黒翼卿メイヨールの襲撃、サイキックリベレイター使用、大淫魔サイレーンとの決戦という大事件によって延期されていた、修学旅行の日程が決定しました。
今年の修学旅行は、9月13日から9月16日までの4日間。
この日程で、小学6年生・中学2年生・高校2年生の生徒達が、一斉に旅立つのです。
また、大学1年生が、同じ学部の仲間などと親睦を深める為の親睦旅行も、同じ日程・スケジュールで行われます。
修学旅行の行き先は沖縄です。
沖縄料理を食べ歩いたり、美ら海水族館を観光したり、マリンスポーツや沖縄離島巡りなど、沖縄ならではの楽しみが満載です。
さあ、あなたも、修学旅行で楽しい思い出を作りましょう!
●沖縄最大級の地下洞窟へ
――玉泉洞(ぎょくせんどう)。
修学旅行4日目の自由行動では、おきなわワールド内にある沖縄最大の鍾乳洞『玉泉洞』を見学することができる。
「全長5000メートルのうち、実際に歩くことが出来るのは890メートル程になるけれど、それでもかなりのボリュームだな!」
鍾乳石の密度も高く、890メートル内に、100万本の鍾乳石が存在しているという。
初めての武蔵坂学園での修学旅行を前に、陽気にガイドブックを広げていた桜庭・照男(高校生エクスブレイン・dn0238)の瞳も、何処か輝いていて。
「玉泉洞の鍾乳石にはサンゴ礁の石灰岩が多く含まれていて、キラキラと輝く美しい石筍を見ることが出来るっていうのも、玉泉洞の大きな特徴の1つなんだ。鍾乳石の種類は全国でも1番で、なんと37種類もあるんだから、是非ともこの目で見たいぜ!」
洞窟へ入って間もなく現れるのは、天と地の無数の大石筍で埋め尽くされた『東洋一洞』という壮大な空間だ。
空間の奥には、白銀の大石柱『昇龍の鐘』があり、この大理石を磨き上げたような純白は、玉泉洞の中でも最も美しい鍾乳石と言われている。
壮大な空間を抜けた先には、天井に形成された鋭い約2万本の鍾乳石『槍天井』が、まるで今にも頭上に降りかかって来るかのよう。
その先を進んでいくと、透き通るような青緑色の『龍神の池』や、幻想的な青色が美しい『青の泉』を目にすることができる。
さらに進むと見れる『黄金の盃』と名付けられた国内最大級のリムストーンと言う名の鍾乳石は、圧巻の一言だ。
その先には板状の鍾乳石が10万年以上の歳月をかけて幾枚も重なってできた『絞り幕』が迫り、天井から落ちた雫で跳ね返った泥が地蔵のような形になった『千人坊主』、天と地の鍾乳石が繋がって出来た『銀滝柱』という石柱が、洞内の幻想的な光景をさらに色濃くしていて。
白い鍾乳石が波打つように連なった『白銀のオーロラ』を抜けると、地上に戻れる。
「探検といっても、コース全体に足場が組まれていて照明もついてるから、特に必要なものは無さそうだな。しいていえば、濡れているので歩きやすい靴があるとベストか?」
洞内は撮影自由なので、記念写真を撮るのもいい思い出になる筈だ。
よくみると小さな滝があったり、手すりにも鍾乳石の赤ちゃんが形成されていたり、小さな化石があったり、沖縄由来のコウモリ等も生息しているというので、探検気分は十二分!
「30万年という気の遠くなるような自然の営みが創り上げた芸術だ。きっと、忘れられない体験ができると思うぜ」
そして、もう1つ忘れてはならないことがあると、照男は言う。
「鍾乳洞での探検が終わったら、あとは那覇空港で帰りの飛行機を待つだけになるが、ただ待っているだけっていうのは、正直勿体ないよな!」
楽しい探検のあとは、お土産探しも忘れてはならない。
玉泉洞を見学したあとに直ぐに立ち寄れるのが、おきなわワールド内にある『おみやげ専門店街』だ。
「定番の紅芋のタルトやちんすこうの食べ物から、島ぞうりにTシャツ、かりゆしウェアや雑貨、伝統工芸品など、ここなら思いつく限りの沖縄土産は一通り揃っていると思っても、よさそうだぜ!」
売り場自体も沖縄最大級の広さに匹敵するという。
店には宅配カウンターが常備されているので、うっかり買い過ぎても問題ナッシング!
「ご当地グッズとかペナントとか、どう見ても後で後悔しそうなものもあるけど……まっ、勢いで買ってしまうのも、修学旅行の醍醐味だな!」
パンフレットに並ぶ商品は、どれも沖縄でしか手に入らないものばかり。
家族の手土産をたくさん買う気だった照男は、自分用の手土産ももちろん買うつもりのようだ。
「そうとなれば、オレとしては『琉球ガラス王国売店』が気になってきたぜ……」
何処か浮かれた様子で照男が指差したのは、沖縄ならではの色彩豊かな琉球ガラス。
全て職人が1つづつ制作しているので、ひとつひとつの形や色味が異なるのも、手作りならではの魅力だ。
「シーサーグラスやストラップ、ガラスで製作した花や皿とか、ここにしかない限定品もいろいろあるし、見るだけでも十分見応えがありそうだな!」
――おっと、少し浮かれ過ぎたようだ。
そう、頭の後ろをかいた照男は、おもむろに空港のマップを取り出す。
エクスブレインらしく「ここも穴場だぜ?」と、楽しそうに広げてみせると……。
「冷凍系冷蔵系スイーツや南国フルーツを買うんだったら、空港買いをお薦めするぜ」
出発ロビー中心に点在しているのは、どれも個性的な沖縄土産の売店。
空港限定品も魅力的だけど、紅芋のレアケーキに、タルトサンド、アイスクリームのほか、傷みやすいフルーツなど、痒い所に手が届くようなモノが売っているという。
「さあ、最後の最後まで、沖縄の旅を楽しもうぜ!」
楽しい修学旅行の最終日!
沖縄最大級の洞窟で思い出を胸いっぱいに詰め込んで、両手いっぱいのお土産を時間が許す限り、探しに行こう――!
●玉泉洞探検
「学祭で行った、鉱石の洞窟、思い出すね」
修学旅行最後の訪問先になるのは、玉泉洞(ぎょくせんどう)。
イチの表情は淡々としていたものの、パンフレットを握る手には、力が込められていて。
「思い返すのはぞん……なんでもないです」
学園祭の想い出に何とも言えない表情を浮かべた奈那は、次第に見えてくる幻想的な光景に瞳を奪われ、静かに息を飲んだ。
「とっても神秘的だね!」
テンション高く足を踏み入れた涙の視界にも、大石筍で埋め尽くされた壮大な空間が広がり、後方に続いた学生達も次々と感嘆に似た溜息を洩らす。
「自分の眼で見る鍾乳洞は、迫力があるな……!」
――東洋一洞。
そう名付けられた大空間の奥に進むと、白銀の大石柱『昇龍の鐘』がそびえ立つ。
まるで、白亜の大理石を磨き上げたような美しさに、桜庭・照男(高校生エクスブレイン・dn0238)も、まじまじと見惚れてしまったようだ。
「これは……別世界……」
眼前に広がる圧倒的な景観に、イチも思わず足を止めてしまう。
中は意外と明るく、足場もしっかりしているけれど、イチは奈那が転ばないようにリードしながら奥を目指していく。
「とても綺麗……、なんだか目が離せないですね」
紳士な対応に奈那は少しだけドキドキしながら、景色を見回す。
白亜の鍾乳石は、どこか優しくて不思議な感じで……。
「見た目痛そうだけど……優しそうでもある、ね」
まるで、大地の懐にでも抱かれたかのよう。
忙しなく動くイチの視線は、宝石のようにキラキラと輝いていた。
(「せっかくだから最後まで遊んじゃいますよ!」)
思い出を満喫しようとする涙と照男の後に続いた悠花も、楽しそうに荘厳な空間に視線を巡らせる。
「自然の神秘は実にいいな……」
皆と少し離れた場所では、セレスが静かに景観を楽しんでいて。
様々な種類の鐘乳石に驚きながらも、天にびっしり形成された『槍天井』の真下で、少し圧倒されたように足を止めた。
「輝いて見えるのは、珊瑚が混じっているせいか……」
セレスが小さな溜息を洩らした刹那、再び前方の方から歓声が洩れた。
「はぁー……洞窟にこんな綺麗なトコがあんだべなぁ」
「すっげぇ……もっと狭苦しいのを想像してたけど、ずっと広い」
無数の石筍に浮かぶ、緑と青。
並が『龍神の池』の前で感嘆を洩らすと、ちょっとした探検気分でいた要も、現実感を無くして立ち尽くしてしまう。
陽に照らされた水も綺麗だけど、洞窟内で灯り1つで幻想的な姿を見せてくれる水も、何とも美しい……。
「多分1人だったら来れなかったよ、ありがとう巌流君」
変な鎧の音もなく、足場も手すりもあって、出口も入口もわかるし来て良かったと笑う並に、要は思わず身震いする。
「って、こんなトコでおっかねぇこと言わないでくださいよ先輩!?」
「……え? 洞窟って落ち武者伝説と祟りと鬼の噂があり、足場と安全は自力で確保し、備付の灯りは蝋燭で……」
「さすが七不思議使い……想像して涼しくなっちまった……!」
その刹那、近くにあった鍾乳石がぐらりと動いたように見えて!?
「ん、どうした?」
残念、照男のリーゼントでした!
要は噴き出しそうになりながらも、一緒の記念写真を頼んだのでした♪
「うわぁ……凄い……想像以上に幻想的だよ!」
幻想的な『龍神の池』を抜けた流龍の瞳に飛び込んできたのは、神秘的な青色だった。
「えっと、これが『青の泉』か……」
全ての鐘乳石が見れるように、足元が滑らないように、ゆっくり探検していた翔汰も、洞窟の中でも美しく冴える青色に、思わず感嘆を洩らしてしまう。
「本当に真っ青で綺麗……宝石みたいだね……見惚れちゃうよ!」
「……とにかく自然の力がすごいってことでいいかな」
――いったいどうなっているのだろう?
まるで、幻想世界に迷い込んだような光景に、旅好きの流龍がたまらず瞳を細め、始めは観察に徹していた翔汰も難しく考えることを止めて、瞳に青色を焼き付ける。
「綺麗な色……」
瞳を輝かせたままのイチも、食い入るように青色を見つめていて。
(「青和さんは鉱石が好きだったなぁ」)
何時もより輝いたイチの瞳に奈那が頬を緩め、視線を感じたイチも何処か気恥ずかしそうに、パンフレットを握りしめた。
「……はっ、他の所もしっかり目に焼き付けないとな」
心落ち着くような青色に、ぼーっと見惚れてしまったのは、セレスも同じ。
我に返ったセレスも、後ろ羽(?)引かれる思いで、青の泉を後にするのだった。
「なんかゲームに出てくるダンジョンみてぇだなこれ……!」
「すごいねぇ……こんなところに来るのは初めてだよ」
想像以上の幻想世界に瑠音は終始瞳を輝かせ、翠葉と共に写真を撮っていく、が……。
「……って、瑠音! 楽しむのはいいけど、足元気を付けて!」
写メを撮りながら駆け足気味に進んでいく瑠音の手を、翠葉が転ばないように、離れないように掴みとる。
(「嫌かな? 嫌がられないといいな」)
でも、たまには……こういうときくらいは。
翠葉が強く握った手を少し緩めた時だった、逆にその手をしっかり取った瑠音は悪戯めいた笑みを浮かべ、駆け出した。
「ハッハッハ! どうだぁ、楽しいだろう!」
――このまま一緒に突っ切ろうぜ!
そのまま勢いに乗せて『絞り幕』をくぐり抜り抜けた瑠音は、繋ぎっぱなしの手に気付かないまま『白銀のオーロラ』の側を一気に駆け抜ける。
「もう……心配で目が離せないよ……」
「何だよー、大丈夫だぜ。全く心配性だな!」
楽しそうな瑠音に翠葉もまた、2人で過ごす時間に嬉しさを噛み締めながら、その手を握り返した。
「桜庭はどれに一番心が惹かれたか?」
「うーん、オレもどれも綺麗で凄くて選び難いっていうのが、本音だな」
探検の終わりが見えてきても、見所が途切れることはなく。
外はまだ暑いのに洞窟内はとても涼しくて、穏やかな時間が流れているように感じる。
「こうして実際に見るとすごいとしか言えないな……」
百聞は一見に如かずとは、このことだろうか。
そう洩らした翔汰に、友衛と照男も頷いてみせて。
「どれも綺麗で、神秘的で……不思議な感覚だ」
「ああ、全くだ」
3人は時間が許す限り、自然が創り上げた荘厳な芸術を瞳に焼き付けていた。
「さて、次はお土産選びだね!」
地上へ向かうエスカレータを登れば、強い日差しが飛び込んでくる。
外の空気を吸い込んだ流龍は、弾む足取りで『おみやげ専門店街』へ向かうのだった。
●ドキドキ沖縄のお土産巡り
「おねいちゃんこれ、美味しい!」
「買う前にしっかり味見しておかないとね」
楽しい想い出をたくさん作ったあとは、最後のお土産探し!
ましろと手を繋いで『おみやげ専門店街』を見回っていた羽衣が、紅いもタルトや、パイナップルケーキの試食に頬を緩ませ、ましろも楽しそうに『ちんすこう』を口の中に放り込んでいく。
「むむ、ちんすこうは色々種類があって悩む……」
塩も黒糖もマンゴーも捨て難いとはッ!
さらに店員が「これもどうぞ」と試食を勧めてくる中、羽衣がぽつりと呟いた。
「鏡くんのお土産はねぇ、シーサーにしようと思うの」
「シーサーさん、良いね、良いね! 妹からだし、女の子のシーサーさんにしようか?」
ましろは頭に赤いハイビスカスを指した、女の子シーサーの置物に視線を止めると、楽しそうに笑みを洩らす。
「んふふ、この子、おめめがくりくりしててういちゃんみたいで可愛いよ」
「じゃあういはこっち買う!」
羽衣も頭にハイビスカスを指したシーサーの置物に手を伸ばす。
掌にちょんと乗せたシーサーはほんわり笑顔で、なんだかましろのよう……。
――楽しい想い出、たくさん作れたかな?
「安藤君、先輩方へのお土産なのだが、何を買えば良いと思う?」
「秋山先輩に関しては、梨乃さんにお任せしますよ」
クラブの先輩達への土産を探していたのは【TG研】のジェフと梨乃。
先輩達との付き合いが長いジェフのアドバイスが欲しいと言う梨乃に、ジェフは少し思案に耽ると……。
「先ず、ラハブ先輩、富山先輩、竹尾先輩の3人は食べ物で大丈夫でしょう。出来れば肉や魚が良いと思われます」
「ふむ、確かにあの3人はそれが良さそうなのだ」
ならば『サーターアンダギー』か『イラブー』、いや『ラフテー』も良さそうだ。
「園観先輩はファンシーな物を喜びそうですが……」
「では、お姉ちゃんとお揃いで、ヤママリャーの縫いぐるみだな」
もう1人の女性の先輩も、同じもので大丈夫だろう。
部長については余程のトンデモ物でなければ怒らないと思うので、2人一致で『やむちんの小皿』を選んだ。
「安藤君、色々助かったのだ。これは私からのお礼だ」
「いえ、それほどでも――!?」
満足げに眼鏡の端を上げた梨乃がジェフに贈ったのは『美ら海』と書かれたペナントだったという♪
「あとは何がいいかねー? 無難に食物か?」
寮の仲間へのお土産を選んでいたのは【柊寮】の野郎3人組。
お願いされていた紅芋のタルトを寮に届くように手配を済ませたアトシュが、2人の顔を見回すと……。
「ふむ、やはり食べ物がいいのか。見目のいいものがいいか?」
「実家に送る分とクラブで渡す分……えぇ、食べれるのが良いと思いますアトシュ先輩」
国臣が言葉を重ねると同時に、木乃葉は『ムーチー』に視線を止める。
木乃葉の手元からちらっと見えたお土産リストには、やはり食べ物系がギッシリ連なっているようだ……。
「ご当地らしいもの、が良いとは言うが、沖縄だとそれでもなお物が多いなぁ」
国臣は自分用のバームクーヘンを購入したアトシュを横目に、『ちんすこう』を選ぶ。
これなら2人が買うものとほぼ被らないし、種類も多いので、皆も喜んでくれるだろう。
「お、照男もいっぱい買い込んだみたいだな」
「家族用でしょうか。あ、クラブ用にサータアンダギー買ってきますよ〜」
「私も同行しよう」
両手一杯にお土産を抱えて宅配カウンターに向かう照男を、アトシュが呼び止める。
その間に木乃葉と国臣は『サータアンダギー』を探そうと、広い店内を見回した。
――楽しいお土産巡りの旅は、まだまだ続きそうです!
「どれも素敵ですね……迷います」
鮮やかな珊瑚礁のアクセサリーに目移りしつつ、紅詩が手にしたのは、赤珊瑚のペアペンダント。
「お、いいセレクトだな!」
2つ合わせると1つの円になる意匠の美しさに照男は瞳を細めると、自分のお土産を探そうと、広大な店内に視線を巡らせる。
「次は、琉球ガラス王国売店へ行ってみるか」
視界の端に琉球ガラスのペンダントを手にした涙が映るや否や、照男は少しだけ足を早めるのだった。
●悠久の硝子に囲まれて
「これどうかな?」
「へぇ……模様が綺麗。素敵だと思うよ」
響とミルドレッドが『琉球ガラス王国売店』で選ぶのは、大好きな人への沖縄土産。
お揃いの琉球ガラスのペアグラスを手に取った響に、恋人に似合いそうなものを探していたミルドレッドがアドバイスを贈ると……。
「ミリーさんも、お揃いのとかどうかな。綺麗な翠色のグラスも、たくさんあったよー?」
「そっか、お揃いってのはありだよね」
泡模様が美しい紫と青のグラスを愛しげに見つめる響に、ミルドレッドも強く頷く。
「ありがとう、おかげでいいの見つかりそう」
そして、翠色のペアグラスに視線を止めると、響に向けて微笑んだ。
「ふむふむ、沖縄のお土産もいろいろあるにござ――」
「ぶれにゃーん、どれにしよう――!」
ブレイブが紫芋のタルトに視線を止めた刹那、矢宵が助けを求めるように彼女にしがみついてきて!?
「アニのお土産グラスにしたいけど、うーん、どれにしよう……うーん」
琉球ガラスで造られた美しいグラスを前に、矢宵はどれを買えばいいのかぐるぐる目移りしている様子。
「ふ、ふむ、真墨殿に似合いそうな……クールなこのような色合いのものではどうでござろう」
矢宵の兄には、ブレイドも世話になっている。
的確なアドバイスを受けた矢宵は、散々迷いながらもグラスを1つ手に取った。
「えへへ、気に入ってくれるといいなぁ」
一緒に選んでくれたことに感謝を述べた矢宵の視線が、ふと別の売り場の棚に止まる。
「……あ、ストラップもかわいい、ぶれにゃん、お揃いで買おうよ」
「沖縄記念に揃いのストラップ……良いでござるな」
目を瞑ると、何時でも修学旅行の思い出が蘇ってくるかのよう……。
両手いっぱいにお土産を抱えた2人は、弾む足取りで空港行きのバスに乗り込んだ。
「ミリーさん、これ見立てて貰った御礼ですっ」
空港行きのバスに乗るミルドレッドに、響が渡したのはサプライズプレゼント。
共に席に腰掛けて包みを開けると、中には琉球ガラスの欠片で作ったペンダントが……。
「いいの? すごく嬉しい♪」
自分も何か用意しておけば良かったと思いながら、ミルドレッドは響の手をとる。
そして、ぎゅっと握ると、笑顔で感謝を述べたのだった。
●那覇空港にて
修学旅行の日程を全て終え、あとは『那覇空港』から東京便に乗るだけだ。
それでも、多くの学生達が最後まで沖縄での楽しいひとときを満喫しようと、空港内のお土産店や物産店に、いそいそと足を運んでいた。
「わぁわぁ、いっぱいありますねっ! 限定品に果物に、食べ物……お菓子……だな!」
「お菓子って……さっき別なとこで買い込んでなかったっけ」
終始テンション上がりっぱなしの夕月を見守っていたアヅマが、すぐにツッコミを入れるものの……。
「アヅマ君はどれがいいと思うー?」
上手くスルーされてしまうのが、ツッコミ属性ですね、わかります。
要は定番モノは買ったので、あとは面白そうなモノを買いたいと言うことなのだろう。
(「しかしなぁ、何が良いのかって俺に聞かれても困るんだけど……」)
財布の中身を確認したアヅマが「ここでしか買えないもの」と返すと、その提案に夕月も楽しげに乗ってくれて、共に空港内を歩き始めた。
「定番なのは塩だけど、石垣ラー油や島コショウも気になるね」
クラスメイトと共に沖縄土産のショッピングを堪能していた遥の両手にも、珍しい沖縄料理の調味料や空港限定のお菓子が、いっぱい抱え込まれている。
「クラブの皆さんへお土産を買いたいのですが……」
「めいこは部長さんだものネ」
定番の品もだけど、フルーツやケーキも気になってしまうのが、乙女心♪
クラブへのお土産を選んでいためいこは、こういうことに余り慣れてなくて、どれがいいか迷ってしまう。
「つぐみ先輩はどれが気になりますか?」
不安そうに視線を上げためいこに、つぐみは少しだけ思案に耽ける……。
「ケーキ、かしら。めいこもケーキ気になるんでしょ? 折角だしケーキにしない?」
あくまでクラブのお茶の時間のケーキであって、決して自分が食べたいとか、そういうのじゃありませんよ、ヨ?
「ケーキのお土産というのも珍しいですし、私も食べたいですし……紅芋のレアケーキにします!」
やっぱり、自分が気になるものを買うのが1番!
霧が晴れたようにめいこが瞳を輝かせると、つぐみも配りやすい個包装のお菓子を手に取って、一緒にレジに向かう。
「皆さん、喜んでくれるでしょうか」
「お土産を渡すまでが修学旅行ネ!」
――買ったあとで少しドキドキするのも、お土産選びの醍醐味の1つ。
皆にも、この楽しさが届きますように。
「ねぇねぇ、アイスクリーム、おいしそうだと思いません?」
「そうだな、まだ時間もあるし……どこか食べれる場所くらいあるだろきっと」
一通り空港内を歩いて疲れた夕月が休憩を欲求すると、戦利品の『ハブカレー』や『沖縄黒六ひねり餅』を鞄に詰めていたアヅマは、もう一度財布と相談する。
「んじゃちょっと買ってくるから待ってて」
「楽しい旅行になって良かった」
――また、来てみたい。
そう呟いた友衛の携帯には、皆と玉泉洞で撮った記念写真が、鮮明に映っていて。
胸いっぱいに思い出を詰め込んで、両手いっぱいに沖縄の幸を抱えた少年少女達は、名残惜しみながらも南の島に笑顔を咲かせ、大空へと飛び立っていった。
作者:御剣鋼 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
|
種類:
公開:2016年9月16日
難度:簡単
参加:29人
結果:成功!
|
||
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
|
||
あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
|
||
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|