ZENRA、それは温泉の正装

    「この人達が被害者なのです」
     喧騒とは無縁な空間に、綾町・鈴乃(無垢な純白・d15953)の声が響いた。
     ここは、とある温泉旅館の一室。そして鈴乃が仲間達に紹介したのは、女子大生3人組だった。彼女らは、大学の長期休暇を利用して、温泉旅行をしていたという。
    「あれはあたし達が温泉に入っている時のことだったの」
     3人のうち、まとめ役と思しき眼鏡の女性が話し始めた。
    「あたし達は、水着で温泉に入った。もちろん、許可されている事を確認した上で、よ? なのにアイツは、それを許さなかった……!」
     女子大生が、肉付きの良い体を抱き締めた。
    「アイツ、いきなり女風呂に現れたかと思ったら、『水着で温泉に入る奴があるかあああああ!』とか叫んで、あたし達の水着を剥ぎ取っていったのよ……!」
     がっ。女子大生は身を乗り出すなり、鈴乃の肩をつかんだ。
    「『自分も全裸だからお互いさまだ!』って、そういう問題じゃないでしょおおお!? 岩みたいな体してるから全裸って気づきにくかったけど!」
    「わかりましたから揺さぶるのはやめてほしいのです!?」
    「あっごめん」
     解放された。
    「ふう……このままだと旅館にも迷惑です。すずの達の力で、温泉怪人を灼滅するのです」
    「アイツは温泉怪人・ゼンラーって名乗ってたわ」
     名が体を表しすぎ。
     作戦は大まかに2つ。水着の一般人が入浴しているのを見張るか、あるいは自分達が囮になるか。
     前者だと温泉怪人を背後から急襲できる確率が上がり、先手を取りやすくなる。その反面、一般人が危険にさらされるというデメリットは否定できない。
     一方、後者だと、温泉怪人に先制を許しかねないが、余計な被害を出さずに済むだろう。
     なお、囮は男女を問わない。とにかく誰であれ、水着で温泉に入ってるような輩は許さないぜ、というスタンス。
     自らの肉体こそ唯一にして最強の武器、と考える温泉怪人は、素手。
     なので、使用サイキックは不明だ。最低限、ご当地ヒーローの技を使う事は想定しておくべきか。
    「せっかくですし、温泉で日頃の疲れを癒していくのも悪くないと思います。もちろん、ちゃんとお仕事した上で、ですね」
     今更だが、鈴乃の浴衣姿が素敵だった。


    参加者
    タシュラフェル・メーベルナッハ(白茉莉昇華セリ・d00216)
    色射・緋頼(生者を護る者・d01617)
    秋風・紅葉(女子大生は大人の魅力・d03937)
    七六名・鞠音(戦闘妖精・d10504)
    黒岩・りんご(凛と咲く姫神・d13538)
    綾町・鈴乃(無垢な純白・d15953)
    月森・ゆず(キメラティックガール・d31645)
    神御名・詩音(神降ろしの音色・d32515)

    ■リプレイ

    ●温泉はよいぞ……
     ほわり湯気舞う癒しの場に、乙女達の声が響く。
     赤ビキニの秋風・紅葉(女子大生は大人の魅力・d03937)が、足から湯に浸かっていく。太ももがまぶしい。
    「まあ温泉は全裸で入るべき、ってのは同意だけど。他人にそのこだわりを強要するのは頂けないわよねえ。ま、さくっとやっつけちゃいましょ」
     水色シェルカップビキニでくつろぐタシュラフェル・メーベルナッハ(白茉莉昇華セリ・d00216)が言うが、さて、その本音は。
     色射・緋頼(生者を護る者・d01617)とお揃いの赤ビキニの黒岩・りんご(凛と咲く姫神・d13538)は、何やら悩まし気。
    「わたくしは温泉に水着で入るのはあまり好きではないので、怪人の言いたいこともわからなくもないですけれども……」
    「強要してはダメ……と教わりました。どうなのでしょう?」
     首をひねる七六名・鞠音(戦闘妖精・d10504)の傍らには、こちにもお揃い赤ビキニの綾町・鈴乃(無垢な純白・d15953)。
    「普通の温泉やったら、水着でお風呂はマナー違反て知ってるんよ? けど、ちゃんとルールで水着で入れってとこに、水着を無理やりはぐような真似……それ、唯の変態やん!」
     ふりふり水着でお怒り中なのは、月森・ゆず(キメラティックガール・d31645)だ。
     その視線は、皆の胸元へ……。
    「いや、これはけして皆でっかい事への八つ当たりじゃ、ないんやからっ」
    「だいじょうぶ、ゆずさまも、すずのと一緒できっとまだ育ちますですよ!」
    「真顔でなぐさめんといてー!?」
     鈴乃の力強い言葉に、ゆずが自分のつるぺたを両腕でガードした。
     楽し気な雰囲気の中、赤いホルタービキニの神御名・詩音(神降ろしの音色・d32515)が緋頼共々、敵の襲来に備えていると。
    「水着の気配が我を呼ぶ。全てをさらせと天が言う!」
     湯気を切り裂き、1人の男が現れる。
     タシュラフェルが振り返れば、岩の化身の如きいかつい体躯。そのダークネスの名は!
    「温泉怪人・ゼンラー!」
     どっぱーん、と背後に飛沫が上がった。勝手に。

    ●Z、襲来
    「温泉とは、湯と肉体の、文字通り裸の付き合いをする神聖なる場所。そこに人工繊維をまとって入るなど、冒涜以外の何ものでもない!」
     しかしゼンラーの主張に、緋頼が反論する。
    「温泉は裸でというのは分かりますが、ルールに従えばOKです。つまり、郷に入れば郷に従えです」
    「そうです、正装じゃなくても良い所もあると思うんです」
     詩音の諭すような語り掛けも、右から左にスルー。
    「ならば、水着許可などという悪法を定めた温泉旅館も潰してくれよう! その前に、貴様らをあるべき姿に還す!」
     そう宣言すると、ゼンラーは腕組みを解き、構えを取った。水着を剥ぎ取る構えを!
    「無理に水着剥ぐのは、メッ、なのです」
     鈴乃が物申したのをきっかけに、銭湯……もとい戦闘開始!
    「……?」
     開始早々、ゼンラーとは異なる視線を感じるりんご。脱がされる事への、周囲からの期待だ……!
    「期待されるとあまりサービスしたくなくなりますね……?」
     りんごが天邪鬼を発揮しつつ、鬼神変で、ゼンラーとぶつかり合った。
     反動で岩場へと後退するゼンラーへと、打撃と束縛の二重攻撃を放つ緋頼。
     飛んでくるカウンターを、背後も見ずかわした緋頼の傍を、鞠音のダイダロスベルトが駆け抜ける。
    「背中、任せて下さい」
     流れるような連携。
     それらを堂々と受け止めながら、ゼンラーがりんごの水着に手を伸ばした。しかし、とっさに詩音を身代わりに! これも流れるような連携?
     詩音も元々皆を守るつもりだったから、結果オーライ……なのか?
    「どうだ、温泉と一体になった感じは!」
     詩音の水着を手に、豪快に笑うゼンラー。下心はない。ただのお節介おじさんである。それゆえに面倒くさい……!
     だが、勝ち誇るゼンラーの腕を、タシュラフェルの影業が硬く縛り上げた。
    「ここは私が押さえておくわ」
    「ほら隠れて、今のうちに服着なおしっ!」
     詩音に駆け寄ったゆずが、盾をかざし、簡易更衣室代わりに。
     そして鞠音が、詩音の体にダイダロスベルトを巻き付け、応急処置。
    「鞠音さん、裸にベルトは危なげです。……主に見た目が」
    「そうなのですか?」
     確かに鞠音の目の前には、強調されたむちむちボディが……。
    「水着はいただきだ!」
    「すずのは裸を気にするよりも、早く戦いすませるほうがいいのです」
     たとえ水着をはがされても、鈴乃の挙動に乱れはない。ゼンラーに、お返しのワンツーパンチ。
    「みんな! 女の子しかいないからってさっきから大胆過ぎだよ!」
     攻撃モーションのたび、皆の胸が揺れる。たゆんたゆんと揺れる。脱げていても割と気にしない面々に、思わず紅葉の目も奪われる。
    「うーん、腰回りの細さもさすがだよね……じゃなくてー!」
     紅葉が悶える中、霊犬のマカロはご主人を守ったり、回復したりと忙しかった。

    ●世界よ、これがZENRAだ!
     鞠音のバベルブレイカーが、ゼンラーの硬い表皮を貫く。
    「ぬうっ、しかしこのダイレクトな痛みこそ全裸の証! 貴様らにも味わわせてやろう!」
     これ以上お肌の面積を増やしはしないと、緋頼の霊糸が、ゼンラーの自由を奪う。
     だが本心では、鞠音の肉付きのいい身体も、鈴乃の可愛らしい身体も堪能したい……などと考えてたりする。
    「全裸こそ最大の武器!」
     ぶっちい! ゼンラーは力任せに霊糸を引きちぎると、鞠音を岩場に叩きつけた。
     なおも攻撃の手を緩めないゼンラーの前に、詩音がその身を投げ出した。
    「宗主様の代理として、お守りします」
     その間に、タシュラフェルが鞠音の肌に、防護符をぺたり。
    「甘い匂い、します」
    「ふふ、私の匂い気に入った? もっと感じてくれてもいいのよ……」
     治療にかこつけて、鞠音にしなだれかかるタシュラフェル。
     鞠音も無意識に触り返したり、なぜかりんごまでもケア(?)に回ったり……。
    「戦闘中! 戦闘中やから!」
     ゆずからツッコミが入るが、ゼンラーには好評だったらしい。
    「スキンシップはいいぞ。温泉でしかできない合法的全裸行為だからな!」
    「……なら、触ってもいいのよ?」
     ゼンラーに迫るタシュラフェル。厚い胸板に押し付けられた双乳がふにゅん、とひしゃげる。
    「なかなか立派な裸体だな。温泉もさぞかし喜んで……」
    「隙ありなのです!」
    「げほおっ!?」
     どっぱーん。
     鈴乃の火炎回し蹴りが、ゼンラーを湯に沈めた。
    「ていうか、怪人! あんたもあんたや! そんなに裸がええんか、たゆんがええんかぁっ!?」
     頭を水面から出したゼンラーの脳天目がけ、ゆずが標識を叩きつけた。
     また沈む。また叩く。
     モグラ叩きならぬゼンラー叩きを横目に、紅葉(もう全裸)は、手とマカロで体を隠しながら、こそこそ活躍中。
    「く、温泉ある限り、負けん!」
     水着に手をかけられた瞬間、りんごの刀が閃いた。鮮やかに両断されたゼンラーは、そのまま温泉の中へ落下した。
    「な……せ、せめてお風呂に入る時は全裸で頼むぞ! お兄さんとの約束だ!」
     仁王立ちするりんごの眼前で、ゼンラーが爆発四散した。
    「……お兄さんだったのですか?」
     鈴乃の素朴な疑問は、爆音に掻き消されたのだった。

    ●温泉タイム!
    「さあ、お楽しみの時間ですよー♪ タシェさんも遊びましょう?」
    「いいわよ、うふふ……」
     りんごの誘いかけに、タシュラフェルが妖しく微笑む。
    「りんごのコトも気持ちよくしてあげるわね……♪」
     そうしてスキンシップに興じる皆のスタイルを、お湯に沈みながら羨む紅葉。
     その背後に、謎の影。……りんごだ。
    「紅葉さーん、さっきの戦いサボり気味でしたね?」
    「べべべ別にサボってたわけじゃないんだよ! ……え、お仕置きって何? お仕置きって何ですかー!?」
     お仕置きされた。
     なんとか、魔王りんごの魔手から逃れた紅葉は、不敵な表情を見せる。
    「ヤラれっぱなしの私じゃないんだよ! 今日こそは! 今日こそはやってみせるんだから!」
     わきわき。怪しく蠢く紅葉の手。
    「揉まれたら揉み返せ!」
    「じゃあ私もお相手してもらおうかしら♪」
    「た、タシェさん!?」
     伏兵現る。
     りんごが剥かれる所を密かに心待ちにしていた緋頼共々、紅葉は弄ばれた。魔王様達には勝てなかったよ。
    「り、りんごお姉様、今夜は鈴乃と鞠音と遊んできます」
    「はーい、楽しんでらして」
     すっかり白旗の緋頼を見送るりんご。
     鞠音は寝湯で、鈴乃を仰向けに乗せている。まるでラッコのよう。
     こうしてのんびり抱っこされているだけで、鈴乃は甘い声をこぼしてしまう。
    「ふにゃぁ~気持ちいいのですよー」
    「……気持ちいいのですか?」
     鞠音はなだめるように体をなでなで。
     そこへ、すいーっ、と緋頼も合流。
    「……どうぞ、上から」
     鞠音と緋頼による、鈴乃サンドイッチ完成。
     2人にキスの雨を降らせ、緋頼の行為はどんどんエスカレートしていく。
    「鞠音、鈴音好きだよ!」
    「すずのも大好きなのですよー♪」
     体温とお湯の二重奏は暖かく、実に心地よい。思わず、鞠音からも声が漏れる。
    「まだまだすずのは負けてるのです……」
     鈴乃が、2人の胸の大きさを確かめるように、ふにふに。
    「んー、すずのもこれくらい大きくなるでしょうか?」
    「……大きくなります」
     鞠音、超断言。
     ……根拠? 知らない子ですね?
    「ぅ~っ……右も左もいちゃいちゃたゆたゆとしてー……」
     ぶくぶくジト目で湯に浸かり、ゆずはみんなの胸元チェックに余念がない。
    「やっぱり負けてる……鈴乃ちゃんにも……」
     湯の中に沈んでいくゆずの胸に、やってきたりんごがぺたり。
    「ゆずさん大丈夫です。小さいのも可愛いですから♪」
    「りんごねーさん……って、それ、フォローなってないんっ!?」
    「そんなことないわ、薄い胸も魅力的なものよ? ほら、頬擦りできて気持ちいいもの」
     ゆずの胸を堪能するタシュラフェルを眺める詩音も、自分の体をじっと見る。
    「私も、女の子として色々磨きをかけておかなくては。無駄なお肉ついてませんよね?」
     とはいえ、日頃から恋人の為に、女を磨く努力は怠っていないので、スタイルは上々。むしろえろい。
    「詩音さんも、お疲れ様でした♪」
    「あ、りんごさんお疲れ様ですってきゃあ!?」
     りんごの不意打ちを受け、詩音が可愛い悲鳴を上げた。
    「もー、いたずらっ子なんですから。お返しです」
     ふにゅっ、と揉み返す詩音。上がる艶めかしい声が、皆の耳をくすぐった。
     男子禁制の宴は、もう少し続きそうである……。

    作者:七尾マサムネ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年10月2日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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