放ち、陽和は七色ストールを解放。お互いの腕や身体に巻き付けると、霊力の籠もった装甲とした。
装着と同時にダッシュ。
突撃してくるマシンブシドーのビームに対し、朔夜は小型の籠手を翳してカウンターヒール。彼の保護を受けながら陽和は籠手から太陽の紋章を輝かせ、霊力障壁を発生させた。
障壁に激突。ガラスのように粉砕するが、バランスを崩したマシンブシドーは蛇行しながら二人の横を掠めていく。
「そっちに行きましたよ!」
「任せて貰おう! 来い、ブリューヌ!」
クレンド・シュヴァリエ(サクリファイスシールド・d32295)は(ビハインド)ブリューヌと並んで盾を発現。構えたまま突進を仕掛ける。
その後ろから追撃の構えをとる新城・七葉(蒼弦の巫舞・d01835)と高原・清音(白蓮の花に誓う娘・d31351)。
「……迷惑行為は、とめないといけないわね……」
「ん、色々注意だよ」
七葉はダッシュジャンプと共にエアシューズを瞬間装着。頭上にノエル(ウイングキャット)が出現し、しっぽに巻き付けたリングを発光させる。
一方で七葉はブーツの靴底で黄色い肉球型の足跡をアスファルトに刻みつけると、リングの光と共に周囲の空間にエネルギーを拡大していった。
七葉のエネルギーウェイブに補助を受けながらマシンブシドーにシールドタックルを仕掛けるクレンドたち。
衝撃は向こうが上だ。
火花が飛び散り、ぐいぐいと押される。吹き飛ばされないのは補助があるからだ。
「……その動き……封じるわ……」
側面に回り込む清音。リボンをほどいて放つと、マシンブシドーの車体に絡みついた。
不自然なほどの強度で絡みついたリボンがハンドルを固定。
操作を喪ったマシンブシドーは操縦者を振り落とす形で滑り、大量に積み上げられた木箱の山へと突っ込んでいった。
「チャンス! ヘル君!」
アクセルをひねった真理に応じて、ライドキャリバー・ヘル君は螺旋エネルギーを伴って突撃。反対側からも国臣が騎乗ランスアタック。
サンドされたマシンブシドーを確認し、和守がブレーキ。
「ヒトマル! キャリバー五○、集中放火!」
タッチパネルを操作し、車体側面からブローニングM2重機関銃が二丁も出現。それらを握り込み、残弾の限り打ち込んだ。
激しい爆発を起こして消滅するマシンブシドー。
地面を転がり、膝立ち姿勢になったサムライダーは般若風のヘルメットマスクを上げた。
「バイクから奪うとは……揺るさんぞ!」
サムライダーは籠手の操作盤を開いて何かを入力すると、刀を激しく発光させた。
「スピード違反、切符斬り――!」
途端、周囲の空間は灰色に変化。全ての時間がスローモーションになり、その中をサムライダーだけが高速で駆け抜けた。
狙いは真理たちの乗っているライドキャリバーだ。激しい火花をあげたライドキャリバーたちは即座に爆発。三人を吹き飛ばして消滅した後で、時間を通常速度に戻した。
「ぐおっ!?」
地面をごろごろと転がる国臣。
フルアーマーで守られ、尚且つ減衰効果が得られているとはいえ、サムライダーの斬撃は凄まじいものだ。装甲のいくつかが砕け、はげ落ちていた。
「陽和っ」
「分かってます、復旧ですね!」
朔夜と陽和は二人同時に祭霊光とラビリンスアーマーを発動。国臣の装甲破壊部分を覆い隠し、七色の装甲へと変化させていく。
一方でワンピースのいくつかが破れた真理は、胸元を腕で覆って後退した。
「八人がかりであたるだけはありますね! 手数で勝負です、先輩!」
「了解! リカバリーを頼む! その間の時間稼ぎを――」
「皆まで言いうな!」
クレンドはブリューヌと共にサムライダーの両サイドからシールドバッシュ。
「騎士は弱った者を見過ごさない! 身を挺してでも守ってみせるよ!」
「ぐっ……離れろ!」
全身を赤く発光させてクレンドたちを打ち払うが、しつこいくらいに突撃をしかける彼らのコンビネーションを抜けることはできないようだ。
そこへ清音も参戦。
「……狙いは外さない……そこ……」
ペンを大量に生み出すと、クレンドたちのコンビネーションを繕うようにピンポイン投擲。サムライダーが反撃する隙を潰していく。
その間にノエルの回復フィルードと七葉のイエローサインを展開させていく。
「大丈夫?」
「なんとか。先輩は?」
「問題ない。しかし、連携無しでは押し切られていたかもしれないな」
和守は全身のいくつかから火花を散らしていたが、七葉の回復によって徐々にダメージが修復されていった。
回復の厚いチーム構成にして正解だった。更に言えばマシンブシドーを早期に潰しておくことで高火力のサムライダーに追撃のタイミングを作らせずに済んだとも言えた。
「作戦は充分に噛み合っている。連携を崩さずに行くぞ!」
「ん、分かった。逃がさないよ?」
おおかたの回復を終え、ノエルに後を任せた七葉はレイザースラストを発動。布槍を無数に展開させるとサムライダーへと解き放った。
「むっ……!」
脇腹を破壊されたサムライダーは走って回避。足下や後ろの壁が次々に穿たれていく。 そんなサムライダーに、陽和がぴったりと狙いを定め……。
「一瞬だけ動きを止めます。朔夜、サポート!」
「まかせて」
陽和が拳を砲身のように構えるそばで、朔夜は霊力の矢を添えるようにして照準を補強。陽和の指輪から魔術弾を発射させる。
弾はサムライダーの足に命中。脚部に付着した魔術性の物体がコンクリートのように硬化した。
「何っ!?」
とはいえこれはサイキックバトル。足が折れようが石化しようが無理矢理にでも動かせる化け物たちの戦いである。
サムライダーは石化部分を無理矢理粉砕してダッシュを再開。しかしその一瞬の隙をついて魔術性の球が彼の足下に転がってきた。
「これはっ」
「……遅いわ……」
開いていた本をパタンと閉じる清音。同時に激しく爆発する球。
爆発に巻き込まれたサムライダーに真理は素早く鎖を展開。
サムライダーの腕や足に巻き付けると、頭上にあるパイプにひっかけてつるし上げた。
同時にジャンプする和守と国臣。
「くらえっ!」
「01ATMキック!」
二人がかりのキックが直撃。最後に飛びかかったクレンドとブリューヌのクロスアタックを受けて、サムライダーは吹き飛んだ。
コンクリート製の柱を突き破り、地面をバウンドしながら転がるサムライダー。
クレンドは拳を地面に打ち付ける形で着地すると、ふっと微笑んだ。
「さて、これで倒れてくれる程度の敵か……」
「そうでない、か……」
静寂。
たちのぼる砂埃と煙。
崩れた大きなコンクリート片が持ち上がり、がらがらと音を立てて転がった。
がれきの山から立ち上がり、歩み出るサムライダー。
刀をまばゆく発光させると水平に構えた。
「しつこい敵ですね」
「さっさと消えて貰おうか」
朔夜と陽和が同時に構え、レイザースラストを同時発動。
大量に分離した布槍がサムライダーに襲いかかるが、彼はそれら全てを刀で切り払っていく。
「火力で制圧だよ」
背後をとってガトリングガンの連射をしかける七葉。
振り向き、刀を振るって弾丸を一つ残らずはじき飛ばすサムライダー。
両サイドからシールドバッシュをしかけるクレンドとブリューヌ。
しかしサムライダーは周囲をスローモーションにすると、ブリューヌを切り裂き、クレンドを蹴り飛ばして離脱。
追撃にと殴りかかろうとしていた真理とランスアタックを仕掛けようとしていた国臣をそれぞれ突き飛ばしながら走り、武装を接続しようとしていた和守の顔面に刀を叩き付けて通り抜けた。
「成敗」
一斉に吹き飛ばされる真理たち。
ブリューヌは耐久限界を超えて消滅。クレンドはそれでも微笑を崩すこと無く地面を転がった。
一方でヘルメットを破壊された和守は、破壊されたゴーグルをそのままに武装を脚部に改めて装着。
背後をとったサムライダーには対応しない。なぜなら仲間がしっかりと見ているからだ。「……そこ……」
清音の放ったリボンが急速に硬化。サムライダーのボディと腕に巻き付く。
和守は腰にセットしていた操作盤で三つのボタンを押し込むと。
「キャプテンOD――キック」
強烈な後ろ回し蹴りを繰り出した。
拘束されたままのサムライダーが吹き飛ばされる。が、空中に生み出した霊力障壁に激突。
陽和と朔夜が生み出したものだ。障壁はそのままサムライダーを拘束。
「燃え尽きちゃいなよ」
空中に固定された彼に向け、七葉はノエルと共に集中砲火。その間に飛び上がった真理と国臣、そしてクレンドが空中で体勢をチェンジ。ミサイルキックの姿勢を取ると、サイキックエナジーの噴射を推進力とした連続キックを叩き込んだ。
霊力障壁ごと貫くようなキックが直撃。
サムライダーはしばらくもがいたあと……。
「無念……拙者は……拙者は……な、なぜこんなことを? ぐ、ぐあああああああああ!」
断末魔をあげ、爆発四散。灼滅したのだった。
かくして、都市伝説サムライダーとマシンブシドーを灼滅した灼滅者たち。
「一件落着……だが、なぜだろう。昨今あまりに容易に都市伝説が生まれすぎているように感じる。もしや世界が変わりつつあるのだろうか」
空を見上げ、灼滅者たちは次なる戦いの予感を抱いていた。
予感が現実となる日は、そう遠くは無い。
作者:空白革命 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2016年7月5日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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