修学旅行2016~歴史遺産の首里城と、国際通り散策

    作者:海乃もずく

    ●修学旅行のお知らせ
     黒翼卿メイヨールの襲撃、サイキックリベレイター使用、大淫魔サイレーンとの決戦という大事件によって延期されていた、修学旅行の日程が決定しました。
     今年の修学旅行は、9月13日から9月16日までの4日間。対象学年は、小学6年生・中学2年生・高校2年生です。
     また、大学1年生が、同じ学部の仲間などと親睦を深める為の親睦旅行も、同じ日程・スケジュールで行われます。

     修学旅行の行き先は沖縄です。
     沖縄の歴史や文化に触れたり、沖縄料理を食べ歩いたり、美ら海水族館を観光したり、マリンスポーツや沖縄離島巡りなど、沖縄ならではの楽しみが満載です。
     
    ●首里城と、国際通りの観光
     修学旅行の最初の目的地は、朱色の守礼門と正殿が有名な沖縄の城(グスク)、首里城。
     各地の歴史や文化にじかに触れて見聞を広げることは、学校内ではできない、修学旅行ならではの体験です。
     沖縄は、数百年前まで琉球王国という独立国家でした。中国や日本など、アジア諸国との中継貿易で栄えた海洋国家であり、沖縄独自の信仰や文化をはぐくんできました。首里城は、そんな琉球王国の繁栄に触れることができる歴史遺産の地です。
     琉球王国最大の木造建築である壮麗な正殿、赤瓦が美しい守礼門、琉球信仰の聖域ウタキを拝礼するための園比屋武御獄石門、500年前の彫刻である龍樋。数々の文化財を見ることができます。
     また、首里城周辺は、赤瓦屋根が並ぶ、美しい石畳の城下町です。大規模な王墓である世界遺産の玉陵や、中国の使者をもてなすためにつくられた巨大な池、龍澤などの歴史遺産を見学しながら、じっくりと散策するのもいいでしょう。
     
    ●修学旅行のすごし方
    「あ、あの……。いよいよですね、修学旅行」
     野々宮・迷宵(高校生エクスブレイン・dn0203)は、首里城の写真と、日程表とを交互に眺めながら、思案顔。
    「那覇空港から貸し切りバスで真っ直ぐ行っても、首里城の見学時間はお昼前まで……きっと、時間は限られますね」
     けれど、その『限られた時間』をどう使うかも、修学旅行のだいご味。
     首里城公園内は広く、首里の城下町まで行けばもっと範囲は広い。加えて正殿を見学し、休憩所でお茶とお菓子をいただいたら、時間はいっぱいいっぱいだろう。
    「でも、気に入った見学ポイントで時間をかけすぎたり、散策中にはぐれかけたり、合流時間に遅れそうになったり、あえてお茶どころの一服に時間の大半を使ったり……そういうのも、修学旅行らしいかなって」
     『修学旅行』ならではの経験をたくさんしたいと、迷宵は言う。
    「あと、可愛いお洋服で、みんなで首里城の前で写真撮影とか……」
     さすがに目立つコスプレは控えるが、当日用の服を自作中だと、迷宵は目を輝かせる。
     首里城内部では写真撮影はできないが、首里城の前など、首里城公園の無料区画は撮影自由。公園内には那覇市が一望できるポイントもあり、写真撮影だけでなく、景色も楽しめる。
    「それで、その……もしよければ、一緒に見て回ったりできたら、うれしいです」

     ――それと、もう一つ。
    「国際通りまでは、首里城から4キロくらいしかありません。タクシーで行ける距離なんです」
     この時間を首里城を見学にあてず、国際通りに行くという選択もあると、迷宵は言う。
     国際通りは、長さ1.6キロの区間にずらりと店が並ぶ、沖縄みやげ品のパラダイス。最近話題の人気品も、昔ながらの定番品も売っている。
     沖縄を題材にした雑貨やファッション、壺焼きや琉球ガラスの加工品、ちんすこうや紅芋のお菓子、もずくや海ぶどうなどの加工食品。買い物を楽しんでもいいし、店舗巡りも魅力的。
     きっと、それも、修学旅行ならではの時間の過ごし方。
     
    「思い出に残る、素敵な修学旅行になるように。皆さんと一緒に、いっぱい楽しんできたいです」
     迷宵は待ちきれないとばかりに、ガイドブックを大事そうに抱きしめた。


    ■リプレイ

    ●修学旅行、沖縄、首里城!
     沖縄修学旅行の初日、9月13日。
     空港から貸し切りバスで移動し、駐車場に続々と到着する武蔵坂の生徒たち。ここから少し歩けば守礼門、そして首里城の正殿がある。

     守礼門、歓会門、瑞泉門。たくさんの門や、独特の建造物に、【歴史民俗学部】はそれぞれ見入る。
     三蔵・渚緒(d17115)がガイド本を指でたどり、目の前の門を見上げた。
    「どの門も、全部違った形をしているのが凄いよね」
     漏刻門と広福門の先にあるのは、素晴らしい眺望が楽しめる西のアザナ。
    「こうしてのんびり沖縄の歴史に触れるのも楽しいわよね」
     南谷・春陽(d17714)はパンフレットをたたみ、しばし、那覇市の景色を楽しんでいる。
     下の御庭に戻り、奉神門を抜け、赤と白がまぶしい正殿へ。
    「何度見ても素晴らしいな」
    「日本の歴史の中で独自の文化を築いた国ですから、凄く興味があります」
     志賀野・友衛(d03990)に、壱越・双調(d14063)が同意する。想いや由来を学び、感じたことを語り合えば、以前とまた違う発見も、楽しみもある。
    「龍の意匠も、ところどころに使われていますね」
    「やっぱり、龍は国王の象徴なだけあるのね」
     御庭から、双調と春陽が柱や梁を探せば、4本爪の龍があちこちにいるのがわかる。渚緒は龍の彫刻や、獅子の石像を写真におさめている。
    「本土とは異なった風土で出来た文化を見るのは、楽しいね」
     獅子は全て写真に撮り、後でポーズの違いを見比べるのだとか。
    「似た立場にいるものとして、この国の方々が生きていた場所をしっかりみておかねば」
     実は津軽の旧華族の出身でして、という双調と言葉を交わしながら、友衛は皆と一緒の喜びをかみしめる。
    (「研究したいと思う心と、歴史や文化を感じて楽しみたいと思う心は両立できる」)
    「皆さまとのこの見学は、今後の勉学の良い糧になりそうです。楽しいですね」
     自身の内心とも一致する双調の言葉に、友衛は自然と笑みを浮かべた。
    「僕らの思い出もちゃんと残していこうか」
     渚緒がカメラを皆へと向ける。春陽が迷宵を手招いた。
    「良かったら野々宮さんも一緒にどうかしら?」
    「あっ……。はい、あの、ありがとうございます!」
     正殿前の、絶好の撮影ポイントを選んで。みんな笑顔で、はい、チーズ!

     久瀬・雛菊(d21285)は、野々宮・迷宵(高校生エクスブレイン・dn0203)と一緒に、首里城公園内を散策中。
     雛菊が背負うリュックの端からは、ウイングキャットのイカスミの目が覗いている。
    「修学旅行も初めてになるんかな。転入したんは中学二年と言っても、修学旅行終わった後やし」
    「あ、私も初めてです。ずっと前から楽しみでした」
     迷宵と話しつつあちこち回りながら、首里城最大の信仰の場、京の内が気になる雛菊。
     霊力のある聖域だと聞く。縁起を担ぐ意味でも、ガイアチャージが出来る時間があれば、試しても良いかもと思うものの。
    (「……まぁ……無理やろうなぁ……」)
     首里城公園は広い。琉球菓子にも興味はあるし、鎖之間で一休みする時間も欲しい。
    「雛菊さんは、この後どうしますか?」
     カメラを片手に、迷宵が問うてくる。一緒に写真撮影をするくらいの時間なら、十分にあるだろう。

    ●首里城正殿
     首里城の正殿前には広場がある。かつては謁見に使われ、中国使節を迎え入れた地。
    (「やっぱり見に来て良かった」)
     歴史の舞台、歴史の空気を見て、感じる。将来、教えるとき役立つだろう。……ただ。
    「……すっげー広い! 赤い!」
     風宮・壱(d00909)の語彙力と、志の高さは、必ずしも比例はしていないらしい。
    「確かに。一般的な城と異なり、琉球の発展兼保全手段が外交であった為の仕様とも言える」
     下調べは万全の片倉・純也(d16862)も、朱塗りの正殿を目の当たりにすれば、やはり目がいく部分は似ていて。
    「にしても、センダツが教師目指すなんて驚いたよ」
    「聞かれなかったからな」
     顔を上げれば、視線を合わせている壱。純也は書き込みをやめて手帳を閉じる。
    「俺が望む景色に必要な技術だと思った」
     答えを返し、そして、純也からも問う。
     壱の答えは――きちんした大人になりたくて、と。
    「理由は違くても机を並べれるのは嬉しいよ。4年間、またよろしくね」
     純也の返答は、2拍ばかり間があいた。
    「此方こそ、暫くの間宜しく頼む」
     学び多き友人へ、あらためての挨拶を。

     椎葉・花色(d03099)は首里城本殿の正面に立っていた。一昨年の修学旅行ぶり。
    「……親愛なる駅番白虎隊諸君! ついにこの日がやってきました! 先人が勝ち取ったこの地の平和を維持するときが!」
    「わーわー、ヤッター椎葉先輩素敵ー!」
     一人名乗りが不安だった廣羽・杏理(d16834)には、花色の存在がありがたい。
    「腑抜けたパトロールは許しません! 今年も草の陣を敷くのです! ……こんな感じですかね?」
     押忍、と締めた花色たち【駅番】にとって、首里城の制圧は、2013年からの恒例行事。
    (「しかし赤いなー、首里城。懐かしいなー」)
     花色は、首里城を見上げながら囲むようにパトロールの草を蒔く。
    「……廣羽くん?」
     鎖之間前に偏る草の山。室内でさんぴん茶を飲む杏理が目をそらす。言えない、ただ休憩してお茶飲んだりしたいだけなんて。
    「あ、このお菓子美味しいですよ。ちんすこうは知ってたけど、他のもいいなあ。お土産買わなきゃ」
     菓子の名を目で追う杏理を目の前に、花色は3人目のことを思い出す。
    「……本間くんはちゃんとやってるかしら」
    「箱くん、自家製の草って言ってたけどヤバイやつじゃないですか?」
     花色と杏理は顔を見合わせる。彼もまた、首里城をパロールしているはずだが……。
    「ヤバイ草撒いてないか見に行かなきゃ……」
     絞り出すように花色が言った。……果たして本間・一誠(d28821)は、今どこで、何をしているのか。

    ●首里城公園散策
    「由希奈ちゃんと修学旅行沖縄デートっ♪」
    「え、え、デート……?」
     墨沢・由希奈(d01252)と腕を組む裳経・いちご(d31542)は、由希奈の恋人に瓜二つ。違うのは、腕に押しつけられている、ふくよかな膨らみくらい。
     戸惑いを隠せない由希奈が、いちごと向かった先には龍潭があった。
    「お城も良かったけど、ここも落ち着いていいねっ」
     冊封使の接待用に作られたという風光明媚な人工池に、水鳥が憩う。
    「こういう静かな所の方が、雰囲気もいいしね……♪」
     意味深に笑い、いちごは由希奈の顎に手を添える。顔を寄せ、唇を近づけて。
    「やっと2人きりになれた…♪」
    「お、同じ顔と声でそれズルい……ダメぇっ」
     ――瞬間、人の気配。いちごはくすく笑いながらすっと手を離す。
    (「ど、ドキドキしたぁっ……」)
    「彼氏に迫られた気になった?」
     いちご自身、百合っ気はないけれど。ドキドキのさめやらぬ由希奈の態度は、実に――。
    (「弄り甲斐あるんだなー、これが♪」)

     黒絶・望(d25986)は、華やかな女性用の琉装。七那原・エクル(d31527)は黒一色の男性用の琉装。
     人の少ないところを選びながら、首里城公園を散策。2人のんびり、じっくりと。
     歴史建造物を目の前にした貴重な機会に、エクルはいつもより若干テンションが高い。……が、望にはそう見えないように、あえてクールに。
    「なんだかえくるん、琉装を来ていると凛々しく見えますね。全体的に黒いからでしょうか? カッコいいのです」
     望は歴史建造物は完全に無視、ずっとエクルに見入っている。
    (「歴史建造物でテンションが上がってるえくるん、とっても可愛いのです♪」)
     結局、エクルのテンションの高さは、望には丸わかりなわけで。
    「さて、えくるん。まだ見るところはいっぱいありますよ。そろそろ次に行きましょう」
     次のところでもエクルを見ている気満々ながらも、望は次へと促した。

    ●首里城正殿、御庭~鎖之間
     修学旅行。
     このためにセイレーンの塔で刃をふるったというもの、とは勿忘・みをき(d00125)の言。
     あれから3カ月。待ちに待ったこの日がやってきた……!
    「遊び尽くすぞ、全力で」
    「ふふ、はい 遊び尽しましょう」
     待ち侘びたのは莫原・想々(d23600)も同じ。
     朱色に輝く、美しい首里城を巡る。柱や扉の細かな装飾。琉球文化の力強さに圧倒される。正殿をじかに見れば、ぽかんと口が開いてしまう。
    「ほんと、立派ですね……」
    「流石、沖縄の王宮の名に恥じぬ荘厳さだな」
     正殿内部、鎖之間での休憩も。
     名前の響きが独特のさんぴん茶のお供に、琉球菓子。みをきは宮廷菓子だったという焼菓子を、想々は蒸し菓子、ちいるんこう。
    「遅くなったが、俺たちの勝利に乾杯といこうか」
     口の中に広がる、優しい甘味に和むひととき。
    「観光はまだ始まったばかりです。次は城下町を見に行きませんか?」
     想々の誘いに同意を示し、みをきは地図を広げた。
     素敵な出会いを、探しに行こう。

    「おおー、ふるーいイメージがあったけど、すっごく綺麗な場所だねっ」
    「うん! 色がとても赤いです……」
     月夜野・噤(d27644)と、月夜野・詠(d27418)の双子の姉弟が、正殿前で目を輝かせる。
    「この赤がまさに南国イメージなんだよな」
    「そやねぇ、建物が、綺麗な色……」
     めんそーれ首里城! との神西・煌希(d16768)の言葉に、八千草・保(d26173)が笑む。この得がたい経験を、大事にしたい。
     正殿内の鎖之間は、一服できるお茶どころ。
    「サスノマ、って読むんだなあ」
     煌希に続き入室する保は、歴史ある部屋に心躍らせる。
    「ここって、王子さまの控所だったんだよね」
     ちょっとは勉強してきたんだよ、とは詠。予習ぶりを褒められ嬉しそう。特に噤の賛辞が嬉しくて、王子さまのきぶーん! と胸を張る。
    「ん、茉莉花のええ香り……やね。さんぴん茶、て言うんやねぇ」
    「本場のこれは、スッキリして飲みやすくて美味いよなあ」
     沖縄独特の茶かと煌希が思っていたさんぴん茶は、いわゆるジャスミン茶。
     名前の響きが可愛いと、詠はくんぺんを頼む。旅行先で食べるお菓子は、いつもよりもおいしい。
    「変わったお菓子なのです……。なんだか落ち着くような……。おいしいです……」
     噤は静かにお茶も飲み、ん~……、と味わっている。
     2人はほほえましく眺めながら、保もさくさくとした味わいを楽しんでいる。
    「花ぼうる……綺麗な、お花の形……? ぼうろと似た感じかな?」
     お茶をそっと口に含み、お菓子と一緒に味わうと、ほっとする美味しさ。懐かしいようで、南国情緒もある沖縄の味。
    「ちんすこうはほろろとして美味いあれだよな、……うん、美味いなあ!」
     煌希は次の目的地を求めてパンフレットを開く。
    「ここだけっていうのも勿体ないから街のほうにも下りてみようぜえ」
     煌希の提案に、詠と噤が身を乗り出す。
    「次はどこみてまわろっか」
    「まだまだ行ってないところまわりたいです……です」
     双子の言葉に、煌希が地図の一点を指さした。
    「国際通りはいろんな店が並んでて、眺めてるだけでも楽しいそうだなあ」
    「うーん、街のほうも見てみようか?」
     保も地図をのぞき込む。修学旅行は、始まったばかり。

    ●国際通り
    「……ここが……国際通り……おみやげ屋さん……いっぱい……あるね……」
     アリス・ドール(d32721)たち【武蔵境キャンパス中学2―E】は、国際通りに足を踏み入れていた。
     観光客で賑わう国際通りのショップには、沖縄のお土産やグッズがぎっしりと並ぶ。
    「うおっ、暑い! 沖縄ってマジに暑いっすよ皆さん!」
    「ほんまやなぁ、沖縄って年中こんな温かいんやろか。ええなぁ」
    「この時期でも、真夏のように暑いですね……」
     加持・陽司(d36254)のテンションは、到着前から上がる一方で、八蘇上・乃麻(d34109)と月影・木乃葉(d34599)も、自然と気持ちが浮き立ってくる。
    「加持君、あまりはしゃぐと、人にぶつかりますよ」
    「……加持……はしゃぎすぎなの……あわてちゃ……めっなの……」
     安藤・ジェフ(d30263)が注意を促す。アリスも陽司へと声をかけるが、アリス自身、次々と目移りして、思いがけないところに行ってしまいそう。
    「……あ! この店の置物めっちゃかわいいー」
     店先で見入る乃麻の尻尾が、ご機嫌で揺れている。
     紫芋のお菓子に、サータアンダギー。あれは自分用に、こっちはクラブの友達用に。
    「……やっぱ自分用にも買おっと」
     乃麻に続いたジェフや木乃葉も、珍しいものへの興味は尽きない。
    「これがサーターアンダギー……中々、美味しいですね」
    「ふむ、お土産で買うなら試食も必要かもですね……」
     まずは試食、そして財布へ手が伸びる。
     買ったばかりの扇子で、自分を扇ぐ木乃葉。扇子にはシーサーとハイビスカスが描かれている。
     ムーチー、ご当地ストラップ、シークワーサージュース。買ったお土産を抱え、陽司はクラスメイトが集まる民芸品屋へ。
    「もう自分は買っちゃいました! 皆さんはお土産、何買うんですか?」
    「……サメの歯のペンダント……三線……こっちは……沖縄方言Tシャツ……うーん……ご当地木刀……」
     アリスが迷う品は、どこの土産物屋でも売ってるような、微妙で変な物ばかり。
    「鮫の歯とは、珍しいお土産ですね。定番といえば、ペナントと木刀でしょうか」
    「……いや、木刀とかペナントは、沖縄以外にも売ってますって!?」
     どこかずれたジェフの感想に、思わず陽司は突っ込んだ。ジェフが意外そうに陽司を見返す。
    「え、ニホンでは、木刀はお土産として一般的ではないのですか?」
    「まあ、定番の旅土産やけどなー」
     乃麻は逆に珍しげに木刀とペナントを眺め、木乃葉も木刀を手に取り苦笑する。
    「皆さんと修学旅行に来れて、本当に良かったです……」
     土産品選びに悩み続けるアリスを何となくおさめながら、ふとジェフが言う。
    「そうやね。友達と一緒で、さいっこうの旅やわ!」
     笑顔いっぱいに、乃麻が答えた。

     国際通りの真ん中で。
    「ポッポーの友達か、よろしく」
    「あれっ、こーちと厳って初対面だったっけ」
    「多分初見じゃねェか?」
     軽く手を挙げる川内・梛(d18259)と、応える猪岡・厳(d21371)。その間で、鳩谷・希(d20549)は首を傾げる。
     会って早々の梛に厳ついシーサーの置物を勧められ、まあ、別段嫌いじゃねェがと返す厳。
    「似合う、つか、そういうの好きそう」
    「……そんな年寄り臭い面してるか」
    「んー? 厳はねー、年寄りっていうか……若さが足りないよね」
     希はストラップの浮き玉を光に透かし、島ぞうりを手に取っている。
    「ね、こーち。海亀とイルカ、どっちが良いと思う? っていうか、お揃いで履かない?」
    「あー、なら断然お前がイルカ。俺こっち」
     買ったばかりの島ぞうりに、かりゆしシャツを羽織った希は、漢字が大きくデザインされたTシャツを、厳に掲げてみせる。
    「いつの間に着替え………おい」
    「気に入らない? じゃあこっち、シーサーのやつ!」
    「どっちも要らねェ。何で妥協してシーサーだよ」
     希と厳のやり取りに、梛が笑う。
    「厳もTシャツ決まったことだし」
    「着ねェぞ」
    「だってポッポーが掴んでんじゃん。お前はあと財布を出して買うだけだよかったな」
     厳は嘆息混じりに言い返す。
    「手前で着ろ、もしくは川内が着てやれ。揃い草履の仲だろうが」
     そう返し、厳は店の外へと足を向ける。
    「そろそろ腹減ったし店探すか。鳩谷、それ元に戻しとけよ」
    「えー……厳つれなーい」
     つまんなーい、と口を尖らせる希。2人のやり取りに、けらけらと梛が笑う。

     時計が集合の時間を告げる。楽しい時間は過ぎるのが早い。
     修学旅行は始まったばかり。ここで得た思い出を大事に両手に抱えて、さあ、次の楽しみへと――。

    作者:海乃もずく 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年9月13日
    難度:簡単
    参加:28人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
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