学園祭2016~後夜祭は炎と火華と共に

    作者:御剣鋼

     7月17日と18日の2日間にわたって開催された、学園祭。
     今年も多数のクラブ企画や水着コンテストなどで、盛り上がりをみせたようだ。
     楽しい時間はあっという間に過ぎていき、とうとう終わりを迎えてしまったけれど、学園祭の夜はこれからというのを、学生達は知っている。
     ――その名は後夜祭。
     想い出を更に焼き付けるように、グランドでは幾つもの炎と光が煌めき始めていた。
     
    ●後夜祭は大輪の華と共に
     既に、グランドには火の使用許可がおりているのだろう。
     夜の帳が降りたグランドには、キャンプファイヤーが煌々と輝いており、その周囲を囲んだ学生達によって、楽しい賑わいをみせていて。
    「手持ち花火、これで足りるか?」
    「あー全然足りない、打ち上げ花火も、もう少し欲しいかも……!」
     思い思いの手持ち花火を持参していたのは、クラブで集まった学生達。
     話しを聞いている限り、学園でも十分すぎるほどの手持ち花火や家庭用の打ち上げ花火が、たくさん用意されているようだ。
    「ねえ、花火もいいけど、キャンプファイヤー見ながら喋ろうよ」
    「そうだね。グランドの隅の方は静かだし、ゆっくりできそうだね」
     喧噪から離れた所では、カップル達がささやかな団欒を楽しんでいる。
     グランドは広い。
     これだけ広ければ、2人だけの想い出をゆっくり語り合うにも、支障はないだろう。
     ――だが、しかし!!
    「フフフ、カップルなんて全く見えない聞こえないね! ロンリー線香花火楽しいね!」
    「一斉にだぞ、一斉に線香花火をつけ……ああ、くっつけるなああ!」
    「ちょ、風吹いてきた! 各自火種と線香花火を死守し……ぎゃああ!!」
     皆で心を1つにして何かを行うことは、美しい、が……。
     なんだか可哀想な集団がいたりしても、見ないフリをするのが優しさだろう。
    「成る程……如何なる打ち上げをするのかは、皆様次第ということでしょうか」
    「そうみたいだな。お、何処かのクラブが打ち上げ花火をあげるみたいだぜ?」
     ――見てみろよ。
     と、ワタル・ブレイド(中学生魔法使い・dn0008)が夜空を指差す。
     里中・清政(高校生エクスブレイン・dn0122)の視線が追い掛けた瞬間、大きな音と共に眩い大輪の華が、きらきらと煌めいて。
    「幻想的な光景でございますね」
    「火の取り扱いには十分注意した方が良さそうだな。後夜祭の想い出が魔人生徒会に連行なんて、イイ笑い者だ」
    「フフ、全くでございます」
     グラウンドなので、走り回ってはしゃいだりしても大丈夫♪
     けれど、周りを巻き込むような危険なことは、控えた方が無難だろう……。
     この光景も想い出も、皆にとっても、きっと掛け替えの無いものに変わるのだから――。
    「オレ達も大いに楽しむとするか」
    「わたくしは、この機会にもっと沢山の灼滅者様と、お話ししてみたいです」

     グランドに煌めく炎と光の祭典、貴方も共に過ごしてみませんか――?


    ■リプレイ

    ●明々と照らす炎と共に
     グランドは既に沢山の光と炎で照らされており、彼方此方から笑い声が聞こえてくる。
    「こういう時は身長差が最後の勝負の分かれ目っす」
    「じゃあ、オレの勝ちだな」
     早速、どちらが打ち上げ花火を高く上げられるか競っているのは、ギィとワタル。
     ――いや、花火の性能じゃね?
     と言うのは無粋なので、皆生暖かい目で放置であーる。
    「ふはは! マジックミサイルをくらえー!」
    「ちょっとアメリアさん!? それマジックミサイルじゃないっすよ!?」
     キャンプファイアーの側では【Fly high】が各々持ち寄った花火を楽しんでいて。
     アメリアが上空に向けて発射したロケット花火に、陽司がツッコミを入れながらも一緒になって飛ばす。
    「ファイアー!!」
     2人に負けじと歌音もロケット花火を等間隔に……って、ロケット花火ばかりかよッ!
    「わたくしも華麗な花火捌きをお見せしますわー!」
     と、手持ち花火を二刀流にした残暑がブンブン振り回し、阿鼻叫喚に華を添えてしまう、そんな光景であーる。
    「花火? え、どっちに火を付ければいいんだ?」
    「え?」
     半ばカオスフルな中、アトシュが困った顔で陽司に訪ねた時だった。
     モクモクと足元から湧いた煙幕が視界を塞ぐや否や、パンッと爆竹の音で轟いて!?
    「げほげほ、あれ?」
    「あわわ、なんだか前が見えませんわー!? けほっけほっ」
    「くすす……わ~い〜」
     煙に咽せた歌音と残暑が耳を澄ませば、木乃葉の小さな笑い声が……。
     その瞬間、歌音が持っていたロケット花火が弾け、驚きの後に楽しそうな笑い声が響き渡った。
    「色んな花火があってわくわくしちゃう」
     雪音の焼き鳥を腹一杯に堪能した【落椿】の海は、新鮮な気分で花火を選んでいて。
    「……ん? 導火線?」
     蛇花火に火をつけようとしたルティカが視線を動かすと、いそいそと慎重にロケット花火の導火線に火をつける雪音が……。
     だが、時既に遅し!
    「うなれロケットランチャー! 行け――落椿号!」
     ――ずどーん!
     勢い良く飛んだロケット花火は、あらぬ方向に!?
    「先ずは盛り上げたら良いのね!」
     と、花火の流儀(?)に習ったシュエットも、蛇花火と鼠花火を同時に点火ッ!
    「わ、ロケット花火……じゃなかった。落椿号があらぶってる!?」
    「ぎゃああなにやらもこもこしてこたが此れは何じゃ!」
     慌てて逃げながらも、海はスリリングな光景を楽しんでる様子♪
     ルティカが驚きと関心を示したのも一瞬、海と共に次の花火に楽しそうに手を伸ばす。
    「……こういう時は「たまやー」って言えば良いのかしらね?」
    「ねずみ花火もなちゅらるにでんじゃらすだな」
     ふわり微笑むシュエットに、鼠花火を避けながら雪音が頷くのでした。

    「線香花火ってシメに一本ずつ点けるのもいいですが、束にすると主戦級に面白いですよね」
    「は」
     何故にこう乙女と豪胆を併せ持つのだろうか。
     ウキウキと束の線香花火に点火する桃子に、マコトは間の抜けた返事を返してしまう。
     何処か馴染み深い赤色がバチバチ言うのを眺めながら桃子が話し続ける中、マコトがぽつりと洩らした。
     ――貴女の眼の色と似てございますよね、と。
    「ええとそれは……」
     もしかして口説き文句?
     桃子が照れながら視線を泳がせると、1人でうろうろしていた真言と目が合って!?
     空気を察して無言で遠ざかる真言に、内心で毒づきまくる桃子でした♪

    「お、さくら準備いい……わっ!?」
     さくらえに拳銃花火を向けられた【フィニクス】の勇弥は火がついていないことに気づくと、ほっと胸を撫で下ろす。
    「あはは、もちろんそんな危ない事しないって☆」
     勇弥の反応に満足そうに笑ったさくらえは、人の居ない方に花火を向けるものの、その中には蛇花火がありますどうします?
    「ヘビ花火って、ちょっと気持ち悪い……」
     花火ではしゃぐ(?)2人を横目に噴出し花火を楽しんでいた紅音も、蛇花火には渋い顔を浮かべて見せて。
     けれど、霊犬のクロ助と加具土は興味をもったのか、面白そうに追い掛けていく。
    「……うちあがる?」
    「わたくし花火ではございません……!」
     じっと見つめながら首を傾げる実に、清政は即座に首を横に振ってみせる。
     良かったとでも言うように頷いた実が霊犬達に視線を戻すと、勇弥が「そうだ」と、楽しそうに笑った。
    「線香花火で誰が先に消えるか、競争してみないか?」
    「いいわね。みんなで競争? 負けないわよー?」
     勇弥の誘いに紅音は挑戦的な笑みを浮かべ、合流した真言と共にさくらえとワタルも線香花火を手に取る。
     楽しい後夜祭は、まだまだ始まったばかり――!

    「おっつかれさま~!」
     飲み物の代わりに手持ち花火を掲げたのは【空部】の仲間達。
     朱那から花火を貰った才葉は、パチパチと光が弾ける様子に大興奮!
    「打ち上げ言うたらこれも必須でしょ」
     と、次に朱那が取り出したのは、籠に盛った企画の空色駄菓子。
     パチパチするのが好きだと口に入れて花火を手にすると、口の中でも花火をしているかのよう……!
    「オレのお気に入りはもくもく雲の綿菓子!」
     才葉が綿菓子を引っ張ってみせると、あっという間に千切れ雲に!
    「私はソーダ味と麩菓子が好きー♪」
     瑠音が楽しそうに口に放り込むと、英太も皆で案を出し合ったことが楽しかったと袋を取り出した。
    「おれは……これ」
     英太の掌に雲や虹の形のグミがころんと転がった時、不意に線香花火をつけた瑠音が視界に入る。
    「おれにも、ちょうだい」
    「あ、オレも!」
     英太と才葉が花火を貰いに駆け寄った瞬間、夜空に大輪の火華が上がり、皆の笑顔と歓声が広がっていく。
     瞳を輝かせて満面の笑みを向ける瑠音達に、朱那も笑ってシャッターを切った。

     少し離れた所に織兎と並んで座ったリケは、一つ確信したことがあると切り出す。
    「わたしたちお付き合いしませんか?」
     お誘いを受けてから凄く嬉しくてドキドキしてしまって、好きなことに気付いた、と。
     突然の告白を受けた織兎は「す、すごく嬉しい」と、即座にリケの手を取った。
    「その、俺のほうこそ、付き合ってもらえたら嬉しいよ」
     ――よろしくお願いします!
     そのままぶんぶんと手を握ったまま振る織兎が愛しくて、リケも自然と口元が緩んでしまう。
    「ありがとう、ずっと一緒ですよ」

     キャンプファイアーを眺めながら学園祭の事を楽しそうに話す藍に、統弥も興味深そうに耳を傾けていて。
    「統弥さんがいたらもっと楽しく過ごせたのに」
     最後に少し不満顔を見せた藍に、統弥は楽しく過ごせて良かったと笑う。
    「正直に言うと藍の水着姿を見た時はドキッとした。今回の黒と赤の水着も綺麗で似合っていたよ」
    「統弥さんの選んだ水着、皆さんに好評でした。ありがとうございます」
     まだまだ夏は始まったばかり。
     統弥と藍は共に過ごす時間を楽しむように、手を繋いだ。

    ●夜の帳に咲く
    「もう、そんなにたくさん一度に持って来ても全部出来ないでしょう?」
     何だか花火に負けた感じになった曜灯は、両手いっぱいの花火を抱えた勇介から線香花火をひったくると、すぐに火をつけてみせて。
    「え、えっと……多すぎた?」
     我に返った勇介は慌てて頭をフル回転、自分も線香花火に火をつけると隣に並ぶ。
     下手な言い訳をすると自滅するのは経験済みだ。
    「その、よーひとの花火だから、舞い上がっちゃって……。何より記念日だし」
     あたふたする勇介に曜灯は微笑みを向けながら思う。
     あれから1年。自分も変わっただろうか、と――。

    「これも追加で」
     盛り沢山の花火セットを嬉しそうに掲げた百花に、エアンが笑顔で見せたのは金魚の形をした花火。
     火をつけて水を張ったバケツの上に浮かべると、水面を滑るように泳ぐ金魚に百花は歓声をあげた。
    「わぁ……綺麗!」
     次々と点火される手持ち花火は煌くシャワーのよう、打ち上げ花火には「たまやー」と二人声を重ねるのが楽しくて。
    「来年も……ね?」
     綿毛のような火花を眺めながら呟く百花に、エアンは頷く。
    「うん、後夜祭の恒例になりつつあるな」
     来年も、また次の年も一緒に――。

    「楽しそうで綺麗」
     手持ち花火を小さくくるくる回す月子は、魔法使いのよう。
     その姿を眺めていた飛鳥も色違いの花火に火をつけ、風で制服のスカートの裾を気にしていた月子の風除けになるように、隣に並ぶ。
    「先輩はどこか遊びに行かれるのですか?」
    「欲を言えば、水着着た可愛い女の子とプールで遊びたい、かな」
     くすぐったそうに答える飛鳥に月子も小さく笑って。
    「じゃぁ、来週に市営プールに行こうかな、ねっいいでしょ、先~輩♪」
     今年は楽しい夏休みになりそうです。

    「とても綺麗で見ていて飽きませんわ」
    「こっちはスパーク花火やね、普通のよりバチバチするから気ぃつけんと」
     学園祭の水着の思い出話しをしながら、シルキーと想々は蝋燭に花火をそっと寄せる。
     普段よりはしゃぐ想々に微笑ましい気持ちになったシルキーは、ふわりと呟いた。
    「想々さんは何時だってとっても可愛いのね」
     慣れない言葉に想々は思わずしゃがむと、線香花火をそっと手に取って。
    「何かお願いごと、叶うかな」
    「終の時まで燃え続けたらきっと、良いことがありますわ」

    「あれ、線香花火?」
     シャルロッテの浴衣姿に撃沈し、花火二刀流を警戒していた律は拍子抜けしてしまう。
    「たまにはこういうのもい~んデス!」
     パチパチ光る花火にシャルロッテが綺麗デスネと零し、火華が照らす横顔に見惚れた律が頷いた時だった。
     ――ドン!
     同時に顔を上げれば、夜空に咲く大輪の華。
     思わず立ち上がった律の頰に、柔らかな感触が触れた。
    「また、色々なとこいきマショウネ」
     見下ろせば、シャルロッテの笑顔。
     律は彼女の肩を抱き寄せ、もう一度夜空を見上げた。

    「言っておきたいことがあるんだ」
     タコ焼きと共に線香花火を楽しんでいたイカルは、周囲に掻き消されないように、るる子の耳元まで顔を近づけると「ありがとう」と、小さく囁く。
    「えへへ。こちらこそ、ありがとね」
     返ってきたるる子の返事に、イカルはぎこちなく告げた。
    「今こうして二人だけのようなものだし、俺はそれで充分な訳だけれど、それじゃあダメかな?」
     そう問い掛けると少しの沈黙のあと、るる子が答える。
     来年は二人っきりで何処か遊びに行きたいね、と――。

    ●炎と夜空と共に
    「何もしないっていうのも、良いもんだね」
     喧噪から少し離れた場所でも、多くの学生達が炎と夜空を楽しんでいて。
     恋人の菜々とキャンプファイアーを眺めながら語り合っていた式が瞳を細めると、菜々が静かに洩らした。
    「おいらたちは、いつまでも一緒っすよ」
     そう呟いた菜々は式の浴衣の裾を、そっと掴む。
     式も、この緩やかな時間と菜々の温もりを楽しむように、優しく手を重ねた。

    「ステージで歌ってるとこ、きれいだった」
     ――1年前の約束、守ってくれて、ありがとな。
     1年前とさほど変わらない景色を眺めながら、葉は1年前より少し関係が変わった千波耶の手に自分の手を重ねる。
    「ど、うも、ありがとう」
     慣れない言葉に千波耶は照れを隠しながら重なった手を握り返し、ぎこちなく唇を動かした。
    「あのね、わたしがここで歌い始めたのは、葉くんの歌を聴いたからなの」
     ――だから、それもありがとう。
     千波耶の御礼に葉は小さく笑う。空に上る花華は夏の始まりを告げるようで……。
    「……夏休み、どこ行こっか?」

    「そう言えば、一つお願い聞いてもらえるんだよね?」
     蒼く輝く星空に火の粉を巻き上げるキャンプファイアは、まるで自分達のよう。
     ふと、何かを思い出した七葉は、恋人の紅詩に切り出した。
    「これからもずっと一緒に居てほしい」
     七葉は真剣な瞳で紅詩を真っ直ぐ見つめる。
     けれど、紅詩はわざわざお願いされなくてもいいですよと、微笑んで。
    「はい。これからもずっと一緒にいましょう」
     それはとても素敵な返事で……。
     反射的にぎゅっと抱きついてきた七葉を、紅詩も優しく抱きしめた。

    「あ、花火が上がりましたよ」
     冷えた飲み物を片手に学園祭の想い出を語り合っていたアレクセイは、花火を見上げると月夜の肩をそっと抱いて寄せる。
     そのまま体を預けるように寄り掛かった月夜も花火に見蕩れながら、次の学園祭が楽しみだと零して……。
    「これから先も、ずっと一緒なのですー」
     ――次も、また2人で。
     笑顔で恋人を見上げた月夜に、アレクセイも優しい微笑みを返す。
    「アレクセイ君、大好きなのですー」
    「ええ、僕も大好きですよ」

    「あやめ。後悔している?」
     ぽつりと洩らした廣に、白の浴衣で線香花火を楽しんでいたあやめが顔を上げる。
     続けて自分と婚約したことを問うと、あやめは後悔していないと答えた。
    「わたくしが家出した時のこと、覚えてます?」
     義務や情けとしても、愛されていることに違いはないと告げると、廣はあやめも生きたいように生きればいいと言う。
    「――浴衣。よく似合ってる」
     最後に少し決まりが悪そうに呟いた廣に、あやめは瞳を瞬いて。
     千の言葉より、その一度。それが私の、宝物――。

    「……樹、君、これからどうする?」
     学園祭の土産を広げて楽しそうに話し終えた樹に、無常がぽつりと呟く。
     戦いは激しくなるけれど、終わりも見える。
     それでも自分は戦う、と。
    「戦況がどうなっても、俺はいつも通りにやりますよ」
     普通に生活して、必要になれば戦う。
     胸の奥にそれ以外の言葉をしまった樹は、鼠花火と戯れる霊犬の篝枝に視線を戻す。
    「……頑張りましょうね」
     逆に樹に労われた形の無常は苦笑し、親戚の無事を案じるかのように夜空を見上げた。

    ●願い紡ぐ光と炎
    「珍しいやつ見せてやろうか?」
     楽しかった後夜祭も徐々に終わりを迎えようとしている。
     璃杜が蛇花火に火をつけると、にょろにょろと燃えて伸びる不思議花火に環奈は大きな歓声を上げた。
    「な、なんですかこれは!?」
     思わず環奈がはしゃいだ瞬間、足元で鼠花火がバチバチと弾けて!?
    「へへっ、驚いたかー? 油断大敵だぞ!」
     悪戯を仕掛けた璃杜が誤魔化すように手持ち花火を差し出すと、二人は誰かが打ち上げた花火を見上げ、楽しそうに視線を交わせる。
     今日にでも明日にでもまた、いろんなところで遊ぼう、と――。

    「最後までぜひ楽しんでくださいね♪」
     白のワンピースを翻した楓が数秒間隔で打ち上げていく花火に【Dvergr】から歓声が沸き上がる。
     瞳を輝かせて大興奮な冰眞にエミリオは口元を綻ばせ、浴衣姿の断と肩を寄せ合って線香花火に火をつけた。
    「あのね、断? 僕、気が付くといつも断のことばかり考えてるんだ」
     ――きっとこれが恋、なんだと思う。
     エミリオの言葉を静かに聴いてた断は驚き、何度も瞳を瞬く。
    「…それがしもね…リオの事好き…大好き…それがしも…恋…してると思う…」
     ――リオの1番になりたい。
     その言葉にエミリオが頷くと断は嬉しそうに微笑んで、彼に抱きついた。
    「素敵……祭りの華ね。ひしひしと祭りの終わりを感じるけど、風情があるわ」
     2人を微笑ましげに眺めながら、浴衣姿のコルトは冰眞のうなじを優しく撫でる。
    「花園迷宮、来てくれてありがとう。あれはあれで可愛らしくて素敵よ」
     食べ物と花火で視線が大忙しだった冰眞も気持ち良さそうに瞳を細め、けれどコルトの手はすぐに止まってしまう。
    「……コルト……きょうは、たのしかったのだ♪」
     子供のようにもたれかかって眠るコルトに冰眞は満面の笑顔を浮かべ、とても小さな声で囁いた。
    (「みんな……楽しそうですね」)
     それはとても素敵な光景。
     穏やかな時が流れていることに楓は微笑み、コルトから貰ったラムネを口にした。

     手持ち花火を楽しみ、鼠花火に追い掛けられ、パラシュートの取り合いも堪能した!
     最後は清政も加わった【カオナシ】は、線香花火の耐久勝負に挑んでいて。
    「みんな、何かお願いします?」
     線香花火を斜め持ちにした霧湖が呟いた瞬間、火の玉が落ちていく。
     頭を小さく上げると、鶫と茸、清政も同時に消えてしまっていた。
    「お願い事は自分で叶えましょうって事でしょうか」
    「そうかも、それに、自分で叶えた方がカッコいいね」
     霧湖が笑うと鶫もふわりと笑みを弾ませて。
     ――でも、1つだけ
     またこうして一緒に遊べたらと鶫が呟くと、4人の心に暖かな灯がもう一度灯る。
    「うん、また遊べるとええね……」
    「わたくしもです」
     鶫の小さな呟きに茸も今一緒に遊んでいることが幸せだと口元を緩め、清政も頷いた。

    「さぁ、皆。準備はいい? いくわよ……いっせーの!」
     ――せ!
     アメリアの合図と共に同時に打ち上がったのは、【Fly high】の6色の花火。
     それぞれ1色づつ持ち寄った花火が夜空で六輪の華となった瞬間、木乃葉と陽司は感嘆の声を上げ、アトシュと歌音は瞳を輝かせて。
    「わたくし知っていますわ、ここでたーまやーっていうのですわよね?」
    「今後も色んな企画をたてていくから、よろしくね♪」
     高らかに声を上げた残暑にアメリアが笑って宣言すると、皆揃って楽しそうに頷く。
     ――今後も、来年も宜しく、と。

     夜空に瞬く天蓋に大輪の光華が咲き、明々と燃え上がる炎が想い出を更に強く照らす。
     まるで、惜しむように焦がれるように、夜が明けるまで笑い声が響いていたという。

    作者:御剣鋼 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年8月2日
    難度:簡単
    参加:60人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 9/キャラが大事にされていた 4
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