昭和新山決戦~護るため、焔を狩る

    作者:朝比奈万理

     橙焔を透かすショールが僅かにあがりナミダが掌を翳す。ただそれだけで猛るスサノオ達は身を慎みむように熱を収めた。
    「先程も言うたが、この戦いで力を得る事は儂にとっての悲願」
     本来この場に相応しい静けさの中で、華奢な少女思わせる横顔のナミダだがその口調は誰にも阻めぬとでも言いたげに画然としている。その声を思惑を抱き言葉を尽くしきった灼滅者達はそれぞれの心でじっと聞いた。
    「汝等の協力の申し出には感謝する」
     スサノオ殖やし生かす――その一点を為してくれた者達へ己の身上に基づき義理にて返し続けてきたナミダ姫。彼女は、真っ直ぐに灼滅者達へ身を向けると唇の端を小さく持ち上げ言った。
    「無事、スサノオ大神の力を得られたならば、1度だけ、汝等の為にその力を使うことを約束しよう」
     ――これは確かなるもの、彼女から示された約定。
     斯くしてスサノオの姫ナミダと武蔵坂の間に、ガイオウガを守護するイフリートの軍勢を打ち破る『協定』が結ばれた。

     大地の楔の一つは北海道に鎮座する昭和新山にある。
     その山を襲撃しようとしていたスサノオの姫ナミダの軍勢に接触した灼滅者が、交渉を終えて無事に戻ってきたことを、浅間・千星(星導のエクスブレイン・dn0233)は少しの笑みをもって灼滅者に知らせた。
    「大変な任務だったが彼らの頑張りのおかげで、スサノオの軍勢を止めることができた様だ。もし、軍勢を止められていなかったら、きっと大惨事になっていただろうな」
     ほっと胸をなでおろす千星。だけど、その表情は硬いまま。
     なぜなら、スサノオの軍勢は昭和新山への攻撃を諦めてはいないからだった。
     スサノオ勢力による無謀な進軍で、周辺に被害が及ぶことが今回は避けられたものの、いずれは周辺に甚大な被害がもたらされる大きな戦いになることが予想される。その戦いによる被害を抑えるべく武蔵坂学園は、スサノオの軍勢と連携して昭和新山から現れるイフリートを撃退することになったのだ。
    「これはイフリートとスサノオ、二勢力のダークネスの抗争に巻き込まれる一般人を一人でも少なくするための作戦であって、イフリートと敵対するとかスサノオに味方するとか、そういう話ではないんだ」
     そこは違えないでほしいと千星は告げ、
    「この戦いはスサノオの軍勢が主力だが、勝利のためには皆の活躍を期待しているぞ」
     いつものように笑みを作った。
     昭和新山から現れるイフリートは、100体あまり。
     彼らは高い戦力を有しているが、スサノオも負けず劣らず……あるいはそれ以上の戦力を要する精鋭ぞろいであるため、まともに戦えばスサノオが勝利する。
     だがイフリートは『昭和新山に戻って休息する事で、数分程度でダメージが回復する』のだ。よって最終的には、継戦能力の差でスサノオが敗北してしまうだろう。
     これを阻止するためには戦闘開始後に昭和新山に向かい、大ダメージを負って撤退してくるイフリートを撃破していく必要がある。
     1チームあたりが相手にするイフリートは5体から8体。相手は手負いとはいえ、かなり厳しい戦いになるだろう。 
    「昭和新山に戻ってくるイフリートは、戦闘力を失っているわけではない。素早く撃破しなければ、新たに戻ってくるイフリートが増援となるだろう」
     もたもたしていたら命取りになってしまう。
    「さらに皆の存在を知ったイフリートを一体でも前線に戻らせてしまったら、イフリート達が皆を駆逐するために部隊を送り込んでくる可能性もある」
     そうなってしまえば、さらなる苦戦を強いられるであろうことは、火を見るよりも明らか。
    「だから、確実に灼滅する必要があるんだ」
     告げると千星は教室内を見渡した。
    「……皆それぞれ思うところがあるのは重々承知だ。だけど、周辺の市街地の人々を守るためには、スサノオと皆が勝利する必要がある」
     灼滅者を見つめ、千星はふと目を伏せる。
    「……皆の心の星がどう瞬くかは、わたしにはわからない。だけど、皆の力を貸してほしいんだ」
     言い終わって千星は、頭を下げた。
    「昭和新山周辺に暮らす人々のためにも、どうかよろしく頼む」 


    参加者
    近江谷・由衛(貝砂の器・d02564)
    柳瀬・高明(スパロウホーク・d04232)
    月夜・玲(過去は投げ捨てるもの・d12030)
    七瀬・悠里(トゥマーンクルィーサ・d23155)
    レオン・ヴァーミリオン(鉛の亡霊・d24267)
    迦具土・炎次郎(神の炎と歩む者・d24801)
    刃渡・刀(伽藍洞の刀・d25866)
    御伽・百々(人造百鬼夜行・d33264)

    ■リプレイ


     昭和新山はわずか二年余りで誕生した溶岩ドームの山だ。元は麦畑だったと聞くと、この土地が如何に炎に愛された場所だということが伺える。
    「ったく、スサノオの姫さんも人遣いが荒いねえ」
     うっそうと生い茂る木々と草叢に身を潜め、双眼鏡を覗き込みながらため息を吐く柳瀬・高明(スパロウホーク・d04232)は、声を小さめにして本音を漏らした。
     スサノオとイフリートの開戦を確認し、すぐに昭和新山へと向かう道は平坦ではなかったが、地図やESPを駆使し、どうにかイフリートよりも先に既定の場所に辿り着くことができたのだった。
    「ふーん、どーにもナミダ姫の動きは気にくわないけど……まあ仕方がないか」
     鼻を鳴らして月夜・玲(過去は投げ捨てるもの・d12030)も小さく漏らすと、ふと、昭和新山の溶岩ドームを仰ぎ見る。
    「大地の楔……かー。破壊したら一体何が起こるんだろうね」
     起こらないかな? と、かつて畑だった場所に生まれ、急速に活動を活発化し、急速に活動を終え冷え固まった、あの溶岩ドームのどこに熱があるのだろう。
    「まあ、実際どうなるか調べられる機会って割り切るかな」
     気だるげにつぶやくと昭和新山を背にして、遠く戦場を眺める。木々にさえぎられてその様子は見えないし、音ももう聞こえないけど。
    「……失敗してくれればいいって思うけど……」
     思わず漏れる本音は、訂正しない。
     この作戦に参加している全員が全員、諸手を挙げてスサノオとの共闘の望んだわけではない。
     双眼鏡をのぞき込んでイフリートの帰還を待ち構える七瀬・悠里(トゥマーンクルィーサ・d23155)の心中は穏やかではなかった。
     この共闘は、鶴見岳で親睦を深めて送り出したイフリートや、説得して学園に匿っているイフリートへの裏切り行為も同然。
    (「でも、ガイオウガに関連した被害を防ぐという目的だけは、貫き通す!」)
     あどけなさの中に強さを持って。悠里はこの戦いに挑む気持ちを作る。
     叢に身を潜める近江谷・由衛(貝砂の器・d02564)も気だるげに息を吐いた。
     この雄大な北海道の大地は由衛の故郷である。
    (「……この地の人々を殺させはしない。けれど、楔を砕かせ、スサノオに力を与えたくもなかった」)
     眉間に薄く入る皺は、由衛の苦悩を伺わせるには十分だった。
    (「本来戦うべきは……いや、今は考えるのはよしましょう」)
     この土地に住まう人のため、今は力を尽くそうと誓う。
    「スサノオが力を増すのは少々怖いところではあるが、約定は守られねばならぬであろう」
     難しい顔の仲間たちを横目に御伽・百々(人造百鬼夜行・d33264)が山麓方向を見据えると、高明も重くなった雰囲気を一掃せんとからっと笑む。
    「まぁ、どの道周辺に被害が出ると言うなら見過ごすわけにゃいかねえ。一般人の安全の為、ついでに恩を売っとくとするか」
     レオン・ヴァーミリオン(鉛の亡霊・d24267)は、木々を抜ける風に髪を揺らして、思う。
    (「俺はね、基本的にダークネスのことはどうこう思っちゃいない」)
     敵が立ち塞がるからぶん殴る。やってることが気に食わないからぶちのめす。そしてお互いの信念を全力でぶつけあえるから喜んで戦ってきた。
    (「でもまあ、今回の、そのどれでもないんだよねぇ」)
     突然、刃渡・刀(伽藍洞の刀・d25866)が立ち上がると、遠くを見つめて目を凝らしだした。
     遠くにチラつく光を見たからだ。
     ほかの灼滅者も刀が凝視する方を見やると、木々がポッと灯かりに照らされた。
     かと思ったら、葉が発火する。それは自然の現象ではなかった。
    「来よったか……!」
     険しい表情の迦具土・炎次郎(神の炎と歩む者・d24801)は、登山道へと駆け出そうと疼く気持ちを抑えて、そのときを待つ。
     炎は徐々に近くなり、やがて現れたのは手負いの狼型イフリート。
     スサノオの姫ナミダと灼滅者の共闘。その作戦開始の瞬間が来たのだった。


    「気は進まないけど全力は尽くすから。火の海はご勘弁だしね。それじゃ、油断せずにいこうか」
     全身に力をこめて武装するレオン。サウンドシャッターを展開し、戦場の音がその周囲に漏れるのを遮断する。
    「Lock'n Load!」
    「我が前に爆炎を」
     解除コードを唱える高明と玲。それぞれの隣にはライドキャリバーのガゼルとメカサシミが、エンジンを高らかに鳴らす。
    「手加減なし、いくよ!」
     玲はエアシューズに自らの炎を纏わせて、今まさに灼滅者の目の前を通り過ぎようとと駆けるイフリート目掛けてとび蹴りを食らわせると、ギャインと鳴いて転げたイフリートの炎が空中に激しく舞う。
     その炎を払うかの如く。メカサシミはキャリバー突撃でイフリートの傷を深く抉り出した。
     体勢を立て直したイフリート。手負いとはいえ、戦闘能力は落ちてはいない。遠吠えで激しい炎の奔流を作り出し、狙撃手と回復手を焼き払う。
    「……このまま争われたら周りに被害が出るんでな。悪いがスサノオに付かせて貰うぜ」
     炎を払いのけた高明が地面を蹴ると草が舞った。次の瞬間にはイフリートの身を斬り刻み、ガゼルは牽制の機銃掃射をイフリートの脚に打ち込んだ。
     飛び出したレオンは一気にイフリートの顔面まで飛び。
    「こっちの都合で殺すんだ。存分に恨めばいいさ」
     炎を纏う獣の体を一気に斬り裂いた。
     地面に転げるイフリートだが、まだ戦意は失っていない。すばやく起き上がるとグルグルと唸り声を上げる。
    「恨みも所縁もありませんが………斬り捨てます」
     片手に握った剣を高く掲げる刀。剣からは祝福の言葉が開放されると清らかな風と化し、狙撃手と回復手の傷を癒す。
      ビハインドの千鳥は両手に握った二本の刀に霊力を宿すと、イフリート目掛けて斬りこんだ。
    「イフリート……俺はてめぇらを全員叩き斬ったる」
     過去にイフリートに大切なものすべてを奪われた憎しみは、炎次郎の炎を熱く高く燃え上がらせる。霊犬のミナカタも、イフリートに牙をむいて唸る。
    「俺はイフリートだけは許せんのや……早よ往生せんか!」
     振りかぶるクルセイドソード『エクゼキューショナーズ』には灼熱の炎を宿し、炎次郎はイフリートに斬りかかると、ミナカタも斬魔の刀で主人の後に続いた。
     気だるさの中に真剣さを見え隠れさせ。由衛は今やるべき仕事を遂行する。
     その鼻先まで一気に飛ぶと拳に力を込め、顔面目掛けて数え切れないほどの連打をお見舞いする。
    「悪いな……本当に。でも通すわけには行かないんだ」
     通した先に待つのは、数え切れない不幸だから。
     悠里がクロスグレイブを構えると、聖らかな歌と共に十字架先端の銃口が開いた。歌はまだなる中、光の砲弾はイフリートの業を一気に凍らせる。
     鎧武者の姿に変わった百々の周りを、禍々しい怨念が蠢きだす。そして百々の手中にゆらり現れたのは、持ち主を操って獲物を斬る妖刀・人斬りの太刀。
    「我の都市伝説の刃にて、獣どもを叩き斬ってくれようぞ」
     操られるままに――。太刀を振り下ろせば、炎の血が当たり一面に飛び散り。
     声にならない遠吠えを吼えたイフリートは土の上に平伏し、そのまま灰になって消えていく。
     一体撃破。
     だが誰も声を上げないのは、まだこの先に迎え撃つべき敵を警戒して。なのかも知れない。
    「……今にうちに回復をしておきましょう」
    「そうだね。いつ次のイフリートが戻って来てもおかしくないもんね」
     刀が今一度、剣の力を風に変えると、玲も縛霊手の指先から輝かしい光を放って、傷ついた者を回復する。
     レオンも言霊によって回復に回ると、炎次郎が耳に入れたイヤホンを指でちょんと触った。その先につながる携帯電話に、同じルートで作戦を行っているヘイズ・フォルク(青空のツバメ・d31821)のチームから連絡が入ったようだ。
    『こちらヘイズ・フォルク。敵一体を撃破』
    「そっか、お疲れさん。こっち、迦具土班も一体倒して、今、回復しとる――」
     と。
     誰の視界にも炎が見え、場の空気が一気に張りつめる。
    『……うん、わかった』
     識守・理央(オズ・d04029)の返答も聞こえるが、今は目の前の炎に集中すべきだろう。
     遠くからは三体のイフリートが、我先にと坂を駆け上がってくるのが見えた。
    「来ちゃったか……」
     悠里は苦々しくつぶやくと、他の灼滅者たちも再び武器を構える。
     現れたイフリートは獅子型と狐型、そしてチーター型のイフリート。三体は灼滅者を見るや否や、その爪や牙に炎を宿して、一斉に襲いかかったのだった。


     ある者はその存在を憎しんで全身全霊でそれを倒しにかかり、またある者は離反行為に胸を痛めつつ、またある者は共闘相手に心中穏やかではない。
     ある者はこの作戦に己の信念を見出せずとも此処に立ち、ある者は己の力がどこまで届くか確かめるため此処に立つ。
     ある者はこの共闘で得られる貸しを作るため、またある者は約束は果たそうと決め、またある者はこの共闘の行く末を見届けようとし……。
     思うところは皆、ばらばら。
     だけど共通する想い。
     それは、この戦いのことなど何も知らない人々の安寧を守り抜くこと。
     その為にこの道は死守する。
     手負いでもイフリートの攻撃は強烈だ。その牙を爪を炎を、灼滅者は守りを固めて手早く打つことで、この道を護る。
     狐型、獅子型、チーター型イフリートに引き続き、戦闘中にやってきた虎型イフリートが地に叩きつけられて灰と化す。
     炎血のついた武器をぶんと振れば、火の粉が宙に舞った。
    「……これで五体目。か」
     肩で息をする百々のつぶやきと同時に、また炎の揺らめきが二つ、こちらに向かってやってくる。イフリートだ。
     灼滅者たちの疲労は蓄積していたが、先の3体にやられた傷を回復する余裕はない。それぞれ再び武器を構えなおす。
     イフリートは逃げるそぶりも見せなければ、ここを突破しようとも引き返そうともせず、足を止めると唸り声を上げる。
    「手負いの獣は侮れぬ。確実に命脈を断たねばならぬな」
     ならば狙う敵は、より疲労がたまってる個体。百々はロッドの柄を握りなおすと、犬型イフリートの横っ腹を思いっきり殴りつける。
     キャンと鳴いて木に叩きつけられるイフリート。地面に崩れ落ちるその体に現れるのは、赤い逆十字。
    「詫びじゃないけどその力の悪用だけは絶対防ぐ……からな」
     引き裂かれ、散り散りになって消える炎を見送って、悠里はつぶやいた。
     残されたのは、熊型のイフリート。立ち上がり口内から炎を漂わせて吼えると、その炎を纏わせた鋭い爪で由衛に向かう。
    「ガゼル!」
     高明の声に、ガゼルは由衛の前に割り込んで庇った。そしてエンジン音を激しく上げて自身の傷を回復する。
    「よくやった!」
     ガゼルの活躍にニッと笑みを浮かべた高明は、陰業『Implacable』をイフリートの足元まで伸ばすと、その巨体を陰に喰わせた。
     暴れまわり陰を払いのようともがくイフリート。その隙にと、刀は最も傷の深い仲間をオーラの力で癒すと、陰を取り払ったイフリートを千鳥の霊障破が襲う。
    「ゥオオオオオ!」
     もがくイフリートの背後には、いつも間に死角に回り込んだレオンの姿。鋭い斬撃で、イフリートの苦痛の咆哮はさらに大きくなり、巨体がふらりと揺れ始めた。
    「畳み掛けよう」
     玲は長い髪を揺らし、足に力を込めた。そして打ち出したのは熱く激しい蹴り技だ。炎はイフリートを包み込み、メカサシミが機銃掃射で追い討ちをかける。
     涼やかな瞳は、標的を真っ直ぐ見つめる。
     桜の花が咲き誇るのは、由衛の咎人の大鎌『朱散花』。慣性の法則を利用して大きく振るえば、イフリートの体を大きく撃ち。
     イフリートが痛みにもだえる様に、咆哮をあげて暴れる。
     その隙にミナカタは炎次郎の傷を清らかな瞳で癒した。
    「絶対てめぇらをここで止めたる!」
     地面を蹴ってその大きな懐に飛び込んだ炎次郎。己の拳にありったけの力を込めて、炎に包まれる巨体に連打を喰らわせる。
    「俺は、スサノオのために戦っとるんやない。「人」の味方であるために戦っとるんや!」
     ここに集った八人は、皆、人を助けるためにここに来た。
     最後に、イフリートを思いっきり殴り飛ばすと、イフリートは地面に倒れると炎を燃え尽きさせ、そのまま灰になって空中に消えていった。


    「これで七体……」
     息を整えつぶやく由衛。
     これで一応のノルマは達成し、人々への被害も最小限に留めた。ことになるが――。
     灼滅者たちはしばらくそのまま山道を凝視していたが、静寂を斬り裂いたのは携帯電話の着信。
     相手は陽乃下・鳳花(流れ者・d33801)だ。
    『……そういうわけで、ここに来てから全部で六体を倒したよー。討ち洩らしもないから安心してね』
    「こっちも七体倒せたぜ。打ち洩らしもない」
    『……ん、わかった。六体目倒してこっちも終わったところや、ほんの少しばかり危なかったけども』
     悠里が応答すると銀夜目・右九兵衛(ミッドナイトアイ・d02632)も応え、灼滅者は各々緊張の糸を解くように息をついた。遠くからやってくる炎をもうしばらく見ていないところを見ると、灼滅者側の今回の仕事は終わったかのように感じられる。
     その自然な流れで撤収の話が出、灼滅者たちは山を降りることにした。
    「この貸しはキッチリ取り立てさせて貰うからな、ナミダ姫さんよ」
     高明の声は山彦となって響く。
     スサノオの姫ナミダの耳の届いただろうか。
     それぞれの灼滅者の胸に去来する、さまざまな思いが。
     昭和新山の大地の契りに、届いただろうか……。

    作者:朝比奈万理 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年8月12日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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