修学旅行2016~かりゆしビーチの空を飛ぼう!

    作者:君島世界

     黒翼卿メイヨールの襲撃、サイキックリベレイター使用、大淫魔サイレーンとの決戦という大事件によって延期されていた、修学旅行の日程が決定しました。
     今年の修学旅行は、9月13日から9月16日までの4日間。
     この日程で、小学6年生・中学2年生・高校2年生の生徒達が、一斉に旅立つのです。
     また、大学1年生が、同じ学部の仲間などと親睦を深める為の親睦旅行も、同じ日程・スケジュールで行われます。
     修学旅行の行き先は沖縄です。
     沖縄料理を食べ歩いたり、美ら海水族館を観光したり、マリンスポーツや沖縄離島巡りなど、沖縄ならではの楽しみが満載です。
     さあ、あなたも、修学旅行で楽しい思い出を作りましょう!
     
    「――この『フライボード』っていうの、前に動画で見つけてからずっと興味あったのよ。いい機会だわ、修学旅行!」
     柿崎・泰若(紅景の微笑・dn0056)は、大型スクリーンに映し出していた動画が終わると、暗くしていた教室の照明をつけた。明るくなるとともに、そこかしこでざわめき声が聞こえだすのは、みなに好評を貰えたしるしだろうと、泰若は微笑んだ。
    「ということで、『修学旅行3日目、朝からの自由時間に、かりゆしビーチでマリンスポーツを楽しみましょう!』っというのがこのプレゼンの趣旨よ。あ、プレゼンと言ってもそんな難しいことするわけじゃないから、とりあえず聞いてってちょうだいね。
     今回かりゆしビーチで楽しめるマリンスポーツは、今紹介した『フライボード』と、もう一つ『ホバーボード』があるの。フライボードは専用ブーツの下方向へ、ホバーボードは後ろへ、それぞれすごい勢いで水を噴射することで空を飛ぶの。どちらにするかは、好みで決めてもらえばいいかと思うわ。
     飛ぶのはちょっと怖いって人向けには、同じビーチで『ウェイクボード』もやってるわ。んーと、モーターボートで引っ張ってもらう水上スノーボード、って感じね。インストラクターさんがスピードを調整してくれるから、速すぎるってことはないと思うわ。たぶん」
     
     ――さて。
    「このアトラクションを皆さんにお勧めしたい理由。それは……マリンスポーツ、だからなのよ。
     そう、マリンスポーツ! 海でも山でも、体育館でもグラウンドでも、もちろんプールでだって、絶対にできない体験がここにはあるわ。だって、広くて大きくて、水がたくさんある場所なんて、海(と湖もだけど)にしかないでしょ?
     フライボードはその点、オンリーワンを体現したような――ええとつまり、『海水ドバーで空を飛ぶ』なんて、これ以外に行える場所やスポーツはないわ、ぜったい。
     この機会を逃すと、もしかしたら、これから数年間お預けってことになるかもしれないわよ。……ええ、ホント長いのよ、2年ってね」
     と、妙に実感のこもった物言いをする泰若なのであった。
     
    「こほん、気を取り直して――もし興味をもってくれたのなら、参加表明してくれるかしら。私の方で、インストラクター屋さんに予約とかしておくから、皆は当日朝、最低限水着は持ってかりゆしビーチに来てくれればいいわ。
     それじゃ、一緒に楽しい修学旅行にしましょ!」


    ■リプレイ

    「では、最初はゆーっくりと行きますよ」
    「え、ええ……大丈夫よ。できます、たぶん……」
     坂崎・風鈴が相槌を返すと、インストラクターの女性が水上バイク側で機材の操作を始める。水がフライボードから勢いよく噴射されると、その『下から押されて浮き上がる』という感覚に慣れていない風鈴は、思わず――。
    「あ、うわあ!」
     ざばーん、と。
     バランスを崩し、大げさに水の中へダイブ。顔を振って水を飛ばす風鈴に、インストラクターは手を伸ばしてこう言った。
    「はーい、今ので感じはつかめたと思いますから、次からは強くしますよー」
    「ぷるぷるぷる……お、お姉さん、意外とスパルタなのね!?」
     という光景を、桟橋のてすりに頬杖をついた柿崎・泰若が、悪戯っぽい笑顔で眺めている。
    (「ふふふ。みんなスポーツが得意ですからーって、予約の時に言っておいたのよねー実は」)
     まあ、なんとかなるでしょうきっと。その辺はノープランで。
    「み……見ろよあれ! 始めて一時間も経たない内にドルフィンだと!」
    「すげぇ! 近頃の若者のスポーツ離れって嘘だったんだな!」
     見ると、片倉・光影がテンション高い笑顔で海上を飛び回っていた。
    「ははははは。はーははははごぼごぼごぼあははははは」
     ちなみに『ドルフィン』というのは、フライボードに乗ったまま水中に出たり入ったり、まるでイルカのように泳ぎ回るテクニックのことだ。海中と空中に正弦波を描く光影の軌跡は、そのまま沖縄の海の沖へと続いていくのであった。

    「今日は一緒に飛ぼうね、鈴音」
    「うん、一緒に飛びましょ、ひよひよ!」
     というふうに、色射・緋頼と神坂・鈴音、仲の良い二人組である。インストラクターの説明を1対1でよく聞いて、まずはフライボードという乗り物に慣れることから始めていった。
    「へー、東京の子は筋がいいんですねえ。皆こうなのかな?」
    「いえ、そんなことは……鈴音、そっちはどんな感じ?
    「ひよひよ! こっちはね、普段より捻りが生まれやすくって、なかなかバランスが――」
     というセリフに、鈴音担当のインストラクターが耳ざとく反応して。
    「普段よりって、じゃあ、何か別のスポーツやってたり?」
    「あ、あはは。それより、バックフリップっていうの、やってみてもいいかしら」
    「んー」
     インストラクターたちが顔を見合わせ。
    「まずハイタッチから始めたらどう?」
    「せっかく二人でいるんだから、ね」
     ということでハイタッチに挑戦。インストラクターが見守る中、緋頼と鈴音は慎重に高度を合わせ、接近し――。
    「――あっ」
    「わぷ、水が……きゃー!」
     どっぼーん、と。どちらからともなく、海中へ真っ逆さまに落ちていくのであった。

     MaYa's roomの三人は、一人ずつ交代でのマリンスポーツチャレンジ。
     まずは、スケボー経験者という姫乃木・夜桜から。だが、はじめて乗るホバーボードには悪戦苦闘を強いられる。
    「スケボーと同じ感覚って訳には行かないわね。頭を切り替えて……」
     重心もバランスも違うし、なによりボードから足を離せないというのもある。
     わずかな足裏の操作が、ベクトルを大きく変える感覚を理解すれば――!
    「飛べ……たーっ! 回れた~!」
     桟橋にいる司城・銀河と守安・結衣奈が、上下逆に見えた。嬉しくてつい、もう一回転を余計に入れてしまい、次の瞬間。
    「あ」
    「あー」
     顔面から落ちる夜桜を、銀河と結衣奈は意外なものを見る目で眺めていた。
    「次はわたしだねー。最初はホバリングからですかー?」
     機種を変えて、フライボードに挑む結衣奈。最初は立ち上がるのに苦労するが、コツさえ掴んでしまえばあっさりと飛び上がることができて。
    「うん、結衣奈ちゃんは流石ね。あれも結構難しそうなのに」
    「そつなく器用にってのが結衣奈だもんね。おーい、どんな感じー?」
     呼びかけに、結衣奈はきらきらと輝く笑顔を向けて。
    「思ってたより簡単かもー! 自由に飛べて、気持ちいいよ~!」
     水圧の緩急で上下の高さを変えることもできて、ご満悦の結衣奈であった。
    「あー、楽しかったーっ! 次は銀河ちゃんだね」
    「結衣奈ちゃんは流石だったね。銀河ちゃんは……どうかしらね?」
     二人の見つめる先で、銀河は熱心にインストラクターの指導を受けている。こちらの視線に気づくと、ぐっとサムズアップをしてきた。やる気らしい。
     最初は立ち上がれずに数度ずっこけていたが、ある瞬間、戸惑いの表情は確信に変わって!
    「うわー……ふおおおっ、飛んでるー!」
     ついに浮上に成功した銀河。遠目に桟橋を見つけ、手を振って会釈を送った、しかしその直後。
    「見て見て、凄いでしょー! って、あ、ああ、わああああ!」
     その動きでバランスを崩してしまい、哀れ水面に真っ逆さま。
     逆に流石ね、とは夜桜の弁である。

     なかなかフライボードのコツを掴めず、転倒を繰り返す花檻・伊織に、ティノ・アークラインは文字通りの上から目線を向けていた。
    「――花檻さん、そうやって落ちられますのは、もう何度目になりますの?」
    「っぷぁ……わ、笑わないでほしいな、ティノさん。魔法使いと違って、空を飛ぶことなんて滅多にないんだから」
    「笑ってなんかおりませんわよ。それに、これと箒の乗り方とはまた別ですから」
     フライボードの姿勢制御に、爪先へ意識を向けるティノ。彼女自身も、満足に動けるようになったのはつい先ほどのことだ。
    (「この浮遊感、ちょっと覚えがあるような――ああ、ご当地キックとか、その時の」)
     ふんふんと頷きながら動いていると、ふと伊織の視線が、こちらを下から見上げていて。
    「ま、そっちのお手並みは拝見したいとこで……おお、すごい、ティノさんが俺の直上に!」
    「直上に?」
    「そう直上で良いアングルに――って、ちょ、水っ、水が!」
     インストラクターの目を盗んで、変な真似にはちょっとした悪戯でお返しを。警告はしなかったけど、当然として行うのがティノである。
    「剣の修行って、こうやって滝に打たれたりするんじゃありませんの? 花檻さん?」
    「ごぼがぼげぼごぼ」

    「うぉっ……お、思ってたより水の抵抗がすごいっすね、コレ――あっ、やべ」
     始めのうちは、フライボードの加持・陽司のように海に落ちたり。
    「大丈夫ですか、陽司君!? っと、ボクの方も、集中っ、しないと……おおおわあああ!」
     月影・木乃葉のように傾いたり。
    「うわ、バランス難しいな……。慎重に、慎重に……!」
     アトシュ・スカーレットのようにおっかなびっくりだったり。
    「これがフライボードの実物か。なぁに、俺様にかかれば……この、くっ、らっ、いっ! あー!」
     蒼上・空のようにひっくり返ったりするところを。
    「オッケーオッケー、大体わかった。つまりはこうすれば……こうか!」
     ホバーボードのヘイズ・フォルクが、スノボ経験をもとにあっさりそれを追い抜いて。
    「ヘイズくんもなかなかやるけどまだまだね。そして見よ! この水さばきを!」
     アメリア・イアハッターに至っては、『実は経験者である』という利点を最大限に生かし、そんな彼らを高みから見下ろしていたのだった。
     ――からの数十分後。
    「ふふ、それでどう? そろそろみんな慣れた?」
     アメリアがそう問うて周りを見回すと、もうすっかりできるようになった陽司が陽気に答える。
    「フフフーン、アメリアさんどうですか! この華麗なフライボードさばき! もはやプロ並! すごい! 有頂天!」
    「調子に乗ってると痛い目みるぞ陽司。怪我はしないだろうけど、痛いぞ」
     くねくね動く陽司にアトシュが苦言を呈すると、ヘイズがざぱーんとトリックを決めて。
    「アトシュの言う通りだぜ! ほら、水でも被って頭冷やしな!」
    「うわっぷ……ちょ、ヘイズさんっ!」
    「はははは、元気いーねー皆……で、折角だから、誰が一番高く飛べるか競争しない?」
    「競争ですか!」
     食いついたのは木乃葉だ。空も、不敵な笑みを浮かべて相対する。
    「ふふふ……まだ上手くは飛べてませんが、勝負とあらば逃げるわけにはいきませんよ!」
    「ははーん? おいおいアメリア、武蔵坂空の王者(自称)の俺様を舐めるなよ? 沖縄の空だって、パーフェクトに制覇してやるぜッ!」
    「よし! それじゃ開始するよ! インストラクターさん、お願いっ!」
    「気ー付けてくださいねっと!」
     話の分かるインストラクターだったようで、OKのシャカサインがすぐに帰ってくる。今まで以上に水圧を上昇させると、まず空がフラグを成立させた。
    「来た来た来た来た……そいやぁッ!」
     そいやーとひっくり返ってざばーん、大きな水柱が立つ。一方でヘイズは乗っているもの自体が違うので、高速で離脱してしまい惜しくもアウトオブバウンズとなった。
    「いいか! お前ら見てろよ!? イィィィィハァァァァァッ!」
     ……スノボで言う所のグラブからの縦スピンを決めて、上機嫌そうでなによりである。
    「ククク……空くんが落ちたか……!」
    「空さんは我らの中でも一番のフラグ職人……っと、あ、あれー?」
     調子に乗って腕を組んだのがまずかったか、陽司はその姿勢のままでバランスを崩し、横方向に転んでいく。ばしゃーん。暫定一位のアメリアは、それを眺めて高らかに笑うのであった。
    「はっはっはー! どーよこの高さ! そして見よ! これが……バックフリップだー!」
     最高到達地点で一気に反転。二度、三度と回転して、水面近くで華麗に身をよじらせると。
     ぼっちゃーん。
     そしてそのまま無様に海中に没した。――アメリア・イアハッター、経験者ではあっても、上級者ではなく。
    「ちょっ、アメリア! ったく、言ったそばから落下するなってーの」
     アトシュが三本目の水柱を追いにいく横で、あくまで勝負にこだわった木乃葉が、ついに一番の高みへとたどり着いた。
    「え、一番? ボクがですか? ……やった」
     気負いのない笑みを浮かべると、思わずガッツポーズを取る木乃葉であった。

    「アヅマくーん! こっち見て、写真撮るよー!」
     ぱしゃりと、桜井・夕月は無邪気に防水カメラのシャッターを切る。月村・アヅマは、フライボードに乗ったままでそんなことまでする彼女を、暖かな気持ちで眺めていた。
    「夕月さんも、これで基本のホバリングは完璧だね。俺はこれから一つか二つ、トリックを決めてみたいと思うんだけど――」
    「トリック!? できるのアヅマくん? わー、やって見せてやって見せてー!」
    「お、おう」
     妙にテンションの高い夕月に背を押され、アヅマはどういうトリックがいいかなと見回すと、ふと泰若が適当に上昇してから大雑把にダイブするところを見つけた。あれなら、比較的簡単そうだ。
    「アーヅマくーんの、ちょーっといいとこ見てみたーい! あははは♪」
     手拍子まで加わる中、真下に向けていたボードを徐々に傾ける。と、一気にベクトルは海面まっしぐらとなるので、あとは着水面に向けて体を一直線に――!
     ザッ、バアアァァーン……!
     泡の弾ける音を抜けて海面に出ると、もう、夕月の笑顔がこちらに向いていて。
    「あはは、やったねアヅマくん! 格好いいーっ!」
    「よっし、上手くいった。……楽しそうだね、夕月さんもさ」
     ――それはもう、当然。夕月はまた、カメラのシャッターを切った。

    「きゃっほー! 髪を吹き抜ける風が気持ちいいわね、炎次郎さん!」
    「そ、そうですかー? 確かに秋夜さん、御髪がぜんぜん濡れてませんし――わあ!」
     と、迦具土・炎次郎がまた海の中へ突っ込んでいくのを、秋夜・クレハはホバーボードの上で不思議そうな目で見ていた。……身体能力も悪くないはずだし、よそ見でもしてるのかしら。
    「っは! まだ、まだやるで! このままじゃカッコ悪いでな」
     海面に出てきた炎次郎。やる気十分ねと、その姿にクレハは思う。
    「そうそう、やればできるんだから。ね?」
     ぱちん、とウィンクを送れば、炎次郎は呆然とこちらを見上げてきていた。
    「じゃあ、お手本……に、なるかしら。次は私が行くわね」
     インストラクターに合図を送ると、水圧を目いっぱい上げる。ツイストして渦を描きながら上昇。その頂点で――。
    「ああ、秋夜さん……」
     ――側転を二回転。天地が目まぐるしく入れ替わる中、どうにか海面をとらえて軟着陸すると、ばらまいた海水が霧雨のように降ってきて、肌を濡らした。
    「……やっぱり綺麗やな」
    「ん? なにか言ったかしら、炎次郎さん?」
    「ああいえ、別に何も……というわけでもなくて、ですね」
     言いよどむ炎次郎に、クレハはとりあえず次を飛ぶよう促して。

     ロジオン・ジュラフスキーは、インストラクターの説明を熱心に聞いて事に臨んでいた。
    「バランスを取りながら、ここをこうして、こう……でよろしいでしょうか」
    「そうっすね。基本的な操作を覚えてくれれば、後は勘とノリでどうにかなるもんです」
     大概に感覚的に過ぎる気もしなくもないが、経験者が言うならそういうものなんだろう。と、向かいで同じように説明を受けていた富士川・見桜が、こちらに声をかけてくる。
    「ロジオンさん! ロジオンさんは普段箒で――その、別のスポーツで飛んでるんだよね。良かったら、アドバイスとかもらえないかな?」
    「ふむ……そうですね。何事もチャレンジでございますよ、富士川さん」
    「あはは、なるほど!」
     と言いつつも、お互い初のフライボード。水圧を上げた直後、どちらも満足には飛べず海の中に戻ってきてしまう。
    「とと……これは、なかなか、スリルと爽快感があって、楽しいですね……っわ!?」
    「でも、バランス、とるの、たいへ――うわ、わ、わわわわ!」
     どっぱーん。
     なんとか海上に顔を出した二人は、それぞれを気遣う視線を交差させる。と、それだけで、どことなく楽しくなってきて、声をそろえてこう叫ぶのであった。
    「「もう一回!」」

    「と……飛んだ! 飛んだでござるーー! これはまるで、鳥の気分!」
    「すごいよー! 空青いし海青いし、ちょーキレイだよー!」
    「そうでござるなー! まさしく気分爽快でござ……なんとぉぉぉ!」
    「わあ!? なんてこった、ぶれにゃんが落ちた! って、やよいもバランスがあぶな……あっ」
     猫乃目・ブレイブと黒柳・矢宵の両名は、そしてテンション高くざぶーんと海中に消えていった。ライフジャケットの効果でほどなく浮かんでくると、この素敵体験の感想を口にしあう。
    「いやー、飛んだでござるなあ。しかし長く続けるにはやはり、バランス感覚が大事のようでござる。拙者、次こそはうまくやるでござるよ!」
    「ぷは……やー、すごーい! これすごいよぶれにゃん! もっかい、もっかいやる!」
    「やよ殿もやる気でござるな! では、諸共にあの空を目指すでござるよ!」
    「おー! 目指せ、そーきゅーのはしゃ!」
     再び浮上する二人。前の失敗で感覚はつかんだのか、今度はバランスを取らえていた。
    「やよ殿ー! やーよーどーのー!」
    「ぶれにゃーん! あははは、飛んでるよ! やよいたち、空飛んでる!」
     そんな感じで、ふたりの朗らかな笑い声が、沖縄の空と海に響いていくのだった。

    「織久先輩、ちゃんと撮れてるー?」
    「はい、滞りなく。翔さんこそ、よそ見をしていると足元をすくわれますよ」
    「ははっ、オレ平気だもーん! ……見てて、次はドルフィンやってみる!」
     と水面下に潜った香坂・翔を、西院鬼・織久は手持ちのビデオカメラで追い続けている。密かに、何かハプニングでも起きないかと思いつつ。
     ごば、と海面が泡立った次の瞬間、翔が勢いよく空へと飛び出し、その身を躍らせた。そこからまた潜っては飛び上がるトリック、ドルフィンを、なんと一発で成功させたのだ。
    「素晴らしい。もう、フライボードはお手の物といったご様子ですね」
    「えー、そうかなー!? じゃあそろそろ時間だし、最後にバックフリップやってみるよ!」
    「……はい。きっと翔さんなら、できますとも」
     狙い通り。――かどうかは定かではないが、ともあれ翔は高度を上げ腰を落とす。後ろに跳ね飛ぶ勢いで、ボードとともに身を回し……。
    「あっ」
    「あっ」
     二回転したまではよかったものの、三回転目の途中で着水、大きな水柱が立つ。その姿を余すところなく撮影されたと悟って、翔は拳を突き上げた。
    「……はは、失敗したー! 悔しいなー。でも、次に来る時にはこれ、絶対出来るようになってやるもんねー!」
    「その意気。その意気ですとも」
     織久は暖かく、その様子を見守る。

    「あははは、あははははは♪」
     そして、ウェイクボードで颯爽と突っ走っていくのはアリス・ドールだ。水上バイクが波をかき分けて作る水の段差に乗って、ゆうに2メートルを超える大ジャンプをしてみせる。
    「海の上……走ってるの……気持ちいい! 楽しい!」
     インストラクターも調子に乗って、スラロームで複雑航跡を残していくが、そのことごとくをアリスは突破していった。
    「楽しい♪ 速い♪ おもしろーい♪」
     720どころか1080のスピン、フロントフリップバックフリップ――プロ顔負けのトリックを、次々と繰り出していくアリス。
     ――散々楽しんでから、すごく目立っていたことに気づいたアリスが見事な赤面を披露するのは、もう少しだけ後のことで。

    作者:君島世界 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年9月15日
    難度:簡単
    参加:26人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
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