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「ハヤク……ハヤク……!! 一刻モ早ク、大地ノチカラヲガイオウガノ元ニ!!」
時刻は午前2時。越後山脈のとある休火山を、一匹のイフリートが荒々しく駆けていた。
白き虎の姿をしたイフリートの全身からは絶え間なく炎が溢れだし、その傍らには巨大な4本の炎の剣が滞空していた。
「キル……キル……!! 邪魔をスルモノハ全テ、キル!!」
とにかく早く山頂へ。イフリートは目の前にそびえ立つ木々を炎の剣を操って焼き斬り、灼熱を纏った突進で薙ぎ倒しながら。一直線に山頂付近まで走り抜けた。
「ガルルルル…………ヤット到着シタカ。サア、ガイオウガ。コノ山ニ眠ル大地ノ力ヲ、全テ受ケ止メロ!!」
イフリートは暗い空に雄叫びを上げると、地面に爪を深く突き立て、自身を中心とした巨大な炎柱を立ち昇らせた。
その炎柱の勢いは、大地の力が集まるにつれて徐々に、際限なく強まっていく。
「マダ……マダダ……!! チカラヲ……全テヲ灰塵ト化ス程ノ、圧倒的ナチカラヲォォォオオオオオ!!!!」
闇に包まれた山頂は眩い光に照らされ、周囲の木々は瞬く間に灰と化していくのであった。
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「ハロー、エブリバディ! 調子はどうだい? 最近は何かとややこしい事態になってるみてえだなあ。サイキック・リベレイターの発動によるイフリート達の活発……だっけか? まあとにかくそんな中、オレにも見えちまったぜ……ソードマスター・イフリートって奴がな!」
桜庭・照男(高校生エクスブレイン・dn0238)が完璧なヘアメイクの最中見たという予知の情報を、灼滅者達に伝えていく。
「奴は自分達のボスであるガイオウガへ大地の力を送る為に、越後山脈のとある休火山の山頂に訪れて、炎の力を使ってるみたいだ。奴の魂の叫び、そして闇の中立ち昇る炎柱からは中々の美しさを感じたが……どうやら、そうも言ってられねえみたいだ」
このままイフリートを放置すればガイオウガの復活が早まるだけでなく、日本全国の火山が一斉に噴火する、といった事態が発生する可能性もあるらしい。
「流石にそれは見過ごせねえ。そうなる前に、休火山に姿を表すイフリートと一発バトってきて欲しいんだぜ!」
照男はまあそれなりに様になっているポーズをビシッと決めると、今回灼滅者達が相手するイフリートに関する説明に続いた。
「ソードマスター・イフリート……ってのは俺が勝手に付けた名前だったな。奴の名前はガウリー。デカくて白い虎の姿をしたイフリートで、見た目に違わずとても凶暴な性格をしている。だが何より特徴的なのは、奴が操る炎の剣だぜ」
ガウリーは自身の側に4本の炎の剣を生成、滞空させており、戦闘時にはその剣を駆使して素早く予測が困難な炎の斬撃を次々と放ってくる。
「予知ではちょっとしか見れなかったが、中々美しい剣捌きだったぜ。スピード、火力、美しさの3点すべてが揃っててな。まさにソードマスター! って奴だったぜ。どう相手取るかは皆次第だが……はっきり言って、ガウリーは強い。舐めてかかっちまったら、火傷じゃすまないかもしれないぜ?」
ニヤリと笑みを浮かべた照男は、ガウリーの性格について補足を加える。
「さっき俺は、奴の性格を凶暴だと称したが……唯凶暴なだけじゃねえ。奴は確固たる意志、信念を持って、ガイオウガの為力を集めようとしている。邪魔する奴は決して許さないだろう。それに最後まで怯む事なく、全力で闘い続ける。絶対にな。……俺が保証するぜ」
そう言い、照男は灼滅者1人1人の顔をしっかりと見回していく。
「説得は不可能。ガウリーと戦い灼滅する以外に。殺す以外に、休火山の活発化を止める手段はねえ。だからこそオレは、ガウリーと全力で闘ってきて欲しいんだ……炎の剣士の最期を華々しく美しく彩ってやれるのはお前等だけだ。頼んだぜ、エブリバディ?」
参加者 | |
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アリス・バークリー(ホワイトウィッシュ・d00814) |
古室・智以子(花笑う・d01029) |
紫乃崎・謡(紫鬼・d02208) |
栗原・嘉哉(陽炎に幻獣は還る・d08263) |
レオン・ヴァーミリオン(鉛の亡霊・d24267) |
九形・皆無(黒炎夜叉・d25213) |
斎・一刀(人形回し・d27033) |
穂村・白雪(無人屋敷に眠る紅犬・d36442) |
●
「邪魔ヲスルモノハ全テ、キル!!」
荒れた岩を踏み砕き、立ち塞がる木々を斬り捨て、ガウリーは山頂を目指し駆け抜ける。
「モウスグ半分……ハヤクセネバ!!」
炎を纏った突進で木々の間を潜り抜けたガウリー。その先にある、少し開けた場所へと跳びだした。
「……ナニ? ナンダ貴様等ハ!!」
「紫乃崎・謡。私も含め、ここにいる全員が武蔵坂の灼滅者。私達は人々に被害が出ない方法であれば、ガイオウガ復活の邪魔はしない」
そこに待ち構えていた8人の灼滅者。紫乃崎・謡(紫鬼・d02208)が自らの名を名乗り、簡潔に意思を伝える。
「だけどそちらには、引く気はないんだよね?」
「当然ダ!! オレニハ貴様等ト話シテイル暇ハナイ!! ソコヲ退ケ!!」
謡の言葉にガウリーがそう応えると、
「そう、それは残念。それじゃ、ここでさよならね」
と、アリス・バークリー(ホワイトウィッシュ・d00814)は淡々と言い放った。
「ま、そりゃこうなるよね。だけどそれやられると、火山噴火で死人が出過ぎるんだ」
「わざわざそんなことをしなくても、いずれガイオウガは目覚めるんですけどね。ですがそちらに止める意思無いというなら、私達の手で止めさせていただきましょう!」
レオン・ヴァーミリオン(鉛の亡霊・d24267)と九形・皆無(黒炎夜叉・d25213)がスレイヤーカードを解放し武器を構えると、ガウリーの巨体を仰ぎ対峙する。
「無理矢理相手を叩き起こしておいて、いざ暴れ出すと灼滅……正直この方針には疑問が残るの。ただ、放置していい事態ではない以上、今回は指示に従うの」
古室・智以子(花笑う・d01029)は今回の依頼に対し決して晴れやかな気持ちではなかったが、やる事はやると、気を引き締め武器を構えた。
「ドウシテモ邪魔ヲスルト言ウノカ……ナラバ仕方ナイ。貴様等全員、コノ炎剣ノ錆ニシテクレル!!」
ガウリーと、彼が操る炎剣が激しく燃え上がり、闇に包まれた空間が明るく照らされた。
「カカカッ……まあ結局、やる事はいつもと変わらないんだな……」
「……ああ、そうだな。説得とか頭捻らない分、他の案件よりらくとすら言える……それに、正直こんなやり方で力を集めるっていうのは気に食わない。本気でいかせてもらうぞ」
斎・一刀(人形回し・d27033)と栗原・嘉哉(陽炎に幻獣は還る・d08263)が戦闘の布陣を取ると、
「本気じゃない戦いほど、つまらないものはない……さあ行くぜ、相棒。今日もフルスロットルだ」
穂村・白雪(無人屋敷に眠る紅犬・d36442)は自身のライドキャリバー『クトゥグァ』に騎乗すると、獰猛な目つきでガウリーを睨む。
「キエロ、スレイヤー!! グアアァァアアアアアアア!!」
●
「突っ込むぞクトゥグア!!」
誰よりも先に動いたのは白雪。クトゥグアのアクセルを全開にすると、ガウリーの真正面から派手に衝突した。
その突撃に動きが鈍ったガウリー。その懐に、嘉哉が迫る。
「お前が完全にキレる前に聞いておきたい。なぜ休火山を活性化させたらガイオウガの復活に繋がるんだ。まさか、炎が大きく強い程そのまま繋がる話じゃないだろ?」
そう問いかける嘉哉をガウリーは見下ろすと、
「敵ニクレテヤル情報ナド唯ノ1ツモナイ!! ソレニ貴様等はハドウセ、ココデ死ヌノダ!!」
ガウリーはそう言って4本の剣を嘉哉に向けて放つち、強烈な4連の斬撃が嘉哉の身体に深い火傷と傷を負わせる。
「グ……!! 一撃でこの威力か……早々何度も受けていられないな」
嘉哉は流れ出す血を炎へと変換させると、影で創り上げた大剣に灯した。
「……オレは復活の為命を差し出すのも、こうやって自然を崩壊させるのも反対だ。もっと、別のやり方があっただろ……!」
「オレハガイオウガ復活ノ為最善ノ行動ヲ取ッテイルノミ! ソノ結果人間ガ死ノウガ死ヌマイガ、オレガ死ノウガ死ヌマイガ、知ッタ事デハナイ!!」
分かっていた事ではあるが、そもそもの価値観があまりにも違っていた。嘉哉はその事を改めて実感する。
「これ以上の話は無理だな……行くぞ」
そして嘉哉が影の大剣を振るうと、ガウリーの身体が切り裂かれ、焦げ跡が出来た。
「まだまだ戦闘は序盤、と。とにかく相手の足を引っ張る事にしますか」
レオンはガウリーの側方から接近すると刀を大きく振り抜き、ガウリーの後ろ脚に鋭い傷を刻んだ。
「ククククッ。それじゃあ僕も、動くとしようかな」
一刀は男女2体の操り人形【雨姫と砂侍】を動かしながら、周囲に転がる岩の陰から陰へと、するりと移動していく。
「チョコマカト、目障リナ……!!」
「ククククッ。まずはその動き、封じさせて貰うんだな」
一刀の呟きと共に、何処からか放たれる幾重もの鋼糸。それに足を絡め取られたガウリーが、大きく息を吸い込んだ。
「ガァァァアアアアア!!」
「おっと、それは流石に当たりたくは無いんだな」
放たれた爆炎を岩の陰でやり過ごした一刀は、手に絡みついた糸に自らのオーラを流し込む。
「ククククっ。人形回しとビハインドの舞。特とご覧あれ」
人形を通し周囲の岩陰から放たれるオーラの塊が、四方八方からガウリーを狙い撃つ。
そしてそのオーラの隙間をかいくぐり、ガウリーの元に迫る一刀のビハインド。
ビハインドは手にした刀に霊力を宿らせると、一息にガウリーに突き刺した。
「ビハインド……今日のお前は何時にも増して美しいんだな……カカっ」
「大人シク俺ニ斬ラレロ……!!」
突き刺さった刃に顔を歪めたガウリーは、4本の剣を高速で回転させ、次々と投げ放った。
「おっと。悪いですが私達も、そう簡単に倒れる訳にはいかないんですよ」
仲間を庇い斬撃を受け止めた皆無。その表情にはまだ余裕があったが、決して受けた傷が浅いという訳ではなかった。
「すぐに回復するの」
智以子はすぐさまギターを構えると、その手に癒しの力を込める。
そして奏でられた力強い演奏が、皆無含む前衛達の傷を治癒していった。
「何度傷ヲ癒ソウトモ、オレノ剣ガ貴様等ヲ必ズ殺ス!!」
「……流石に、大人しく斬られる訳にもいかないの」
智以子は桔梗の華の形を成した黒のオーラを拳に纏い、ガウリーとの間合いを測る。
「先々のことは、いまは分からないの……今は、この場でやれるだけの事をするの」
一瞬にしてガウリーの眼前まで飛び込んだ智以子。
そのまま放たれた黒い拳が、ガウリーの顔を打ち付け、大岩に叩き付けた。
「……この先も、学園はこれを繰り返すの?」
眠れるダークネスを叩き起こし、軍勢が整う前に殲滅するサイキック・リベレイター。
智以子はこれからの学園の行く末に、一抹の不安を感じていた。
「オノレ……シカシコノ程度、傷ノ内ニ入リハシナイ!!」
「流石の気概だね。まさに不退転ということか……ならば仕方ない。此方も見過ごすことは出来ないからね」
崩れた大岩の中、身を起こすガウリーに、謡は追撃の鬼の拳を叩きこむ。
「ガァァアアアアアア!!」
燃え盛る灼熱の剣を振るいながら、ガウリーは猛々しく灼滅者達に突撃する。
「神は人を追い出し、エデンの園の東に、ケルビムと、回る炎のつるぎとを置いて、命の木の道をまもらせられた……あなたの剣を見て思い出したわ」
眼前に迫った炎剣を、光剣『白夜光』で受け流したアリスは、その手に自らの魔力を集中させていく。
「その炎の剣が丸ごと凍れば、話は早いのだけれど」
そして放たれた死の魔術が、ガウリーの全身を一瞬にして凍てつかせた。
「まあ、流石にそれは無理ね。なら次は……」
アリスは聖なる力を空に向けて解き放つと、その場に眩い白の十字架が降臨した。
「剣先を鈍らせておきましょうか。危なくて仕方ないわ」
降り注いだ白の光線が、ガウリーの肉体と炎剣を貫いた。
「あなたとは無理だったけど、私達はイフリートという広い相手に対しては、時に手を取り合いたいと思ってるわ」
「……何ガ言イタイ、貴様」
アリスは自らの周囲に魔力の矢を形成しながら、言葉を続ける。
「今、鶴見岳では集まったイフリートを説得しようとする活動が続いている。だから後は私達と彼等に任せて、安心して逝きなさい。そういう事よ」
「世迷言ダ」
「事実よ。実績のある、ね」
そして放たれた白の矢の雨が、ガウリーの全身に突き刺さった。
「…………ガァアアアアアアアアアアア!!」
ガウリーは自らが追った傷を雄叫びと共に吹き飛ばす。
戦いは、まだ続く。
●
「焼ケ死ネ!!」
「流石の攻撃力なの……あまり長く保たせるのは厳しいかもなの」
次から次から放たれるガウリーの猛撃を、癒しの曲で凌がせていく智以子。
「ガァァァアアアアアア!!」
そして再び放たれる4連の斬撃。この標的となったのは、皆無であった。
「ふむ……力技ではありますが、試してみますか」
皆無は腕に装着した『佛継弥勒掌』に一瞬目をやると、迫りくる炎剣に向けて突きだした。
そして皆無は4本全ての炎剣を掴み上げるとその勢いを殺し、ガウリーに向けて思いきり投げ返した。
「案外上手くいきましたね。多少焦げ付いてしまいましたが……まあ、成果は上々です」
そして皆無は片腕を禍々しい羅刹の剛腕へと変化させると、ガウリーに向けて跳びだし反撃に出る。
「オレノ邪魔ヲスルナ、スレイヤー!!」
「あなたには理解できないでしょうが、私達にとって一般人の命というのは非常に大切な物なんです。そしてあなたが強固な意志を以てそれを奪う行動に出るというなら、私達は全力で邪魔しますよ。何度でも」
そして振るわれた剛腕が、ガウリーの側頭部を抉るように殴りつけ、その身体が地面に叩きつけられた。
「まだ行けますね……これでどうですか!」
更に皆無は片足に業火を灯し、倒れ込むガウリーに回し蹴りを叩きこむと、ガウリーの身体は木々を薙ぎ倒しながら地面を引き摺っていった。
「今が好機です。追撃を」
「クククっ。なら、遠慮なくやるんだな」
完全に体勢が崩れたガウリー。一刀が放った糸とビハインドの刀の斬撃が、重なる様にしてガウリーの全身を斬りつけた。
「グアアアアア!! マダ、マダダ!! 炎ノ剣士ハ、決シテ負ケテハナラナイ!!」
怒りの感情を糧に燃え上がる炎。ガウリーは再び灼滅者達に突撃する。
「凄い勢いだね……だけどこの身を以てしても止めてみせる。死を与えなければ止まらぬのなら、心の臓穿つまで」
炎と斬撃を撒き散らすガウリーを見据えた謡。その全身にカミの力を降ろすと、一気にガウリーに突撃する。
「ガァァァアアアアアアアア!!」
放たれる炎剣の乱舞。謡はその隙間を見抜き、軽やかにくぐり抜けていく。
「獣でありながら、人の武器たる剣を扱う……それも唯扱うだけではなく、本当に美しい剣舞だ」
ガウリーの剣技を間近で目に納めた謡は、そのまま暴風を宿した片腕をガウリーの真下に振り下ろす。
「ナンダ!?」
そこから全方位に放たれた風の刃がガウリーの全身を切り裂き、同時に浮かせた。
「獣には獣らしく、けれど敬意をもって狩りとしよう……」
戦うと決めたからには、最早迷いはない。謡は決して躊躇することなく、ガウリーの急所を見定めた。
「ここだよ」
そして放たれた鋭い包帯の刺突が、ガウリーの身体を貫き、そして地面へと縫い止めた。
「こいつの体力もそう残っていない筈……このまま一気に攻めきるぞ」
そして嘉哉が黒き十字架から光の砲弾を撃ち飛ばし、ガウリーの全身を凍てつかせる。
「もう終わりね、ガウリー、最後くらいは派手にいきましょう!!」
畳み掛ける様にアリスが放った白の闘気。ガウリーの全身を怒涛の勢いで打ち付けていく。
「キル……キル……コロス……!! 邪魔ヲスル者は全テ、殺ス!!」
「ああそうだ、殺して見せろ! その言葉が虚勢でないというのなら、この俺を殺して見せろ! 今、ここで!!」
ガウリーの炎剣に、白雪の身体が切り裂かれる。そして流れ出す大量の血を、白雪はクトゥグアに吸わせていく。
「これだから、イフリートとの戦いは好きだ。正義も悪も無い、暴力の世界。死がすぐ間近にある素晴らしい世界だ。この戦いで死ぬことができれば、兄さんと同じところに行けるんだ!」
燃料を注がれ、傷だらけながらも猛るクトゥグア。そして荒ぶる駆動剣『狂犬ツァール』を手に、白雪はクトゥグアに乗り再突撃する。
「頼むから俺が死ぬ前に死んでくれるなよ、イフリート!」
「ガァァアアアアアアアアア!!」
炎剣の乱舞が白雪の頭を斬る。流れだし燃える血に思わず笑みがこぼれる。
「どうした、私はまだまだ動けるぜ? お前の力はその程度の物か?」
衝突の衝撃で揺らいだガウリーの胴体に、白雪は駆動剣を振り降ろす。
肉を抉り骨が砕かれ、ガウリーの身体から血と炎が飛び散った。
「狂犬の戦いはこれからだ。どちらかが死ぬまで楽しもうぜ?」
そう語る白雪の瞳には、どこまでも深い狂気が宿っていた。
「グオオオオォオオ!! スレイヤーァアアアア!!」
次々と放たれる攻撃によって追い詰められ、ガウリーは死が近づく程に荒々しくなっていく。
「ハハハ、中々ヒートアップしてきたじゃねぇか。だけどまだまだ足りねぇぞ! オレもお前の全力に報いる為、それなりのもんを賭けてやる!」
放たれた爆炎に身を焦がされながら、レオンはその笑みをますます深めていく。
そして銀朱の薄刃、『自律斬線“鏖殺悪鬼”』が、レオンの感情の昂りに合わせ、ガウリーに迫って行く。
「切り裂け! どちらかが倒れるまで、何度でも!」
放たれる刃はガウリーの肉体を突き破り、抉り取り、切り裂いていく。
「お前は大切なやつのために退けない。俺たちも俺たちの日常をぶっ壊されるのは嫌なんで退けない……そもそも、口で言ったとこで平行線なのは目に見えてる」
そう言ってレオンが構えた杖の名は、『call of Siren』。とある淫魔の死を内包した、異形の錫杖である。
「だからこその、殺し合いだ! というか、それしか方法なんかねえよな!」
「……ソウダ! ソモソモ我等ニ調和ハ向イテイナイ! 全テノ力ヲ以テシテ、敵ヲ捻ジ伏セルノミ!!」
杖を振りかぶり駆けるレオンと、炎剣を操るガウリーが真正面から対峙する。
1、2、3、4。
投げ放たれた4本の炎剣がレオンの身体を貫き、レオンの動きが僅かに止まる。
「ガフ、ガ、アアアアァアアアアア!!」
血反吐を吐き突きだした錫杖が頭部を打ち付け、同時に流し込まれた禍々しい魔力が、ガウリーの全身を吹き飛ばした。
「ガァァアアアアアア……」
終わるのは一瞬だった。
ガウリーの魂は燃え尽き、その肉体は消し炭となって虚空へと消えゆく。
白き虎の姿をした炎の剣士は、戦いの中その身を散らしたのだった。
作者:のらむ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2016年8月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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