●今こそ、力得し時
大分県は別府市に立する岳、鶴見岳。
別府温泉に近いこの山に、今、続々と、全国各地の源泉地を発ったイフリート達が集結しつつある。
その集まり行くイフリートの一つ。
四肢は豹の如く、補足も筋肉質なイフリートも、その鶴見岳へと向かうイフリートの一つ。
そして……イフリートは鶴見岳の山頂へと到着。
そして。
『イマコソ、ガイオウガノミモトニ!!』
と、叫び、そして咆哮を上げると……イフリートの炎は更に一層燃え上がる。
炎に包まれたイフリートは、炎の塊と化し……そして、そのまま地面へと吸い込まれ、吸収されていった。
「皆様、お集まり頂きありがとうございます。早速ではありますが、私からご説明させて頂きます」
と、野々宮・迷宵は、集まった灼滅者へ深く一礼すると、早速説明を始める。
「皆様の決断したサイキック・リベレイター。これによるガイオウガの復活を感じとったイフリート達が、鶴見岳へと向かっています」
「各地より姿を消したイフリート達は、この鶴見岳に向かい、山頂で自死し、ガイオウガの力と合体しようとしている様なのです」
「このままイフリート達が、ガイオウガと合体を繰り返して行けば、ガイオウガの力は急速に回復し、完全状態で復活するかもしれません。それを阻止する為に、皆さんには鶴見岳にてイフリートを迎撃し、ガイオウガへの合体を防ぐ必要があるのです」
「皆様が相手する事になるイフリートは、豹の如くの四肢をしたイフリートです。このイフリートはとても素早く、鶴見岳のその地へと向かっています」
「恐らく、その地へと到着するのは夕陽の落ちる頃……山頂へと続く登山路に張り込むことで、恐らく夕方の頃には対峙出来るでしょう」
「イフリートを灼滅する事が出来れば、ガイオウガの力を増す事を阻止する事が出来ます。ですが、合体しガイオウガの一部となるイフリートは、その経験や知識をガイオウガに伝える役割もある様です」
「学園に友好的なイフリートであれば、ガイオウガへの伝言を伝え、敢て阻止せずに合体を行わせるという選択肢はあるかもしれません。この場合、迎撃ポイントで接触した後、イフリートとの友好関係を深めたり、伝えたい内容を確実に理解してもらう、という準備が必要になるかと思います」
「とは言えイフリートとの交渉が無くとも、イフリートを灼滅する事がガイオウガの力を増すことに対する直接的な対策であるのは間違い在りません。どうするかは、皆様の間で良く良く相談して頂く様、お願いします」
そして、迷宵は最後に。
「多くのイフリートが語っていた、ガイオウガと一つになるという事……それは、この事だったのでしょう。その自体が、今怒ろうとしています。皆さんの力、貸して頂けるよう、宜しくお願い致します」
と、再度深く一礼するのであった。
参加者 | |
---|---|
近衛・朱海(煉驤・d04234) |
大和・蒼侍(炎を司る蒼き侍・d18704) |
鹿島・悠(常笑の紅白・d21071) |
霧亜・レイフォード(黒銀の咆哮・d29832) |
二荒・六口(ノクス・d30015) |
●力の塊
別府温泉にほど近い鶴見岳。
美しい山麓に向けて、一匹、また一匹とガイオウガ復活のために集結しつつあるイフリート。
灼滅者達は、そんな集結しつつあるイフリートを退治する為に、夕刻の鶴見岳へと急ぎ、向かっていた。
「しかし……思ったより、早い対決になりましたね。まぁ……これが学園の総意ではありますが」
と、鹿島・悠(常笑の紅白・d21071)が呟く一言に、霧亜・レイフォード(黒銀の咆哮・d29832)も。
「そうだな。このまま放置しておく必要性は無いだろうしな……」
「ええ……話し合いは、大将が目覚めるまで後回し。目覚めた直後に力へ溺れさせない事が、一方的に情報を押しつけるよりも重要でしょう。ガイオウガに力を与えても良い、などと、こちらが上に立てると思わない方が、ね……」
と、そんな悠の言葉に対し、近衛・朱海(煉驤・d04234)と二荒・六口(ノクス・d30015)の二人も。
「そうね。どのみち死ぬ相手だけれど、みすみすガイオウガの糧にされる訳にはいかないわね。分かり合うつもりなんて無い。イフリートを斃す事が、私の生きる意味なのだから。私がこの手でガイオウガより先に冥土に送ってあげるわ」
「うん。何れ復活する恐れがあるのなら、その憂いを少しでも断つ事に全力を尽くそう。クロキバなら現状をどうとらえただろうか……やはり己と仲間の自死を選ぶのか、それとも別の方法を選ぶのか……な」
顎に手を当てて想像する六口に、レイフォードは。
「どうだろうな……これがイフリート達の、ある意味暴走であればいいのだが……な。まぁ、何にせよ、イフリートを退治しよう」
それに大和・蒼侍(炎を司る蒼き侍・d18704)が。
「ああ……」
(「……今回のイフリートが、果たして仇かどうか……仇であればいいのだがな……」)
仇である事に対する期待を覚えながら、灼滅者達は急ぎ、鶴見岳を登るのであった。
●岳に飛び
そして、イフリートの居る鶴見岳を登り始める灼滅者達。
夕陽が堕ちる頃の前に、迷宵から言われた待機場所に到着すると、すぐ、そこでイフリートを待つ。
……勿論、登山路故に、いつ一般人がやってくるかも解らない為、蒼侍が殺界形成を発動し、一般人を排除。
又、足元を固めるために、編み上げブーツ等、足元もしっかりと固めて待ち構える。
そして……空がゆっくりと暮れゆく頃合い。
(「やはり俺には、説得より灼滅の法が性に合う」)
と蒼侍は、静かに考えながらも、登山路を見つめて、イフリートを待つ。
……すると。
『グゥゥオオ……!!』
咆哮を上げて、山を駆け上るイフリートの姿。
登山路を登るイフリートは、何かに迫られるが如く。
そして、目の前に居る木々を、全て体当たりで薙ぎ払うようにしながら……灼滅者達の所へと辿り着く。
立ち塞がる灼滅者達に、ウグゥゥゥ、と更に咆哮を上げて威嚇する。
……その威風堂々たる咆哮に、一般人であれば泣き叫び、逃げていくだろうが……立ち塞がるのは、灼滅者達。
そんなイフリートの姿形を見定めて。
(「……違うか……流石にそこまで都合よくは行かないか……」)
と、蒼侍は僅かに肩を落とす。
が……すぐに気を取り直して。
「これ以上厄介事を増やさない為にもここで斃す」
と気合いを込めると、朱海、レイフォードも。
「何匹かは見逃されるんでしょうけど……出会った相手が悪かったわね。貴方達を前にして平静でいられる程牙は抜けちゃいないわ」
「そうだ。力の糧にはさせんぞ、ここで灼滅する! 仕掛けるぞ、行くぞゼファー!」
と叫びながら、早速レイフォードは、ライドキャリバーのゼファーをキャリバー突撃で嗾ける。
不意の一撃、流石にイフリートは豹の如き身のこなしで、その一撃を躱す。
「ちっ……中々素早いな」
と舌打ちしつつ、六口は降り立つ所にレイザースラストを放つ。
そのレイザースラストは、軽くイフリートの足を斬り裂く。
更にレイフォードもレイザースラストで、スナイパー効果と共に斬り付ける。
流石に素早いと言えども、スナイパーの高命中力では、当らないという事は無い。
僅かに身を逸らし、真っ正面からの直撃は避けるものの……中々大きめのダメージを喰らう事となる。
そして、更にクラッシャーの蒼侍、悠二人がイフリートに近接し、黒死斬とグラインドファイアで、更に炎を重ねて付与為ていく。
大量に付与された炎が、元々持って居た炎と相俟って、更にイフリートは燃え上がっていく。
『グ、グゴォォオオ……!!!』
と、更に咆哮を轟かせて、四肢を大きく振るわせながら、反撃。
そんなイフリートに、朱海と悠のビハインド、十字架がディフェンダー効果を発動し、仲間のカバーリングを取る。
カバーリングし、受けたダメージは、即座に朱海の霊犬が浄霊眼で回復。
「ありがと、無銘」
と朱海が霊犬に声を掛けつつ、朱海がレーヴァテイン、十字架は霊撃、と続けて攻撃していく。
……そんな灼滅者達の猛攻と、イフリートの対峙。
その強さは、ほぼ互角といった所だろうか……たった一体ではあるが、剥いた牙は決して挫けることは無い。
……そして、イフリートは続くターンも、咆哮を上げての突進、牙、爪の一閃を喰らわせてくるのに対し、レイフォードと六口が零距離攻撃と鬼神変で体力を削り、蒼侍、悠がティアーズリッパー、レーヴァテインで更に炎。
朱海、十字架、ゼファーのディフェンダー陣が、イフリートの動きを牽制しつつ、霊犬がそれを回復する……という役割分担で、イフリートを包囲、削り続ける。
イフリートも、その豹の如き身のこなしで、灼滅者達を苦しめようと動き回るが……灼滅者達の気概の方が、一回りも、二回りも上回っていた様で、イフリートは苦戦。
そして、十数分の猛攻が、イフリートに炎や足止め、服破り等のバッドステータスを重ねていき……既に見た目ボロボロのイフリート。
『グ、ガア……』
と、金色の瞳が、灼滅者達を睨みつけるが……。
「……イフリート。貴方は、何故ガイオウガの為に自死を選ぶ?」
と朱海が問いかけるが、イフリートは答え無い。そして悠が。
「ガイオウガと逢う事があれば、勇敢な戦士の名を伝えよう」
と更に言葉を加えるが……イフリートは、ただただ、攻撃を嗾けるのみ。
そして……。
「答え無いか……ならば、ここで確実に倒すのみだ」
とレイフォードの言葉に頷く六口。
「ああ……これでも、喰らえ!」
と、六口が放った神薙刃が、イフリートを大きく傷付けていき……大きく体勢を崩す。
そして、そこに蒼侍が。
「イフリートは……全て斬る!」
と、全力を込めた居合斬りの一閃を叩き込み……イフリートは、一刀両断に崩れ去るのであった。
●炎の消痕
「……ふぅ」
と、降ろした刀を引き上げ、息を吐く蒼侍。
……目の前には、斃れたイフリート……ただ、程なくして、その姿は霧の如く、消えて言ってしまう。
そんなイフリートの消えゆく痕跡に。
「……イフリートよ……」
と、ぽつり呟きつつ、眼を閉じ、冥想する蒼侍。
その横で、朱海も。
「しかし……イフリートが挙って命を捧げるガイオウガ……これが奴らの本能なのかしら。それとも、ガイオウガの力なのかしら? いずれにせよ……私が必ず斃してみせる。イフリートは、全て……」
と呟きつつ、拳を握りしめる。
……そして、イフリートの遺す、燃やした痕跡を一通り片付けて……早々に、其の場を後にするのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2016年7月22日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
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