汝、我が名を呼ぶべし『魔王』とでも

    作者:一縷野望

    ●黄昏震ワス魔王ノ咆吼
    「オレ、魔王な!」
    「えーずるいよサトル君、魔王は僕だよー」
    「あたしが魔王様よ!」
    「「女は女王様だろー」」
    「うるさいわね、あんたたちなんてダンジョンの3階辺りでやられる雑魚ボスよ!」
     ――なんだろうか、この子供達に訪れている空前の魔王ブームは。
     虚牢・智夜(魔を秘めし輝きの獣・d28176)は「くーっはっはっ! 我こそが魔王だ!」と混ざりたいのをグッと堪え、ランドセルを背負った彼らが駆け抜けていくのを見守る。
     その時!
    「――?! くっ、この気配は一体?!」
     全身の毛が逆立つような怖気に体躯震わせ片手で顔を覆う。指の隙間から見えた廃ビルに智夜は魔王の勘がざわつくのを、感じた。
     
    ●いたよ、勇者な都市伝説
    「ふむ、よくぞ集まってくれた我が同志よ」
     黒鳥の羽をあしらったマントを靡かせて、智夜は武蔵坂の選ばれし仲間達へ金に闇融かし込んだ銀色の眼差しを向けた。
    「わかるか? あの一角。そう、ただ者ではない――」
     勇者くさい。
     ……を、厨二っぽく言うのに考え込む狼魔王を、待つことしばし。
    「勇者くさいと思って調べたらいたのだ! 勇者の都市伝説が!」
     しかし言い回しを思いつかなかったので、せめてくわっと目を見開いてマントをバッサしてみた。
     ……なんでもあの廃ビルには、むかーしRPGゲームが大ブームだった時代、2匹目のドジョウを狙い売れなかったメーカーがあったとかなんとか。
     そんな話から産まれた都市伝説は、ドット絵勇者様ご一行。
     きんきらきんに輝く剣を掲げる『ゆうしゃ』と、仲間の『おんなせんし』と『おんなそうりょ』が、ドット絵の四コマチマチマウォークで待機中。
    「奴らは恐ろしい都市伝説だ。その実力は計り知れない――だが! 恐れるに足らぬ!!」
     ――魔王がいれば勇者は物語を盛り上げねば、ならない。
     わざと攻撃に当たってピンチになるとかデフォルト。
     卑怯な勇者らしからぬ攻撃など、全て封印されるだろう――!
     ……な、事が容易に予想できるので、みんなで魔王関連の演技をしながら殴ってくるといいと思うよ!
     勿論全員魔王じゃなくてもいい、例えば村人Aで助けを求めるとか。
    「村人あっての勇者であり魔王だからな」
     勇者達が庇ってくれた所を後ろから攻撃とかやりたい放題も可能です。
     あとは魔王の配下とか、偽物勇者とか、勇者のお母さんとか……別に王様やお姫様をぶち込んだって構わない。
     要はファンタジーゲームっぽさを醸し出していればなんでもOKなのだ。
     
     パーティメンバーから予想できる範疇ではあるが、戦闘能力を記しておくと……。
     女戦士はクラッシャーで力任せな攻撃一辺倒、女僧侶は回復、勇者はディフェンダーで仲間を庇いつつパーティを生かすのではなかろうか? ハーレムに見せかけたこき使われ系勇者である。
     
    「放置すればあの子供達が被害に遭わないとも限らないな。これは灼滅せねばなるまいよ――魔王として!」
     この勇者ご一行様の運命は落日の如く沈むが定めなのだ!


    参加者
    錠之内・琴弓(色無き芽吹き・d01730)
    赤槻・布都乃(悪態憑き・d01959)
    風真・和弥(風牙・d03497)
    穹・恒汰(本日晴天につき・d11264)
    中津川・紅葉(咲き誇れや風月の華・d17179)
    黒絶・望(闇夜に咲く血華・d25986)
    虚牢・智夜(魔を秘めし輝きの獣・d28176)
    白川・雪緒(白雪姫もとい市松人形・d33515)

    ■リプレイ

    ●経験点は999999(じょうげん)
     ――つまりとっとと魔王を倒してクリアしろってコトだ、OK?
    「ふーっはっはっはっはっ!」
     嗚呼それは凶兆なる黒鳥の羽ばたきか、否! 【魔王】虚牢・智夜(魔を秘めし輝きの獣・d28176)が翻した豪奢な紫紺のマントである。画面で見たら縦2ドット的なゆうしゃ(以降漢字、他も)の眼前を華麗に掠め収まったかと思うと、いきなり極寒地獄(フリージングデス)
    『『きゃああ!』』
    『ああ! おんなせんし、おんなそうりょ!』
     名前ないのか。
     あと今どっちを庇うか迷ったな、あいつ。
    『INN』の看板を置き椅子に腰掛ける風真・和弥(風牙・d03497)の仮面の奥の眼差しは至極冷静であった。
    「暴虐の女王の息吹を受けてなお立つとは天晴れ」
     ぐぐっ!
     握った拳を開けば零れる氷花、しゃんと砕ける先に畏まるのは瞳を閉ざす【盲目の魔術師】黒絶・望(闇夜に咲く血華・d25986)
    「魔王よ。此処は私めにお任せを」
    「ふん、我が戦場に身を置くを望むはそちも存じておろう?」
     しかし魔王の瞳には熱い信頼が籠もっている。あ、これになんかのフラグだ。
    「はい。ですがあの勇者達は偉大なる大魔導師ゼファーの……私の父の仇!」
     禍々しさすら見せる血色のアネモネから溢れる魔力は果たして信頼に違わず勇者の四肢を打ち据える。
    『ゆうしゃ! く、このお』
     むきっと戦士がビキニアーマーに指をかけた(ドット絵なのでお子様も安心)その時!
    「さあ、今度は私が勇者様を助ける番ですわよ……きゃあああああ!」
     シルクドレスのか弱き乙女が何故か魔王の前に割り込んで血塗れ。
    『『『え』』』
     ドット絵だが真顔。
     マズいぞ間が持たない。
    「そんな、忘れられてしまったんですか?  あの日、もっぺけへれれの町に囚われていた私をお助けいただいたではありませんか!」
     【姫】錠之内・琴弓(色無き芽吹き・d01730)はドレスたくし上げ詰め寄る勢いで乙女の嗜みアンダースーツを鍵爪に替えてずしゃあっと!
    『そんないべんとあったっけ』
     引っかかれて血の海にあっぷあっぷな僧侶を脇に、ちこちこウォークで向かい合う勇者と戦士はぴょんぴょんとジャンプしキョロキョロ。
    「まーおぅ……」
    『は?! このまがまがしいこえは』
     振り返った先にあるのは、私は善良な村人ですよお? ……な【村娘】中津川・紅葉(咲き誇れや風月の華・d17179)に抱かれたお顔てちてちお掃除なめーぷるのつぶらな瞳。
    「にゃあ」
    「ははぁ」
     サヤ様のビロードのような毛並みをふかふかブラシで恭しく整えるは【既に従者を隠さない】赤槻・布都乃(悪態憑き・d01959)
    「にゃ!」
    「はは、失礼致しました」
     梳かし方がお気に召されなかったご様子、いや実際は「そのキャラで行くの?」的な眼差しなんですが。
    「みぃ」
     【村人その3】穹・恒汰(本日晴天につき・d11264)馴染みを入れるようにすりすり。
    「ふむ? イチよ、緊張してないぜ……ないな! てか緊張とか言っちゃダメ……」
     ぺちっ!
     恒汰の余計な台詞にはすかさずネコパンチ。崇高なるボケとツッコミの呼吸に勇者達は魅了されている!
    『は?! ひめ、おさがりください。めっせよ、なんだかきけんなねこ!』
    「勇者様あぶないですわっ」
     いや攻撃してるの勇者なんですが、故に琴弓は勇者に斬られたわけですが。
    「きゃあああっ」
    『うおおおおお! おれはなんということを』
     ゆうしゃへ2000の精神ダメージ。
    「……ふっ、ふっふっ」
     一方、どこか哀しげに胸を掴む魔王の前に両手を広げて立ちはだかる小さな影。
    「まおうさまに、ひどいことしないでっ」
     ぎゅうと下唇を噛みしめて、白川・雪緒(白雪姫もとい市松人形・d33515)は闇色の瞳に涙を浮かべ勇者達を睨み据える。
    『こどもをたてにするとはきたないぞ、まおう!』
    「ひどいこといわないでよぅ……まおうさまだけが、たすけてくれたんだからぁ!!」
     雪緒が感情を高ぶらせた勢いで弾け螺旋を描く腕のレースは琴弓にしゅるりと巻きつき疵をふさいだ。
     Pi!
    『ねこ×3(キャット参上)クエスト! 永久負傷の姫君――色に散った幼馴染みは見た、魔王すら利用する恩讐の彼方に咲く忌まれし少女との絆を――にゃあにゃあにゃあ』
     Aボタンを押してください。

    ●ちなみにその間そうりょは猫からスナイプされていた
     猫魔法3連発。
    「まーおぅ」
     やっぱりその鳴き方気になるよねー、魔王って言ってるみたーい。
    「ふむ? イチよ、お前が援護するまでもない……一撃で十分だ」
     恒汰、それフラグフラグ!
    「下がれ下僕風情が! 勇者を下す役割は我等にこそ相応しい。貴様等は引っ込んでいるがいい」
     前座宣言とわかりつつ踏み込む智夜は詠唱開始。
    「響け! 汝は愚かにも神成りと――」
     つよそうなえいしょうは時間が掛かるのが欠点かもしれない。
    『はあああ!』
     せんしの乙女をかなぐり捨てた猛攻は善良な村人達がいるため猫へは届かない! しかし魔王へ相応のダメージを与えたぞ!
    「ひどいっえいしょうのとちゅうにこうげきするなんてっ」
    『いや、このそれは……』
     えっくえっく。
     泣きじゃくりで地味に勇者達にメンタルダメージ与えつつ雪緒は智夜に寄りそい傷に手のひらをあてた。
    『――あいにみはなされたこどもよ、ちりへとかえれ!』
    「させぬぞ!」
     魔王はそうりょの攻撃より早く絶光なる雷を見舞う!
    「……まおうさま」
     頭を抱えて震えていた雪緒は金色の魔王へ幼い瞳を潤ませた。
     ……ちなみに本人内心大爆笑である、幼女怖い。
    「こちらへ来なさい、娘……相変わらず妹は外道なまでに冷静だな……はっ! おれはいったい」
     とか言いつつ、和弥はそそっと雪緒の手を引き宿屋(ハリボテ)の影に隠し、自身は苛烈な一撃をゆうしゃに見舞う。
    『な、やどやがなぜ……?!』
    『まって、あのさちうすそうなよこがお、みおぼえがあるの……』
     ちーらーりーららー♪
     16和音の哀愁誘うメロディと共に絆のイベントシーンが展開する。
    「ふっ世界を支配するのは我だ!」
     はずだった。
     しかし仮面のお兄さんは蕩々と自分の征服プランを語るだけである。
    「(略)……貴様達が軍門に降るのであれば悪いようにはせぬ」
    「勇者様、怖い。世界を支配だなんて、姫は姫は、恐ろしゅうございます……」
    『おお、ひめよ。あんしんしてください、わたしがまもります』
     なんて怯えつつ勇者に抱きつく琴弓にの腕には黒が絡みつき呪いのガントレット(本人談)を形勢する。抱きしめられた勇者の体からはミシミシメキッみたいな嫌な音が止まらないぞ。
    『あっあ゛あ゛……ひめ、ひめぇ』
     お願い離して、切実に。狙いが定まらない。
    「きゃああ、どうして、どうしてなの?! ああ勇者様、お願い避けて」
     めぎょり。
     がっつり袈裟固め、故に無様に大振り見事に外す勇者の一撃は虚しくアスファルトを削り取った。
    「にゃぁう」
    「にゃん」
    「うなうな」
     権謀術数……傍目には見かけるとちょっと倖せな気分になれる猫集会。
    「きゃー可愛いっ♪」
     カシャ☆
     紅葉のファインダーにしなり収まる猫さん×3、フォトジェニックとしての才能もばっちりなのである。にゃーおにゃーおにゃーお。
    「和弥卿の冴えたるや、千年の時を費やしても得られぬ妙技――はは、サヤ様? 彼奴めは我らの中でも一番の小物。げに恐ろしきは三天王……」
     ワナワナ。
     口元を覆い震える布都乃に行けと猫パンチ。
    「では僭越ながら、逆賊屠る逆十字」
     的確に布都乃がそうりょを餌食にする横で、ちょっと全力で盾になりすぎな琴弓姫を庇い立つ恒汰が、こふりっと吐血し膝を揺らす。
    「ぐっ……! ふふ、ふはは…貴様ら、これで私を滅ぼしたつもりか? 私の本体はこの体ではない!」
    「にゃーおう」
     恒汰を包む光(祭霊光で自己回復)の背後、ぱさりぱさりと羽ばたくイチの姿に、勇者達の瞳のドットが倍になった!
    『まさか、ほんとうのてき?! いまはいべんとのとちゅうだったのに!』
     見れば勇者の剣により宿屋の仮面が砕けそうになっていた。うん、ちゃんとイベント続行中だったんだよ、実は。
    『Aボタンれんだしすぎたんだわっ!』
     戦士メタい。
    「い、妹よ……」
    『お兄ちゃん?』
     和弥の震える腕を素通りし首を捻る僧侶の台詞は疑問系。
    「まーおぅ」
    「ふふ、よくぞ見破ったっ!」
     散々撮り収めた猫画像をむふーとしまい込み、紅葉はババン! とドット絵を指さしドヤ顔。
    「そう我こそが真の魔王! 高級猫缶をささげるがいい!」
    「うなぁ~」
    「貴様、出すぎた真似を。我が絶技『猫じゃら死』の前に露とな……」
     ドン。
     魔王を押し退け進み出た望は、恭しく猫3匹の前に跪いた。
    「な……ゼファーの忘れ子よ?!」
    「魔王、父の仇である勇者のあぶり出し、感謝痛み入ります」
     もはや虚飾すら不要と上辺を隠さぬ裏切りの声音。相反するように恭しく魔道師はめーぷる魔王様の前脚を取る。
    「まさか貴方様までこちらにいらっしゃるとは……魔王様、奴らは危険です。今此処で確実に始末すべきかと……」
    「なぁーぉう」
    「ふ、存分にその力を振るうがよい」
     【村娘】改め【真の魔王の傀儡】紅葉は、めーぷるに合わせて大仰な仕草で胸を反らす。
    「にゃ」
    「――骨一つ残すな、とサヤ様の言である」
     【村人】というには最初から邪悪すぎる【従者】布都乃は口元に指をあてにやり。
    「にゃあぁああ」
    「絶望と共に全てを滅ぼせ……と仰せだ、お、ノッてんなー」
     ぺち!
     イチの猫パンチはクリティカル! ツッコミが冴え渡る!
    「父が魔王様へ捧げし忠誠は、何一つ違わずこの身に流れております!」
     ここに、従者・村人・村娘と悪の魔導師の三位一体……あ、一足りない……が、完成する!
    『いやぁああああ!』
    「は?! 妹になにをする! 泣かされてばかりだった勇者、盾になるのだ!」
    『お、おう』
     和弥の声になんだか割り切れない顔をしながら勇者は僧侶の盾となろうとする! だが時既に遅し僧侶は既に戦闘不能だ!

    ●復活の呪文を唱えますか?
     ――そんなものはありませんが。
    「強くなったな勇者よ。妹に苛められて泣いていたのが嘘のようだ」
     その妹さん、倒されちゃったんですが。
     その間も――。
    「さぁ、此処がお前達の物語の終着点です」
     望の死の神たる母の血が放つ魔を皮切りに、ザワザワと肌をあざくるような波動と共に羽根持ちし猫達は虚空へ羽ばたき喉を振るわせる。
    「にゃぁう」
    「にゃん」
    「うなうな」
     ああ、やっぱ可愛い。猫可愛い。再び携帯を手にズサーッと滑り込み煽りで写真を撮りだした紅葉さんはさておき。
    「にゃぁぁ(ふはは、絶望と共に死ぬがいい)」
     ドヤ顔で猫魔法なイチさんの背後からクール? うん、クールなポーズでアテレコの恒汰がぶっぱなす殺意の波動が身を刻み、
    「にゃ(これは慈悲だ。受け取るが良い)」
    「成程、サヤ様はこう仰る――勝てば正義である! と」
     サヤの猫パンチに布都乃の紅蓮の軌跡がリンクする。ああ、勿論サヤ様をもっふりと受け止めて毛並みを整えなおすのは忘れません。
    「そう、俺はお前達と共に魔王を……」
     和弥の語りが佳境なその時、戦士のHPもレッドゾーンに突入である。
    『くう、きさまがねこをあやつっているのだな! おりはるこ……』
    「うなうな」
    「ほほう、勇者語るに落ちたり……あーれー」
     めーぷるに盾にされた感じ紅葉が立ちはだかる。
    「まおまお……なーん、まーおぅ」
    「この娘は傀儡、この娘が何の罪もないと分かった上で攻撃するのか!」
    「惑わされるな勇者。この聖剣で討つのだ」
    「まぁ。勇者様! これで世界は救われるのですね」
     ぺきん♪
     和弥が差し出す厳かっぽい剣は、感極まり抱きついてきた琴弓姫の踵で粉々に砕かれた!
    「あ」
     宿屋は逸らし目。
     ――逆転の一手はいまここにに潰えた。
    「……は、はは、そうか……そう、か……ゼファーの忘れ子……貴様も我を裏切るのか…………」
     そうして、ここにきて心の折れた魔王の真覚醒イベントである。
     凍てついた心のままに智夜から発せられる冷涼世界は、希望を断たれた勇者達の体力を根こそぎ奪い去る。
    「ひどい、ひどいよぉ! どうしてこんなにまおうさまをきずつけるの?!」
    『それあたいたちじゃな……』
    「いいわけなんてききたくないよぅ!」
     夜風に弾むステップ、虚空孕み膨らんだ雪緒の腕が戦士の顔面に突き刺さり、女戦士の生命力を奪いきった!
    「白川、その力を使ってはいけない……また、また狂ってしまう……」
     いきなり顔面を押さえた呻く宿屋――。
     説明しよう! 雪緒は無意識に他者の精神へ介入し狂わせる異能を有している! 其の力から勇者パーティを庇い和弥はダークサイドに堕ちたのである! あ、ついでに酒場のお姉さんにも誑かされた。むしろそっちが原因。
    『く、やはりそうりょがいっていたように、あのこをたおすしかないのか?!』
     でもなんだか小さな女の子を斬るなんて勇者心がチクチクする。
     ――教育上よろしくないよなぁ。
     ――販売停止になっちゃうよなぁ。
     ――え、そうなの? ネットの炎上とかそういうの?
    『……は、なんだこのこころのこえは! きえろ!』
    「ふ、生意気にも抗ったか。あ、私、私は違います……私はただ」
     めーぷる可愛い、と紅葉。
    「イチ卿の従者には腹芸は難しかったようだな」
     肩を竦める布都乃。
    「え、オレのせい?」
     まぁそんな従者の頭上を越えて猫パンチ三連打なわけですが、魔王様つおい。
     狂乱の中、震える智夜からは哀しみの力が溢れて止まらない。
    「なら、もう……要らない、全部……全部…………」
     虚空に翳す手のひらに招かれしは、破滅の帳。
    「なっ?! それは父が恐れていた全てを無に帰す『世界栓』?! まさか……魔王が行使できるというのですか?!」
    「我は、ひとり。我は……我は」
     封じられた奥で瞠目する望の瞳。その脇をすり抜ける智夜はつんのめるように、止まった。

    「ちがうよ。まおうさまは、ひとりぼっちじゃないもん」

     ――ひとりぼっちのわたくしをたすけてくれたのはまおうさま。
     雪緒はぺたりと智夜の腕に触れ忌まわしの力で護りを与え、花綻ぶように笑った。
    「――ああ、そうだな。我は魔王なり! 万物は我が……心に有り!」
     今炸裂する、必然の――。
    「「遍く爆ぜる世界(フォースブレイク)!!」」
     ………………。
     ここでなんで勇者がやられてるの? などというツッコミはもはや無粋であろう。
    「ああ、良かった。これで世界は平和になるのですね!」
     ほらだって、琴弓姫がそう締めているではありませんか。
    「哀しみのない、誰もへ優しい世界になるのですね! ありがとう、勇者様、ありがとうありがとう!」
     ……うんそうだよ、都市伝説に襲われる魔王ブームな小学生はいなくなるね。
     斯くしてまた一つ、人々の平和は灼滅者によって守られたのである。

    作者:一縷野望 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年9月20日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 2/素敵だった 6/キャラが大事にされていた 1
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