りんごモッチアと夏の海

    作者:聖山葵

    「もっちぃ、もっちぃ~」
     上機嫌で砂浜にりんごの絵を描くご当地怪人を眺めていた不渡平・あると(相当カッカする女・d16338)は、震える手でサングラスを外し、とりあえず言いたいことがある奴はこの場に残れと呟いた。
    「って、そもそもあたししかいねぇじゃねか!」
     ノリツッコミだった。メモでも取るのに使っていたのか、八つ当たり気味に叩きつけられたクーゲルシュライバーが砂の上を撥ね。
    「しっかし、青森とかにはりんご餅ってのがあるとは知ってたが、本当に居るとはな……」
     すぐに止まったそれを歩いていって拾い上げたあるとは再び、ご当地怪人へ目をやった。
    「もっちもち~♪」
     りんごの果肉に赤みを帯びさせたような色の餅で一糸まとわぬ少女の姿を作ったかの様なフォルムのそれは、謎のメロディを口ずさみ身体を揺らしながら、りんご餅を賛美する言葉を砂へと刻む。
    「おっぱいぷる~んぷる……って、何言ってんだ、あたしは」
     そう、ご当地怪人がまだ気づいていないなら好都合。今見たことを学園の仲間達に伝えるべき。頭を振ったあるとはすぐさま踵を返そうとし。
    「え」
     直後にペキッと足下が鳴った。漂流物の小枝を踏み折ってしまったらしい。
    「……見てしまったもちぃね?」
     何でこんな所に枝が落ちてるんだバーカと毒づく間もない。音を聞きつけたご当地怪人はあるとの方へと歩き出しており。
    「ちくしょーめぇぇっ」
     あるとは慌ててその場から逃げ出したのだった。

    「……とまぁ、そんな感じでご当地怪人を目撃してな」
     何か悪さをしでかす前に何とかしようと思うんだとあるとは言った。
    「えーっと、そのご当地怪人、闇もちぃしかけの一般人ってことはあったりする?」
    「無いと断言は出来ねぇが、あたしはエクスブレインじゃねぇし何ともなぁ」
     まぁ、仮に闇堕ちしかけた一般人だったとしても、救出するには戦ってKOする必要がある。どのみち戦いは避けられないだろう。問う鳥井・和馬(中学生ファイアブラッド・dn0046)に嘆息して見せたあるとは、ボールペンの書き込みがある地図を広げると、一点を示した。
    「あたしがご当地怪人を見つけたのがだいたいこの辺り。見つかって逃げ出して来てそんなに時間は経ってないし、場所は砂浜だから足跡で追跡出来る可能性もある」
    「砂浜、かぁ」
     夏だから泳ぎに来る人とか居る可能性はある、と尋ねる和馬にあるとは首を横に振って見せた。
    「あたしが行った時には誰も居なかったからな」
     ご当地怪人が砂浜に字を刻む邪魔をされないように追っ払っていた可能性もあるが、不安なら人払い系のESPを用意して行くのも手だろう。
    「で、戦いになったらたぶんあいつは影業のサイキックに似た攻撃を使ってくる。身体の一部を触手っぽいモノに変形させようとしていたからな」
     逃げるのが一歩遅かったら、伸びてきたそれに絡みつかれていたかも知れないというのがあるとの談。
    「プラスしてご当地ヒーローのサイキック、とかかな?」
    「おそらくはな。攻撃手段にヤな予感しかしねぇけど、放置してめんどくさいことになっても困るからな」
     よろしく頼むとあるとは君達に頭を下げるのだった。
     


    参加者
    アルゲー・クロプス(轟雷ノ鍛冶士・d05674)
    神凪・燐(伊邪那美・d06868)
    不渡平・あると(相当カッカする女・d16338)
    望山・葵(わさび餅を広めたい・d22143)
    イヴ・ハウディーン(怪盗ジョーカー・d30488)
    鑢・七火(鬼斬ノ太刀・d30592)
    風上・鞠栗鼠(剣客小町・d34211)
    華上・玲子(鏡もっちぃこ・d36497)

    ■リプレイ

    ●ゆくひとと
    「こほん。ええと、義弟の双調もかつては津軽三味線怪人でした。りんご餅のご当地怪人はとても他人事とは思えません」
     咳払いをして自らの気持ちを語ったのは、神凪・燐(伊邪那美・d06868)だった。寄せては返す波と、先端を波に洗われる砂浜。
    「有無、久方ぶりだ。……闇堕ちモッチアか」
     海の更に向こうを、ここではない何処か遠くへ目をやっていた鑢・七火(鬼斬ノ太刀・d30592)が苦笑したのは、海の連想させた誰かとの記憶が原因か、それとも。
    「……なんと言うか、前に同じようなことがあり殴られた記憶があるな」
     最初は、イヴ・ハウディーン(怪盗ジョーカー・d30488)にそして華上・玲子(鏡もっちぃこ・d36497)へと視線を向け。
    「本当にSUNXもっちぃ」
    「今回は青森県や。青森はリンゴ……後は餅」
    「あ、鞠栗鼠ちゃん」
     熱意は充分と言うことか。七火自身を含む協力してくれる仲間へと感謝を一人一人に告げていた玲子は誰かに説明するかのように話す風上・鞠栗鼠(剣客小町・d34211)の姿を見つけ、歩み寄る。
    「まぁ、コミュニケーションは大事だけど、それはさておき……りんご餅か。けっこう果物系のお餅も多い気がするんだぜ」
    「そうですね。ですが、なんで海にいるのでしょうか?」
     ポツリと漏らした望山・葵(わさび餅を広めたい・d22143)の言葉に相づちを打ってから首を傾げたのは、鳥井・和馬(中学生ファイアブラッド・dn0046)の傍らのアルゲー・クロプス(轟雷ノ鍛冶士・d05674)。
    「まぁ、確かにわかんねぇことはあるが、ここで考えててもな。会ったら聞けるかも知れないし、あんときゃ一人だったから逃げたが、今度は数も揃えたから大丈夫だろ?」
    「えーと」
     楽観的に言ってのけた不渡平・あると(相当カッカする女・d16338)へ和馬が何とも言えない視線をやると、サングラスを外してあるとは言った。
    「……缶詰の特売は諦めたのかって思った奴はここに残れ」
     と。ただ、待つまでもなかった。距離的に声の聞こえなかった灼滅者が先に行ってしまい、それらしい形になったのだ。
    「そんな訳ないだろ、ハンナ姐さんに託したんだよ! あたしをぼっちと思ってる奴なんか大ッ嫌いだ!」
    「だけどあると姉ちゃん」
    「だけども何もない、今頃全力疾走で胸さえ弾ませながらお店に向かってくれてるはずだ。そう、おっぱ」
     吐き捨てる自身へ何か言おうとする和馬へ被せるようにしてあるとは更に続けるつもりだった。
    「そうじゃなくて、みんな行っちゃうよ?」
     和馬が本当に先に行っちゃってる面々を示さなければ。
    「ちきしょうめぇぇっ!」
     あるとが慌てて駆けけだしたのは言うまでもない。

    ●であい
    「『ふむ……今回は、リンゴ餅を愛した一般人の闇堕ちのようだ。少年が無事で在ることを祈りたい』……とはるひ先輩はいいそうだな」
    「既に何か被害に遭うかもって仮定されてる?!」
     はるひの格好を真似しつつ不吉なことを口にするイヴにようやく追いついた和馬は、とりあえずツッコんだ。
    「……大丈夫です。和馬君はステロが守ってくれますから」
    「そうそう、和馬先輩、落ち込まないでくれよ」
     が、それをただの強がりとでも見たのか、声をかけてくるアルゲーとイヴに和馬はそう言う事じゃなくてさと言いつつ、視線を動かす。
    「人員も確保したし――」
     先にいたのは、今にもフラグを立てんとするあるとの姿。
    「こう、オイラ競い合うようにフラグを立てなくてもいいんじゃないかなぁって……」
    「あー」
     口元に乾いた笑いを貼り付けた犠牲者候補の言葉に納得したような声を上げたのは誰だったか。
    「リンゴ餅怪人か。エロスとプリティな融合……是非とも、スカウトしたいわ」
     砂浜を眺めつつ呟いた鞠栗鼠は、ほなと前置きしてから怪談を語り始めて人払いをし。
    「おっ、この足跡は……居たぜ、多分あれだ!」
     砂浜に足跡を見つけたイヴがそれを辿って見つけた人影を指さす。
    「夏にリンゴか爽やかだよな。今回のモッチアはナイスバディみたいだけど……って、良からぬ事を考え鑢兄ちゃんに怒られるな」
     ちらりと後方を振り返ったのは口にも出した通り七火に咎められるのを警戒したのだろう。
    「そう思えば華上も学園に来てからは大分慣れたようだな」
     ただ、七火の視線は玲子の方を向いており。
    「ああ……鏡餅ヒーローで良かった」
     その玲子は何故か砂浜に字を書くご当地怪人を見つめて号泣していた。
    「餅でなければ今頃はどう感じていたか、こんな感動と出会いはなかったもっちぃ」
     プルプル震えつつ身体を屈め。
    「うおっ、ぶっ」
     次の瞬間、玲子にぶちかましをかけられた七火が倒れ込んで顔を砂に埋める。
    「えーと」
     どこからツッコめばいいのかわからない奇行を元モッチアの一人が披露した頃。
    「俺は望山葵、こんにちはなんだぜ!」
    「なっ」
     もう一人の元モッチアは現モッチアに声をかけて振り向かせていた。
    「モチモチ~♪モッチア♪」
    「って、歌がハモってると思ったら」
     そして、ツーテンポぐらい遅れて、歌声に自身のモノを重ねていたイヴにも気付き。
    「よっ、まだいたのか。何やってんだ?」
    「あ」
     フレンドリーに声をかけたあるとの顔を見て声を上げる。
    「見つけたもちぃ!」
    「へっ?」
     それは、ある意味予想しておくべきだったかも知れない。お絵かきを見られただけで触手を嗾けてきたご当地怪人とフラグを立てた上での再会だったのだから。
    「行くもちぃ!」
    「ちっ!」
     指の一本が伸び、触手と化すとあるとへと絡みつき。
    「離せ……! ひゃっ! や、やめろ! 変な所触るな……!」
    「あるとさん!」
    「あると姉ちゃん」
    「動くなもちぃ!」
     助けようとした燐達をもう一方の手で制しつつご当地怪人リンゴモッチアは問うた。
    「それで何の御用もちぃ?」
     と。
    「「へ?」」
    「この人は、私に見つかった時逃げ出したから捕まえたもちぃよ」
    「あぁ、言われてみれば見つかって逃げ出したと話してましたね。ですが、お嬢さんがはしたない真似をしてはいけませんよ?」
     幾人かがあっけにとられる中、納得しつつも燐は穏やかにリンゴモッチアをたしなめ。
    「っ、確かにエレガントな真似だとは思ってないもちぃよ。けど、逃げた相手が仲間を連れて戻ってきたとなると気になるもちぃ」
    「いや、燐姉ちゃんが言ってるのは、人質とってる事じゃなくてその格好についてだと思うんだぜ」
     怯みつつも反論したご当地怪人へ葵は指摘しつつも理解していた。
    「格好? りんご餅の身体、素敵だと思うもちぃよ?」
    「やっぱりなんだぜ」
     そう、他のモッチアの例に漏れず自分の格好に羞恥しなければ疑問も抱かないといういつも通りの展開を。
    「いやいや、服装的にヤバイよな? っ、服装?」
     ツッコミを入れようとしたイヴも途中で気づく。餅が裸の女の子の形をとってるご当地怪人は服なんて着ちゃ居ないのだ。
    「ひいっ! ど、どこに入ってやがる!」
     ただ一本の触手で一名分のフラグを回収しつつ、一同と向き合うだけ。
    「そうなのか、もし悩みとかあれば相談に乗るんだぜ」
    「悩み……そう、もちぃね。誰かに聞いて貰えばすっきりするかも知れないもちぃ」
     だが、灼滅者達からすれば、向こうから足を運んだ理由を尋ねてくれたのは渡りに船。葵が話を振ると、怪人は語り始めた。

    ●予想可能回避不能
    「青森県のリンゴ餅は、珍しさ故にお土産屋さんでは直ぐにウレキレチャウ人気商品よ!」
     ご当地怪人の話に補足する形で玲子が知識を披露する。
    「まぁ、人気があるのは良いこともちぃ。だけど、そこに胡座をかいていては三流もちぃ! こうして密かに誰も居ない砂浜にりんご餅を賛美する言葉を書くことで、話題作りしつつりんご餅を広める。ステルスマーケティングって奴もちぃね。ペンフレに『りんごのお餅があるなんて知らなかった』とかもう二度と言わせないもちぃ」
     ぐっと拳を握ってりんごモッチアの口にした後半部分がおそらくは闇もちぃした理由なのだろう。
    「せやったんか。努力なんやな。絵も歌も上手いし。今はリンゴ餅の次代ウェーブが来てるよ」
     イヴにリンゴ餅食べさせていた鞠栗鼠はご当地怪人を褒めつつその胸元を眺め。
    (「この子は、次代の学園ど胸囲になれる子や」)
     謎の確信をしつつも、話題を変えて名前や趣味を尋ねれば。
    「吾門・里緒(あもん・りお)もちぃ」
     そう名乗ったご当地怪人は歌うことと絵を描くことが趣味だとも明かした。
    「……砂浜に文字を書くのが好きなのかと思いましたが、絵と歌の方が好きだったんですね」
     思い人に寄り添うアルゲーはポツリと漏らしすと、ともかくと続け。
    「……このままにはして置けませんし」
    「あ、うん」
     顔を赤くしたアルゲーに耳元で囁かれた和馬がサイキックソードを密かに構えた。
    「しっかしなぁ、折角リンゴ餅愛しているのに、このままの姿ではリンゴ餅を広められないんやないやろか?」
    「そう、もちぃ?」
    「そ、そんなの入れるんん゛」
     鞠栗鼠が説得をするも未だに触手に捕まっていた誰かが今度は口に触手の先端を突っ込まれていたのだ。
    「ふぅ、ようやく狙った場所に入れられたもっちぃ。りんご餅の味を知れば虜になること間違いなし、これで信者を一人獲得もっちぃ」
    「あー、その触手、そっち目的だったのか」
     割と真っ当な理由で触手を操っていたことに誰かが意外そうな顔をしたが、抵抗したせいか、犠牲者の方はちょっとお子様には見せられない有様であり。
    「って、感心してる場合じゃ無いんだぜ! ジョン、フォローを」
     我に返った葵は霊犬の名を呼び、あるとを助けるべく飛び出す。仲の良さそうなクラスメイト二人が羨ましく、自分もガールフレンドが欲しいという下心が無かったとは言えない。だが、あるとは同じクラブに所属する前からの知り合いでもあった。
    「このっ」
    「ぷはっ」
    「あっ」
     掴んだ触手を口から引き抜き、それにりんごモッチアが気づいた直後。
    「あると姉ちゃん。もう少しの辛抱なんだぜ! うおおおおっ」
     白馬の騎士になれそうだった一人の元モッチアは忘れていた。
    「っと」
     自分がラッキースケベ体質であったことを。力任せに触手を解こうとしたことでバランスを崩し、咄嗟に掴んだ場所が悪かった。
    「あひぃっ!」
    「ご、ごめ、うわっ」
     謝って手を放そうとした瞬間、触手は二人纏めて捕縛すべく動きだし。
    「アッー!!」
    「っ」
     どうなったかは、敢えて言うまい。間接的に表現するなら、更に顔を赤くしたアルゲーが思い人の陰に隠れたり、七火が慌ててイヴの目を覆おうとした惨状がそこにはあった。
    「とりあえず、これ以上犠牲者は出せんな」
     一件無害そうに見えたという見解を訂正する余地しかない現状に七火は呟いて妖の槍を構え。
    「うん」
     物真似でイヴに無事であることを願われた誰かがこれに同意する。
    「……なんでこんな事をしてるかはわかりました。ですが」
    「……あ、あたしらにも……放っておけねぇ理由がある」
     ようやく和馬の影から顔を出したアルゲーも、助けに来たはずの誰かとすんごい体勢になってる本日最大の犠牲者も現状をよしとは出来なかった。
    「それじゃしっかり戻してやるんだぜ! 行くぜジョン!」
    「わうっ」
     そして、戦いは始まり。未だ絡み合ったままの葵は霊犬のジョンを嗾け。
    「……ううッ、畜生めー!」
     触手の犠牲となっていたもう一人も拘束を振り解くべく暴れた。
    「えーと、状況悪化する未来しか見えないんだけど」
     とか言ってはいけない。戦うのは、捕まってる二人だけではないのだから。
    「リンゴ餅ちゃん……里緒ちゃん頑張って! 絶対に助けるもっちぃよ」
    「ナノナノ!」
     人間の意識の方へ声援を送りつつ玲子が帯を射出すれば、ナノナノの白餅さんも一声鳴くと前へ進み出る。
    「っ、この程」
     射出された帯の先から身体を捻って逃れようとするりんごモッチアだったが逃れるは能わず。
    「もぢゃばっ」
     七火が捻りを加えて突き込んだ妖の槍の穂先が身体を引っかけたのだ。
    「イヴっ」
    「わかってるぜ、鑢兄ちゃん!」
     若干名残惜しそうに突かれて揺れたご当地怪人の胸を見つつも、視線を切るなりイヴが影を操り。
    「好機ですね」
     地を這うように進み獲物を一呑みに仕様とする影だけでなく、燐の撃ち出した帯までもがりんごモッチアへ殺到する。
    「戻ってきてや!」
     更には鞠栗鼠のウロボロスブレイドもご当地怪人に絡み付こうと伸び。
    「……和馬くん」
    「あ、うん」
     魔力を宿した霧を展開するアルゲーは思い人が自分の声に応じ、光の刃を飛ばすのを見た。
    「もちゃぎっ、く、良くもやったもちぃな!」
    「……ステロ」
     幾つも傷を作り、仰け反りながらも指を触手に変えてりんごモッチアが伸ばせばビハインドのステロが前に進み出て盾となり。
    「……近づく時は触手に注意ですね」
    「そうですね、でも」
    「もぢゃっ」
     近づかなければ問題ない。燐のかけた呪いでご当地怪人の肌の一部が石へ変じ。
    「はぁ、はぁ、はぁ……」
    「身内にも津軽三味線をこよなく愛す子がいますので。貴女もりんご餅を愛してやまないのでしょう。さあ、貴女もご当地ヒーローになって胸を張ってりんご餅を広めましょう!! 身内も胸を張って津軽三味線を広めていますよ!!」
     傷を幾つも作り、荒い息をするりんごモッチアへ燐は訴え。
    「その力、行き過ぎると逆にりんご餅を含め全てを滅ぼしかねないシロモノなんだからな」
    「もぢんべっ」
     緋色のオーラを宿した斬撃の軌跡に押されるようにご当地怪人が仰け反った。
    「もちゃああっ」
    「やはり、そう来るか……くっ」
     戦いは続く。無害そうに見えたのも過去の話。薙ぐように腕を振るい、先端を刃に変えて伸ばしたりんごモッチアの指から七火は我が身を盾にして仲間を庇い。
    「今度はこっちの番だぜ、まりりす姉ちゃん!」
    「ほな、行こか華上ちゃん」
    「な」
     二箇所で上がった他者を呼ぶ声に振り返ったご当地怪人が見たのは、自分に向かって落ちかかってくる巨大な腕。
    「しま、もぢゃ、がっ」
     潰されるより早く零距離からガンナイフの銃身を叩き込まれたりんごモッチアは、高速回転する杭に貫かれ、上がるはずだった悲鳴は異形の巨腕が押し潰す。
    「ぐ、も、ちぃ……」
    「恨むなよ、これも仕事なんでな……ってこれは姐さんの文句か」
    「もぢゃびゃあっ」
     尚も起きあがろうとするご当地怪人は次の瞬間、射出された光輪に斬り裂かれ。
    「これで、終わりです!」
    「もちゃああっ」
     蹌踉めいた身体は焔を纏った燐の足に蹴り飛ばされ砂の上に二度程はねると人の姿に戻り始めたのだった。

    ●私、気になります
    「おーい、怪我はないか?」
     少女の顔を覗き込み、葵が声をかける。
    「えっ、あ……」
     がばっと身を起こした少女が辺りを見回したのは、その直後だった。探したのは、おそらく、目の前の葵ともう一人。
    「ごっ、ごめなさいぃぃぃ」
     触手で絡めたもう一人を認めた少女が砂が額につくのも構わず土下座すれば。
    「モッチアにワルいヤツはいない!」
     と予備の服を渡しつつ玲子が擁護し。
    「まぁ、酷い目にあったのは事実だけどな」
     本日最大の犠牲者が見たのは、一緒に触手で絡め取られたもう一人。それは助けてくれた人間が居たからもう良いという意味合いのものなのか、それとも。
    「まぁ、無事助けられて何よりだ……」
    「色々とリンゴ餅仲間いるで」
    「学園に来ないもっちぃ?」
     ともあれ、少女は無事助けられたのだ。七火がちらりと視線をやれば鞠栗鼠と玲子が少女をスカウトしているところで。
    「そうだな、俺らと同じ元モッチアも沢山いるんだぜ、話も合うと思うし一緒にいかないか?」
    「えっ、ええ?」
     葵も加わって人数の増えた勧誘の話に少女は目を白黒させる。
    「……これで一般の方が来ても大丈夫ですね」
     そうして少女を数人の灼滅者が囲んでいた頃、戦いで荒れた砂浜を均していたアルゲーは顔を上げた。
    「あー、うん。一般人の犠牲が出ずに済んだのは何より、かなぁ」
     手伝っていたアルゲーの思い人が若干複雑そうに仲間達の方を見たのは、灼滅者の犠牲者は出てしまったからだろうか。
    「……気になりますか、葵くん達」
    「ちょっと、ね。あ、二人が付き合うようになるかとかそう言う意味合いじゃ無くて――」
     和馬は頷き、掘らなくても良い墓穴を掘り。
    「……少し、歩きませんか」
     やや唐突に少し顔を赤くしてアルゲーは提案する。
    「うん、、ありがと」
     バンドゥビキニに身を包んだアルゲーへ近寄る人影が一つ。やがて二人は砂浜を歩き出すのだった。

    作者:聖山葵 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年8月12日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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