ある日、少年は己の中の憎悪を知った。
闇に堕ちかけた少年を待っていたのは、絶望だった。
「この世界に……この世界に俺の気持ちがわかる奴が何人いるんだ。『テストの最下位は変わってもブービーは毎回同じだね』だの、『いやー、あそこで転んだのに100m走最下位にならないとか、お前足は速いよな。ブービーだけど』とか、『んー、残念! でも最下位じゃないですよ、ブービー賞の麩菓子謎の味5本詰め合わせです』なんて……」
少年の別人格から具現化したのは、六六六人衆。
彼らは、自分の序列を本能で知る事が出来る。
彼のナンバーは――、
665番。
「わかってたさ、わかってたさ! でもよう! いっそ最下位でいいだろもう! 運命の悪意しか感じない!」
ぷるぷると左手を震わせながら、665番目の少年は器用に右手で手書きのメモを量産していた。
「だが……1人でも殺せば、俺はブービー脱出だ……殺るしかない!」
左の頬に笑みが、右の瞳に涙が浮かんだ。
『どうも、665番です☆ 俺的にはもっと番号の高い人とデートしたいので、連絡ください♪♪』
その日から、彼の住む町周辺の駅の掲示板には、一枚ずつ同じ筆跡、同じ文面のメモが貼られることになる。
「俺の全能計算域(エクスマトリックス)が、新たなる哀しみの発生を導き出した――」
神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)が、いつものポーズでいつもの笑みを浮かべた。
けれど心なしか、その表情には、『哀』が感じられる。
「六六六人衆の新たな発生。しかし、彼はまだその力を振るってはいない。その殺戮衝動(プレシュア・オブ・プルートー・アフェクティション)は、己の上位たる六六六人衆を狙う情熱に費やされている」
「公式用語に妙なふりがなつけていいんですか?」
ヤマトはA4用紙に大きく『殺戮衝動』と書いた紙を持ったまま、黙って口の端を吊り上げた。
意味としては『冥界神気取りの快楽』って感じだが、間違っても公式名称にはならないだろうからそこは安心してほしい。
「彼がもし灼滅者の素質を持つ者ならば、闇堕ちから救い出せれば武蔵坂学園の一員としての資格がある。――完全なダークネスになるのならば」
A4の紙が、バラバラに引き裂かれる。
「灼滅」
その重要な使命に、能力者達は頷いた。
「彼の名前は小張・佐内(おはり・さない)。665の番号を持つ彼は、己より上位の六六六人衆に接触を図るべく、日々駅の掲示板に彼らにしかわからないだろう符号を散りばめたメモを貼っている」
「……駅の?」
「掲示板?」
なんというか、結構、割と誰も見ない場所だった。
「そう、彼はその非効率(イニフィシエント)を深層心理で理解した上で、わざとその手段を続け――己の殺戮衝動を、必死に抑えている可能性が高い」
だがしかし、放っておけば彼は完全なダークネスとなり、もっと効率的な殺戮を始めるだろう。もしかしたらその前に、偶然六六六人衆の誰かに見つかり、嬲り殺されるかもしれない。
「彼と接触できるのはそのメモ確認と補充の時間とは計算が弾き出している。だが、どこにいつという予測は俺の全能計算域も測定できなかった……」
今回は、灼滅者達が彼の行動をある程度突き止めることになる。
「佐内の説得に成功すれば、彼を乗っ取ったダークネスとの戦いになるが、佐内の意志がそれに抗うため大幅に弱化するはずだ。なお、彼が使うのは殺人者と同じサイキックになる」
「考えることの多い任務だが、どうかよろしく頼みたい。――できることなら、彼と帰ってきてほしい」
そう言って、ヤマトは灼滅者達に頭を下げた。
参加者 | |
---|---|
黒白・黒白(パステルカオス・d00593) |
天衣・恵(天衣無縫の恵み・d01159) |
外法院・ウツロギ(都市伝説:シリアルキラー虚姫・d01207) |
朧木・クロト(ヘリオライトセレネ・d03057) |
空崎・充(鉄鎚の魔術師・d03443) |
アレクサンダー・ガーシュウィン(中学生ご当地ヒーロー・d07392) |
太治・陽己(人斬包丁・d09343) |
ラーセル・テイラー(偽神父・d09566) |
「ブービーッスか……」
黒白・黒白(パステルカオス・d00593)が感慨深げに呟いた。
「調べてみるとさ、ブービーって……」
空崎・充(鉄鎚の魔術師・d03443)がひょいと口に飴玉を放り込む。
「ブービーって本来は最下位って意味らしいな」
……それを言っちゃぁお終ぇですよ。
「まぁ、今回はそんなことどーでもいーんだけどよ」
……そうだね。ほら、彼自身がどう思ってるかが問題だしね。
「要は半端が嫌って事か。潔癖だな」
ぽつり、と太治・陽己(人斬包丁・d09343)が呟いた。
「しかし、半端が良い時もある。今の様にな」
闇に近づけど、まだ堕ち切っていない今なら。
救える。
「しっかし、のーてんきなメモだけどいい字だなー。ブービーなんとかすればってか、ブービーでも案外人気者なんじゃないかねー」
天衣・恵(天衣無縫の恵み・d01159)がぴらぴらと手に入れたメモを振る。
『どうも、665番です☆ 俺的にはもっと番号の高い人とデートしたいので、連絡ください♪♪』と軽やかな文字で書かれたそれに、朧木・クロト(ヘリオライトセレネ・d03057)がむっと頬を膨らませる。
「この非常時に、☆とか♪とかデートとかウキウキメモ置いてんじゃねーよまったく!」
いやー、まー、うん。
ダークネスがそういう性格なのか、彼自身が案外大物なのか、意見が分かれるところではある。
「ブービーから導き出される彼の今日は!」
ラーセル・テイラー(偽神父・d09566)が楽しげに二本の指を立てる。
「自動改札機で並ぶ列の最後から二番目になり更に電車に間に合わず終電二つ前の電車に乗る羽目になり、乗った車両はプラットホーム出口から二番目に遠い位置に止まり、乗る時も降りる時も二番目だろう。疲れ切った彼は駅弁を買うが気付く。残りの弁当数は――」
そこで、ラーセルはにやりと微笑んでから口を開いた。
「二つ、だった」
完璧なオチだった。
「ついでに帰りの途中でメモを勘違いしたミスコンブービーの女子高生に迫られているに違いない」
アレクサンダー・ガーシュウィン(中学生ご当地ヒーロー・d07392)が深く頷く。
人の不幸は蜜の味と言いたいところだが、アレクサンダーは真剣に心配しているのである。
「ブービーに抗っても、結局無意識でブービーになってそうだよな」
クロトがけろりと言い放つ。悲しい話だ。
「何やら凄まじい因果を背負っているようだね。正直ここまで来ると、唯一無二の存在とも言えるね」
外法院・ウツロギ(都市伝説:シリアルキラー虚姫・d01207)が何だか楽しげに口を開く。目隠しに阻まれて目元はうかがえないが、唇がくすりと笑みを刻んでいる。
「オンリーワン、格好いいよね」
灼滅者もオンリーワンって感じの人の集まりだから、特にそうかもしれない。
「若さとは抗う事、己が宿命を覆そうとするその心意気は立派だと思う。だがしかしその方法が、その手を血に染めるような事ならば、本人の為にもなりはしない」
だったら、とアレクサンダーは、どこか老成した口調で続けた。
「ならばむしろそれを受け入れ、有効に活用するのも一つの道では?」
ちなみにアレクサンダーさん実は中学一年生である。
えって思った人正直に挙手。私は挙げる。
そして。
「さて、見つけれるかな」
「これでいたらほんとすげぇな」
とウツロギとクロトが言ったものだが。
「いや、まさかこんなベタな……」
実際本当にその通りに行動して到着した駅の掲示板にいちゃったのである。
「お、佐内くん発見伝……おまけつき?」
ウツロギが軽く呟いてから、ふむ、と考え込む。
何故かと言うと。
「ねぇねぇ、このメモ残したのあなたでしょぉん?」
「い、いや、その……」
これは多分ミスコンブービーだろうなって感じの、マッチョで野太いイケメンなオカマちゃんにしっかり絡まれていたのである。
「ホントに居たッス!?」
黒白がジュースでも飲んでいたら噴きそうな顔になる。
「あのさー、この人がブービーだったら、一体最下位って誰なんだろ?」
無邪気な恵の問いに、そっと仲間達は首を振った。
「まーいーやすいませーん! おにーさんこのメモ書いた人なんでしょー!?」
さっさと飛び出して行った恵に、仲間達は慌てて後を追い、小張・佐内らしき少年とオカマちゃんはがばっと振り向いた。
「え、あ、あの、また!?」
佐内が驚いた顔で一歩後ろに下がる。
「ねぇ、僕たちそのメモを見たやって来たんだけど」
そっとウツロギが言葉を添える。佐内はさらに一歩下がる。
そりゃ先頭に立ってるのは可愛い女の子とは言え、後ろに並んでいるのは平均的に割とガタイ良い目の男子七人である。
「な、なんてこと!」
けれど佐内が何か言う前に、ハンカチを噛み締めるオカマちゃん。
「可愛い女の子に、私よりマッチョな人に、美少年に、不思議系……あぁ、私なんかにはもったいない人だったんだわ、さよなら!」
オカマちゃんは背景に薔薇と涙の粒を散らしながら、乙女走りで去って行った。
ちゃんと改札で駅員さんに挨拶していく礼儀正しいオカマちゃんだった。
流れる沈黙。
「あ、私は告白とかじゃないんだよねー。ごめん」
「あ、うん」
なぜ目の前の少女(恵)が謝ったのかわからないが、とりあえず佐内は頷いておいた。
「…………ってことは、ナンバー持ち……いや、違うな」
ちょっと不幸系な普通の少年らしかった顔に、ゆるりと笑みが浮かぶ。
「だけど、闇の匂いがするな……どうやらお前らにも、『力』があるのか」
燃え上がるように、彼の体から一気に殺気が放出される。
「っ!」
咄嗟にラーセルとクロトがどす黒いオーラに包まれながら、澄んだ殺気を放つ。害する意志ではなく、傍に寄ることを拒む意志で。
「あっははははははは! やっぱり、俺の一撃で死なないなんてな!」
「――まさか」
「へっ、『コイツ』にそんな、一人でも殺っちまうような甲斐性があるかよ! ブービーくらいで絶望に染まっちまうような男にさ!」
必死に佐内が抑えていたダークネスの力が、ついに現れた強敵との出会いによって溢れ出したのだろう。
けれど――まだ佐内自身の意志は、残っているはずだ。
抗っているはずだ。
だって、殺しを楽しんでいる彼の顔の、左側だけは笑っていない。
楽しげに細められた右目と吊り上がった唇の右端に反して、痛みを耐えるように歯は食いしばられ、眉をひそめている。
「ドライブ!」
充が咄嗟に叫び、手の中にロケットハンマーを呼んで飛び出した。次々に力が解放され、戦場が形成される。
「ブービーねぇ……ここまできたら、運とかいうより立派な個性だよな」
肩を竦めたクロトが、手の中に魔力を詠唱圧縮しながら呟き――諭すように、続ける。
「いつもブービーって……凄い不運と言うか、逆に凄いッスねぇ」
感心したように黒白が呟き、漆黒の殺気を解き放つ。
「ってか、もっと冷静に考えてみろよ。誰か殺して、ブービーじゃなくなっただけでうれしいか? お前もあんな非効率なメモ置いてるぐらいだし、薄々わかってんだろうが!」
光の矢が、クロトの言葉のように真っ直ぐ空気を斬り裂いて飛ぶ。
「ブービー憎しで闇堕ちまでしちまうほど自分を追い詰めちまったお前の気持ちは、正直オレにはわからねぇ」
だが、これだけは言える。
そう、充は言ってハンマーを長く持ち、体を一気に回転させた。
最も効率的に破壊力を高めたハンマーがぶち当たる瞬間、合った視線を充は逸らすまいと力を込めて言い放つ。
「闇に堕ちたその先には、お前が求めているようなものはなんにもねぇ。見て来た俺が言うんだから間違いねぇ!」
腹部を強打されながら、息を吐いたダークネスが笑う。
「こいつは求めてなくても、俺は求めて――」
「だからって、何でも許されるわけじゃない」
言いかけた唇を塞ぐように、黒白がその目前に人差し指を立てた。銃の形にしたそれを向け直し――漆黒の弾丸。
「小張君、人は人を殺してはいけないッス。そんな奴は人として『最低』だ」
その弾丸はダークネスを貫き、その言葉は佐内へと呼びかける。
顔の右側から、笑みが消えた。
「お……れ、は……」
服を引き裂く刃が、湧き起こる殺気が、灼滅者達を傷つけながらどこか戸惑いを含んだものになる。
「何でブービーをそんなに嫌がるん?」
アッパーカットから元の姿勢に戻り、未だ拳に雷の名残を残した恵が、縛霊手の指先に宿した魔力を仲間の回復へと解き放つ。
「そっからまだまだ色んなことができるじゃんさ」
むすりとしたような顔で、陽己は死角から刀を振った。佐内の服と共に、守りが斬り裂かれていく。
「ブービーだからと然程焦る事でも無いと思うがな。むしろ焦って空回るからブービーなんて位置なんだろう」
「んだとぉっ!?」
かっとしたような佐内の視線を、陽己は静かに受け止める。
「然し少年、よく考えてほしい、逆転の発想だ」
糸を優雅に操り結界を構成しながら、ラーセルがにこりと笑う。
「ブービー……転じて最低の一歩手前、底辺と言えば聞こえは悪いが……其れは孤高の存在、達すれば誰も触れられないオンリーワン、永遠のナンバー666(トリプルシックス!)」
「……そ、そう、なのか?」
動揺する佐内の黒死斬を、あっさりかわしてラーセルは深く頷く。
「誰も殺める必要はない。君は既に数値としての頂の一歩手前に居る……!」
あー、うん、そうだよね。
順位の上下と数値の高低を巧みに話題の中ですり替えてるが。
「確かにお前はブービーにしかなれないかも知れない……」
重々しく言ったアレクサンダーの手に、桂浜の鰹節の力が集まる。
「だが逆に考えればお前は必ず誰かより一歩前に行けるという事だ。そう大勢ではブービーでも相手が一人ならお前がトップ!」
愛と共に弾けるご当地ビーム。同時に炸裂するキャリバーからの無数の弾丸。
「逆転の発想すぎだぁぁぁぁぁ!?」
思わずツッコむ佐内。多分ダークネス人格の方。
きゅいーん、と効果音を口で言いながら予知能力を瞳に集めたウツロギは、狙い撃つ、と呟いて魔力を集めたライフルの、引き金を引く。
「例え君が自身をブービーだと思っていても、僕は君をブービーとは思わないし笑ったりもしない。だって、君は何人にも真似することのできない唯一無二の存在、オンリーワンだから!」
最下位でもなくトップでもなく、そして平凡な普通でもない、とウツロギは笑む。
「君だけが持ち、君だけが選ばれた。オンリーワン、カッコイイじゃないか」
「オンリー……ワン……」
「この世には失われようとしているオンリーワンの技術がある。それを救えるのはお前だ!」
騎乗したライドキャリバーの突撃と共に、繰り出す技は魚と猟師の一対一の戦いを示す一本釣りダイナミック!
それでも。
それでも僅かに、少年の心は揺らぐ。
「けど……この力があれば、俺だって……ナンバーを上げて、ブービーから……」
「残念だけどそうはいかないよ」
殺気を放つ寸前、影が佐内を飲み込む。ダークネスを惑わせ、トラウマに染めてウツロギが笑んだ。
「そんな感情に負けてんじゃねぇ!」
槍を回転させ旋風を起こすと同時に、クロトが叫ぶ。
「そのどす黒いもんに勝つ気があるなら、打ち勝つ手伝いしてやるぜっ」
さらに怒りに染まった彼の懐に、恵が軽いステップで突っ込んだ。
「行動次第で何でも出来るって超楽しいし、ブービーから抜け出す為に、思い切って行動しようよ!」
鋼鉄の硬度を持つ拳が、輝くような笑顔と共に佐内の闇を削いでいく。
「っ!」
瞳が光と闇に揺れる。
それでも襲ってきた鋭い斬撃を、陽己は奥歯を噛み締め呻き声一つ洩らさず耐えた。
「……耐える事だ。手っ取り早い手ではなく、より確実に高みを目指す為に」
鋭い一閃から月光の如き裂帛の気が、溜め込んだ佐内の力を振るい落とす。
「恵さん、回復頼める?」
「あいあいさー!」
黒白の言葉に恵がにっこり笑って、縛霊手への祈りを駆使して仲間達を癒していく。
「まずはその殺人衝動に耐えてもらう。……安心しろ、俺でも未だに出来ているんだ」
ぽつりと言った言葉は、想像以上に重い。
己の憧れたる仕事が、食材のように人を解体したいという衝動を伴う事に気付いた痛み。そしてその衝動は未だ陽己を苛み続けている。
言葉を否定するように振るおうとした刃に合わせ、ウツロギが光の矢を放ち牽制する。その間に灼滅者達は、必死に言葉を重ねていく。
「戻って来い! お前が半ば闇に堕ちながらもその力をまだ使っていねぇのは、こんなはずじゃねぇって思ってるからじゃねぇのか!」
ハンマーの後方からロケット噴射が噴き出す。体を豪快に回転させた勢いのまま、充は力を解き放つ。
「ブービー抜け出してぇならよ、努力の方向はそっちじゃねぇだろ! 一人が厳しいなら、オレらが一緒に血反吐はいてやるからよ!」
黒白が大きく頷いた。その素人めいた荒い喧嘩術が、影業によって再現され、佐内に宿るダークネスを切り払う。
「自分は君を人殺しにしたくないし、自分も人殺しになりたくない――だから闇に負けるな、人であることを諦めるな!」
少年が、その殺気を徐々に失っていく。
瞳に、光が戻る。
「さあ、祈れ少年。貴方に宿る闇は……真の孤高を邪魔立てしようと君を今回の行為に走らせた。私達はその闇から君を、救済する!」
十字架から現れる光刃が、爆ぜた。
「ま、仲間になりゃいい。どんな番号でも夜、独りになるし寂しいぜ?」
光の中ラーセルは手を伸ばす。
一瞬躊躇した少年の背を、アレクサンダーの慈悲を込めた頭突きがぶっ飛ばす。
そして当然のようにまとめて転んだ。
重なり合った少年達の中から顔を出した佐内に、黒白がにこと手を出す。
「おかえり、小張君」
照れたように頭を掻きながら、佐内はその手を取った。
「ところで今まではどんなブービー取ったのー!?」
「あー、うん」
恵の言葉に、佐内は吹っ切れたように笑った。
「そうだなー、幼稚園の頃好きだった子とのフォークダンスで、俺より一つ前の奴と踊った所で音楽が途切れたのが最初の思い出かな」
「じゃあ次は、音楽が終わった所で『一緒にどうだい?』って応援席に誘うところからだね!」
一瞬目を見開いた後、爽快な笑い声が弾ける。
「武蔵坂学園ってのは変な奴らがいっぱいいるところだからな。佐内がもし来ることになってもすぐ馴染めそうだ」
クロトがふっと笑えば、佐内がなるほどと頷く。
「類は友を呼ぶってヤツか」
「あ、オレはその変な奴に入らないからな……笑うなよ」
てい、と尻を狙った軽い蹴りを、佐内はひょいとかわした。
「……帰ったら勉強だな。当面はテストでブービー脱出を目指すぞ」
「えええええ!?」
――陽己の先制パンチの方は、かわせなかったようだが。
ブービー少年の新たな道の、始まりである。
作者:旅望かなた |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2012年10月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 17
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