まりんの夏だ、キャンプだ、エノッシー!?

    作者:相原きさ

    「みんな、海に行こう、浜辺に行こう!!」
     須藤・まりん(高校生エクスブレイン・dn0003)が、なぜか探索隊ルックでやってきた。
     一体、何があったというのだ、武蔵坂学園の君たちは、興奮気味なまりんを宥めるかのように理由を尋ねる。
    「実は、これを見つけてね……絶対、みてみたいと思わない? エノッシー!!」
    「エノッシー!?」
     まりんが取り出したのは、江の島っぽい海岸で、恐竜っぽい影が見える、いかにも合成……いや、怪しい写真だった。
    「どうやら、エノッシーは、深夜1時に現れるらしいの。これをスクープ出来たら、凄い学園新聞にならないかなー? 面白そうだと思わない? ついでに海でキャンプするのも楽しそうじゃない?」
     まりんの瞳は、きらっきらに輝いていた。
     正直、止められない。
     これは、まりんと共に行き、ワイワイとキャンプを楽しみながら、えらいことにならないよう、しっかりとお守りしなくてはいけない!
    「あ、出かけるのは8月5日になるから、みんな、よろしくね! たっくさんの参加を待ってるよ!!」
     それって……まりんの誕生日じゃないかー!?

     こうして、波乱に満ちた(?)江の島付近の浜辺キャンプが実行に移されたのであった。


    ■リプレイ

    ●まずは海で楽しんじゃお!
     須藤・まりん(高校生エクスブレイン・dn0003)の話を聞きつけて集まったのは、【ダンス・カテドラル】や【光画部】、そして【エノッシー捜索隊】らの面々、18人だ。
    「エノッシーを探すなら、昼のうちに目ぼしを付けておかないとね」
     そう言って、立花・奈央(正義を信ずる少女・d18380)はさり気なく。
    「というわけで、さあ! まりんちゃん水着に着替えて。エノッシーがいそうな場所を探しに行こうよ」
     水着を着るよう促していく。
    「水着が必要なのかが、少し疑問だけど、うん、いいよー」
     ちょっぴり首を傾げつつ、水着に着替えたまりんがやってきた。
    「ん? あれってもしかして……」
     奈央が見つけたのは、なんと水着コンテストの案内板。とたんに奈央の瞳がきらーんと光った、気がした。たぶん。
    「え? な、なに?」
    「きっと飛び入りで出来るんじゃないかな? こんなに可愛いいし折角だから出ちゃえ出ちゃえ。まりんちゃんの参加書類とか普段は戦争でお世話になってるし今日は私が事務手続きとかやっとくね」
    「え? えええ? えええええ!?」
     奈央の鬼のような巧妙(?)な策略により、まりんはいつの間にやら水着コンテストに参加することに。上位には入らなかったが、特別賞をいただいたようだ。そんなまりんの様子というか、水着姿をバッチリ撮るのは奈央と……あれ、他にもカメラを片手に激写してる村本・寛子(可憐なる桜の舞姫・d12998)と海老塚・藍(アウイナイト・d02826)の姿も見えるぞ?
    「も、もう、恥ずかしいよー。エノッシーが出てくる場所、見つけるんじゃなかったの?」
     しっかり特別賞の景品を手に、戻って来たまりんを出迎えるのは奈央ら三人。
    「コンテストも済んだし、エノッシー探しに行こうか。海を探すなら水上バイクだよね」
     奈央がそう言って、コンテスト同様、さくっと手続きを終了させる。
     まりんと乗るのは、やっぱり奈央。ちなみに運転は奈央だ。
    「じゃあ、寛子は藍ちゃんと楽しむの!」
    「うん、了解」
     まりんチームと寛子チームとで場所の目星をつけるはずが……。
    「きゃー! たのしー!」
    「スゴイスゴイ!!」
     すっかり楽しんじゃったのはここだけの話。
     そんなこんなで夕暮れ時になってしまったので、一行はバーベキューの準備に取り掛かったのだった。

    ●楽しいバーベキュー!
     そして迎えたバーベキューの時間!
     皆が持ち寄った材料が、網の上にどんどん並べられていく。
    「はいどうぞ、まりんちゃん。これはボクからのプレゼント♪」
     藍が差し出したのは、オレンジ色っぽいオリジナルカクテル。
     カクテルと言っても、オレンジ、パイン、レモンの3種類のジュースにハチミツを混ぜてシェイクしたミックスジュースだ。
    「オリジナルカクテルで、名前はツンデレラなの」
    「わあ、ありがとう!」
     藍のカクテルを受け取ったのを見て、寛子が乾杯の音頭を取る。
    「君の瞳に……」
    「「かんぱーい!!」」
     さっそくまりんは藍のジュースを飲んで。
    「ちょっと酸っぱいけど、後で甘さが来るね。とっても美味しいよ!」
     その言葉に藍も嬉しそうに微笑んだ。
    「ひゃっはー、バーベキューだ! 焼くぜ、超焼くぜ! ジャンジャンいきまっしょー! 今夜はエノッシー探しなんだからしっかり食べないと」
     妙にハイテンションでバーベキューを食べ漁るのは、アンカー・バールフリット(彼女募集中・d01153)。寛子も実家の北海道から取り寄せた美味しい野菜とお肉を大きく切り分け、豪快に網の上で焼いている。
    「Hi、まりん。せっかくのバーベキューだし、オーストラリアの牛肉を味わってみてくれないカナ」
     オーストラリア出身のローラ・トニック(魔法少女ローライズ・d21365)も焼きあがったオーストラリア産の牛肉を片手に、まりんのところにやってくる。
    「お肉、ありがとう。ではさっそく……はふはふ、美味しいね!」
    「マリンスポーツで運動した後は美味しく食べて夜はエノッシー探しをすればスタイルアップ間違いなしだネ! まりんは可愛いから、さらにスタイルアップしたら、学園中の男子が放っておかないと思うヨ?」
     何故か大胆な水着でアピールポーズを決めながら、ローラはそう言ってみせた。
    「え? そうかなぁ?」
     思わずお腹の肉をつまんでしまい、まりんはちょっと残念な表情を浮かべていた時だった。
    「さあさあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 取り出したる、このシルクハット! ほら、何も入ってませんよね?」
     シルクハット片手に、種も仕掛けもないことを確認させるのは、さっきまでバーベキューを爆食いしてたアンカーだ。
    「そこに……よっと。今、汲んだばかりの海水を入れて……ワン、ツー、スリー!」
     どんと出てきたのは、なんとひまわりの花束だった。ちなみにひまわりは、8月5日の誕生花だったりする。
    「まりん君、誕生日おめでとう!」
     それをアンカーは、颯爽とまりんに手渡した。
    「ありがとう……とっても嬉しいよ」
     ぽろりと涙があふれて、眼鏡を外そうとしたそのとき。
    「なにっ!!」
     くるっと後ろを振り向き、ささっと拭きとって前を見た時にはもう、眼鏡がかけられていた。
     残念、アンカーはまりんの眼鏡を取った姿を見ることができなかった。
    (「これが後に眼鏡戦争における『エノッシー作戦』といわれる一大攻勢である……」)
     こっそりとそう、男泣きしたのは、皆には内緒の事である。
     ワイワイと美味しい時間もいつの間にか終わりを告げて、その後は、いよいよ今回の目的である、エノッシーと遭遇する時間であった。

    ●その頃、裏方さん達は
     まりんの見えない場所で、せっせと準備をしている一行がここに集まっていた。
    「うん、あともう少し。時間には間に合いそうね」
     送風機で空気を入れているのは、光画部の部長、保戸島・まぐろ(無敵艦隊・d06091)。ちなみに空気を入れているのは……。
    「ほー、エア遊具? トランポリンみたいに遊べるアレかー。なんだかすげー楽しそう!」
     だんだんテンションが上がって来たマサムネ・ディケンズ(乙女座ラプソディ・d21200)が言う通り、まぐろの用意したのは、恐竜のエア遊具であった。そのままだと妙にカラフルだったので、ここに来る前にあらかじめ、その上から水に強いペンキで恐竜っぽい色を塗り足している。
    「まりんちゃんからエノッシーの話を聞いてびっくりしたけど、それをプレゼントしちゃおうというまぐろ部長の発想にはもっとびっくり。こういう突拍子もないところが好きなんだけどねー☆」
     そう楽しそうにまぐろの空気入れを手伝うのは、卯月・あるな(ファーストフェアリー・d15875)だ。
     ちなみに、エノッシーを用意しているのは、まぐろ達だけではない。
    「これが安藤君の作ったやつかい? 何ともリアルで凄いねぇ」
     そう、感嘆の声をあげるのは、エノッシーづくりを依頼した富山・良太(復興型ご当地ヒーロー・d18057)だ。精巧に作られた頭と尻尾を見て、感心している。流石に体を作る時間がなかったらしく、この頭と尻尾だけだ。それを二人で分担して、海中に潜り、動かすのである。
    「本当は口と尻尾からビームが出る仕様にしたかったのですが、先輩方に止められました……」
     安藤・ジェフ(夜なべ発明家・d30263)が残念そうな声で呟いているが、その内容はちょっと物騒だぞ。
     さっそく見えないところで、良太とジェフは、事前に調べた動きを元に練習をし始める。
    「あれ? このボタン……」
     良太の担当する頭の方を受け取り、なにやら奇妙なボタンを見つけた。ビームが出るわけではないらしいのだが、これは一体……? 押したくなるけれども、何やら不穏な何かを感じ、良太はなんとか押し留まる。これはきっと押しちゃいけないボタンなのだ。たぶん、きっと。
     そんなこんなしていると、まぐろのエア遊具も準備ができたようだ。
    「さあ、光画部のみんなー! 中に入って!」
     まぐろのエア遊具は、ここからが真骨頂! まぐろの掛け声で部員たちがエア遊具の中へと入り、ぽんぽん飛び跳ねる。すると……。
    「うおっ! すげえ! 動いてるみたいだ! オレも行くぜ!!」
     マサムネも楽しそうに中に入って、ぽんぽん飛び跳ねている。
    「なんだか、子供の頃みたいで楽しいよねー☆」
     あるなもぴょんぴょん飛んで、とっても楽しそうな様子。
     さあ、準備は整った! メンバー全員、エノッシーになって、出現ポイントへと移動を始める。
     その一行にそっとついていく者が一人。
    「見つからないように……」
     何故かその手にバベルブレイカーを持って、緋山・燐(中学生ファイアブラッド・d23876)も2体のエノッシーの後をついていくのであった。

    ●まりんとエノッシー!
     すっかり日も暮れて、空には星が瞬き始めた頃。
    「うむ、飯も旨かったし、良い夜じゃの♪ ふおっ!?」
     途中まではよかったが、砂浜でぼふりと見事に転んだのは、イルル・タワナアンナ(勇壮たる竜騎姫・d09812)。一応、重要な役割を担っているのだが、この分だと、ちょっと心配になる。
    「エノッシー捜索隊、隊長(仮)の園観ちゃんです!」
     まりんとお揃いの探検隊ルックに身を包むのは、園観・遥香(天響のラピスラズリ・d14061)。って、隊長なの!?
    「むっ、そろそろ時間ですね。さぁ、桜井さん、カメラの準備をっ。竹くんはまた別のカメラとかをよろしくっ」
     遥香の呼びかけに動き出すのは、名指しで呼ばれた二人。
    「はいっ、隊員番号4番くらい、桜井ですっ! 本日はちょっとハイテンションでお送りしますですよー」
     桜井・夕月(満ちゆく月・d13800)は、カメラをしっかり持ってスタンバイOKな様子。
     歩きはじめる一行の前に、照明を持ちながら、カメラを構えるのは、竹尾・登(ムートアントグンター・d13258)だ。
    「え? なんで隊長より前にいるかって? 隊長はカメラマンと照明さんの後から来るものだよ」
     登はさも当たり前のように、そう言い放つ。
    「まりん先輩、あそこに夏の大三角形がありますよ」
     そのままエスコートするように、まりんを誘導するのは、藤林・手寅(無機質なポーカーフェイス・d36626)。でも、時間はまだ目撃時間の深夜1時にはなっていない。
     そこで動き出したのは、墨沢・由希奈(墨染直路・d01252)と黒岩・いちご(ないしょのアーティスト・d10643)の二人。
    「うわぁ、空を見て、星が綺麗……!」
    「ええ、星空綺麗ですね……」
     由希奈の声にいちごが頷く。二人の言葉に思わず、空を見上げるまりんに畳みかけるように。
    「出るのが午前1時ぐらいなら、それまでは星空を楽しもうよ」
     しっかりと由希奈は引き留めていた。しかし、これだけでは弱い。ならばと由希奈はさらに行動を起こしていく。
    「何だかんだで、私はいちごくんと一緒に来れて嬉しいよ」
     と由希奈がそういえば。
    「私も、由希奈さんと一緒で楽しいです」
     といちごが、なんと由希奈の手を握って来たではないか。その予想もしない行動に由希奈は頬を染めて俯いてしまったようだ。その様子を見て、いちごも照れている様子。
     そんなラブラブな様子を見せられたら、まりんとしては、じっくり観察……いや、見ないわけにはいかないだろう。
    「……って、まりんさんそんなに見ないで」
     更に照れまくるいちごに、まりんは生暖かい眼差しで微笑んでいる。
    「ふむ、エノッシーは、どこじゃろうか?」
     そろそろ頃合いかと、イルルが話を戻す。その間もイルルは。
    (「さて、上手くやれとるかの?」)
     と、エノッシー係のことを心配していると、イルルの手元にあるスマートフォンがぶるりと震えた。それを見たイルルがエスコート役の部員達の裾を引いて、それを知らせる。

    「あっ、あれかな!?」
     最初に驚くように見つけたのは、由希奈。
    「え? どこどこ?」
    「ほら、あそこじゃないですか?」
     いちごが指さしたそこに、大きいエノッシーがゆっくりと揺れながらやってきた。
    「おぉお!? すごい、すごい発見ぞよ、まりん殿……!」
     大興奮してイルルがそう叫ぶと。
    「ほ、本当にいたんだ……」
     さっそくエノッシーを撮影する手寅。ついでにまりんの驚く顔を撮るのも忘れない。
     と、その時だった。
     ばしゃばしゃばっしゃーんっ!!
     物凄い水しぶきと共に、なんと、もう一体現れた!!
     そうそう、この水しぶきは、こっそりついてきた燐が、バベルブレイカーを打ち込んで出したものだったりする。
    「すわ、親子エノッシー!?」
    「すごい……」
     イルルもいちごも、2体目の出現に物凄く驚いているようだ。
     2体目のエノッシーは、首と尻尾を優雅に揺らしながら、辺りを見渡している。
    「あ、まりんちゃんさん! エノッシーはとても臆病で人の気配に敏感だそうですよっ。もしくはすごい凶暴ですっ。近づき過ぎないように……そうっ、この距離、この角度がベストですっ」
     遥香が言ってくれなかったら、写真を撮るチャンスを逃していただろう。
    「あ、そ、そうだね!」
     遥香の教えてくれたポジションで写真を撮っていると。
    「こっちの角度も良い感じですよ」
     夕月も良い角度を教えてあげる。ちなみに夕月は、まりんだけでなく、わいわい騒いでいる皆の姿をバッチリカメラに収めている。
    「本当にエノッシーに会えて、本当に本当に嬉しいよ……」
     そう、まりんは嬉しそうに、遠くなるエノッシーを見送る。
     その間、藍は遊び疲れて、エノッシーを見ずに、ぐっすり爆睡していたことも付け加えておく。

     翌日。さっそく海岸にあったコンビニで、まりんは現像して来た写真を持ってきた。
    「写真出来たよー!」
     とたんに皆に囲まれるまりん。
    「まりん、どうだった? 撮れた?」
     まぐろだけじゃない。
    「撮れました?」
    「わあ、楽しみだね☆」
    「見せて見せて」
     どうやら、皆も心配している様子。
    「ほら! 皆のお蔭でバッチリ撮れたよ! ありがとう、これですっごい新聞が出来そうだよ!」
     まりんが見せた写真は、ピンボケせず、かつ、本物っぽくしっかりと2体のエノッシーを捉えていた。
     中には失敗したのもあったが、数枚、良いのが撮れているので問題ないだろう。
     と、そんなまりんに何かを手渡す者がいる。登だ。
    「誕生日おめでとう、須藤さん! 今日の思い出は『須藤まりん探検隊~夜の江ノ島にエノッシーは実在した!』というタイトルでいいかな?」
    「え、これって……」
     登が手渡したもの、それは昨日撮った写真やビデオの記録データだった。
     そのプレゼントを引き金にお誕生日おめでとうコールが続く。
    「まりん、お誕生日おめでとう!」
    「あ、誕生日もおめでとうございますですよ、良い一年を!」
    「まりんっち、誕生日おめでとー!」
     次々に送られる言葉に、まりんの胸もいっぱいになっているようだ。
    「いやはや、一夜のトキメキ、よい記念になったかの?」
     イルルが尋ねると。
    「うん、バッチリ!! 昨日と今日の事は、絶対に忘れないよ。皆も本当にありがとう」
     ぺこりと頭を下げるまりんの傍で、滅多に笑わない手寅が、僅かに微笑んだかのように見えた。
    (「楽しんでもらえたかな……」)
     そう心で呟く燐もホッとしている様子。
     こうして、エノッシー探索は、皆の素晴らしい連携で無事終わることが出来た。
    「またこうやって、みんなと遊べるといいな!」
    「もちろんだよ!」
     マサムネの言葉に、まりんは嬉しそうに頷いたのだった。


    作者:相原きさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年8月20日
    難度:簡単
    参加:18人
    結果:成功!
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