●北海道札幌市
「いやー、空港からここまできたし、いよいよ試される大地の本番ですよ」
「まだ9月だってのにもう寒い……」
旅行者らしきカップルが札幌駅から出てくる。その手に持っているのは旅行店とかに置かれている旅行ブック。
表紙には海鮮食べ尽くしマップと書かれていた。
「さて、折角北海道に来たし、美味しい物をたくさん食べないとな」
「ウニとかイクラとか美味しいんだよね」
そんなカップルの前に2つの気配。顔を上げた二つの顔に振りかかる熱い汁。
「クォノルァ!!」
「うぇいしょぉーい!!」
悶えているカップルの目の前で何やら叫んでいたのは頭部が寸胴鍋のスープカレー怪人と、頭部がラーメン丼の札幌ラーメン怪人だった。互いの拳がぶつかり、離れる。
もちろんそれぞれの器の中身は熱々のスープ(カレー)でいっぱいです。拳がぶつかった時に飛び散ったその液体が再びカップル達に振りかかりましたがそんなこと、この戦っている怪人達の目には入っていません。
札幌ラーメン怪人のバターがスープカレー怪人の顔面に、スープカレー怪人の南瓜が札幌ラーメン怪人の顔面に、互いの食い物が互いの器にぶつかり、そして大爆発が起きる。
「ぐ……く……!」
「おの、れぇ……!」
辺りに満ちる煙幕の中、立ちあがるのは俺だと言わんばかりの二つの呻き声。
やがて、ゆらりと。煙幕の中に立ち上がる一つの影。
煙が晴れる。立っていたのは寸動鍋の頭をした怪人。
―――その鍋からは、ラーメンとバターが溢れていた。
●教室
机を強く叩く音が響く。
花衆・七音(デモンズソード・d23621)と田中・翔(普通のエクスブレイン・dn0109)が机を挟んで向き合っていた。
「食欲の秋!」
「うん」
「美味いもんがたくさんな北海道!」
「うん」
「合体ダブルご当地怪人!」
「うん」
「何やいると思うんやけど!?」
「札幌スープカレーラーメン怪人」
「ええやん!」
ちなみにカレーラーメンを出す店はあります。ですが怪人なのでレンコン南瓜海鮮その他諸々のスープカレーにバターが乗っている味噌味の札幌ラーメンをそのまま流し込んだ感じになります。まぁ多分美味しいプラス美味しいイコール凄く美味しい理論で大丈夫だと思います。
「札幌駅にいるから灼滅してきて」
「食ってもええんか?」
「いいよ」
いつもの。
ちなみに駅前でご当地怪人が争っている時に乱入も出来るが、スープカレーラーメンにはならない。美味しいと美味しいのままなので少し損である。混ぜた方がお得なのでそうした方がいいだろう。
決闘中に乱入すると、ご当地怪人は2人共息を合わせて灼滅者を狙ってくるわ、片方灼滅してもご当地パワーを託して灼滅されるので、結局合体ダブルご当地怪人と戦うことには変わりなく、また、合体ダブルご当地怪人は通常のご当地怪人の2倍のパワーがあるため、連戦で戦うには非常に辛いという補足もある。
「まぁどうするかはお任せするけど。灼滅前に食い倒れはやめてね」
ご当地怪人の使ってくる技は以下の通り。
一つ。近く一人の身体を掴み、頭を傾けて己のスープを浴びせてくる。一応、飲め、ということらしいが勿論普通はそんなことされても飲めるわけがない。ブレイクの効果がある。
一つ。器の中から具材を取り出し、それを近く一人に向けて殴る様に顔面に叩きつけてくる。一応、食え、ということらしいが以下同文。追撃の効果がある。
一つ。辺り一面を器の中身で満ちる幻覚を張り巡らせる。熱々で美味そうなスープに浸かっている感覚はあるが幻覚なので食べられない。遠く、広範囲に及び催眠の効果がある。
「スープカレー怪人も、札幌ラーメン怪人も全く同じ技を使っていたようだね」
なので、合体してもしなくても上記3つの技をそれぞれ使ってくることになる。
「辺り一面美味いスープに満ちながらカレーラーメンが食えるんか……」
「幻覚は食べれないからね?」
涎を啜る七音に翔はご馳走様をしながら念を押す。
ちなみに翔の今日のカップ麺はカレーうどんだった。
参加者 | |
---|---|
望月・心桜(桜舞・d02434) |
朝倉・くしな(初代鬼っ娘魔法少女プアオーガ・d10889) |
マナ・ルールー(ステラの謡巫女・d20938) |
花衆・七音(デモンズソード・d23621) |
九形・皆無(黒炎夜叉・d25213) |
饗庭・樹斉(沈黙の黄雪晃・d28385) |
霧ヶ峰・出流(死神を纏う者・d37203) |
鰈崎・宇土(丘の町のスパイスヒーロー・d37219) |
●帰ってきたぞ北海道!
「まさか一年で帰ってくるとは思わなかったけれど!」
本当に丁度一年ぐらいですね鰈崎・宇土(丘の町のスパイスヒーロー・d37219)さんお帰りなさい。
「カレーうどん!」
後ろから聞こえてきた声に振り向けば、朝倉・くしな(初代鬼っ娘魔法少女プアオーガ・d10889)が真正面から宇土を見つめながら何やらジェスチャーをしていた。
「カレーうどん!」
「なるほど、久しぶりの北海道はどうですか、ですか」
「何でわかる!?」
頷く宇土。親指を立てるくしな。霧ヶ峰・出流(死神を纏う者・d37203)、当然の反応。
「いやー、札幌はやっぱり都会ですね、でもこの涼しさはやっぱり良いものです」
「流石試される大地出身……寒さへの適性が違うなぁ」
そういう饗庭・樹斉(沈黙の黄雪晃・d28385)のピコピコ動く狐耳をみて、望月・心桜(桜舞・d02434)の頭上に浮かぶ電球。
「るーるるるる」
「……北国で狐だからってアレはないからねー!?」
心桜、てへぺろ。隣ではマナ・ルールー(ステラの謡巫女・d20938)と花衆・七音(デモンズソード・d23621)が観光ガイドを眺めていた。
「カレーラーメンって美味しいのかしら……」
「一応ガイドにもカレーラーメンの店って載っとるなぁ」
けれど怪人の出すのはそれ用に味付けした物じゃなくて、元々両方そのままの物をごった煮にしたものです。
「マナ、美味しいものなら食べたいのだけどあんまりだったらちょっと遠慮したいですねい」
「まぁ大丈夫やろ、多分な」
何だかんだでご当地怪人やし。
「むむ……未知の予感……!」
唸るマナ。九形・皆無(黒炎夜叉・d25213)が首を傾げる。
「スープカレー……というと真っ先に思い浮かぶのが鶏肉ですが、アレって、他のお肉入れる場合もあるんでしょうかね?」
「ラーメンと言えばチャーシュー……豚肉だよね」
「美瑛のカレーうどんも豚肉入れるところありますね」
出流と宇土の言葉。何故か七音の目が樹斉に向けられる。
「狐肉」
「やめて!」
「エキノコックス問題」
「ないから!」
狐に視線が注目する中、くしなは宇土を見て、そう言えば、と口を開いた。
「やっぱり同じカレー麺類として食べ物を粗末に扱う怪人が許せないから戻って来たんですか?」
「あー、それもありますけれども。カレー味麺類のこれ以上の台頭は見過ごせないのです」
カレーうどんの名に懸けて!
こいつ闇堕ちしてた時とあんまり思考変わってなかった。
●接触するタイミングは合体した後
ということで駅前で暴れ回っている怪人達を見た後、隠れて殺界形成で人払い。犠牲になるカップルなんていなかった。
飛び散る具材とスープと撒き散らされる匂いに、物陰から覗いている灼滅者達の腹が鳴り口の中に涎が溢れる。
「ラーメン、ラーメン、スープカレーっときて、もうええ加減慣れたなあ、って思っとったけど。でも美味そうな匂いがここまで香ってくるともうお腹もペコちゃんやなぁ」
「早く決闘終わってくれないとこっちのお腹が持ちませんねい」
「せやせや。終わった後もどうせこんな美味そうな匂い撒き散らすに決まっとるで、早いとこ片付けて美味いもん喰いに行くで!」
そうですねい! と、ぐっと拳を握るマナと七音。樹斉が振り返って七音を見やる。
「あれ、早いとこ片づけて、って。怪人食べないの?」
「いや、勿論食べるで」
「……片づけてって食い尽くしてって意味じゃないだろうな」
ジト目の出流。顔を背ける七音。目線の先で心桜が涎を垂らしていた。
「うぐぐぐ、こんなにも良い匂いを撒き散らしおって……カレーにラーメンなんて最強じゃ」
今回は手強い相手じゃのう。いかん目が回って来た。
「いやまだ攻撃すら受けてない」
頭が痛くなりそうな出流だった。
「ところでくしなさん、あれだけ興奮していたのに大人しい―――」
くしなを見る皆無の、動きが止まる。
くしなが荒い息を鼻から漏らして宇土の頭に噛みついていた。涙目になりながら首を振って皆無を見やる宇土。
「た、試される、大地!」
必死にガイアチャージして気を紛らわそうとする宇土から皆無は視線を怪人達に向ける。試されているのは大地じゃなくて忍耐力だというのは見なかったことにした。
「ん、終わったみたいだな」
爆発音と膨れ上がる煙幕を見て呟きながら封印解除を行う出流の、その目の前を。
「カレーラーメン!」
くしなが飛ぶように跳びかかって行った。宇土すらも己の頭上と前方を交互に見ている。
「どんな料理も美味しく頂く、鬼っ娘魔法少女プアオーガ! お腹を空かせて参りましたっ!」
涎を軌跡に跳びかかるそんな少女に、煙幕から突きだして一瞬にして視界一杯に広がる南瓜。南瓜が砕ける音と共にくしなの身体が地面に沈む。
「抜け駆けはずるいで!」
「わらわも食べたいのじゃ!」
「そうじゃないだろ!」
続いて走り出す七音と心桜の台詞に思わずそう言わずにはいられない出流。守れなかった……と嘆くマナさんですが大丈夫あれは間に合う方がおかしい。
「ここあ、頼んだのじゃ!」
心桜がナノナノのここあに指示を飛ばし、己は真っ向から怪人へ向かっていく。出流の黒死斬を避けて構えた怪人へ突き出されたのは丼。隣に『食いすぎ注意』の看板を設置する。
「スープカレーラーメン、欲しいのじゃ!」
ハートを飛ばすここあの主人を見る目は、何とも表現しがたい物だった。
回復を受けて飛び起きたくしなが心桜に並んで丼を突きだす。うっかり鳩尾に人外の力でめり込ませてしまったけど気にしない。くの字に曲がって溢れたスープと具材と麺を丼で受け止めてご満悦なそんな女子力よりも卑しい力がまさる女性陣に苦笑しかでないまま、皆無は弥勒の名を関する縛霊手で殴りつける。
同時に放出され絡みつく霊子の鎖を引っ張り、樹斉の伸ばした影と共に怪人を絡めとる皆無。その隣に『頭上注意』の看板が出現した。思わず上を見上げれば、箒に乗って飛ぶマナが何かを放り投げていた。
ウイングキャットのケレーヴがしがみ付くソレが、怪人の頭頂部、即ち寸動鍋の口から中身にかけて突き刺さる。
悲鳴を上げる怪人に喧しいと言わんばかりに飛び降りながら肉球パンチを喰らわすケレーヴが、乗っていたそれは黒い、目と歯のついた剣だった。
「さらりとした喉越しのスープ、カレーは飲み物ってあれホンマやったんやな、美味い美味い♪」
というか七音だった。
飛んでくるダイダロスベルトに怪人が大きく仰け反って避ける。獲物を外したダイダロスベルトは、その先端を寸動鍋に突き刺さる剣の柄に絡みつかせた。引っ張られ、名残惜しそうにすっぽ抜ける魔剣七音。
「何で抜いたんや!」
「い、いやすいません、カレーが黒ずむって思ったらつい……」
さりげなく酷い言いようであるが実際闇がしたたり落ちている剣だから仕方がない。
「……何と言うか、怪人よりも仲間の方がよっぽど恐ろしいな」
呆れ顔の出流に、苦笑しながら頷くしかない樹斉は、しかしこちらも手に丼を握っていた。
●単品はどっちも大好き!
でも合わさったぷれみあ感はさてどんなものなのか…!
「というわけでスープカレーラーメン一丁!」
「キミも!?」
見事な掌返しに、怪人に向けていた顔を樹斉に向ける出流。その視界がまるでラーメンが入った巨大なカレースープの丼に浸かっているようなものに変わる。
「あっつっつ、煮込まれるのは勘弁ですよ」
皆無が幻影の熱さに顔をしかめたその隣で、くしなが食べ終わった丼を放り投げていた。
「幻覚なんかに負けたりしない! だからカレーうどん!」
「いだだだ! 手を放してくれないとカレーうどん出せません!」
一コマ落ちしながら異形化させた腕で宇土の頭を掴んでいた。2人を含む前衛陣の間に清らかな風が吹き、幻影を飛ばしていく。樹斉も痛いの痛いの飛んでけーと宇土の痛みを本当に飛ばしていた。
「熱いのじゃー、もっとよく冷やさんとのぉ」
ふーふーと清めの風で手に持っているラーメンを必死に冷やす心桜。助かった、と言おうとした出流の開かれていた口が閉ざされる。溜息を吐くように息を漏らし、握りしめた【不知火】に白い炎を纏わせて一歩、大きく足を踏み込む。
「俺達だけ熱いのだなんて不公平だしな」
大きく薙がれる戦艦をも斬るその畏れの一撃に、怪人の身体が大きく揺らぐ。溢れる中身、丼を差し出してキャッチする灼滅者達。
そんな意地汚い何人かの女性たちを置いといて、ふわりと箒から降り立つマナ。にこりと笑って、口を開いた。
「怪人さま、マナにとっておきの一品をくださいまし!」
「私も、折角ですのでスープカレーラーメンという新味をいただくとしましょうか」
皆無も構えを解いて、2人揃って樹斉から器を受け取って怪人に差し出せば、傾けられた寸動鍋から何故か綺麗にスープとラーメンと具材が盛り付けられて行った。
「わあわあ、すごいですの!素晴らしいですのー!」
「どういう技法でこんなに綺麗に盛り付けられるのですかね」
感心する2人の目の前で、たっぷりなみなみに丼が。盛り付けられていく。
その量を見て、マナが戸惑ったように見比べた。
「……量、多くありませんこと?」
その言葉に丼を交互に見る怪人。ポン、と手を打って、次の瞬間その拳が握りしめられる。
危険を察知して皆無が丼を放り投げながら屈んだ瞬間、頭上をレンコンが通り過ぎて行った。
「お前の器の方が具材一つ少ないんだ!!」
「渡すにしてももうちょっと渡し方がありますよね」
下から風を纏った手刀が唸りを上げてレンコンを砕いていく。砕けたレンコンが散る怪人の視界の奥に、魔力を掌に溜めているマナの姿が見えた。
「お支払いは魔力ですねぃ!」
魔力ミサイルが身体に突き刺さるのを横目に、皆無は立ち上がって縛霊手を上に掲げた。
そういえば、縛霊手はレンゲ代わりに使えるでしょうか、などと落下してくるラーメン丼を見て思う。
「……大分ダダ漏れになってしまいそうですねぇ」
などとぼやいた瞬間、頭上に一瞬大きな影が飛来して丼が消えた。その影が、寸動鍋に激突して止まる。
「ところでカレーラーメンにはお酢入れた事ないのですけど合います?」
「えっ!? まだ食うの!?」
魔力を纏ったフライングヘッドバットに倒れる怪人に、皆無のラーメンをしっかり抱えたまま着地したくしなが問いかける。驚愕の宇土、呆れ目の出流。
「か、辛いカレーには酢を入れると美味くはなぐおおお!!」
律儀に答えながら起き上がろうとした怪人の身体が痙攣する。七音が寸動鍋の中に横からオーラを纏って突き刺さり、掻き回す様に暴れていた。
「カレェーのーお肉ーはなーにかなー♪」
ラーメンも併せてー、牛も豚も一つの器ー?
そしてそんな中、場違いの様に響く歌姫の如き歌声。
皆が振り向けば樹斉が歌いながらラーメンを箸で摘んでいた。食べようとしながらもしっかりとちゃんとサイキックを使って攻撃する灼滅者の鑑。でもマナや皆無の方がもっとしっかりしてるし出流が一番しっかりしてる間違いない。
「豚じゃよ!」
そしてこちらは一番仕事をしていないメディックであった。心桜がふーふーとラーメンを冷ましているその間に、怪人が起き上がりながら頭を掻き混ぜる剣を掴む。
「あ、ちょ、こら何すんや!」
暴れる七音を力づくで押さえながら、そんなに飲みたいなら、と両手で掲げ持ったそこへ寸動鍋が傾けられた。
滝のように溢れるスープカレー。滝行に打たれる修行僧の様に浴びる七音。
「がばぼべばべびびぼば!!」
しかしその声はどことなく嬉しそうだったとか。
満足そうに痙攣するカレー塗れの剣を放り捨てる怪人。そこへ斬りかかる出流は、しかし見切ったと言わんばかりに怪人に余裕をもって避けられる。
そこへ躍りかかったのは宇土であった。大きく一歩踏み出して突き出される手。麺で往なす怪人。
「まだまだ!」
さらに一歩踏み込む。ケレーヴの魔法とここあのしゃぼん玉に動きを阻害されつつも、何とか追いすがる手を払う。
「フハハ、惜しいが届かんな!」
「いいやっ! いいか、俺に足りていてお前に足りてない物がある!」
「ほう! それはなんだ!?」
拳とチャーシューが激突する。
「1+1が2のままでは料理の意味がない! 工夫を凝らし3以上出してからかかってこい!」
「下手にアレンジするよりも、素材をそのまま活かすべきであろう!」
「もう素材の原型ないと思うんだけど?」
「確かに美味しかったですが、少し油がくどいですねい」
樹斉とマナの刃と氷が後ろを阻む。宇土の手が、怪人の身体を掴んだ。
「そも! この試される大地、実りの地北海道で食材を無駄にする事は!」
例えヒグマが許してもこの俺が許さない!
「ヒグマ! 熊肉!」
「ほんと食べることしか考えてませんね?」
地面を踏みしめようとした怪人の身体が、くしなの腕と皆無の鎖に引っ張られバランスを崩した。
「食べ物は! 武器では! ないのだ!」
宇土の手によって、怪人の身体が浮く。
「うおおおおおおおおおおおお!!」
必殺美瑛カレーうどんダイナミック!
巻き起こる大爆発。
―――美瑛の勝ちであった。
●折角北海道に来たんやし、美味いもん食い倒れと行くでー
やがて復活した七音は、ついで観光マップを取り出してざっと眺めた。
「よっし、先ずは北海道ラーメンとスープカレーの美味いとこからや!」
「折角ですし本当のスープカレーとラーメンを満喫したいですの」
「いいですね。スープカレーというものに興味が湧いてきましたし」
マナと皆無も頷いて、樹斉は手を大きく上げながら札幌アイスもいいよね、と付け加える。
「あんたどこかこのマップ以外に美味しいスープカレーラーメンの店とか知らへん?」
マップを少し眺めて、七音は格好よく残心をしている宇土に顔を向けた。
「これで新たなライバルの誕生は防げた……。え、なんですか?」
「美味しいスープカレーの店とか知らへん?」
言ってる内容はヒーローからかけ離れていたがそれは置いといて、取りあえずスープカレー限定で聞いてみる七音。考え込む宇土。
「美瑛になら」
「遠すぎるわ!」
これが試される大地、北海道。
辛抱しきれない様子のくしなが両手を広げ駆け出した。
「スープカレーラーメン!」
などと訳の分からないことを供述しており。
「ちょ、くしなさん!」
それを追いかけていく宇土を見て、大きくため息をついた出流は、そこで近くから聞こえるラーメンを啜る音に気が付いた。
「ようやく食べれるのじゃ。美味いのう」
スープを飲み、幸せそうな顔をして丼から口を離す心桜。そこで出流の視線に気が付いて、数秒、考える様に視線をずらす。七音と、くしなが走り去った方向を見て、顔を戻して、こういうのだった。
「わらわ達のようになっちゃ駄目じゃよ!」
作者:柿茸 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2016年9月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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