闇落ちしたスイカップ!

    ●都内某所
     イヴ・ハウディーン(怪盗ジョーカー・d30488)が調査した結果、この地域でダークネスの発生が確認された。
     ダークネスは西瓜を愛する余り、怪人に闇堕ちしたスイカップ。
     この怪人は恐ろしいほどスイカに執着しており、邪魔する者達をスイカップの胸で挟み、意識を奪っているようである。
     そんな状況をこれ以上、拡大させないため、イヴがその場に仲間達を集めた。
     スイカップ怪人はスイカ柄の衣装に身を包み、スーパーなどで売られているスイカを手当たり次第に奪っている。
     しかも、スイカップ怪人は無駄に身体能力が高く、自慢の胸をばいんばいんと揺らしながら、一気に間合いを詰めて胸の谷間で挟み込んでくるので、色々な意味で注意が必要になるだろう。
    「まあ、誰かがスイカップの胸に挟まれている間は、色々な意味で隙が出来るから、何とかなると思うけど……。闇落ちした一般人を救い出すのは、ちょっと面倒かも……」
     そう言ってイヴが知る限りの情報を伝え、仲間達に協力を求めるのであった。


    参加者
    イヴ・ハウディーン(怪盗ジョーカー・d30488)
    鑢・真理亜(月光・d31199)
    鳳凰寺・ユーディ(緋は紅・d35506)
    遠江・静夏(反逆のメロン・d36975)

    ■リプレイ

    ●都内某所
    「この度はスイカ怪人ですか? メロンに、ついでスイカ……。逞しき胸囲は仲間を呼ぶのですね」
     鑢・真理亜(月光・d31199)はしみじみとした表情を浮かべながら、仲間達を連れてスイカップ怪人が確認されたスーパーにやってきた。
     スイカップ怪人が現れた事で、スーパーは警戒ムード……と思いきや、みんな瞳をランランと輝かせ、鼻歌混じりにスイカを並べていた。
     おそらく、スイカップ怪人の胸に挟まれ、文字通り天にも昇る気持ちを味わいたいのだろう。
     その事を夢見ながら、如何わしい妄想を膨らませ、スイカップ怪人が現れるのを待ちながら、ハイテンションでスイカを並べているようだ。
     そう言った意味で、一般人が巻き込まれる可能性が高いものの、事情が事情なので放っておいても良さそうである。
    「噂によるとスイカップ怪人は、スポーツ万能、元は少しスレンダーで、スイカ愛の余り闇堕ちアフターで、バインバインぷりんぷりんの怪人になったとか」
     イヴ・ハウディーン(怪盗ジョーカー・d30488)が事前に配られた資料に目を通し、スイカップ怪人について語っていく。
     スイカップ怪人はスイカさえ食べる事が出来れば、一般人に危害を加える事はないようだが、一般人達が下心丸出しでイケナイ事を期待しているらしく、自爆にも近い形でスイカップ怪人に襲われているようだ。
     そのため、彼らの中で『スイカはひとり一個だけ。女子供は買うんじゃねぇ!』と言う事が、暗黙のルールとして存在しているようである。
    「うぐ……、スイカにだけは負けたくないだわさ!」
     遠江・静夏(反逆のメロン・d36975)がスイカップ怪人に対して、敵対心を抱く。
     静夏はつい最近までメロン怪人に闇堕ちしていたため、何となく親近感を覚えつつ、負ける訳にはいかないという気持ちが強かった。
    「……とは言え、夏のスイカは美味しいですよ。ただし、一般の方に御迷惑をおかけする怪人さんはノーセンキュなのです」
     そう言って鳳凰寺・ユーディ(緋は紅・d35506)が、スーパーの中に入っていく。
     スーパー側はスイカップ怪人が現れる事で、客入りが良い事を知っているせいか、横断幕を掲げてスイカを売り出していた。
    「とりあえず、腹ごしらえだわさ」
     静夏がスーパー内にあるフードコートの席に座り、刑事ドラマのような雰囲気を漂わせ、メロンパンをかじりながら、牛乳を喉の奥に流し込み、スイカップ怪人が現れるのを待つ。
    (「……今日の夕飯は何にしよう……」)
     そんな中、真理亜がスーパーの品揃えを眺め、あれこれと想像を膨らませた。
     ダークネス退治でなければ、スーパーで特売品を買っていたところだが、さすがにそうも言ってはいられない。
     だが、2000円以上購入すると卵がタダになるサービスや、じゃがいも、たまねぎなどの詰め放題は見ていて楽しそうだった。
    「ス、スイカップ怪人が現れたぞおおおおおおおおおおおおおお!」
     次の瞬間、まわりにいた客達がザワつき始め、ワラワラと店の入り口に集まっていく。
     そこで何があったのか分からないが、客達が『オゥッ!』、『……イイッ!』、『凄ぇ……!』などと呟きながら、パタパタと倒れる音が響いていた。

    ●スイカップ怪人
    「アハハッ……、みんなえっちさんだね。そんなにアタシのコレがいいの? でも、アタシが好きなのは、スイカ。大きなスイカが大好きなの! だから、退いて! もちろん、スイカを渡した後で!」
     スイカップ怪人が店内に現れたのは、それからすぐの事だった。
     一見すると小学生。
     実際にそうなのか、単なる童顔なのかわからないが、幼い雰囲気が残る可愛らしいタイプで、はち切れんばかりのボディをスイカタイツで隠していた。
     だが、身体のラインがクッキリ出ているせいで、逆にエロス全開である。
    「闇堕ち怪人は色々と個性がモロに出るようですね……」
     ユーディがスイカップ怪人を眺めて、何処か遠くを見つめた。
     おそらく、闇堕ちした事で、胸が大きくなったのだろう。
     しかし、スイカップ怪人はまったくその事を問題視しておらず、むしろ見てと言わんばかりにバインバインと胸を揺らし、客達からスイカを奪い取る代わりに、胸の谷間で挟み込み(スイカパフパフ:ユーディ命名)、満面の笑みを浮かべていた。
    「ぬおおおおおおおおお! 凄ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
     そのたび、まわりにいた客達が興奮した様子で、ぶしゅーっと鼻血を撒き散らす。
     中には鼻血を流し過ぎたせいで、グッタリとしている客もいるようだが、その表情はとても幸せそうだった。
    「それにしたって、バインバインし過ぎだよ」
     静夏がスイカップ怪人の胸を見つめ、気まずい様子で汗を流す。
     もしかすると、闇堕ちする前は、スイカップに憧れるぺたん娘だったのかも知れない。
     闇堕ちした事でだいぶ性格も変わっているようだが、どちらにしてもスイカ好きだった事は間違いないだろう。
    「スイカを力づくで奪うのは、スマートじゃないぜ」
     そんな中、イヴが何故かイケメン風に、スイカップ怪人に迫っていく。
     何故、イケメンである必要があったのか分からないが、少なくともスイカップ怪人には効果があったようである。
    「ひょっとして、アンタ……。フタシにスイカを買ってくれるの? そうよね? 間違いなく、そうよね? だったら、お店の人に言っておくね♪」
     その途端、スイカップ怪人が勘違いした様子で、従業員に事情を説明し始めた。
     それに気づいた客達が『おいおい、俺達の楽しみを奪うなよ!』と言わんばかりにブーイング。
     みんなスイカップ怪人に襲われるため、朝から並んでいたらしく、『ダメならお前達でもイイから……いや、ぜひお願いしますっ!』と言わんばかりの雰囲気であった。
    「……って、えっ? えええええええええええええええ?」
     これにはイヴも驚き、血の気が引いた様子で、財布の中身を確認する。
     だが、どう考えても足らなかったため、仲間達に借金をする必要がありそうだ。
     もちろん、そんなつもりでスイカップ怪人に話しかけた訳ではないため、気持ちはどんより、ションボリムード。
    「それじゃ、アタシ帰るね」
     スイカップ怪人がホクホク顔で、沢山のスイカを抱え、スーパーから出ていこうとした。
    「待てィ!」
     すぐさま、ユーディがヒーローばりのポーズを決め、スイカップ怪人の行く手を阻む。
     念のため、ラブフェロモンを使っているせいか、まわりにいる客達の瞳にはハートマークが浮かんでいる。
    「……って、何? これからスイカパーティをするんだけど……」
     スイカップ怪人が不満げな表情を浮かべ、大きく頬を膨らませた。
    「それなら、少し場所を変えませんか? 例えば、裏手の空き地とか」
     真理亜が苦笑いを浮かべながら、スイカップ怪人を裏手の空き地に誘う。
    「……んっ? まあ、スイカを買ってもらった恩もあるし……。すぐに終わらせてね。本当なら、すぐにでもスイカパーティをしたかったんだから」
     そう言ってスイカップ怪人が、真理亜の後をついていった。

    ●裏手の空き地
    「……で、何の用なの? 手短にね」
     スイカップ怪人がスイカを丁寧に並べながら、灼滅者達に視線を送る。
     どのスイカも形が良く、スイカップ怪人も、満足げ。
     愛用のハンカチできゅきゅっと磨きながら、楽しそうに鼻歌まで歌っている。
    「スイカを愛する気持ちは理解できますが、盗みは良くありません。これからは、きちんとお金を払って、スイカを手に入れてください」
     ユーディも一緒にスイカを並べながら、スイカップ怪人の説得を試みた。
    「えーっ、でもスイカって高いんだよ。だからと言って、1個じゃ足りないし……。盗んだって大丈夫だよ。みんな喜んでいるし」
     だが、スイカップ怪人は納得がいかない様子で言い返す。
     おそらく、最初の頃はきちんとスイカを買っていたのだろう。
     しかし、それだけでは満足する事が出来ず、スイカなしでは生きられない身体になってしまい、闇堕ちしてしまったのかも知れない。
     そんな気持ちが容易に想像できてしまうほど、スイカップ怪人は不満そうであった。
    「だからと言って、このままではスイカの評判を下げてしまう事になってしまいます。最悪の場合、スイカを売らなくなってしまうかも知れませんよ」
     真理亜が真剣な表情を浮かべ、スイカップ怪人に語り掛けていく。
    「そ、それは……そうなんだけど……。で、でも、無理だよっ! だって、お金が無いし、お仕事だってしてないもん!」
     それでも、スイカップ怪人が不満げな表情を浮かべ、自分の考えを曲げようとしなかった。
    「どうやら、力づくで説得する必要があるようだにゃ」
     ユーディがキリリとした表情を浮かべ、先手必勝とばかりに斬影刃を仕掛ける。
     それに合わせて、静夏が『スイカに負けじ!』と言わんばかりに、レイザースラストを放つ。
    「……ちょっ、ちょっと待って! せめて、このスイカを食べてから!」
     スイカップ怪人が焦った様子で、スイカをガブガブと食べ始める。
    「ううっ……、出来ればジックリと味わって食べたかったなぁ」
     だが、急いで食べているせいで、幸せを感じる事が出来ず、とても不満そうであった。
    「隙ありっ!」
     次の瞬間、ユーディがイヴの襟首を掴み、スイカップ怪人めがけて放り投げる。
    「……えっ? ちょ、ちょおおおおおおおおおおおおお!」
     放り投げられたイヴは受け身すら取れず、スイカップ怪人の胸にバインと挟まれ、まったく身動きが取れなくなった。
    「イヴちゃん、骨は拾うから……」
     それと同時に、静夏が『メロンの恨みを知れ!』と言わんばかりに、スイカップ怪人にサイキックフラッシュを仕掛ける。
    「……って、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアー!」
     その一撃を食らったスイカップ怪人が、イヴと一緒に悲鳴を響かせた。
    「うう……、身体が……動かない……。アタシはただスイカが食べたかっただけなのに……」
     スイカップ怪人がグッタリとした様子で、瞳をウルませる。
    「だったら、学園に来ないか? 俺は猛烈に姉ちゃんを救いたいんだ! そうすれば、好きなだけスイカを食べる事が出来るぞ!」
     それに気づいたイヴが、スイカップ怪人に手を伸ばす。
    「ほ、本当に? だったら、行く、行く! 仲間に入れて♪」
     そう言ってスイカップ怪人が能天気な笑みを浮かべ、イヴの手をガシィッと掴むのだった。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年7月8日
    難度:普通
    参加:4人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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