星空が見守る、夜のローカル駅。
天草・日和(深淵明媚を望む・d33461)とその仲間達は、無人となったホームに集結していた。
「このローカル線に、痴漢のおっさんしか居ない満員電車が現れるという話なのだ」
都市伝説『満員電車おっさんズ』。
うっかりその車内に足を踏み入れたが最後、酷い目に遭う。かりに1人1人がマイルドでも、10人単位で触りに来たら、そりゃあ気持ち悪いし、腹も立つというもの。
しかし安心して欲しい。命までは取られない。
……そういう問題ではない。
「何たるおぞましい都市伝説か。これは制裁決定であるな」
しかも女の子はもちろん、男の子でもお構いなし。こっそり痴女が混じっているからだ。怖い!
「まずは、噂にある午前0時まで、その電車が来るのを待とうではないか。現れたら全員で車内に乗り込み、タイミングを見計らって内部から制圧してしまおうと思うが、どうであろうか」
この電車は、出発後、少し走ったところで停車し、中のおっさんたち(数十人)が痴漢行為に及んでくるという。
基本的には、触られそうになったところで、反撃してしまえばいい。万が一触られても、ダメージなどのデメリットはない。不快なだけで。……それが一番のデメリットですね。
日和が調べたところによれば、車内のおっさんは全て都市伝説の分身。
こちらが戦う姿勢を見せて追い詰めれば、戦闘力を集中させるため、1人の痴漢に融合するらしい。
「盗撮用の携帯電話を持っている程度で、特に武器を使うという事はないようであるな」
基本的には自分の手を使ってくるから、縛霊手のサイキックあたりを想定しておくと良いのではないか、と日和は見ている。
「たとえ都市伝説であろうと、痴漢なんかに負けやしない!」
ぐぐっ。日和が、拳と決意を固めた。
しかし、どこかフラグめいて聞こえるのは気のせいだろうか……。
参加者 | |
---|---|
柳谷・凪(お気楽極楽アーパー娘・d00857) |
風真・和弥(風牙・d03497) |
鷹合・湯里(鷹甘の青龍・d03864) |
水走・ハンナ(東大阪エヴォルヴド・d09975) |
不渡平・あると(相当カッカする女・d16338) |
深夜白・樹(心は未だ薄氷の上・d32058) |
天草・日和(深淵明媚を望む・d33461) |
楯無・聖華(白熱の喧嘩少女・d35708) |
●暴走痴漢列車、襲来!
「ひでぇ、ひでぇよ!」
無人の駅ホームに響いたのは、不渡平・あると(相当カッカする女・d16338)の叫びだ。
「深夜で満員電車とか、満員乗客全部痴漢とか! 一体どこをどうやって考えるとこんなケッタイな都市伝説になるんだよバーカ!」
「同感ね。同乗したら男でも女でも地獄でしかないじゃないのよ。全く、噂を流した輩の頭ン中を見て………いや、なんか恐ろしそうだからいいわ」
不穏な思考を強制終了する水走・ハンナ(東大阪エヴォルヴド・d09975)。
思いの丈をぶちまけたあるとは、一旦クールダウン。
「ふう……とにかくほっといても迷惑になるだけだしな……。しっかりとぶちのめしてやるか!」
「こんな子供の教育に悪そうなものは叩き潰すまでね。ええ、全力で」
「皆さんの言う通り、どう考えてもあぶなすぎる都市伝説です……! これは私たちがなんとかして被害が出ないようにしないといけませんっ!」
ハンナ達に頷き、深夜白・樹(心は未だ薄氷の上・d32058)が、「頑張ります!」という感じで、拳をぎゅっとした。
楯無・聖華(白熱の喧嘩少女・d35708)も、変態は好むところではない。むしろ大嫌いだ。いかに数が多かろうと、成敗する気満々である。
「全く、噂は噂のまま、大人しく立ち消えてくれればよかったものを……」
鷹合・湯里(鷹甘の青龍・d03864)も、残念そうに頭を振る。
「こんな危険な存在を放置しておくわけには行きませんね。痴漢なんかに絶対、負けたりはしません!」
しかし同時に、湯里には、嫌な予感がまとわりついて離れない。
灼滅に燃えるのは、天草・日和(深淵明媚を望む・d33461)とて例外ではない。
「おっさん1人だけでもアレなのに、それが列車の車両内に満載だと!?」
そうそう、灼滅者なら許しておけませんよね。
「……正にご褒美である」
台無しだよ!
よってたかってフラグを立てに行くスタイル。もはや耐震性は抜群である。
モチベーションの高すぎる仲間達をなだめたのは、風真・和弥(風牙・d03497)だった。
「みんな、あんまり気張りすぎるなよ。ただの痴漢集団の都市伝説みたいだし、面倒な条件や妙な能力がある訳でもなさそうだしな」
……フラグMAX。
すると、線路の向こうから、ライトが近づいて来た。時刻表には載っていない謎の列車。
何やら素敵感漂うが、どっこい、こいつは地獄行。
「痴漢なんて、ヒーローの僕が許さないのだ」
停まった車両のドアが開くなり、果敢に乗り込む柳谷・凪(お気楽極楽アーパー娘・d00857)。
「……ったく、もう空気が異様だな」
あるとが、顔をしかめた。加齢臭がひどい。
おっさんおっさんおっさん、痴女を挟んでまたおっさん。おっさんのゲシュタルト崩壊。
アナウンスもなく、再びドアが閉まると、電車は出発した。ある意味、地獄へ向けて。
●世紀末的無法地帯!
車輪と線路の奏でる独特のリズムを聴きながら、周囲の様子をうかがう樹。
おっさんたちはスマホをいじっていたり、寝ていたり、スポーツ新聞を読んでいたり。割と普通だ。しかし時折感じる視線には、下心がチラリ。
少し走った後、電車は緩やかに停車した。その途端。おっさんたちが遂に牙を剥く!
「飛んで火にいる何とやらとはこのことだよ、お嬢ちゃん達!」
「もうね、さっきからうずうずしてたんだ!」
「そこの巨乳の子、君に決めた!」
下心全開の視線と共に、一斉に襲い掛かって来る!
「痴漢はまっすぐ全力でぶっ飛ばすのだ」
やられる前にやれ。その精神を胸に、凪がおっさんたちへと突っ込んでいく。
「やーい変態ども、あたしのケツに触ってみな! 股座を蹴り上げてやるよ!」
聖華の挑発を受け、一部のおっさん達がそちらに殺到した。
本人は色気がないと思っているようだが、タンクトップにジーンズという格好もまたそそるものがあるのだ! むしろ大好物です!
「男、男よォー!」
更にこちらでは、飢えた痴女が、和弥にむしゃぶりつこうと迫ってきた。
「女の子ばっかで、危うく出番がないかと思っていたわー!」
よかったね。
「こっち来んな」
「いやぁん」
和弥に突き飛ばされた痴女は、あっさりとおっさんズの群れの中に消えていった。
その後、彼女の姿を見たものはいない。
「みんなは、大丈夫か?」
全然大丈夫じゃなかった。
「さあ、いい声で鳴いてみせろっ!」
「ひぎぃ! 撫でられた所熱いのぉ!」
待ってましたとばかり、日和が嬌声を上げる。
強引に腕を押さえられる樹。抵抗するものの、いかんせん、多勢に無勢。
「おいお嬢ちゃん、下に何も着けてねぇじゃねぇか。こうされるのを期待してたんだろ?」
「そ、それはっ……その……ひうっ!?」
頬を染める樹へと、おっさん伝家の宝刀・盗撮用携帯電話が向けられる!
「ふ、服の下、映さないで……ひゃあっ!?」
一方、湯里も手足を封じられ、自由を奪われる!
そして、ハンナやあるとも、次々に……ッ!
色々な意味で危険なので、しばらく音声のみでお届けします。
「や、やめて……! あひぃっ! だ、だめ……そんなの……ッ! ひぎいっ! はひいっ! も、もうらめ……」
「ひいっ?! ちょ、さらに手を……ひゃうっ! そ、そこは……ッ! や、やめて……!も、もうだめ……ッ!」
「ちっ! 離れろ……! ひいっ! ど、どこ手ぇ入れてやがる! ……ひぎぃっ?! あひぃっ! もうやめ……ッ」
「「「アッー!!!」」」
三重奏。
「痴漢には勝てなかったよ……え? まだ終わらない……? い、いや……ッ!」
湯里が絶望し、
「……もう変態都市伝説なんてやだぁー……もうイヤァ……ッ!」
ハンナが涙をこぼし、
「……ううッ、畜生めー! も、もうカンベンして……ッ!」
そしてあるとが懇願する。
一体何が起こっているのか! きっと『ドキッ! おっさんだらけの大人のおしくらまんじゅう!』的な!
ちなみに食べ物に『大人の』って付けると高級感出るのなんでだろう。
「やはりこうなるのですね……」
湯里の予感は的中した。……いや、わかってたけどね!
おっさんにねちねち責められ続けた凪も、すっかり大変な事に。
「ちょ、そ、そこはダメなんひぃぃ」
様々な熱気のせいで、凪のタンクトップは汗で濡れ透け状態。うっかり破かれようものなら、ポロリ確実。しかも、下着はつけていません……!
「すっかり反応しちゃってるじゃねえか? ああん?」
「そっ、そんな事……!」
涙目で否定しようとする樹だが、身も心もかき回されて、もはや自ら求めてしまいそうだ。
まさにおっさん無双。しかし、希望はまだ失われていない!
聖華が、近づいてくるおっさんを、容赦なく撃退していた。
「おぱいっ!」
「しりっ!」
「ふとももっ」
やられボイスでも趣味嗜好を主張していくおっさん達。
胸やお尻に手が伸びてくる気配を察するや否や、問答無用でぶっ飛ばす聖華。
奮戦しているのは、日和も同じだ。
「おい! 刺激が足りないぞ!」
えっ、そっち?
●電車内はピンク色!
「触るのは好きだけど、触られるのは嫌いなんだよねぇ。ましてやお前らみたいなキモい奴なんか真っ平御免だよ!」
聖華がまた1人おっさんを撃退した直後、仲間の異変を察した。
「……っ、大丈夫!?」
「ぐっ……」
和弥が頭を抱えている。すると、
「俺が、俺達が満員電車おっさんズだ!」
「!?」
突如、和弥が女性陣へと襲い掛かった。かっ、と見開いた双眸は、邪念に囚われている!
おっさんたちの邪気に当てられて洗脳されてしまったなどと本人は供述している!
まさかの敵に、逃げ惑う湯里やハンナ、あると達! しかし、右も左もおっさんだ! 逃げ場はない!
「その乳、もらった……!」
「「「い、いやーっ!?」」」
「変態死すべし慈悲はないっ!」
「ノォーッ!?」
手を伸ばす和弥に、聖華の鉄槌が下された。また1つ悪が滅んだ。
「いつまでもあなた達の好きには……させません!」
ばきー!
樹が、おっさんの携帯電話を粉砕した。
日和もまた、びしっ、と指を突きつけ、
「私は大勢でめちゃくちゃにされるのが好きなのである。もっと激しく濃い! じゃなかった、来い!」
まるで拳と拳のぶつかり合いを望む格闘家のよう。しかしてその実体はドM。
さあ、灼滅者達の演技の時間は終わりだ! 反撃に移る!
……演技……。
……演技なのだろうか……。
「こっ、こいつらなんかやべえぞ!?」
「もっと愉しませてくれよお」
「ならここは……合体だ!」
灼滅者のやる気と実力を察したおっさん達は、リーダー格らしきサラリーマンを中心に、次々と融合を始めた。その過程は、見ていて普通に気持ちが悪い!
ぴかー! ピンク色の輝きとともに姿を現したのは、1人のおっさんだった! 薄毛の!
…………。
それだけ。
「……どうせなら、巨大化するとかしてくれたら面白かったのに……」
和弥が落胆している。おい洗脳騒動どうした。
「うっ、また謎の電波が……!?」
もういいよ。
「莫迦め」
「何い!?」
シンプルな悪口におっさんが振り返ると、人体模型が立っていた。
「戦いは数である。わざわざ1人になるとは自らの利点を理解していない様だな。私の元でおっさんの何たるかを教えてやる!」
『人体模型おっさん』に変身した日和だ! やべえ、おっさんが増えた!
「ハアハア……いいから女子大生とかの柔肌触らせろよお……!」
おっさんの指、一本一本がまるで別の生き物のように蠢く。エローい!
「女ァー! ついでに男ォー! げふっ」
湯里の鬼の腕が、おっさんを天井にめりこませた。
続いて和弥の拳が、おっさんのビール腹を波打たせれば、ダメージジーンズに包まれた美脚から繰り出された凪の蹴りが、おっさんを床に這いつくばらせる。その頭上から、霊犬マトラの刀が振り下ろされた。残り少ない髪の毛と毛根が切断される。
「おいそれレアもんだぞ! 育毛にいくら課金したと思ってんだ!」
知りません、とばかり、樹が交通標識を振るう。もう二度とおっさんの思うままにはならないぞ!
●色々、ダメ、絶対!
「いいよいいよー。即堕ちより、抵抗してくれた方が、おじさん燃えるんだよねえ!」
おっさんの袖口から怪しげな糸が伸びたかと思うと、凪を縛りつけた。先ほどの悪夢がよみがえる……!
「く、こ、これ位の拘束、なんともないんだよ」
悶える凪を救うべく、ハンナがおっさんのデコに十字を刻んだ。罪の証と知れ!
「1人にまとまってくれた方がやりやすいわね!」
のたうち回るおっさんに、あるとが刃を突き立て、精力……もとい体力を吸い上げる。ちょっとやな感じ。
「灼滅してやるっ!」
すっかり広くなった車内を、聖華が駆ける。カミの力を両手に宿し、おっさんを切り裂く!
畳みかけるように湯里の拳が顔面にヒット。ドアに押し付けられたところを、和弥が縛り上げる。
「ひぃっ!? やめて外から見られちゃう!」
誰も見てねえよ。見たくねえよ。
くねくねするおっさんの耳元で、七不思議『天国レスラー』をささやく日和。人体模型とレスラー、夢の競演! ゲストは痴漢のおっさん。
その間に、ダイダロスベルトを仲間に巻き付ける樹。別に、ドMリクエストではない。ディフェンス&ヒール。
「うひひ、じゃあ見せてあげるからね、おじさんの痴漢奥義をッ!」
おっさんのゴッドハンド(五十肩)が唸りを上げた。そばにいた灼滅者達を、次々とエロスパワーが襲う! びくんびくんと反応する体!
「そ、それはらめぇぇ」
またも餌食となる凪。
まんざらでもなさそうなその様子を尻目に、聖華のバベルブレイカーが、おっさんのどてっぱらに風穴を開けた。
「ああっ、なんか涼しい!」
「ほらよ、こいつもお返しだ! バーカ!」
あるとのリングスラッシャーが、おっさんを執拗にストーキングする。因果応報!
その先で待ち受けるのは、ハンナ!
「東大阪市のォォォ科学力はァァァ世界一イィィィ!」
零距離から殴る蹴る。そしてとどめにガン+ナイフ『G.K.』が火を噴いた。
「悪く思わないでよ、これも仕事なんでね……」
「お、おじさん、結構愉しかったよ……?」
なぜか親指立てて笑顔のおっさんを、日和がぬるっと吸収した。
すると、車両が消えていく。気づけば皆は、真っ暗な線路の上に立っていた。
「皆お疲れ様だよ。色々な意味で大変だったのだ……」
凪が、胸元を手で仰ぎながら、ふう、と息をつく。
「早く帰ってシャワー浴びたいにゃぁ」
「本物の終電も過ぎてるだろうし、タクシーでも呼ぶか……?」
和弥が、辺りを見回した。何も、ない。
とりあえず、人里、目指そう。
しかし、夜道をあられもない姿の女子が歩く様子は、さながら痴女の百鬼夜行のようであったという……。
作者:七尾マサムネ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2016年7月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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