鎌鼬をアレしてアイス食おうぜ!

    作者:空白革命

    ●アイスを食おうぜ!?
     バスの車窓に海が広がり、開けた窓からは海鳥の声。
     空気を胸一杯に吸い込めば、潮の香りがするだろう。
     氷室・侑紀(ファシキュリン・d23485)は椅子にもたれてまどろむと、ある噂話を口にした。
    「誰もが……いや、誰かが語った噂話がある。鎌鼬……最近みないな、と」
     ちょっと前までは廃村だゴルフ場だ遊園地だとそこかしこに住み着いていたイタチ型眷属カマイタチさんだが、そういや昨今見かけない。
     侑紀はそんなカマイタチさんの噂話をたどってさびれた海の家へとやってきたのだが……。
    「噂をたどったせいだろうか。都市伝説に行き当たってしまった」
     
     海の家にカマイタチが出るという、それだけの噂である。
     そいつにサイキックエナジーがアレしてカマイタチがポップしたのだ。
     まあ噂が噂なので皆の知ってるあの眷属鎌鼬からかなり外れた何かであることは間違いないし、けどそいつがカーマカマーとかいいながら暴れているせいで海の家も軽く開店休業状態なんだそうな。
     『こいつをやっつけてくれたらアイスくらいおごる』という言葉もついでに聞きつけ、侑紀たちは現地へと向かっているのだ。
     さあ、鎌鼬をアレしてアイスを食べよう!


    参加者
    苑田・歌菜(人生芸無・d02293)
    煌・朔眞(秘密の眠り姫・d05509)
    雪椿・鵺白(テレイドスコープ・d10204)
    霞代・弥由姫(忌下憧月・d13152)
    篠宮・遥音(海緒の瞳に映るものは・d17050)
    中津川・紅葉(咲き誇れや風月の華・d17179)
    氷室・侑紀(ファシキュリン・d23485)
    月島・アリッサ(妄想爆発破天荒ガール・d28241)

    ■リプレイ

    ●カマイタチをアレするパート
     苑田・歌菜(人生芸無・d02293)のこうげき。
     かまいたちを棒でなぐった。
     煌・朔眞(秘密の眠り姫・d05509)のこうげき。
     かまいたちににゃんこをけしかけた。
     雪椿・鵺白(テレイドスコープ・d10204)のこうげき。
     かまいたちを無視してギターをかなでた。あとビハがリンゴでなぐった。
     霞代・弥由姫(忌下憧月・d13152)のこうげき。
     かまいたちをぐーでなぐった。
     篠宮・遥音(海緒の瞳に映るものは・d17050)のこうげき。
     かまいたちにぽちをけしかけた。遥音は荷物をせいりしている。
     中津川・紅葉(咲き誇れや風月の華・d17179)のこうげき。
     かまいたちをひらてでなぐった。
     月島・アリッサ(妄想爆発破天荒ガール・d28241)のこうげき。
     かまいたちをにくきゅうでもふった。
     氷室・侑紀(ファシキュリン・d23485)のこうげき。
     かまいたちをたべた。
     かまいたちをたをした。
     みんなはけーけんちをえた。あとアイス屋の眉毛太いおっさんが親指立てて『グレイト!』とか言った。

    ●ここからは美少女たちがひたすらアイス食べて涼むパートとなっております
     さっきのおっさんが『海の家・グレートパンピー』とかいう頭がどうかしちゃった店のシャッターを開き、侑紀たちを手招きした。
    「おかげでやっと店をマトモに開けるよ。今日は開店祝いだ。これまで余った在庫も含めて好きなだけやってくれ!」
    「じゃあ、お言葉に甘えて」
     すごい余計な知識だが、海の家の経営は基本的に土地所有者がレンタルブースのノリでワンシーズン百~三百万程度でリースするが、中には土地と営業権を永久に買い取っている所もあり、そういう所は海開き前のバーベキュー客なんかを相手に商売することがある。この店はそういうタイプのトコらしい。
     なので、海開き前の今は実質貸し切り状態である。
     スキンヘッドにサングラスで尚且つアロハシャツというパーリーな格好したおっさんがてきぱきとソフトクリーム機の手入れをする中、足下を何匹かのわんにゃんが駆け抜けていった。
     っていうか霊犬とウイングキャットだった。
    「こらぽちっ、おじさんにイタズラしたらだめだ」
    「空丸、おすわりっ」
     ぽちと空丸がぺたんと座って、刀咥えたままハッハしている。
     一方、羽の生えた子猫がむにゃむにゃしながらおっさんの頭上を通過し、めーぷるの白いお腹にぽっふんとぶつかっていた。
    「「…………」」
     冷静に考えたら結構超常的なことが起きているが……ネコにドローンが搭載されたことにしてごまかせるだろうか。
     とか思っていたら奈城(ビハインド)があらぬ所から現われて急に虚空へ消えていった。
    「……」
     はやりのVRだって言ったらごまかせないだろうか。
     とか思っていたら腕の先からほぼ蛇になった侑紀がうにょうにょ人間と蛇の間をいったりきたりしていた。
     だめだこれ。完全に人間じゃ無いコ混じってるもんこれ。
     とか、思っていたら。
    「最近の若いコは、おっさんの想像を絶するね」
    「で、ですかねえ!」
     歌菜、渾身の愛想笑いである。
     弥由姫に耳打ちする。
    「ジェネレーションギャップってことで受け入れてるのかしら。そんなに若者ってわかんないモノ?」
    「わたくしたちも、いずれ通る道ですわ。一世代前は携帯ゲームの対戦にケーブルを必要としていたくらいですから」
    「ネット対戦にLANケーブル刺すとかじゃなくて?」
    「ええ、ゲーム機同士を直接」
    「なにそれ、糸電話じゃないの」
    「平成初期のロマンですわね」
     なんか達観した弥由姫が静かにアイスボックスを開き、伏せ字が必要そうな個性的なアイス商品をひょいひょい取り出し始めた。これをどうするつもりなのかは、後でお話することにしよう。

     アリッサはおっさんからソフトクリームを受け取って、くるりときびすを返した。
    「皆、ソフトクリームは何が好き? あたしはミックス。バニラと混ざったのが美味しいんだよねー」
     小首を傾げる歌菜。
    「それは……バニラエッセンスで香りをつけてチョコレートや果汁成分を主成分を残して半減させたものが好きって意味よね」
    「ごめんちょっと意味わかんない」
    「私はイチゴでしょうか。季節になると必ず出るんですよね」
     頬に手を当ててうっとりする朔眞。鵺白もこくんと頷いた。
    「そういえば、今の時期は何なのかしら」
    「パイナップルでしたかしら」
    「もしくはマンゴーですね。夏と言えばですよ」
     弥由姫と遥音が、朔眞のそばでなにやらセットしていた。
     ワッフルメーカーを平たくのばしたような機械だ。生地を挟んだらさぞかしぱりぱりに焼けそうだ。
     横から覗き込む紅葉と侑紀。
    「ワッフルでも作るの?」
    「いえ、ワッフルコーンを作るんです。焼いてから専用の道具でくるっと巻くんですよ」
    「ほう……ご家庭で気軽にワッフルコーン、か」
     尚、軽く二万円くらいするので相当高い女子力を有していないとお家におけなかったりする。ホットプレートもう一台買ってくるようなもんだ。
    「じゃあ、これを使ったら今からワッフルコーンでアイス食べられるんだね! すごいね!」
     踵を上げてきゃっきゃするアリッサ。
     その後ろで店主のおっさんが『好きに遊ぶといい、若者よ』みたいな寛大な顔をしていた。めーぷるやリオにまみれながら。
     このシチュエーションが特別なだけなので、よい子のみんなは海の家にワッフルメーカーとか持って行かないかないようにしよう。
     かくして、一枚一枚焼き上げたワッフルコーンを使ってのアイス食べ放題タイムが始まった。
    「じゃあ早速、アイス力学を応用して無限に積み上げる試みを……」
     歌菜がアイスを好きな順にポンポン重ねる遊びを始めた。
     子供が一生のうちに一回でいいからやりたい遊びである。
     私もやりたかった。
    「ワッフルが頑丈なおかげで意外とのるわね」
     なんだかんだで三段くらいで止めておく歌菜。
     朔眞の焼き上げたものはよく見るアイス屋のワッフルコーンと違ってやや分厚くて径が広い。その分ザクッとした食感が弱かったりするが、アイスを乗っけるには適しているのだ。ちなみに冷めるまでかなり待たないと後が恐い。超とけて先端から流れ出るからコレ。
    「朔眞、ちょっぴり勘違いしていたんですけど……今日のアイス、持ち寄りじゃなかったんですね」
    「そこにおっさんいますしね」
    「まあ、持ち寄りでここまで派手なことはできないわよ」
     鵺白はパフェグラスをテーブルに置くと、コーンフレークやドライフルーツをタッパーごと取り出した。
     おっさんは一瞬『え、それ持参なんだ』みたいな顔したが、すぐに穏やかな顔に戻った。ぽちと空丸にまみれつつ。
     よい子の皆は海の家で急にパフェを自作するのはよそう。
    「コーンフレークやフルーツをつめて、そこにバニラアイスとワッフル。さらにはイチゴをのせて定番のイチゴパフェよ!」
    「スーパー○ップチョコミント味にチョコモ○カジャンボを割り敷いて、雪見だ○ふくと○ノ積み上げガリ○リ君を周囲に敷き詰め最後にアイ○の実をちりばめ……最後にしろくまをチョコミントの上にドン……ですわ」
    「なんか弥由姫さんだけ完全に次元の違う所に行ってないです?」
     とか言いながら、遥音は普通にバニラアイスにカラースプレーかけてぱくぱくやっていた。
     あのカラースプレーをアイスが埋まるまでかけ続けるのが夢だった人いませんか。
     大人になればできると思っていたし実際できるけど、いざ大人になると意味ないやって思っちゃって価値をなくす。そんな、アイスクリームのように刹那的な夢を。
    「さて、ではちょっと挑戦を……」
     ノーマルアイスに一通り満足した遥音は、深皿にアイスを段々構造に積んでいった。
     具体的にはシュガーコーンの上にアイスを乗せ、ジャムをかけてから更にコーン。でもって更に複数のアイスを乗っけてチョコソースで締めるというなんかオシャレすぎて食べるのに相当な女子力を必要としそうなアイスを完成させた。
     ちなみに必要な女子力は、音も無く人を背後から抹殺できるくらいの女子力である。
    「なんか、みんな色々挑戦してるのね……」
     紅葉もこれは負けていられないとばかりにワッフルコーンを広めに作ると、アイスをピラミッド状にぐるぐる積み上げていった。
    「私、ラムレーズンとチョコミントは外せないの。それにイチゴにオレンジにメロンも。あ、マーブルもいっちゃおうかしら」
     これもこれで子供の時にしか価値をもてない夢だが、アイス屋さんのアイスを端から順番に全部食べていくっていう夢も、割と皆持っていたのではなかろうか。
    「皆、満足しているようで何よりだ」
     侑紀は外見からはちょっと分からないが、それなりに満足した様子でチョコミントアイスをちびちび食べていた。
     具体的には、スプーンですくって口に運び、その間に首ンとこから伸びた白蛇がちろちろ舐め、引っ込んだところでスプーンをさしという繰り返しである。念のため言っておくが蛇も彼女(この際彼女と呼ぶ)の一部なので、すごい勢いでパクついているのと変わらない状況だった。まあその気になればアイスボックスごと丸呑みできそうなので、彼女なりに遠慮しているとみてもいいかもしれない。
    「そうだ。折角だから僕も何かチャレンジするか」
     ふと思い立ったようにパフェグラスにアイスを積み上げていく侑紀。
    「10段パフェを目指そう」
    「あっ、いいな。あたしもやる!」
     一緒になってグラスにアイスを積み上げていくアリッサ。
     東京の中野区あたりにソフトクリームを十段重ねる店があるが、それを考えると割と現実的な気もしてくるから不思議だ。
     ちなみに10段重ねのアイスクリームを売ってる店はアメリカにある。日本だって売ってくれないわけじゃない。ただし店員が必死で止めるが。
     ここの店員はもう奈城と一緒にソフトクリーム食ってる心穏やかなおっさんしかないので、もうやりたい放題である。
    「パフェか。私もやってみようかしら」
     暫く見ていた歌菜もウェハースやなんかを支えにしてラムレーズンの積み上がったパフェを作ったりなんだりしていた。
    「綺麗に出来た」
     カメラを取り出し、シャッターを切る。
     ついでにとばかりにおっさんに手渡し、朔眞や鵺白、弥由姫や紅葉たちを入れてぱしゃりとやって貰った。
     一方の紅葉はチョコミントアイスをクッキーで挟んであーんとしてた所なので、軽く慌てていたようだが。
    「ちょっと、今一番撮られちゃだめな所だったじゃないの」
    「まだ何枚も撮りますわ」
     自信作のパフェをいい位置で見せながら言う弥由姫。
    「あのお、チョコミントってどうなんでしょう。朔眞、食べたこがないんですけど」
    「じゃあいってみる?」
     鵺白につつかれて、紅葉が自分の『クッキーにミントアイス挟んだやつ』を差し出した。
     朔眞はそれを受け取って、おもいきってぱくついた。
    「わあっ、美味しいです!」
    「ざっくりさわやかでしょ」
    「じゃあそろそろ、こういうのも言ってみましょうか」
     鵺白はシェイカーにミルクとアイスを入れてシェイクを作り始めていた。
    「あら、ずいぶんと女子力の高い」
    「これって女子力なのかしら」
     とかいいつつ弥由姫たちに配る鵺白である。
     その一方、10段アイスを完成させていた侑紀は満足げに写真撮影に入っていた。
    「さすがの迫力……」
     そんな早紀自体を撮影しつつ、遥音はスプーンを手に取った。
    「一緒に食べようか。一人で食べきれるかどうか」
    「途中で口の中きーんとしそう」
     頷く遥音。同じくアイス積み上げまくっていたアリッサも加わって、スプーンで棒倒しみたくアイスを削り始める。
    「ところで知ってる? バニラアイスに唐辛子をまぶすと、ぜつみょーなマッチなんだよ」
    「そんなまさか……って本当だ」
    「冷静に考えたら甘さと辛さって相反しないものね。カレーに蜂蜜と唐辛子を入れるようなもので」
     暫くすると、お互いの食べているものに興味がわいてかわりばんこモードになるもので。
     おっさんがわんにゃんと戯れ終わったころには、女子たちはすっかりアイスに満足していた。
     軽いパジャマパーティー後の空気が流れ、もうここで寝て帰ろうかくらいのテンションであったものの、そこは海の家。帰らねばならぬ定めである。
     おっさんは今度は普通に遊びに来てよと彼女たちを駅まで送り、そして自らも帰って行った。

     こうして幕を閉じたアイスパーティーだが、なにも今回だけに限った話では無い。
     また皆あつまって、こうして楽しむことができるだろう。
     誰かの家に集合して、心ゆくまで遊ぶのだ。

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年7月17日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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