橙焔を透かすショールが僅かにあがりナミダが掌を翳す。ただそれだけで猛るスサノオ達は身を慎みむように熱を収めた。
「先程も言うたが、この戦いで力を得る事は儂にとっての悲願」
本来この場に相応しい静けさの中で、華奢な少女思わせる横顔のナミダだがその口調は誰にも阻めぬとでも言いたげに画然としている。その声を思惑を抱き言葉を尽くしきった灼滅者達はそれぞれの心でじっと聞いた。
「汝等の協力の申し出には感謝する」
スサノオを殖やし生かす――その一点を為してくれた者達へ己の身上に基づき義理にて返し続けてきたナミダ姫。彼女は、真っ直ぐに灼滅者達へ身を向けると唇の端を小さく持ち上げ言った。
「無事、スサノオ大神の力を得られたならば、1度だけ、汝等の為にその力を使うことを約束しよう」
――これは確かなるもの、彼女から示された約定。
斯くしてスサノオの姫ナミダと武蔵坂の間に、ガイオウガを守護するイフリートの軍勢を打ち破る『協定』が結ばれた。
●
「昭和新山にある大地の楔の一つを襲撃しようとしていたスサノオの姫ナミダと、スサノオの軍勢と接触したメンバーが、交渉を終えて無事に戻って来たわ」
集まった灼滅者達へ、遥神・鳴歌(中学生エクスブレイン・dn0221)が説明をしていく。
「彼らの交渉のおかげで、スサノオが無謀な攻撃を仕掛け、周辺地域が焔に包まれる事態は回避することが出来たみたい。まずは一安心ね」
でも、ね――と鳴歌は言葉を続けた。
スサノオは昭和新山への攻撃を諦めてはいない。
そのため……一般市民への被害を避けるため、スサノオの軍勢と連携して昭和新山から現れるイフリートを撃退することとなった。
「ダークネス組織同士の抗争だから、どちらに味方するのが正しいということは無いけれど、一般人への被害を減らすことを優先するなら、この方針は正しいと思うわ。
イフリートとの戦いはスサノオの軍勢が主力だけど、勝利のためには、灼滅者の協力が不可欠。
皆さんの力が必要だと、そう思うの」
昭和新山から現れるイフリートは100体に迫る数である。
イフリート100体は強力な戦力だが、スサノオも主力といえる戦力が揃っているため、まともに戦えば最終的にスサノオが勝利できる。
そう。まともに戦えば、の話だ。
「負傷したイフリートは『昭和新山に戻って休息することで、数分程度で負傷が回復してしまう』の。
このため、継戦能力の差でスサノオが敗北してしまう――それが、今の状況ね」
これを阻止するために、灼滅者は、彼らの戦闘開始後に昭和新山に移動し、大ダメージを負って撤退してくるイフリートを撃破していくことが必要だ、と鳴歌は言う。
「でも油断はしないでね。昭和新山に戻ってくるイフリートは、大きく負傷をしているけれど、戦う力を失っているわけではないの」
素早く撃破しなければ、新たに撤退してくるイフリートが増援となってしまうだろう。
また、灼滅者の存在を知ったイフリートが、前線に戻ってそのことを伝えてしまうと、イフリート達が昭和新山の灼滅者を駆逐するために、イフリートの部隊を送り込んでくる可能性もある。
そんな事態を避けるなら、確実な撃破が必要となるだろう。
1チームあたり、最低5体、できれば8体のイフリートを撃破する必要があるため、敵がダメージを負っていたとしても、かなり厳しい戦いになる。
「イフリートとスサノオ、ガイオウガとナミダ姫。
どちらに味方するかということには異論もあるかもしれないけれど、今は、目の前の事件を解決することに集中しましょう」
力ある者が一石を投じれば。
その波紋は、無力な者達をも巻き込んでいくのだから。
「こちらが敗れれば、周辺の地域に大きな被害が出てしまうのが、確実だからこそ――」
鳴歌はそう言うのだった。
参加者 | |
---|---|
紫乃崎・謡(紫鬼・d02208) |
望月・心桜(桜舞・d02434) |
近衛・朱海(煉驤・d04234) |
木元・明莉(楽天日和・d14267) |
ラススヴィ・ビェールィ(皓い暁・d25877) |
比良坂・柩(がしゃどくろ・d27049) |
上里・桃(スサノオアルマ・d30693) |
白石・明日香(教団広報室長補佐・d31470) |
●
北海道。裸山に、年月かけて育った森林帯がぐるりと囲む昭和新山。
夏の陽射しに青々とした色合いを見せる周辺の山野。辺り一帯に響くのは、鋭い獣たちの咆哮であった。
焔舞が如くの激しい戦闘故か、やや熱の増した地に隠れ潜む灼滅者たち。
その時、ラススヴィ・ビェールィ(皓い暁・d25877)と紫乃崎・謡(紫鬼・d02208)の耳が音を捉えた。
何かが駆けてくる――草木を抜け、荒々しい音を立て現れたイフリートは、戦いの爪痕が深く残る手負いであった。
激しい呼気とともに吐き出される炎を散らしながらも駆けてくる。
「アト、少シ……――ッ!?」
呟いたイフリートは視界の端を過った、白き炎の残滓に反応し唸り声をあげた。
「スサノオカ!」
鬱蒼とした茂みから垣間見える白炎を追い、イフリートは方向転換した。まだ見えぬ「スサノオ」を視界に捉えるべく駆ける速度を増す。
スサノオ形態で駆けるラススヴィと一定の距離を保ち並走していた謡が、ふと速度を緩めた。
傾斜を走る謡は見下ろし――纏う迷彩ローブを内側から掴み、やや姿勢を丸めて彼女は跳躍する。
まるで体当たりのような一撃に「ギャン!」とあげた獣の悲鳴は、林に響き渡ることなく掻き消えた。
重々しい音をたて体勢を崩したイフリートが斜面を滑り落ちれば、比良坂・柩(がしゃどくろ・d27049)の鬼腕が迫る。
刹那、桜の破魔弓から放たれた望月・心桜(桜舞・d02434)の矢が柩の精度を上げた。射掛けの姿勢を完全には解かず、自身の心と向き合うように、次を番う。
謡を追って飛び降りるラススヴィは、傾斜に生える木を掴み着地した。もう片方の手に掴む標識を、黄色へとスタイルチェンジさせる。
「スレイヤー!!」
殴り飛ばされ受け身をとったイフリートの声に、木元・明莉(楽天日和・d14267)は構えに入る直前、呟いた。
「ごめん」
深く息を吸う。呼気にのせたのは身体の柔軟を誘うものだった。葛藤も、感情も、吐き出さないまま胸中にとどめおく。
拳とともに雷電を走らせた。
「今回はたまたま利害が一致しただけさ」
柩が誰にあてるでもなく、呟くように言った。
(「スサノオ大神が、噂通り世界を滅ぼす存在なのだとしたら。
ガイオウガが、破壊を振り撒くだけの獣であるならば。
いずれ決着を付けなければいけないんだから」)
言葉が聞こえたのか、同じルート担当の千布里・采(d00110)へ一報をいれたのちに近衛・朱海(煉驤・d04234)は、ふと思う。
一枚岩ではないダークネス組織。武蔵坂学園も同様だ。
故に、
(「皆色々な考えがある。――私は皆の考えるような理性的な判断じゃなく、ただ感情が赴くままにイフリートを敵視し戦ってきた……それが正しいことだったかは、今は考えるのは止そう」)
無銘の低い唸り声が朱海を掠めていく。ざわりと掻き立つ何かに煽られたかのように、烈日の刃が鋭い斬撃を繰り出した。
「スレイヤー! ヤキ、ツクス!!」
告げ、オオオオオォン! と吼えたイフリートが激しい炎の奔流を放つ。
一番近い朱海を起点に円を描き駆け巡る炎は、明莉の前に飛び出した謡を直撃した。
地を這う低さで意思を持つ帯が走る。
上里・桃(スサノオアルマ・d30693)のダイダロスベルトが巡る炎を抜け、手負いの獣を貫いた。
(「私は人狼、宿すダークネスはスサノオ」)
スサノオに対して無関心ではいられない――魂に刻まれたかのように。
だが、イフリートたちとも関係を築きたいと、桃は思う。
「でも……両者の衝突で片方の味方しかできないのは、淋しいな」
貫くベルトを横へ払えば、イフリートの体内から溢れた炎が線を描いた。
「壁でも作ったつもりか? 悪いが突破させてもらうぜ!」
駆ける白石・明日香(教団広報室長補佐・d31470)の前にナノナノのここあが飛び出し道を作る。
反時計回りに振る大鎌が風を切り裂きイフリートに到達した。肉厚が伝わった瞬間、力をこめる。
順手から逆手へと持ち替え、遠心を利用して敵の間合いから素早く離脱する明日香。
刃が散らすのは、鮮血ではなく灼熱の炎だった。
●
新たに誘き出したイフリートの横薙ぐ剛腕と爆炎の塊は、喰らいついたが如くの深い傷、執拗な炎は謡と朱海の身を焼き、熱が内部へと浸透していった。
心桜が破魔弓の弦を弾き、清浄なる風を招く。更に弦を弾けば空気は清涼さを増して風は灼滅者の体を癒すものとなる。
敵眼前へと駆けた明莉が逆手に持つ桜刀を斬りあげた時、イフリートの大きな口がそれを止めた。ガチンと耳障りな音が鳴る。
鍔迫り合いともいえる二拍、ふっと力を抜く明莉。
「悪いな」
その視界には、背後をとった明日香がいた。
彼女は両手で力強く握る刀――不死者殺しクルースニクを振り被り、死角からの斬撃を放つ。
刃先から伝わる手応えに力を抜けば、勢いにのった刀は滑らかに敵の体を斬った。
「ギャオオウウ!!」
たまらず叫び声をあげたイフリートから桜刀を引き、飛び退き様に構える明莉。ラススヴィからの援護で精度の上がったホーミングバレットが敵を撃ち抜いた。
返す刀で追撃しようと明日香が振り向き見たところで、ドウッとイフリートが地に倒れる。
「これで三体目だな」
刃に残る炎を一振りで払い、鞘におさめた明日香が言った。
「ここで一度、心霊手術を施すのが良いと思うのじゃが」
心桜が提案する。
敵の動きを注視し、庇いに専念する謡と朱海の消耗は激しい。ナノナノのここあも三体目イフリートの猛攻撃に今は戦線を離脱していた。
明日香は地図を見て、頷いた。少し外れた場所にいるから、十分間の休息は挟めそうだった。
とはいえ、道ならぬ道をゆく獣が相手だ。迷彩ローブを纏い、灼滅者たちは油断することなく身を潜めるのだった。
地鳴りが伝わってくる。スサノオ勢とイフリート勢がぶつかり合っているのだろう。
桃と柩が心霊手術を終えて本来のルートまで戻ったその時、二体のイフリートが駆けて行くのを心桜は見た。呼び出したばかりのここあを抱き、身を屈める。
さらに三体目。
「あのイフさんが遅れているようじゃのぅ」
「……行きましょう!」
じっと様子を見ていた心桜の言葉に、桃が駆けた。
「先程のイフリートたちは、きっと再びここを通るはずです。それまでに引き離しましょう」
桃と謡が先行して駆ければ、木々が二人の道を作るように歪む。しなった木々は、しばらくすれば元に戻っていくだろう。
サウンドシャッターが展開された場。一瞬にして間合いへ移動した謡が、黄が映える錫杖で敵の胴を鋭く穿つ。遅れ、鈴の音が鳴った。
(「イフリートの活性化、ナミダ姫の協定。どちらもボク達の撒いた種に相違ない」)
死の中心点を貫き、イフリートを突き飛ばす。
(「此度は力なき人々を守る為の狩りとなろう。けれど、願わくば」)
いずれ幻獣種達との縁が互いの幸いとなれば――と謡は祈った。
「スレイ、ヤー!」
イフリートが吼える。
槍を回し、妖気を冷気に変換させた桃が次々とつららを撃ち出す。地を穿ち、左右と逃走の気配を潰し、敵が後退せざるを得ないまでに追いこんだ。
「今です!」
「任せろ」
桃の合図とともに、いわゆる対岸へ回りこんでいたラススヴィが瞬時に敵の急所を見出し、豪快に斬り上げた。
人狼形態の腕力をこめた一撃にイフリートの巨体は持ち上がり、斜面下へと移動した仲間の元に落ちていく。
柩が仰いだ瞬間、炎の翼を顕現させ、炎噴く体を癒しながら着地するイフリート。轟、と熱が波紋状に広がっていく。
熱波が灼滅者の髪を煽ぎ乱した。
「ジャマスルナラ、ソノノド、カミキル!!」
威嚇するイフリートに、藍の目を細める柩。
「望むところだよ。ボクはダークネスと馴れ合う気はないし、癒しを得られるなら誰が相手でも構わない」
片手は柄部を、もう片手は刀身に添えるが如くに構えた柩が接敵する。
非物質化した水晶片の横薙ぎは、敵の霊的防護を砕き、霊魂を破壊へと導く一手となった。
「さあ、昭和新山のイフリート諸君。
大人しくボクが癒しを得るための糧となってくれたまえ」
「オノレ……!」
炎獣は飛び退く。右前脚が裂かれ、ただの物体と化したそれを噛みちぎった。
敵に立ち向かう時、事件の解決に向かう時、様々な場面において、戦う理由は灼滅者の数だけ在るだろう。
納刀し、弦を引き絞るラススヴィの狙い定めた鏃が明日香へと放たれ、彼女の超感覚を呼び起こす。
跳躍した無銘が斬魔刀で首を斬り裂き、対角から攻める朱海の刀纏旭光が陽射しに入り煌く。
下段から斬り上げ、素早く柄を握りなおし刃を返した。獣の眉間から胴にかけて一刀両断する。そして噴出する炎を払いつつ身を翻した。
再行動ののち間合いを抜けた朱海に続き、さらに灼滅者の攻撃が重なる。
数分後、イフリートは地に倒れ伏した。
●
休息して力を取り戻したイフリートを一体見送る。山を下り、野を駆けた先はスサノオ軍勢との戦いの場だ。
すべてを倒すことはできないが、戦線へと戻るイフリートの数を減らせば助力になる。あとのことはスサノオたちが引き受けてくれるだろう。継戦力の差がある以上、あちらもまた激戦の最中だ。差を着実に狭めるのが、灼滅者たちの今回の役割だ。
もう一班の位置を確認し、網をはるように索敵していく。
五体目を倒し、やがて駆けてくる六体目を再び謡とラススヴィが誘導する。余力はまだある。八人は敵がやってくる以上、出来うる限り粘るつもりであった。
剛腕による前足の殴りは、イフリートに張り付く朱海を邪魔だとばかりに襲う。
ここあのしゃぼん玉に続き、唸る無銘が浄霊眼を注いだ時――桃が背後から吹き付ける微かな熱波に気付き、半身を別方向へ向けた。
「新手がきます!」
仲間に告げた三拍後。
「――!? コレハ……オマエ、ヤマヘユケ!!」
登ってきたのだろう。茂みから現れ戸惑いを見せたものの、炎翼を顕現させる新手の獣は、灼滅者と戦闘中のイフリートを癒し促す。
「鉢合わせか」
桃の声掛けに、既に向き合う姿勢となっていた明莉。間髪入れず突っこんでくる新手に牽制の弾を撃ち続ける。
その間、場に出来たであろう隙に離脱を試みるイフリートだったが――隙など、無かった。
眼前で死者の杖が風を切り、敵にたたらを踏ませた。
「逃がさない」
柩が敵の脚を杖で強打し、魔力を流しこむとイフリートの雄々しい炎のたてがみが激しく揺らぐ。
体内に柩の魔力が巡るも一歩を踏み出したイフリートに、明日香の大鎌の刃が回りこむ。首部を長柄で強打し怯ませた明日香は、幅広く持つ手を、柄を引いた。
刃はあっけなく敵の肩から胸元までを斬り裂き、さらには懐へ飛びこんだ桃の断斬鋏が敵のたてがみを断ち斬る。
ジャキンジャキンと擦れる金属の音は、炎を喰らい、桃の糧となっていく。
収束したかのようなたてがみが、勢いよく燃え上がりはじめた。
次の瞬間、イフリートは体内に満ちた魔力の爆破に、噴出した自らの炎の中、果てた。
「マニアワナカッタ、カ!!」
新手のイフリートが吐き捨てた。明莉を横目に離脱しようと身を翻す。
「誇り高き者が逃げるのかい」
「!! スレイヤーゴトキ、テキデハナイ!」
謡の挑発に憤ったイフリートが、オオオオオン! と吼える。
ザザッ――と低木の間を駆け灼滅者たちがイフリートを取り囲んだ。
腕を覆う猫神から、霊力を撃ち出し仲間の浄化に動く心桜。
「ここあ、頼むのじゃよ」
「なの!」
太い前脚で地面を蹴り続け威嚇するイフリートに、朱海とここあが一定距離を保ち、張り付く。
「さぁ、幾らでも来るがいいわ」
(「憤怒こそが私の起源。この消せない灯火を炎に変えて、今はただ炎獣を討つのみ」)
炎纏う朱海が激しい蹴りを放つ。
「ヤルナ!」
イフリートが吐き出しうねりを見せる炎の奔流が、集束し、複数の矢となって後衛へと放たれた。
矢を掻い潜り動く明日香、明莉、ラススヴィの三人。遅れて桃の攻撃がイフリートを穿つ。冷気のつららでほんの一瞬、熱が和らいだ。
ガキィッ!
と、敵の爪を削りながらも切り結ぶ明日香が作った隙に、明莉が胴下に銀櫻刃を潜らせた。
「……チィッ」
舌打ちし、後脚で立ち上がるように飛び退いたイフリートの腹から胸を狩る。削られた肉はすぐさま炎の残滓へと変化した。
明莉の持ち手が変わり鎌の刃が遠のいた瞬間、懐に入ったラススヴィが正確な斬撃で胴を切り開いた。
体勢を立て直す前の連撃に、イフリートは一度地面に倒れ、起き上がる。
同時に膝をつく朱海、そして傾ぐ体を一旦木に預けたのち自立する謡。裂帛の声を上げた。
後衛を庇い、炎の矢に貫かれた部分は肉が灼け、じわりと染み出す炎が、赤い血が、集い伝い落ちていく。
「……ッ」
衝撃に視界がぶれるも、刀を地に突き立ちあがった朱海は前へと駆ける。霞みから回復しつつある視界は接敵に前を目指す柩を、そしてイフリートを捉えた。
心桜の矢が流星の如き煌きを残しながら、その背を追う。
灼滅者の攻撃に、今一度逃走の意思を見せるイフリートだったが、ことごとく阻まれてしまった。
重なる攻防。やがて、炎獣の終焉が訪れる。
「これで、終いにしてやるぜ」
明日香の大鎌と明莉の桜刀が狙いを定め、同時に敵を斬り、撃つ。
ずしゃりと音を立てて倒れたイフリートは、胴と首が離れかけた身で呟く。
「ガイ、オウガ……! 還ラヌワガミ、ユル、セ」
そうして、息絶えるのだった。
戻ってくる敵が途切れた。
様子を見ていた灼滅者たちは、耳をすませた。
「近くに気配はなし、か」
誰かが呟く。
守りに専念し、酷く負傷した二人を心桜と桃が支えた。
「取り敢えず、目的は果たした」
迷彩ローブのフードを被りながら柩が言う。帰路もまた気を付けていかねば、どこで鉢合わせするかも分からない。
「そうだな、撤収するか。殿は任せな」
明日香が刀を掲げ、頼もしい言葉を放った。
幻獣種たちの戦い。桃は空を見上げ、ふと、眼下広がる地にて戦う彼らに想いを馳せた。
(「スサノオとイフリートにはどんな因縁があるんだろう」)
戦いの熱に煽られた地の風は、涼しくもなく優しくもなく、安堵の息をつく隙間すら、ないように思えた。
作者:ねこあじ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2016年8月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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