臨海学校2016～別府湾が温泉化？

■リプレイ

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「とりあえずイフリートが暴れないように何か探して運ぶのと、危ない海の生き物退治してくればいいんだよね」
　赤星・緋色（朱に交わる赤・d05996）は水中無線を用意してから探索開始している。水中呼吸を使って、海中へと潜っていく。
（「海底で赤く輝いてるっていうし、海底を泳いで探していけばいいよね。別府湾って他と比べるとそんなに深くないらしいし」）
　連絡を取り合いながら他の人と離れすぎないように探索を行う。水中眼鏡をつけた船勝宮・亜綾（天然おとぼけミサイル娘・d19718）も、同じくＥＳＰで水中で呼吸をして捜索範囲のガイオウがの力のかけらを探していた。
（「烈光さん、伝令役を任せましたよぉ」）
　水中にて連絡する手段も確保してある。霊犬も使って海面との連絡をとりあう。
「周辺海域の地図で捜索範囲は区分けしてあるから……」
　水中からの連絡を受けながら。ヴィントミューレ・シュトウルム（ジーザスシュラウド・d09689）は、主に現場指揮を担当している。空飛ぶ箒にて全体を見渡し状況把握。引き上げ用の網、ロープとフックも用意してある。双眼鏡を覗き深夜の海を眺めた。
「海底に眠った財宝の引き上げとかならテンション上がるんだけどなぁ」
　深夜の作業に何かあってもいかんので、ジュラル・ニート（風か光か・d02576）は周囲の警戒をした。ナノナノの軍師殿には水中で見張り役をやってもらう。
「課題がガイオウガの力の運搬とは……変わった臨海学校もあったものよ。さっさと終わらせて、皆でバカンスタイムとしゃれこむとしよう！」
　ワルゼー・マシュヴァンテ（松芝悪子は夢を見ている・d11167）の前には、暗い海が広がっている。水温は高く、我知らず肌が上気する。
「塊が吸収されたら少しはこの暑いの和らいでくれればいいのにね」
　桜川・るりか（虹追い・d02990）の頬からも汗が流れ落ちる。出来れば楽しく素敵に過ごしたいというのは、多くの者が意見を同じくするところだろう。
「しかし、ガイオウガの塊とは……どういったものなのかのぅ？　ガイオウガの力の一部であるのは確かなのであろうが」
　倉丈・姫月（白兎の騎士・d24431）は首を傾げつつ、主に護衛を行う。この海には、現在巨大生物が蠢いており。今も通常では考えられないサイズの魚とすれ違う。
「結構大きくなっておるのぅ。とはいえサイキックを使うわけでもなし。素手でも十分通用しようじゃのぅ」
　とりあえず。
　まとわりついてきた、大魚を払いのける。作業の邪魔をさせるわけにはいかない。したたかな反撃をこうむった魚は、一目散に逃げ出した。
「気をつけてガイオウガの力の塊を回収しないといけませんね。無駄な戦闘はしたくないですし」
　ラウラ・クラリモンド（咲く薔薇散る薔薇・d26273）の、LEDヘッドライトの明かりが深夜の海を照らす。ESPの水中呼吸を使い、潜りながらの作業だ。
　灼滅者達が、懸命に探索すること幾許か。
　最初に、不思議な赤い光をとらえたのは緋色であった。
（「これは、あやしいね」）
　輝きが強い方へと泳いでいくと、やがて海底のあるポイントに到達する。直径１ｍほどの巨大化したイクラのような塊が鎮座している。吸い込まれるような不思議な輝きの胎動。これこそが、ガイオウガの力の塊だった。
「見つけたね。さっそく連絡しないと」
　無線で仲間に場所を報せる。
　箒で空から海を見渡していたヴィントミューレは報告を受け。海上のボートへと降りる。地図で位置を確認しながら、網とロープに手をかけた。
「分かりました。今から、引き上げるための道具を投げますから、受け取ってください」
　水音をたて、味方の元へと事前に用意しておいたものが投げ入れられる。それを上手くキャッチした緋色は、網にガイオウガの塊を引っ掛ける。しっかり固定したのを確認すると、引き上げ作業に取り掛かった。
「よし、引っ張って！」
「見た目よりもパワーはあるぞ、力作業なら任せておけ」
　ワルゼーをはじめ、他の者も手伝って力をこめて引っ張っていく。ガイオウガの力の塊はゆっくりと海面から上がっていき、海上へとその姿を見せた。
　暗闇に包まれた夜に、赤光が輝く。
「せっかくガイオウガに吸収させて塊を消滅させられるんだもん。わざわざサイキック使ってイフリートにして灼滅する事はないよね。それに臨海楽しくなるし。戦闘しないって素敵」
　るりかは、そっと問題の塊をボートに乗せた。
　まずは、一つといったところだった。

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「あ、あちらでも発見されたようですね」
　亜綾からの伝令役たる霊犬が、海面の面々にガイオウガの力の塊を見つけた旨を報せてくる。一つ見つけたことを皮切りに、灼滅者達は次々と目的の物を探り当て引き上げていった。
「烈光さん、ちゃんと伝えてくれたみたいねぇ」
　仲間から投げこまれたロープを、亜綾はあちこちの対象までもっていく。何度も何度も海底を行き交っては、赤い塊にフックをつけ続けた。それらを皆で引っ張り、海上には多くのガイオウガの力の塊が姿を見せていた。
「結構な数になったな」
「少し休みますか」
　いっぱいになると海岸に水揚げし、休憩してから次へ移動、これを繰り返す。割り振った捜索エリアを回っては、潰していく。
「ガイオウガの力の塊を攻撃しないように気をつけないとですね」
　ラウラのヘッドライトが、また一つの赤の塊を照らした。海中での仕事は地上とは勝手が違うが、それでもスムーズにことは進んでいったと言って良い。
「うん？　軍師殿が、何か見つけたか？」
　ジュラルが見張り役としたナノナノが、何か反応しているのに気づく。ガイオウガの塊の引き上げ作業中に、大きな蛸がにゅるにゅると近付いてきたのだった。
「邪魔はさせないのじゃ」
　そこへ姫月が飛び込んで、巨大生物を退ける。思い切り蹴られた大蛸は、ちょっかいをかけるのを諦めてすごすごと逃げ出していった。
（「しかし、ガイオウガの塊とは……どういったものなのかのぅ？　ガイオウガの力の一部であるのは確かなのであろうが」）
　辺りを警戒しつつ、姫月は問題の塊に目をやった。
　今回の件について、ふと疑問と感慨が巡る。
（「塊がイフリートに変貌したり、ダークネスの肉体とはまったくもって不思議じゃのぅ……否。そう言えば、イフリートは元はガイオウガの一部じゃったという話。この塊も順当にいけばイフリートに目覚め、ヒイロカミ等といったものに行く行くはなったのじゃろうか……？」）
　そんなことを考えつつ、作業は結局夜明け近くまでに及んだ。成果としては充分なものであって、多くの塊が地上に集まった姿はなかなかに壮観。夜の空に赤い光が差し、何ともいえぬ印象を与える。
　集積したそれらを樽に詰め込み、護送の者達へと無事に引き継がれる。
　熱い夜はこうして、更けて、そして明けていった。

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「折角の夏休みで別府湾まで来たんだから遊んでから帰ろー。なんやかんやで倒した海産物もおいしいらしいし楽しみだよね！」
　翌日。
　緋色達は、別府湾に再度繰り出していた。危険生物の駆除という仕事もあり、既に何匹か狩っているものの。昨日よりバカンス気分であるのは間違いない。
「ふっふっふー。今年も新しい水着用意したし、遊ばなきゃ。海で！」
　太陽からの日差しが眩しく熱い。
　各々、着替えて海を満喫する気満々である。
「臨海学校！　教祖様含め、このメンバーで行けることとなろうとは僥倖。存分に楽しむことにしようかのぅ」
　姫月は、トランクスタイプの水着に上はパーカーを羽織っていた。早速、海の中に入ると水をぱしゃりとワルゼーへとかける。
「教祖様！　一緒に遊びませんか！」
「ならば、水泳競争で対決といこうか！」
　ワルゼーの方も今年のコンテストで着用したおにゅーの水着を着用している。二人は派手な水飛沫をたてながら、ものすごい勢いで泳ぎ始めた。抜きつ抜かれつのデッドヒートだ。
「楽しむときは楽しむ。ＯＮとＯＦＦはしっかり出来るようにするのが灼滅者じゃ。うむ！　海が青い。絶好の海水浴日和じゃな！」
「その通り。水遊びには最適だな、姫月殿。あとで砂の城などを作ってみようか」
　元気な声が木霊する。
　そんな仲間が泳ぐ様を、ビーチパラソルを立てて眺めているのは亜綾だ。
「おやつタイムですぅ」
　バスケットにはたっぷりお菓子が詰め込んである。スイーツをぱくぱくと口にし、サーヴァントに団扇を仰がせては快眠をむさぼった。
「せっかくだし写真を撮っておきましょうか」
　ヴィントミューレは要所要所の思い出の記録を残していった。一応、水着姿だが、泳ぐ気はなく。写真を撮ると同時に、砂浜でスケッチをしていた。今、描いているのは皆の荷物を持っているジュラルと手を合わせているラウラ達の姿だ。
「あ、ジュラルさんが荷物を持ってくれるのですか。ありがとうございます」
「なんの、なんの、これしき」
　ラウラは朗らかに、夏の海と、そこで戯れる仲間達を眺めた。
　口元は優しげに微笑の形を作る。
「今回の臨海学校は、シス・テマ教団の皆さんと一緒なので、本当に楽しいです」
　一方、多くの荷物を担ぎながら。
　ジュラルも内心の笑顔が止まらない思いだった。
（「いやぁこれはリア充まったなしですわ」）
　女性陣の水着姿に囲まれて……何というか、色々と日差し以外のものも眩しい。これぞ、海に来たときの醍醐味というものを存分に味わっていた。
「荷物持ちさんもいて、今回は豪華な臨海だよね～」
　るりかはと言えば、目をきらきらさせて海を――より正確に述べれば海の中の獲物たちをしっかりと見定めていた。
　巨大貝に、巨大蟹に、巨大烏賊に、巨大魚たち……。
「これいっぱい捕っていいんだよね。わー、食べ切れない分は干物にしてお持ち帰りできないかなあ。お刺身とか塩焼きとか煮つけとか色々バリエーションがあって、もう嬉しくて。張り切ってお魚確保……というか、危険生物駆除というか、この際どっちでもいいや」
　泳ぐの楽しみつつだもんね。
　そう、るりかは思うわけだが。やるべきことはやらないといけない。
「でかいのが出たぞ。一般客がいたら、避難を」
　泳ぎの勝負を中断して、ワルゼーは螺穿槍で大魚を一突きにする。次いでグラインドファイアと閃光百裂拳を、巨大な海の生き物たちに食らわしていく。
「相手はダークネスでもなし。スレイヤーカードは解放しなくてもよいかのぅ。最低限灼滅者の膂力があれば十分か。過剰戦力は無用じゃからのぅ」
　姫月は徒手空拳で立ち向かう。
　噛み付いてこようとした魚の口へと拳をお見舞いした。
「連携を封じます」
　ヴィントミューレは予言者の瞳を使ってから、バスタービームにフリージングデスで敵を牽制した。集中攻撃させている間は他者に牽制し、援護に回らせないようにする。
「海産物如き灼滅者の敵ではない、適当に無双してくれるわ」
　ジュラルは軍師殿共々クラッシャーで、危険そうな海産物をサーチ＆デストロイ。見事にスナイプして、次々と異様に大きな烏賊やら何やらの頭を撃ち抜く。
「40度って温水プールよりあったかいよね。ずっと入ってたから少しのぼせちゃったかも」
「危険生物駆除をきちんと終わらせましょうか」
　ふうと息を吐き、緋色はフォースブレイクを危険そうな大蟹へと打ち放つ。殲術執刀法にグラインドファイアに紅蓮斬とラウラは猛攻を繰り出し、前にでて味方の盾となる。
「おさかなーっ！　こんなに大きく育ってて、捕りがいがあるなあ。 思えば臨海って途方もない遠泳させられたりあんなことやこんな事がいっぱいあって……。やめよ」
　ちょっと思い出して首をふるふる振ったるりかであった。
　何にしても、海って素敵。
「むにゃむにゃ」
　ちなみに、亜綾は援護をサーヴァントに任せてのんびり昼寝を続行していた。夢の中では、蹂躙のバベルインパクトを派手に炸裂させているのかもしれない。
「折角のバカンス気分を邪魔してもらうのは、そろそろお終いにしましょう。今こそ、これまでの行動に裁きを下すとき。受けなさい、これがあなたに対する洗礼の光よっ」
　ヴィントミューレのジャッジメントレイ。
　 悪しきものを滅ぼし善なるものを救う、鋭い裁きの光条が全員の視界を覆う。
「全く、裁くとかそれ以前の話なんだけどね」
　ぼそりと。
　最後の敵が消滅した後の、その呟きが幕引きの合図であった。

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「ビーチボール持ってきたよ。あそぼー！　ワルゼーさん覚悟ーっ。ひっさーつ！」
　ぽよんぽよん。
　緋色のスパイクが、ワルゼーに向かう。波打ち際で遊んだり泳いだり。それに、倒して残った魚介類をバーベキューにしたり。良い匂いが、食欲を刺激する。
「おっと」
　ボールを受けて、ワルゼーがバランスを崩す。
　それをチャンスとみたヴィントミューレが、用意していた樽へと呼び寄せる。
「教祖様、こっちこっち」
「？」
　相手が樽へと尻餅をつき、うまくそのまま中へと叩きこむ。
　樽の中には花火が満載といった状態だった。
「本当に、教祖様を花火扱いで打ち上げるのでしょうか？　綺麗だといいのですけど」
　呑気なこと言うだけで、止めない人。
　その名はラウラ。
「これは―」
　幸か不幸か。
　それ以上の台詞をワルゼーは放つことはできず。
「それではぁ、れっつ教祖様爆発ですぅ」
　押し込むのを手伝っていた、亜綾の言葉を起爆剤としたように。
　点火。
　爆発音とともに、空高く火花が打ち上がった――灼滅者の身体が舞いあがり、大輪の花が咲き誇る。
「おお」
　るりかはとりあえず塩焼きもぐもぐしながら、謎の花火を見物した。
　自分で仕留めた魚が、実に美味しい。
「さすがに勇者さんだなあ」
　別府湾の空を、幻想的な花火が連続して彩った。
　勇者は何か言っていたのかもしれないが、その声は開花の音に紛れて聞こえない。
「夏だなあ」
　皆と海辺で遊んでいたジュラルも、まじまじとカラフルに染まった空を仰いだ。姫月の隣にはワルゼーと一緒になって作った、立派な砂の城が威風堂々とそびえている。
「あ、皆さん。そのままで――こちらを向いてもらえますか」
　ヴィントミューレが花火をバックに、仲間達全員を写真におさめる。一夏の思い出が、この一瞬に凝縮される。そんな、一枚。
　今年も、忘れがたく思い出に残る臨海学校だった。

作者：彩乃鳩	重傷：なし 死亡：なし 闇堕ち：なし
種類： 公開：2016年8月23日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 2
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