●闇の畏れに彩られし恐怖
夜半の刻……岐阜県某所の山中。
鬱蒼と生い茂る森の一角にある、既に遥か過去からあり、今ではその跡形も無い古城のお掘がある。
「なんだかコワイ雰囲気ねぇ……しかしもう秋なのに、怪談スポットに行きたいってどういうつもりなのよ?」
「いや、だってよ、季節外れの怪談話ってのも面白くね? あ、怪談話って言うよりは都市伝説かもしれないけどよ」
「まぁ……別にいいけどね。それで何よ?」
「ここ、すごく昔は古戦場だったんだけどさ? そこに落ち武者の幽霊が出るって話なのさ。どう思うよ?」
「んー……まぁ、そうねぇ、そういうのも面白いんじゃないかしら?」
と笑う彼女……と、その時。
『……う、うぅぅ……』
呻き声が、突如響き渡る。
振り返ると、そこには……血だらけで空虚な視線を浮かべる男が数人。
そして……。
『……コロスコロスコロス!』
その声と共に、血だらけの刀を振り落とし、二人を市へと至らしめるのであった。
「えーっと……みんな集まってくれたみたいだね? それじゃ説明、始めるね!」
須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)は、集まった灼滅者達へ元気よく声を上げて説明を始める。
「今回みんなにお願いしたいのはね、とある都市伝説を解決してきて欲しいんだ。場所は岐阜県のとある古城跡……ここだよ!」
と地図を指し示した彼女。
既に遥か過去の遺産となったその場所に、落ち武者と思しき者達が現われた……というのだ。
「ここに現われた都市伝説の落ち武者は、既に二人の人達を被害に遭わせてしまったんだ。これ以上の被害者を産み出す前に、皆の力でこの落ち武者を倒し、都市伝説を消え失せた伝説にして欲しいんだ」
そして、続けてまりんは、詳しい落ち武者の情報を告げていく。
「この落ち武者は、主となる攻撃手段はその刀による至近距離からの攻撃。基本的には近接攻撃しか出来ないんだけど、その一撃一撃がかなりの大打撃になると思う」
「また、この落ち武者の数は3人……個々の実力もそれなりに高い。足場も悪い山中……それに現われる時間は深夜だから、周囲は真っ暗闇の筈だよ。だから下手に油断して掛かれば返り討ちに遭うかもしれない……その辺りを良く念頭に入れた上で、作戦を考えてね?」
そして、最後にまりんは。
「被害者の遺族の為にも……みんなの力で、絶対倒してきて!! 宜しくお願いするね……きゃっ!?」
と拳を振り上げたら、いつもの様に足を滑らせてずっこけてしまうのであった。
参加者 | |
---|---|
月瀬・一沙(月瀬流二十一代目・d00669) |
熾鶴・凌夜(焔光・d02713) |
星山・聖奈(支援者・d04541) |
雪柳・朝嘉(影もぐ・d04574) |
久遠寺・ほのか(赤い目のうさぎ・d06004) |
メアリ・ミナモト(は明るく元気に空を飛ぶ・d06603) |
佐之蔵・水衛(うたかたの光・d06987) |
アリス・ドルネーズ(バトラー・d08341) |
●古城に宿る
まりんからの事件解決依頼を受けて、岐阜県の山中にある、とある古城への道のりを歩く灼滅者達。
周囲は暗闇……そして恐ろしげな雰囲気を感じるその道のりの中、ぽつりとアリス・ドルネーズ(バトラー・d08341)は。
「しかし鎧武者の亡霊ですか……昔の日本を思い出しますね」
と呟く。
現われると言われる相手は、落ち武者の姿。
恐らくこの古城にて、昔々に死を迎えてしまった者達なのだろう。そしてその落ち武者は今、都市伝説の姿を借りて刃向かう者達を薙ぎ払おうとしている。
「秋の夜長に亡霊退治、と……これもまた、風情の一つかしらね?」
「そうだねー。誘われ出て来る亡霊武者かぁ……怪談ドストライクだよねぇ~♪ あれ、そっか、今回は都市伝説だったっけぇ?」
「そうね、都市伝説……まぁやることはそんなに変わる事は無いんだけどね」
月瀬・一沙(月瀬流二十一代目・d00669)に、空飛ぶ箒に乗りながら進むメアリ・ミナモト(は明るく元気に空を飛ぶ・d06603)は屈託の無い笑顔で笑う。
でも余り笑っても居られない……相手は強力な敵であると言われたのは耳に残る。
こちら、灼滅者側だって、下手すれば返り討ちに遭う可能性は充分にある訳で。
「……今回の相手は個体能力の高さとか、危険度は今までの依頼の中で一番高いから緊張するわね……でも、自分がどこまでやれるのかは気になる……」
「ええ……私、灼滅者として初めての戦いなんです……だから、何としてでも落ち武者を倒さなければいけませんわ。皆さん、怪我したらしっかり治してあげますから、安心して下さいね?」
久遠寺・ほのか(赤い目のうさぎ・d06004)に、星山・聖奈(支援者・d04541)がにっこりと微笑むと。
「うん。これ以上被害を出さない為にも頑張らないとね!!」
「そうだね。今できる全力で奴らを倒す! それが、被害者への弔いになると信じて!!」
「ええ……戦います。これ以上の被害を出さない為にも……」
雪柳・朝嘉(影もぐ・d04574)、熾鶴・凌夜(焔光・d02713)、佐之蔵・水衛(うたかたの光・d06987)らも、そんな威声を張ると。
「では皆さん……既に時代遅れとなってしまった骨董品を、速やかに処分する事としましょう」
アリスが纏める様に頷いて……そして灼滅者達は、その古城の敷地内へと到着するのであった。
そして目の前にあるお堀。
無論今となっては、その影もない……唯一少し窪んでいる事だけが、その印だろうか。
「……うん、言われたとおり、真っ暗だね。目の前もよく見えない程暗い」
「そうだね……っと」
朝嘉に頷きつつ、凌夜がランタンのシェードを開く。
光源がその場に展開すると共に、周りがやっとよく見えるようになる。
しかし……不気味な雰囲気は変わる事は無いし……思えば霊の気配も充分に感じ取る事が出来る。
「……近くに居るのは間違い無いみたいだねぇ?」
「その様ね……うん」
メアリに頷く一沙。そして彼女はスレイヤーカードを掲げ。
「意を一にし、心を専らにす」
と、スレイヤーカードを解除。
そう、ここはもう既に彼らのテリトリー内。
いつ出てきてもおかしくは無い……だからこそ、一際周囲へと注意を張り巡らせる。
「火継……一緒に行こう」
と水衛も、己のスレイヤーカード解除と共に、火継を現われさせる。
そして準備を整えたところで。
「……こっち……? 行くわよ」
気配と感じる感覚を頼りに、ほのかが方向を指示し、進むのである。
●古の恨昔
そしてテリトリー内に入り、数分。
当然やってきた灼滅者達の気配は、中に居る彼らからすれば侵入者であり、その気配は容易に知れる。
『……う、うぅぅぅ……』
「……!」
呻き声……その声は誰の耳にも届く。
一端足を止め、周りを確認。
夜中の静けさの中に、周囲に生い茂る木々がカサカサ……ガサガサと揺れる音。
緊張は最高潮に達し……そして。
『……コロス、コロスコロスコロスゥゥゥ……!』
その木々の間から仕掛けてくる彼ら……その一撃を、咄嗟に一沙が防御態勢で抑えつつ、立ち塞がる。
「現われましたわね……スレイヤーリミットリリース!」
「うん。援護よろしくね! 影もぐ!!」
聖奈と朝嘉も……残る全員がスレイヤーカード発動。
更に。
「アリス・ドルネーズ。九条家執事兼、九条家ゴミ処理係……お前達に祈る神などいないのだろう。命乞いをする間もなく、殺してやる」
と宣戦布告。
そしてすぐに、一沙、朝嘉、ほのかの三人が落ち武者へ対峙。
その後ろには聖奈が抑え役の回復役として立ち構える。
「フローレン、朝嘉さん達の所に行って上げて!!」
「……火継、抑え班をお願い……」
と、メアリのライドキャリバー、フローレンと、水衛のビハインド、火継らも、押さえ役の三人を守る様に、それぞれの位置に立つ。
それぞれの落ち武者をツーマンセルで一体相手にする形となる。
一方、残る凌夜、メアリ、水衛、アリスの四人は。
「抑え役配置完了……だね」
「そうですね。では残る相手から仕掛けましょう」
「了解。二人ともサポート頼むよ!」
凌夜とアリスはそんな会話を交しつつ、相手する落ち武者の元へと接近。
『ウゥゥ……コロスコロスコロスゥ……!』
呻き声というか、恨みを込めた怨恨の言葉を紡ぎ続ける彼ら。
そんな彼らの動きはそこまで素早くは無い……しかしながら、振り回す刀の太刀筋は素早い。
そしてその太刀筋は……重く、激しい。
「っ……重い一撃だね」
「大丈夫?」
「うん、どうにかね」
聖奈にニコリと微笑む朝嘉……奴らの攻撃力は高いが、防御態勢を取れれば一撃で重傷なんて真似にはならなさそうではある。
とは言え油断は危険。もう一体の落ち武者が、フローレンに向けて攻撃。
「えへへ、外見はノーマルでも中身はレベルが上げてあるんだよ!! さあフローレン、きっちりお仕事こなそうね♪」
メアリの言葉に応えるように、ブゥン、とエンジンをふかすフローレン。
そして残るもう一体の落ち武者に、抑え班外の者達がつくと。
「それじゃ展開するよ!」
一沙が鏖殺領域をその場に展開。ほのかも己にヴァンパイアミストで強化。
対し朝嘉はまずはトラウナックルで攻撃。フローレン、火継の二体はそれぞれ積極攻勢で攻撃を行う。
残る聖奈は、抑え班の体力の減り具合を見定めつつ。
「朝嘉さん、回復しておきますね」
と、聖奈はエンジェリックボイスでダメージを回復し、全快させる。
抑え班が狙うのは、ともかく撃破班が相手を倒すまでの間、残る落ち武者達を引き付けること。
攻撃よりは、防御、回避に重点を置いて、彼女らは立ち回る。
その一方、撃破に振るう四人は。
「こっちは任せろ!」
「了解」
と凌夜がアリスに言いつつ、前方を凌夜、メアリ、水衛の三人が扇形で包囲。
「さぁ行くよ!! 魔弾よ、彼の地へ走り爆ぜるんだよ!!」
メアリがマジックミサイルで攻撃すると、凌夜が敵の注意をこちらに引き付けるように。
「よそ見してるんじゃないぜ!」
と大きな動きと共に、黒死斬。
そんな二人の攻撃をうざったく感じ、当然落ち武者は攻撃の手を……至近にいる凌夜に向けて振り落とす。
全体重をのせたその一撃。
「っ……!」
その攻撃に対し、アリスが鋼糸を巻き付け妨害しようとするが、遥かに重い体重を乗せた一撃は、その鋼糸すらを引きちぎる。
「くそっ……重てぇな!!」
そしてその一撃を斬艦刀で受け止める。
どうにか耐えたものの、やはりその攻撃力はかなりのもの。
「……あの攻撃……まともに受けたらひとたまりも無いですね……」
「そうだね……うん」
「……でも、仲間を倒させるワケには行きません。どうか、頑張って下さい……」
メアリと会話しつつも、水衛はジャッジメントレイで凌夜を回復。
そしてアリスは目線で仲間達と会話を交す。
次のターン……今度はアリスがすぐに動く……再度放つ鋼糸。
勢いの無いまま、彼の手をぐるぐる巻きに絡みついていく。
「……鈍い。幾ら一撃に秀でていたとしても、これでは脅威にはほど遠いだろう」
アリスの冷静に言い放つ一言。
落ち武者はその拘束を逃れようと、力尽くで引きちぎろうとするが……勢いのないままでは中々引きちぎれない。
そしてそう蠢いている最中に、凌夜が攻撃……そして斬弦糸を引きちぎった落ち武者の攻撃をまた防ぐと共に。
「無理は禁物だよ、回復は任せて♪ 頑張って今届ける、この癒し、飛んでいけ!!」
メアリも癒しの矢で回復し、対し水衛は制約の弾丸で、彼からパラライズを叩き込む。
そして次のターン……パラライズ効果に加え、アリスが今度は。
「不死身のフリークスなどいない。来い、くたばるまで殺してやる」
と放つ黒死斬。凌夜が連携し、彼はティアーズリッパーで攻撃。
前後両面からの攻撃に、致命傷とは言えないまでもかなりのダメージを喰らう落ち武者。
唯回復などはせず、落ち武者は一心不乱に灼滅者達を攻撃し続けていく。
「攻撃こそ生きる道か? まぁそれもカッコイイのかもしれないが……な」
そして4ターン目。
アリスが。
「チェックメイトだ!」
鋼鉄拳を後背から叩き込むと、前方に前のめりになったその身体へ。
「いい加減、お前たちの属するべき世界に帰りな!!」
凌夜が渾身の森羅万象断を叩き込み……まずは一体倒れる。
「よし……次に行くぞ。ほのかの方だ!」
ターゲットをすぐに、ほのか、フローレン、火継の相手するもう一体の落ち武者へ切り替える。
「……ありがと……でも、私は、まだ倒れない……っ」
「余り無茶、しないで下さい……聖奈さん、そちらは一沙さん達をお願いします」
「分かったわ」
ほのかの言葉に水衛が一言掛け、聖奈にもう一班の回復を依頼。
もう一体の落ち武者は、ほのかの攻撃により多少ダメージは進んでいるが、半分より少し手前と言ったところだろうか。
「でも……ふふ……もう少しで壊れるの……?」
ほのかは、先ほどまでの戦いから、ほんの少しの楽しさを感じていたのかも知れない。
とは言え体力をすぐに水衛に回復して貰い、そして凌夜、アリスと連動しての攻撃を行う。
「……縛る!」
アリスが封縛糸を放つ……が、その攻撃が回避されると。
「ふむ、やはり実戦では中々思い通りにはいかない、というワケか……」
「少なくともこっちより実力は上だからな……ほのか、行くぜ!」
「ええ」
頷きながら、凌夜のレーヴァテインに、ほのかが紅蓮撃によるドレイン。
ターンが変わればロケットスマッシュ、ティアーズリッパーも絡めていき、怒濤の猛攻を仕掛けて行く。
防御態勢を半ば捨てて、ゴーストの体力を確実に削るように攻撃……メアリ、水衛の二人による回復が生命線となって、二体目の敵を3ターン程で灼滅する。
そして……残るは一体。
「良し、最後の相手にいくぜ」
「うん!!」
メアリが頷き、残る鎧武者一体へ完全なる包囲網を築く。
前方だけではなく、横からも、後方からも攻撃を受ける状態となれば、落ち武者も満足な防御を取れる訳が無い。
「やっぱり守りって性に合わないわ。武は攻めよね!」
「そうだね!」
一沙に笑顔と共に頷く朝嘉。
回復役であるメアリ、水衛、聖奈を除く、5人と二体による猛攻が一挙に落ち武者を責め立てていく。
そして2ターンで、既に瀕死状態に陥って。
「さぁ……これでトドメだよ!」
朝嘉はそう言うと共に、落ち武者の真っ正面から懐に入る。
そのまま刀を振り落とされれば大ダメージは免れないが……その動きよりも素早く。
「せーのっ!!」
そう言いながら、敵を掴んで地獄投げを喰らわせる。
落ち武者の身体は放物線を描きながら地面へとたたき落される。
『ウアァアアアアア……!!』
そして断末魔の叫び声を聞きながら、落ち武者の身体は消え去っていった。
●闇の境界
「……終わったみたいだね。みんな、お疲れ様!!」
そして、全ての落ち武者の霊の姿が消え去ったのを確認すると、聖奈が労いの言葉を掛ける。
「うん、お疲れ様……ふぅ、強かったけど、なんだかたのしかったわね」
「そうだねぇ……みんな無事だよね?」
「ええ、大丈夫よ」
一沙と聖奈がそんな会話をする……一方。
「しかし……都市伝説で発生したとはいえ……この世に一度は生じた存在なのですよね……犠牲となった方々と共に、どうか浮かばれますよう……」
そう言いながら、弔いの祈りを捧げる水衛。
……祈りを捧げると、またその場は一切の静けさに包まれる。
他の仲間達も、自然にその祈りに合わせて手を合わせる。
……そして、数分の祈りの後。
「……さて、と。それじゃ一段落したし、帰ろうか。何か岐阜のお土産でも買って、ね♪」
一沙の言葉にくすりとみんな笑いつつ。
「そうですね。もう此処に居ても何も無いでしょうから……帰りましょう」
アリスが促し、そして灼滅者達は、落ち武者の消えた古城を後にするのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2012年10月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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