修学旅行2016~枕投げ頂上決戦!

     このたび、修学旅行の日程が決定した。
     黒翼卿メイヨールの学園襲撃、サイキックリベレイターの使用、大淫魔サイレーンとの海上都市決戦という、度重なる大事件によって延期されていたものだ。
     今年の修学旅行は、9月13日から9月16日までの4日間。
     この日程で、小学6年生・中学2年生・高校2年生の生徒達が、一斉に旅立つ。
     また、大学1年生が同じ学部の仲間などと親睦を深める為の旅行も、同じ日程・スケジュールで行われる。

     修学旅行の行き先は、今年も沖縄だ。
     沖縄料理を食べ歩いたり、美ら海水族館を観光したり、マリンスポーツや沖縄離島巡りをしたり……沖縄でしか味わえない楽しみがたくさん待っている。
     さあ、みんなも、修学旅行で楽しい思い出を作ろうじゃないか!

    ●夜戦のお知らせ
     修学旅行1日目の夜といえば。
     その日の疲れを癒し、次の日の観光やアクティビティに備え、鋭気を養う時間。
    「……だと思ったか!? 甘いなヤマト!」
    「なんだいきなり!?」
     神崎・ヤマト(高校生エクスブレイン・dn0002)は、同級生から指を突きつけられた。
    「修学旅行の夜と言えば、枕投げと相場が決まってるだろうが!」
    「ふ……その意見には俺も賛成だ」
    「お、乗って来たなヤマト。それで、今年の枕投げ大会の情報が回ってきてるぞ」
     同級生が見せた携帯端末の画面に、ざっと目を通すヤマト。
    「会場は、宿の多目的ホールか」
    「大人しく寝てる奴らに迷惑がかかると、アレだからな。ってか、先生に見つかると面倒だ」
     枕は、宿の物を使用する。枕による有利不利をなくすためでもあるし、
    「現地調達の方が、雰囲気出るだろ?」
    「確かにな」
     枕が2回ヒットした時点で失格。サーヴァントの同行は認められており、その場合は、サーヴァントと主、それぞれ1回当たった時点で失格となる。
     総当たり戦で、最後まで残っていた1人が優勝。また、撃破数が一番多かった参加者には、敢闘賞が授与される。
    「今年の賞品は……沖縄お土産セットか」
    「優勝賞品は、ちんすこうとかサーターアンダギーとかの食べ物。敢闘賞は、食べ物以外の物……琉球ガラスとか琉球張り子とかちっこいシーサーとか、色々らしいぞ」
     ESPは、他人や建物に被害を与えないものであれば、使用OKだ。もちろん、サイキックの使用は不可。それっぽい技の名前を叫んで枕を投げる分には、全然かまわない。
     また、人造灼滅者の皆さんは、人間形態での参加をお願いしたい。
     個人でもチームでもエントリーは可能だ。乱戦が予想されるため、チームが必ずしも有利とは限らない。何より、優勝者は1人。チームで残ったとしても、必ず決着を付けなければいけないのだ。過酷!
    「ってわけで、やるよな、ヤマト?」
    「当然だ」
    「やる気じゃねえか」
    「ふっ、俺の脳に秘められた全能計算域(エクスマトリックス)が、生存経路を導き出す! ……ただし俺だけのな!」
    「おいやめろ」
     というか、別にエクスブレインだからってアドバンテージないし。
     ともあれ、ヤマトはやる気だ。正直、今年は修学旅行に行けないかと思っていた。待たされた分、思い切り楽しまなければもったいない。
    「それじゃあ」
    「戦場で会おうぜ」
     ぱぁん、と手を叩き合い、ヤマトは同級生と別れた。……出発日の朝、確実にまた顔を合わせるけど。
     貴重な修学旅行、眠る暇さえもったいない?
     さあ、君も枕投げチャンピオンを目指せ!


    ■リプレイ

    ●BGMは沖縄風で
    「……そろそろ始まるみたいだな」
     雲龍のサウンドシャッターが、照明の落ちたホールをバトルフィールドに変える。外部への音声が遮断された瞬間……戦いは始まった。
    「秘儀お布団隠れの術!」
     ぽふん。
     いきなり露香が、そばにあった敷布団にくるまった。参加者の数が減るまでやり過ごすつもりだ……!
     早速飛び交う枕、枕、枕。たまにサーヴァント。
     標的を探す雲龍は、手にした枕で流れ弾ならぬ流れ枕を受け流すと、戦いの真っただ中に身を投じていく。
    「さぁ、今回も始まったよ。『修学旅行の定番・まくら投げ大会!』実況はボク、柿崎・法子が担当するよ。はたして今年の枕投げを制し、最後まで生き残るのは誰になるのか!」
     早々にリタイアした法子の実況が、会場に響き渡る。
     ……あれ、これ、3年前と同じ?
    「おおっと、あの輝きは一体!?」
    「沖縄のご当地パワーよ、僕に力を!」
     法子の視線の先、一正が光った!
    「これがッ! 沖縄と青森のご当地パワーを合集して放つッ! 必殺の一撃だッ!」
     なんかわからんけどヤバそう!
     参加者の攻撃が殺到する。しかしそれこそ一正の思うツボ。
     堅実なカウンターが、ライバルを撃墜する。派手なアクションはブラフだったのだ!
     悲鳴を聞き流しつつ、こっそり枕を回収していく三成。今はまだ、ヒャッハーする時ではない。
     場に満ちる楽し気な雰囲気に、車も自然と笑みがこぼれる。
    「ここに集いし歴戦の勇士達! 枕投げの頂点に君臨するのは一体誰なのか!? どう思いますか、解説の……なんてつい口走ってしまいますね、この熱気!」
     そんな車の前に、敵影が現れる。
     ヤマトだ。
    「やろうか……!」
    「いいでしょう、望むところです!」
     これは好勝負の予感……!
    「アッシュ君、ニホンの戦いの極意は『戦わずして勝つ』事だそうです」
    「戦いの極意かぁ、楽しみにしてるよジェフっ!」
     【マーベラス】のジェフとアッシュ、そして霊犬のミックが、ニホンの伝統行事に挑む。逃げるミック、投げるアッシュ!
     真波・悠と木乃葉と陽司の3人は、【武蔵境キャンパス 中学2年E組 男子組】。
    「闇に紛れて獲物を仕留める……狩りの何たるかを見せましょう!」
     アイテムポケットに枕を詰めると、ニホンオオカミに変身する木乃葉。
     それを見届け、悠は、面識のない相手から狙っていく。同じく参戦している女子組には負けていられない!
    「先手必勝! うりゃーっ!」
     悠は、ここぞとばかり一撃を加えたら、仲間のカバーへと転じる。
    「中二男子の元気さナメてもらっちゃぁ困るっす!」
     乱れ飛ぶ枕をかいくぐって枕を回収する悠から注意を逸らす様に、ライドキャリバーのキツネユリに騎乗した陽司が、戦場を駆け巡る。
    「枕なんて、当たるわけないっすよー!」
     皆の注目の的だが、こうしてヘイトを稼ぐ事こそ陽司の狙い。走ってかわして懐に入り、とどめを差す!
     陽司が注意を引いている間に、木乃葉が、こっそり相手の背後を取った。
    「隙ありです!」
     相手が気づいた時にはもう遅い、人間に戻って枕シュート!
    「敢闘賞はボクがもらいます……!」
     【チーム黒猫】の矢宵に布団をぐるぐる巻きにされたライドキャリバー・テツくんが、戦場を爆走する。ついでに枕も拾うよ! えらいよテツくん!
    「やよ殿、いくでござるよ!」
    「ぶれにゃん、ガンガンいくよー!」
     切り込み隊長ブレイブによって体勢を崩した相手目がけ、矢宵が狙い撃つ!!
    「やったー! あっ、ぶれにゃん危ない!」
     攻撃直後、無手になったブレイブを枕が襲う!
    「なんの!」
     だが、とっさに枕を拾って迎撃!
     必殺! 枕返し! のようなもの!
    「ふっ、そこに枕があるゆえに枕を投げるのでござる!」
     出ました名言。
     さあこちらは、兎斗、想司、マサムネ、【外国語学部1年】の愉快な仲間達。
    「オレらの修学旅行も今年で最後!? なら、みんなでめいっぱい楽しもうじゃねーの! やってやんよ!」
     枕を投げるマサムネ。なんかこうバババって!
     ……あっさり、枕が尽きた。
    「やべえ!」
     素早くチャージ! 拾え拾えー!
     その間に、迎撃する想司。地獄投げと叫んでは危険な角度で枕投げつけ、オーラキャノンと言っては離れた相手に狙いを定め、隙をついて落とす。閃光百裂拳は枕乱打。楽しみまくっている。
     だが、その時、流れ弾がマサムネ直撃コースに……!
    「ああっ、想司ちーん!」
    「後は任せました」
     すぱーん。マサムネをかばった想司の顔面にクリーンヒット。
     なぜかちょっと満足げに吹き飛ぶ想司を見送る兎斗は、思う。この戦いを、そして枕の感触を堪能できたならば、いつ派手に散っても構わない、と。
    「一番の目標は、楽しむこと、だからな。そうだろう白?」
     兎斗が霊犬に語り掛けた瞬間。
     ぼふん。
    「……おい、ちょっと待て眼鏡を狙ったのは誰だ。仕返し3倍返しだぞ」
     枕投げ、それは裏切りを意味する言葉……じゃない。

    ●最新情報を公開しよう。ヤマトは脱落しました。
     梟の戦法は、一撃離脱&一投一殺。
     自分以外はみんな敵。なんてスリリングな空間。
    「――夜は梟の独壇場だってことを教えてあげよう」
     集団に囲まれれば、布団を跳ね上げ、ひょいっと逃走する梟。
     大人げない? いーや、こんな楽しい夜、子供にならなきゃ損!
     一方こちらは、颯音が勝ち取った壁沿いの敷布団エリアに陣取り、順調に戦いを進める悪友カルテット。
     純也が防御、壱&ウイングキャットのきなこがサポート、そして颯音がとどめの黄金パターン。4年の付き合いは伊達じゃない!
     中でも、純也はやる気だ。
    「……優勝賞品が飲食物だからな」
     流れ枕はもちろん、布団へ潜伏したり、そこから奇襲してくる相手にも、純也は警戒を怠らない。初見のトリッキーな戦法にも注意だ。
     そうして周囲の状況を把握しつつ、颯音はリタイアしそうな参加者を狙うのに専念する。
     その間に壱は、きなこと一緒に弾の確保。そして颯音をサポートする牽制攻撃を……。
    「って、あっ、こらきなこ布団に入って寝るな! ここで寝たら死ぬぞ!」
     死なない。多分死なない。
     背の低さも、ここでは武器。長身のライバルも、要にとっては盾になる。
     流れ弾を枕ではたき落とすと、叩き付けるように枕を相手に振り下ろす。
     当初の緊張も解け、要はハイテンション! 他の参加者とも不思議な連帯を感じていたりする。
    「燃えてきたぜ……ここまできたら、是が非でも一番狙ってやるッ!」
     AB2チームに分かれて参戦していた【黒鷹】は、直接対決の時を迎えていた。
     Aチームはアラン、ホテルス、御調、不入斗・悠。
     Bチームはギーゼルベルト、統弥、ユーリー、そして翔である。
     枕を拾っては投げ、拾っては投げ。アランは、Bチーム相手でも容赦ない。ライドキャリバーのコラードは、盾にされてる事にちょっぴり不満げだけど。
    「今が何時かなんて、明日の朝のことなんて気にしてられないよ! 俺は、俺たちは、今を楽しんでるんだからっ!」
     深夜独特のテンションが、戦場に蔓延している。
    「Aチームは強敵だ、ここで倒して憂いを断つ!」
     まだここで終わるつもりはない。ギーゼルベルトが、仲間へ枕の供給を行う。
    「俺がサポートするから3人はどんどん投げてくれ!」
    「ありがと、ギル先輩!」
     同チームの翔が、受け取った枕を即座にシュート。
     供給中を狙われたギーゼルベルトは、とっさに渡すはずの枕を投じて迎撃する。
    「悪いな、俺たちが勝たせて貰う!」
    「そういうこと!」
     同じくBチームの統弥が、敷布団ガード。布団に隠れている相手だって見逃さない。ここまでもそうやって何人もの参加者からライフを奪ってきたのだ。
     御調を守りつつ、Bチームへと攻撃を加えるホテルス。騎士たるもの、競い合いは全力で挑まねば。無論、節度はきちんと守った上で。
    「ふむ、友人と共にこうして遊ぶのも中々楽しい物ですな」
     背中はアランや悠に預けて。ホテルスは枕を布団で払いつつ、カウンター気味に枕を放った。自慢のマント捌きが、この局面でも活きる。
     しかしBチームのユーリーは、【黒鷹】以外の参加者をもおののかせていた。
     その理由は、突貫力だけでなく、外見にある。
    「盾こそ私の騎士道。護りこそ我が戦いの真髄」
     戦場を渡り歩く間に回収した布団で全身を覆い、重装歩兵と化していた。
     だがその威容も、Aチームの御調の殺る気を削ぐことはできない。
    「行くわよユーリ! 覚悟して頂戴!!」
     標的を倒すためなら、仲間すらも全て盾。乱入してくる他参加者も、薙ぎ払う。容赦ない御調。アランらの心配もどこ吹く風。
     徐々に押されるユーリー目がけ枕が飛ぶのを見た瞬間、統弥が枕を投じた。撃墜! 落下した枕を両方拾うと、すかさず仲間に渡すのも忘れない。
    「こっちも攻めるしかないよね!」
    「ええいしぶといわね! 布団の海に轟沈なさい!!」
     焦れた時、ぱたり、御調が倒れた。枕をつかんだまま、前のめりで。
     フルアーマーユーリーの背後から飛び出した翔が、反撃したのだ!
    「どうだ! 先輩たちには負けないもんねー!」
     翔がぐっ、と親指を立てた。背丈ではかなわなくても、闘志じゃ負けないぞ!
     仁義? 慈悲? 何それ美味しいの?
     Aチームの悠が仲間を盾にした。
    「悪いな、この戦場で生き残るのは俺のナノナノ、バッカルさんだ!」
     高らかに宣言すると、悠がバッカルさんを投げた。
     かわされる……かと思いきや、バッカルさんが抱えた枕を投げた。二段攻撃!
    「な゛ぁの゛ー(訳・この世は弱肉強食だぜ)」
     渋格好いいよ、バッカルさん。

    ●ちなみに脱落者は観戦席にいます
    「ハハッ、オレとシエロのコンビネーションについてこれるっすか?」
     漣とナノナノのコンビが、牙を剥く。ドサクサ紛れ戦法の時間は終わりだ!
     改心の光で目潰し上等、ここまできたら、手段は選ばない!
     漣たちの隙を生じぬ2連撃で、相手のライフを一瞬で削り落としたその時、ここぞとばかり、敷布団から飛び出た露香が、奇襲を食らわせた!
    「うあっ、女の子が出たっす!?」
     驚く漣。
     まあ、あとは真面目に戦う露香である! ……出オチとか言うな!
    「キャスト・オフ!」
    「今度はなんすか!?」
     更に、敷布団が吹き飛び、もう後がないニーナが出現した。起死回生の必殺シュート!
    「アウェーキング・ブラスターッ!!」
     決まった! そう思った矢先、
    「おヴぇっ!?」
     顔面に枕がクリーンヒット!
    「くっ、今度こそ勝つ……!!」
     大学1年のニーナに、果たして次はあるのか……!?
     さてさて、【武蔵境中学2-E女子組】のアリス、乃麻、ノイン。運動会の水鉄砲チーム、沖縄にて再結成だ。
     敷布団を盾に被弾を防ぐノイン。大分夜も深まってきたが、眠気はESPインソムニアが何とかしてくれている。
     同クラスの男子組も、まだ生き残っているようだ。このままいけば相対することになりそうだが、ノインにも手の内はバレバレ。だって同じ教室で作戦会議してたし。
     その後方で、敷布団の壁を作りつつ、戦況をうかがう乃麻。
    「だいぶクライマックス感出てきたなー。ほな行くでー、枕の貯蔵は十分かー?」
    「……任務、遂行します」
     乃麻は、ぽいぽいとアイテムポケットから枕を出してアリスやノインに渡す。今までコツコツ貯蔵してきた枕が火を噴くぜ!
    「……2人が……いっしょなら……負けないの……」
     枕を受け取ったアリスが乱打する。壁を背にして、前の敵だけに専念する戦法だ。
     そこに忍び寄る、敵! するとアリスは、ESP怪力無双で、足元の敷き布団を思い切り引っ張り、敵のバランスを崩した。そこにノインの一撃!
     人数を生かして円陣を組み、ここまで勝ち抜いて来た【糸括】。
     和奏がパイナップル柄のカバーにインした枕を投げてから、このホールをどれだけの枕が飛び交っただろう。
     いよいよ脱落者が増えてきた頃、雰囲気が不意に一変した。
    「【糸括】ビリは、トップに沖縄スイーツ奢りじゃな」
     真っ先に仲間に牙を剥いたのは、心桜だった。
    「さあ鈍殿、覚悟おおお!」
    「なんの! 秘儀、布団返し!」
     脇差が、足元の布団を跳ね上げ、枕を弾く。内紛だ!
    「そんな……皆、容赦ないですね?!」
     仲間達が戦いあう様子に、防御役の理利がたじろぐ。
     理利が、心桜のナノナノ・ここあ召喚=投げられるのを引きとめた心温まるかもしれないエピソードが、遥か昔のよう。
     その瞬間、心桜が足をすくわれた。
     紗里亜の仕込みだ。序盤に陣地を作ると同時に、皆の足元のシーツを緩ませていたのだ!
    「ふふ、お覚悟!」
     紗里亜が、心桜を討った。いつの間にかここあも潰されてた。
    「なっ、わらわがビリじゃとおおおお!? ……豚足奢ります」
     スイーツじゃねえ。
     さあ次! 拳法の歩法を生かし、変幻自在に動く紗里亜が……盛大に転倒した。
    「策士策に溺れるとはこの事でしたかっ!」
     めっちゃ楽しそうだった。
    「僕も、大学生の本気を見せてあげる……!」
     盾役は十分果たした。渚緒が攻撃に転じる。沖縄土産に甘いものを持ち帰ると心に誓った以上、簡単には負けられない。
     生き残るべく、ビハインドさえも身代わりにすることもいとわない渚緒。
    「ごめんね、カルラ!」
    「あう……油断したぁ……」
     カルラの陰から渚緒の反撃を受け、和奏が脱落する。
    「……あれ?」
     ぶつかった枕を二度見した。和奏が最初に投げたパイナップル枕だった。
    「おかえり……」
     ぱたり。
     慧樹と鞴、【はせぶ】の2人は、枕による攻撃と布団による防御を絶妙にスイッチしつつ、善戦を続けていた。
    「中学ん時の枕投げ、思い出すな」
    「ええ。今回も、最後の雌雄を決する時まで、戦い抜きましょう」
    「そういやあん時は……って、来たぞ鞴!」
     迫る敵!
     鞴が、まさかの布団投てき! 相手の視界を奪った隙に、防御を捨てた慧樹が、枕を振りかぶった。
    「食らえ、スミケイスペッシャルー!」
     ばしーん!
     流れるような連携。確かに、布団を投げてはいけないと言った覚えはない……!

    ●決着!
    「運命が定まったようだな……」
     いつの間にか他の生徒と並んで実況席に座るヤマトが、戦いの終わりを告げる。
     正直、誰が生き残ってもおかしくない乱戦だったが、最後の1人……すなわち優勝者は、【糸括】の脇差であった。
     土壇場で、手持ちの枕を投げ切ったと見せかけ、アイテムポケットにしまっておいた布団や枕でカウンターを決めたのが勝因となった。
    「よっしゃあ! 元暗殺者舐めんなよ!」
    「やりましたね鈍。正直始まる前はちょろいとか思って……いえ何でも」
     仲間の栄誉を、そしてチーム全員の健闘をたたえる理利。
     優勝こそ逃したものの、2位の栄誉を勝ち取ったのは颯音。後半まで残った強豪と相討った純也や、壱&きなこのサポートのお陰だ。
     そして敢闘賞は、三成に与えられた。
     攻撃を集中させている主&サーヴァントや、既に1点ダメージをもらっている者、攻撃直前の参加者に狙いを絞った作戦などが功を奏したもよう。
     では勝利のお言葉を。
    「ヒャッハー!」
     ありがとうごさいます。
    「……そういえばジェフどこ行ったんだろう?」
    「??」
     賞品が授与されていく中、アッシュと霊犬のミックが、そろって首をかしげた。
    「今、上から何か音がしなかったか」
     そう言うと、ヤマトが姿を消す。
     戻って来た。……ジェフを連れて。
    「ずっと天井に隠れてたのか」
    「戦わずにして勝つ、つまり、ずっと隠れていることこそ戦いの極意なれば……」
     ヤマトに促され、脇差がぽんぽんと2回、枕をジェフに当てた。
     今度こそ決着した。

     さあ、明日は……日付的にはもう『今日』だけど……修学旅行2日目。
     眠気に負けずに楽しもうっ!

    作者:七尾マサムネ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年9月13日
    難度:簡単
    参加:42人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 4/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 9
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