黒翼卿メイヨールの襲撃、サイキックリベレイターの発動、そして――大淫魔サイレーンとの決戦。
数々の大事件によって延期されていた「修学旅行」ですが、遂に日程が決定しました。
今年の修学旅行は、9月13日から9月16日までの4日間。
この日程で、小学6年生・中学2年生・高校2年生の生徒達が、一斉に旅立つのです。
また、大学1年生が、同じ学部の仲間と親睦を深める為の「親睦旅行」も、同じ日程・スケジュールで行われます。
修学旅行の行き先は「沖縄」。
沖縄料理を食べ歩いたり、美ら海水族館を観光したり、マリンスポーツや沖縄離島巡りなど、沖縄ならではの楽しみが満載です。
さあ、あなたも、修学旅行で楽しい思い出を作りましょう!
「やっぱり沖縄といえば、澄み切った青い海よね……」
槇南・マキノ(ご当地の中のカワズ・dn0245)は一同に配られた『修学旅行のしおり』をパラパラと捲りつつ、ふと目に留まった3日目のページで指を止めた。
――終日、自由行動が認められている3日目。
そこには沖縄の風土と自然を学び・楽しめる、様々なアクティビティが紹介されているのだが、中でも彼女の興味を引いたのは、宜野湾海浜公園のトロピカルビーチである。
「こんな綺麗な白砂の浜辺を歩いたり、透明な青の海で泳げたら素敵よね」
無論、彼女のご当地である日本海もまた渋味があって良いが、白と青のコントラストが際立つ南国の海は、まるで別世界のように美しい。
砂浜でビーチボールを楽しみ、或いはピーチパラソルを借りてゆっくりと寝そべるのも良い。特に輝くような日差しの下で食べるアイスやかき氷などは格別であろう。
泳げない人であっても、砂に絵や文字を描いたり、蟹と戯れて悠久の時間を過ごしたりと――それも思い出だ。
「サンセットスポットとしても有名なのね……」
マキノが細顎に指を宛てて暫し思案したのは、その時間。
日没を考えると、夕食を控えた修学旅行生には時間的に厳しいか――、
「あ、でも。トロピカルビーチから徒歩5分の場所にある、このホテルからなら……夕焼けの海岸を散歩するくらいはできそう」
一度客室に戻る事になるが、最後の夜に少しでも美景を味わいたいと思うのが「青春」であろう。
「……うん。……よし!」
グッと拳を握り込めて頷いたマキノは、しおりを手に声を掛ける。
「一緒に海水浴に行きましょうよ。きっと楽しいわ」
寄せる波を掛け合って、バナナボートに乗って。
沖縄スイーツに涼を味わった後は、熱~い焼きソバだって食べたい!
マキノはそう言って仲間を誘うと、机のノートにメモを取り出し、
「水着とサンダル、タオルや日焼け止めも必要ね」
帽子や日よけ用の上着、浮き輪……とペンを走らせていくのは、ビーチを快適に楽しむ為のアイテム群だ。
「熱中症対策だって必要よ。飲み物も用意しないとね」
そう言って手早く書き加えていくのは、既に彼女の心がワクワクしているからだろう。
「折角の修学旅行ですもの。沢山遊んで、めいっぱい思い出を作りましょうね」
マキノがいつになく胸を躍らせてノートを広げて見せたので、あなたは苦笑を零しつつ、そこに「カメラ」と付け足した。
●
「きゃー♪ すっごくキレイだねっ♪」
「太陽が眩しいですわ!」
さくらが声を弾ませ、雛が燦光に手を翳す。
「皆さんと交流を深められる良い機会……お誘いありがとうございます」
ともえが部長に礼を言う傍ら、花園のメンバーが駆け出す――その景は百花繚乱。
「このシート、砂や水を通す最新素材なんだって」
「敷くのお手伝いします」
由希奈がシートを広げれば、エリカがさっと端を持ち、
「潮風を読むのは得意よ」
もいかが傘の角度を調節すれば、倒れる不安もない。
パニーニャは飲料の用意も周到で、
「沢山遊べば喉も渇くし……ね♪」
豊満な胸に食い込む冷却ボックスのベルトを「よいしょ」と外す。
見事な連携が安心と安全を支えるか――密かに迫る色難には穂乃佳の予知が冴え、
「……みう……油断したら……大変なこと……なるの……」
予兆は既にパラソルに現れていた。
「これって……百合……?」
由希奈が傘の柄を仰いだ――刹那、
「皆さん順番に塗ってあげますよー」
「ひゃっ」
サンオイルの感触に振り向けば、魔の手が這い寄り。
「りんごちゃん……ホックは外さなくてもいいんじゃ、っ」
ぬるり。
「きゃうっ、こっちに手が回……っ」
甘い刺激に息も絶え絶え、傘に掴まるのが精一杯。
紅葉は禁断の景より瞳を逸らすも、
「えっ、その怪しい手の動きは何?」
艶かしい指が肌に迫る。
「水着の中、は……焼けないから塗らなくていいよぉ……」
ぬるぬるに塗れる果実は今にも零れそう。
「あ、の……塗って……下さるんです、か……?」
陽に焼ければ赤くヒリついてしまう扶桑の柔肌も優しくケアし、
「部長として皆さんのお肌を護らないと♪」
「……なんで、胸……に……!?」
華奢には不釣合いな弾力を丁寧に、丁寧に。
「ちょ、っと……待って、くださ……っ」
扶桑の頬が熱帯びる頃、逆襲の影――緋頼が忍び寄り、
「今日こそお姉様をぎゃふんと――」
「読んでました♪」
「って、何で後ろに……きゃー!」
然し気配を察した魔王は、熟れた果実を逆に玩んで籠絡。
悩殺的な絵にパニーニャは合掌を添え、
「みんな大変な目に遭ってるケド……まぁ、どんまい……?」
敢えて距離を取っていたが、彼女の健康的な肌は極上の馳走。
じり……じり……。
「私は遠慮……や、め……ひゃあああっ!?」
「ん……ひあ……やっぱり……こんな……ことに……」
冒頭から大量に堕ちる、桃色地獄――無論、予知した穂乃佳も堕ちた。
パラソルの下で、バカンス気分を味わうはシエスタとレティシア。
己が繊麗をチェアに横たえ、潮騒を耳に悠久の時を過ごしている。
「南の島で、おやすみタイム、ですよぉ……」
微睡みつつ、涼に喉を潤し美味に頬を緩ませる眠り姫――傍らに佇む白薔薇は、トロピカルジュースを一口、
「……眩しいな」
サングラス越しに映る佳景に、そっと、言ちた。
「折角の機会を全力で楽しもうと思いましたが」
「ほんと皆ぼんぼんぼんっと、ぎるてぃだらけでうぎぎ……」
周囲に咲き乱れる花は実も熟していて、紗夕とミルドレッドは曇り気味。
二人の友と言えば、
「熱くてとろけるの~」
「大波が来るよ~!」
とてとて海に脚を浸しに行くエステルと、波際でぴょんこぴょんこ飛び跳ねるさくら、
「折角新調した水着、着ないとね」
あとは、ぺたんこ同盟の華琳。
先行く呉羽も櫻子もてんこもりで、
「ん、二人共どうしたの?」
「私の水着、何かおかしいかな?」
然も義妹は煽りに長け、
「大丈夫だよ、需要はあるから」
「需要の問題じゃない誇りの問題だ!」
たゆんと揺れる双果を前に、紗夕は素で声を荒げた。
「落ちつけボク。旅先で暴れるわけには」
ミルドレッドは鏖殺衝動(対象B以上)を抑え、白波を蹴る。
「照り付ける太陽、輝く砂浜、青い海……!」
瞳に飛び込む絶景に感歎を零した鈴菜は、振り返った先の佳景を愛でる。
「そして、美ら浜に降臨したグラマラスな女神!」
「……えっと、普通ですよ?」
見れば日焼け止めを塗り終えた翡翠が、じゃれつく雪風と駆け出し、
「さぁ、遊びましょう♪」
「わふっ」
撓な果実に、悪戯心がムラリと湧いた。
冒険心の強い流龍は一人旅にも慣れているが、今日は格別だ。
少女は念願の沖縄の海に咲み、
「過ごしやすくって最高だ!」
青と白の鮮やかなコントラストに赤いビキニがよく映える。
「帰ったらチビ達に見せてやろうっと」
小さな妹弟を思い浮かべた姉は、瑠璃色の海をカメラに収めた。
バーベキューを楽しまんと、広場――ならぬ海に向かったアッシュは溌溂と、
「掴み取れそうな魚を探してみるかーっ!」
「ほう、自力調達ですか」
親友の声を背に、透徹たる青へと足を浸す。
傍らのジェフは平静たる儘、
「では、この自爆スイッチでガチンコ漁……え、禁止ですか?」
あんぐりと口を開けた友を見て分陰――この二人、漁れるだろうか。
「ん、ひゃ……っ」
初めての海に脚を浸した綿雪は、砂の弾力に思わず身震いした刹那、
「へいまいふれんど、れっつえんじょいぶるーしー」
「わぷっ」
水鉄砲テロリストが、容赦ない水圧で柔肌を襲う。
見れば小晴がピースしており、
「やったわね!」
「あたしをツカまえてごらんなさーい」
青い海での定番の科白が、抑揚なく白浜を駆けた。
二人が波際で戯れる傍ら、雅は浜でもくもくと城を作り、九朗とシャーリィは海に漂い。
「空が、こう、高くて……雲も綺麗だな……」
「諸行無常ですの」
ぷかぷかと浮かぶ二人の間を、最速を目指す魚群が泳ぐ泳ぐ。
「今日の私は! 歌って踊れて、華麗に泳げるヒーロー! 志羽・鈿女よぉ!!」
「常闇よりの使者、ナイトソウル……変身はしてないけど見参!」
「じお、勝負は何事も全力だから……ガンガン行くわ……」
颯爽と波を分つ魚達には、浮き輪組の師宣が審判につき、
「これが臨海学校で身に着けたダンピール泳法だ!」
「犬かきだね」
早くもリードを許すルーチェに事実をグサリ。
勝負は全力クロール組に絞られ、
「見なさい、この速さと華麗なフォームを!」
「う……ちょっと胸が邪魔……」
鈿女は至って普通のクロール、縦横は胸の浮き袋にやや遅れ――、
「ヒーローは鍛え方が違うんだよ!」
「僅差だったね」
結果、一夜が海を制した。
勝負を見守った九朗は、すっかり油断していたか、
「元気だよなぁ。羨ましい位だ」
友らに感歎を零した、瞬刻――無防備な裸眼に何かが触れる。
「?」
その正体を知ったのは、二匹目を投擲するルーチェを見て。
「ナマ……」
「ナマコを投げられたからといって、反撃したりしないよ」
師宣が大人ぶる一方、一夜はがっつり反撃し、
「キャッチは優しく柔軟に、そして大胆にゥオラァァ!」
「えっ、僕に返って……ひょぁあああああ!?」
「顔面にヒット!」
その惨状は、浜辺より京一が実況する通り。
「飛び出る内臓が幻想的で78点、ナマコも滴る良い男ですね」
「いやぁぁぁああ!」
犯人は海パンの中にも物体を入れられ、えもいわれぬ感触に犯される――因果応報。
こけしの鋭眼は再び白浜に戻り、
「殺人スパイクを受けるがいいですわ!」
「いっぱい続いたら……いいなって」
ほよん、ぽすんとカトリーヌと智秋を往来するボールを見守る。
何とも和むラリーだが、
「あれは!」
「知っているのかシャーリィ」
「伝説の殺人レシーブですの!」
声を変えて役を熟す解説が加われば盛況。
時にカトリーヌが砂に足を取られれば、智秋が心配そうに駆け寄り、
「大丈夫? 怪我とか、ないかな?」
「……1点、取られてしまいましたわ」
照れ隠しに零れる科白に咲みつつ、肌についた砂を払ってやった。
●
鈴菜が仕掛けたのは、翡翠がすっかり打ち解けた雪風をモフり始めた頃。
「えい! とぉーッ!」
弓王に倣ったビキニに力を得た腕は、強力な水銃で柔肌を攻め、
「威力が強すぎませんかー!?」
「ふふ、あんなに揺れ弾むサイズで『普通』はナイですよねぇ」
笑顔が鬼。
蓋し翡翠もワカメを回避すべく、
「雪風さん……ごー!」
熾烈な闘争が幕開けた。
輪の中心には、一撃を待つスイカと、必中を狙う雅。
「大きな敷物と、バットも丈夫な物を選んでおきましたよ」
冷都の準備は万端だが、
「一発で割れたら恰好良いかなと思って……行けますかね?」
「……」
ぽす、と砂地を叩いて綿雪と交代。
雅の腕前がアレなのか――否、飛び交う声とて怪しいもので、
「右、右……行き過ぎです」
京一も審判席からでは誘導し難く、きゃいきゃい応援するシャーリィも指示は遅れがち。
小晴は大好物のオレンジジュースを片手に、
「ガンバレもっと右。あとルート2度くらい左」
「ちょっと、本当にこっちで合ってるんでしょうね!?」
右往左往する友を愉しんでいる。
応援に回った雅も『右! 右!』と援護するが、
「雅ちゃん、目隠ししてる人にホワイトボードは見えないわ!?」
「迷った時は雅のボードを……って、見えないじゃないのっ!」
結局、頼りになるのは冬華と冷都。
「あははっ! ほら、こっちこっち!」
「もう少し右……そこです!」
振り下ろした綿雪は漸く目隠しを解かれ、
「――大当たり! ふふ、おめでと!」
笑顔で労う二人の後ろで、早速スイカに集まる友に呆れる。
「うまい!!」
「いっぱい汗をかきましたものね」
鈿女とカトリーヌは仲良く並んでもぐもぐ。
「塩はあったっけ?」
「一瓶、どばーっ」
縦横は九朗のスイカに塩を山盛り。
「冷えてて美味しい!」
「沢山用意してますから、存分に割りましょう」
冬華が綻べば、冷都が更なる楽しみを指に示し。
「海で、みんなで食べるのって……うん」
「楽しいよな、こういうのも」
智秋の声に一夜が首肯を重ねれば、皆の笑顔が連なった。
さて、マーベラスの掴み取り漁は。
「わふっ」
「ミックすごっ、負けたー」
主人の倍もその口に咥えた霊犬然り、
「にゃご」
「タンゴも負けずに取ってたー」
翼猫も凄腕(肉球)を披露する。
ジェフも之には驚き、
「お、タンゴも大漁……自分で食べるのですか!」
「まぁ、折角だし皆で食べよー!」
僕達の健啖に支えられた豪勢な食卓が腹を満たした。
時を忘れる平穏に眠気は去らぬか、眠り姫が覚醒したのも一瞬、
「夢の世界に旅立ちますよぉ……」
清涼を口に再び寝入る級友に、白薔薇は嫣然を零すと、
「ふむ、偶にはこういうのも悪くない」
可憐な寝顔を傍に瞼を閉じる。
レギオンは優しい風を送りつつ、眠る二人を見守った。
「さくら、こっち!」
「櫻子ちゃん、いくよっ」
青い空にボールと佳声が弾む。
「はわー、負けませんよ~」
一美は夢中になる余り、見た目重視の水着がずり落ち――、
「はわわ!」
咄嗟に両手で隠すものの、ポロリを見逃すまいと1カメがズームアップ!
然し刹那、
「私がカバーしますよ、ディフェンダーですから」
ナタリアがカメラを遮ると同時にボールを打ち返し、絶妙のアシストで繋いだ。
「呉羽さん、いきますよ」
「そーれっ」
ラリーが続けば心も弾み、
「あっ」
不意に目測を誤ってトスが空振った瞬間、
「お? 胸に当たって繋げた?」
「!」
「これはおっぱいトスと名付けよう」
胸の弾力がサポートすれば、義姉は血の涙を流す。
「揺れなくて弾まなくてすみませんねぇぇぇ!」
魂の叫びが、海辺に震えた。
桜と桜夜は小花を揃えてパレオを揺らし、深月紅は白黒のマフラーを揺らし。
「たくさん遊ぶよー♪」
やや強引に手を引かれた優艶は、無垢な花顔に微笑を返しつつ、砂浜を駆ける。
「そんなに走ったら転びますよ」
「ほら、ちゃんと、前見て」
危なっかしい、とは言うもの――成熟した胸は窮屈そうに水着に収まり、全員がデンジャラス。
桜の悪戯心を銃爪にハプニングは起こり、
「二人ともサイズアップしてる♪」
むに、と触れた瞬間、弾けるように豊満が零れた。
「も、もう……桜ったら……」
「水着が、小さくなったって、言ったのに」
桜夜は慌てて手で隠し、深月紅はマフラーを宛がうも、その含羞こそ見たかった桜は満面の笑み。
「やられっ放しじゃ、嫌よね」
「ここは結託して……」
飛びついてきた桜を挟撃した二人は、嗤笑を添えて揉み返し、
「きゃうっ」
お仕置きの柔肌サンド――畢竟、其は甘い戯れ合いだった。
「迂闊に近付くと危ないし、騒ぐのも柄じゃないし」
と、チェアに身を預け、日陰で読書を楽しむは鏡花。
彼女が愛読する魔導書を脇から覗き込んだ櫻子は、
「……う」
何故だろう、眩暈がする。
「……風に当たってくる……」
「いってらっしゃい」
彼女をクールな声に送った鏡花は、黄色い声を耳に、また頁を捲った。
「プールで泳ぐのとは全然違いますね」
心地よい波間を泳いだエリカは、誘うような水飛沫に振り返る。
見れば華琳が悪戯に笑み、
「冷たさもいい感じだね」
「きゃあ!? ふふ、お返しですよ♪」
彼女に水を掛けられたセカイも水を返して微笑む。
然し大波がブラを押し流した瞬間、魔も忍び寄り、
「あ、あの……タオルを取って戴けないでしょうか……」
「お手伝いします♪」
「!?」
タオルの代わりにましゅまろ(約1m)を支えたのは、部長の両腕。
片手に流れたブラを拾う優しさもあるが、
「そんなところ、触らないで……は、恥ずかしいよ……」
「ふふ、ココは駄目?」
華琳の素肌も存分に堪能する、やはり魔王は魔王。
そして、その魔王の下には可憐な小悪魔が集い、
「ひよりん! 隙あり、ですわ!」
雛は蠱惑のマーメイドの豊満を強襲。
「雛さんですね、良い声を上げて下さい!」
「きゃーっ、反撃なんて聞いておりませんわよー!?」
向き直った緋頼は脇腹を擽り、身を捩る佳人にしたり顔。
「うにゅ、ひなちゃんとひよりんがイチャイチャしてるです?」
その水跳ねは更なる悪戯を呼び、
「突撃なのー、こしょこしょしてあげるのー」
「エステルも来ましたね、返り討ちです!」
軽やかな笑声が重なった。
「あ、花園始まった」
汀を歩いていたミルドレッドは驚きもせず、
「ボクもたわわなぎるてぃ揉みにいってもいいかな?」
「偶にはいぢる側に回りたーい!」
好餌となっていた一美も反撃開始。
「あんまりふざけ過ぎて、事故を起こさないで下さいね?」
エリカはそう言うものの、この被害件数とボリュームでは、ワカメや貝殻、ヤシの実でも足りなかろう。
「だ、ダメです……水着の、中はあああっ!?」
「もっちあ♪ もっちあ♪」
「き、気持ちいいとか……そんなことはっ」
とラブる体質のともえは餅を丹念に揉まれて陥落寸前。
もいかに手を伸ばすいちごは楽しげに、
「ちょっ、お腹触るんじゃないわよ!?」
「流石マリンスポーツで鍛えたカラダ、引き締まってる♪」
「胸もべたべた触るんじゃないわよっ!」
標的は顔を真っ赤に恥ずかしがるものの、本気で抗わない所は、やはり花園の一員。
恋人の不在で淋しい想いをしていたみさきは、せめて部長に構って貰おうと接触を試みるも、生憎こちらはそっくりさん。
「黒と違って、わたくしは女性に興味はないので……」
『白岩さんでした?』
塩対応の彼女にしょんぼりするも、そこから始まった世間話は別。
『弟が四日市に居ます。8歳の可愛い子』
「8歳の弟さん!」
「ひゃっ」
久方の潤いに食い気味になる白と肉迫し、可憐な悲鳴を上げた。
女人の楽園に百合華は嘆息を一つ、
「全く、子供みたいにはしゃいで……まぁ、そういう所は嫌いじゃないけどね」
風に運ばれる声を耳に、水平線を見て物思いに耽る。
「ほらほら、そんな所でなに浸ってるの」
「わぷっ」
然し、その黄昏も飛沫を掛けられ台無しに――いちごの佳声に引き込まれる。
興に染まった花顔は友を呼び、
「おーい、緑の字―! そんなとこ居ないでこっちおいでよー!」
「多田先輩」
パラソルの下で佇む玲那に手を降り、水辺に招く。
「きゃっ、冷た……」
戦いで友を亡くし、己の言に他者を傷つき傷つけ。
誰が為の剣なのか――思い悩んでいた麗顔も、この瞬間だけは咲って。
「これだけ集まると一層華やかですね」
ナタリアはポロリ乱舞に楯を為すも、ワカメで隠すはミネラルが気になる部分と、ユニークな面もあるらしい。
「スキンシップも時には良いものです」
「仲良しの印だね♪」
頷いたさくらの言が、ビーチに広がる万紫千紅をよく言い表していた。
温かい砂地に横たわった流龍は、潮風を肌に、海嘯を耳に――五感で景を味わう。
漸う微睡む瞳は、マキノに呼ばれてぱちくりと開き、
「ふぁ、眠りそうに……置いてけぼりくらう所だったよ!」
「素敵な味わい方ね。私も真似して良いかしら?」
まだ時間はあるし、と時を惜しむ声が、軅て影を長くした。
特別な時間を少しでも長く――と思うのは、恋人同士なら尚の事。
渚を散歩する望とエクルは、修学旅行の感想を語り合い、
「過ぎてみればあっという間だったね。久しぶりに、ゆっくりできた気がするよ」
波側に立ってエスコートする紳士の隣には、ほんのり色付いた果実が、旅行中に味わった美味を思い出して綻んでいる。
望はそっと恋人を上目見ると、
「このストラップ、一昨日作ったんです。もし良かったら、えくるんに……」
想いを込めて、美しい煌きを差し出す。
「大切に受け取らせて貰うよ」
エクルは繊麗なる手ごと包んで答えると、
「大事にしてくださいね?」
擽ったそうに語尾を持ち上げた望が、ふわり、頬笑んだ。
作者:夕狩こあら |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2016年9月15日
難度:簡単
参加:54人
結果:成功!
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