やや言葉を選ぶ間のあと、成宮・樹(大学生エクスブレイン・dn0159)は顔を上げた。
「まず皆、本当にお疲れ様。垓王牙大戦の結果は知っての通りとは言え、ガイオウガをすぐには動き出せないほど追い詰めたのも皆の決死の奮闘の結果だということは間違いない」
確かに、ガイオウガ復活を阻止できずに、形として灼滅者は敗北したかもしれない。しかしガイオウガが即座に人類社会を蹂躙できなかったのもまた、灼滅者の奮戦によるものだ。その差は大きい。
まだガイオウガが完全復活する前に打てる手は残っている。だが、恐らく無傷では済まされない。
「つらい決断を迫られる可能性も、あると思う。それほど危険な任務だと思ってくれていい」
文字通り虎口へ挑む任務になるはずだから、と樹は声を低めた。
●炎獄の楔~コウセン
以前鶴見岳でイフリートを吸収し己の力としたように、ガイオウガは日本各地の地脈を守っていた強力なイフリートを集めて傷を癒やし、自身の力へ変えようとしている。
これを許せば、ガイオウガは最盛期の力を取り戻してしまうだろう。
「それを阻止するために、地脈を守っていたイフリートの灼滅に向かってもらいたい」
これらの強力なイフリートにはそれぞれ多数のイフリートがついて守りを固めているものの、先の垓王牙大戦で救出した『協調するガイオウガの意志』の力により、戦意を無力化する事ができる。
しかしこの意志の力も、今回の討伐対象である強力なイフリートまで抑え込むことは不可能だ。その意味においても、吸収される前に灼滅しなければならない。
さらに『協調するガイオウガの意志』から助力を得られるとは言っても、イフリートの戦意を刺激しないため少数精鋭で挑む必要がある。全員が力量と共にその覚悟を試されるはずだ。
「『協調するガイオウガの意志』は猫型大型獣のイフリートの姿を取っていて、今回はその中から三体が同行してくれる」
これらのイフリートは戦場になる地下の地脈付近までの道案内も請け負ってくれているので、何も余計なことを考えず戦闘に専念してよい。
地脈を守る強力なイフリートはいわゆる翼を持つ西洋竜ではなく、中国の竜虎図や水墨画に描かれる巨大な東洋竜の姿をしているためすぐに判別できるはずだ。鋼色の鱗が特徴的で全身に炎を纏っており、コウセンと呼ばれていることがわかっている。
「イフリートには珍しく、敵の弱点を突いて布陣を崩そうとする知恵もある。数で不利を覆せない以上、どう互いをカバーしあうかはよく相談しておいてほしい」
戦場となる地下空洞は大変広く、高さもあるので戦闘において不自由はしない。地中深くのためところどころ熱水が湧いたり流れていたりするかもしれないが、こちらも無視して問題ない程度だ。
「間違いなく過酷な戦いになる」
それでもこの敵に打ち勝たねば、今度こそガイオウガは人間社会を蹂躙し尽くすだろう。待っているのは炎と、破壊と、天井知らずの死。
「……それでも。誰一人欠けずに帰還してほしい」
全員での帰還という願いさえ祈りに変える戦場が、くろぐろと口を開けて灼滅者を待っている。
参加者 | |
---|---|
天鈴・ウルスラ(星に願いを・d00165) |
雪片・羽衣(朱音の巫・d03814) |
九十九坂・枢(飴色逆光ノスタルジィ・d12597) |
三和・悠仁(手刈り・d17133) |
龍造・戒理(哭翔龍・d17171) |
セレスティ・クリスフィード(闇を祓う白き刃・d17444) |
大和・蒼侍(炎を司る蒼き侍・d18704) |
石見・鈴莉(偽陽の炎・d18988) |
このまま奈落の底まで続くのではと思うほど深い洞窟の奥から急に熱気と火の匂いが届き、天鈴・ウルスラ(星に願いを・d00165)は一瞬立ち止まる。真後ろを進んでいた九十九坂・枢(飴色逆光ノスタルジィ・d12597)に名を呼ばれすぐに我に返るものの、これから挑むものの強大さを改めて思い知らされた気分だった。
そしてそれは、枢も同じ事。
「正義の味方ぶるのは性に合わないけど、それでもこれは止めなきゃあならないね」
「ああ、このままだと殲術再生弾抜きでガイオウガとやりあうことになる」
力は削いでおかなければ、と続けた龍造・戒理(哭翔龍・d17171)へ石見・鈴莉(偽陽の炎・d18988)が静かに首肯し、先頭を進むイフリートの背へ視線を戻す。
このたび三体同行している、猫科大型獣の姿のイフリート。協調するガイオウガの意志が具現化したものだが、その案内で降りてゆくこの先には、彼らにも抑えきれぬむきだしの敵意が待っている。
火の匂いが強まり大和・蒼侍(炎を司る蒼き侍・d18704)と雪片・羽衣(朱音の巫・d03814)が列の前へ移った。入れ替わるように、ウルスラを中心にして三和・悠仁(手刈り・d17133)とセレスティ・クリスフィード(闇を祓う白き刃・d17444)が後方へ下がる。
やがてたどり着いた、やや急峻な下り坂。坂の終わりの先が目的の地下空洞なのだろうという事は明白だった。
蒼侍としても、自身の仇討ちとこのたびの討伐は何ら関係がないものの、イフリートによる被害者を増やしてはならないという部分は共感できる。そのためにも、何としても成功させなければ。
「さあて」
お気に入りのロリポップをがりりと噛んだ枢の腕へ、銀色のクロスグレイブ【noise canceller】が顕現する。それに呼応するように羽衣の後方へ霊犬オロピカ、戒理の傍らへはビハインドの蓮華、鈴莉の足元にウイングキャットのビャクダンが現出した。
「皆が揃って笑顔で帰れるよう、力の限り支えますよって」
「この戦いでの敗北即ち、誰かの命が失われるのと同じです。そんな事を許すわけにはいきません」
C'est parti,とセレスティの槍先が前方を指し示す。
坂の終わりへ身を躍らせた三体のイフリートへ鈴莉と蒼侍が続いた。坂を滑り落ちながら素早くスライディングの要領で跳ね起きた悠仁の目に、広大な地下空間の全貌が飛び込んでくる。
ドーム状の高い天井、自然のままむきだした岩盤の足元。立ち止まることなく即座に駈けだしたイフリートのその先、何かが身じろいだのがわかった。
大きい、と戒理は思わず息を飲む。鋼の刃を隙間なく並べたように思える鱗、その体表をかけめぐる業火、鉤爪を備えた何対かの脚。
目には大蛇にも見える体躯をゆらりとほどき、闇よりもなお暗い漆黒の目が灼滅者を睨みすえる。
子供なら丸呑みできるのでは、という大きさの顎が開き、地下空間そのものを揺さぶるような怒号が轟いた。負けじと蒼侍が吼え、コウセンの喉元へ白刃を閃かせる。
間髪入れず蒼侍と入れ替わる形で、星屑に似た尾を引く鈴莉の蹴りがあざやかに決まった。
「……、な」
――が、返ってきた手応えのあまりの鈍さに鈴莉は目を瞠る。クリーンヒットを確信したはずのスターゲイザーが、まるで『入っている』気がしない。
属性とか相性だとか、そういう話ではなかった。
咄嗟に走らせた視線が、先に放たれた蒼侍の黒死斬はもちろん、鈴莉に続いた羽衣の渾身の斬撃でも鱗一枚引きはがせていない事実を確認する。まちがいなく過酷な戦いになると明言されたのはこういう意味か、と鈴莉は薄ら寒いものを覚えた。
そしてひたすらに圧倒的な力量差が、戒理もろとも前衛へ牙を剥く。
侵入者など生きて帰さぬとばかりに、鋼色の鱗が無数の礫の嵐となり襲いくる。主のため身を挺した蓮華のヴェールが千々に引き裂けるのを横目に、ウルスラは鋭く鋼糸を引き絞った。しかしやはり、痛打を狙えるはずの死角からのあまり堪えていない。
前衛に少し数を割きすぎたやも、と回復をまわす枢は一抹の不安を覚える。あえて極端な布陣ならまだしも、強敵相手に減衰が生じない最大数を配置した事が果たしてこの先どう転ぶか。
痛打を浴びた前衛の立て直しを計る枢にオロピカも加わっていたが、次の手番までに癒しきれない。早い段階で足止めなり氷漬けなり、コウセンの足回りを封じる作戦だったが、そのためには自身を倒れさせぬことも前衛には求められる。
しかし悪い事は重なるもので、蒼侍は回復手段を持たない。加え、己の弱点もさほど補ってきていなかった。
「蓮華! 俺はいい、蒼侍を守れ!!」
戒理の計算では前衛が邪魔と思わせそこに攻撃を集めるつもりだったが、これではそのまま前衛が瓦解しかねないと判断し、ビハインドに蒼侍を守らせる。
狙い澄ました一撃に物を言わせ、前衛の立て直しを図るあいだコウセンを削りに行くセレスティと悠仁が足止めを試みた。
せめて自分の手の届く範囲だけは、とセレスティは渾身の力で妖の槍を振り抜く。多くのイフリート達が吹き上げている火に炙られた熱気の中を、白くつめたい槍の穂先が駆け抜けた。
守りたい、そのために強くなりたいと願ったのだ。一途なほどに。
「信じる道は、闇の中にはないと思いたい所ですが……」
ただ、自身の力で阻止できるならその時は、と薄暗い予感がセレスティの胸の中を冷やしていく。万が一の時の事も、覚悟すべきなのかもしれない、と。
ビャクダンと前後して、逆手に悠仁が構えた断斬鋏【輪廻円断】がコウセンの鱗を数枚剥いだ。高い金属音をたてて岩盤を転がった鱗に悠仁は明確なダメージを与えた確信を得たものの、すぐにチッと短く舌打ちの音を漏らす。もっと、もっとだ。まだ足りない。
鼠とて追い詰められれば猫を噛むのだ、今はまだそのどちらにも足りていない。
「力続くかぎり、最後まで諦めません……!」
見る間に負傷が積み重なる蒼侍を支える枢を励ますように、オロピカが数度吼えた。
サーヴァントゆえに今この瞬間の枢の内心を理解しての事とは思えなかったが、そう思わせるのは主人である羽衣による所が大きいかもしれない。思わず白い毛並みの霊犬へ微笑んで、枢は雑念を払うように頭を振り、顔を上げた。
頼もしい霊犬の主人は最前線で、自身に活を入れるようにひときわ大きな声がけをしながら強大な敵に向き合っている。
コウセンに、自分が弱味と目されることが怖かった。弱いからと言って守られて、もしそれが当たり前になってしまったら、自分には戦場に立つ資格などなくなってしまう。
「でなければ、啖呵切った意味がないじゃない……!!」
強くなんかない。だからこそ羽衣はその責を自分で負う。逃げずに、諦めずに。
しかし立ち上がりでコウセンの行動を十分に制限できず、主導権を握る事に失敗した灼滅者は追い詰められつつあった。強敵相手では一つ一つが小さくともあっという間に命取りへ変化する。
流れを引き寄せられないまま前衛はもちろんのこと、悠仁やセレスティ、枢の後衛も消耗しはじめていた。
さすがにここまで来れば足止めもようやく機能しつつあったが、戒理がコウセンの視界を遮るように手元から煙を立ちのぼらせるも、蓮華が倒れるのに続いて爪での袈裟懸けをまともにくらった蒼侍がついに昏倒する。
「よくないね……」
鈴莉は斜め後方で倒れ伏したまま、まるで動く気配のない蒼侍に唇を噛んだ。灼滅者ゆえ即死ということはないはずだが、急所を狙ったあの袈裟懸けを浴びれば黄泉の光景を垣間見られそうな気がする。
「それでも、世界にあなたは邪魔になるから」
もはや前衛の壁を破られるのは時間の問題と鈴莉は腹を括った。ならば倒れるまで抗ってみせるのがせめてもの矜持だ。気がつけば鈴莉自身満身創痍、戒理と羽衣はなんとか自分の脚で立っているものの限界が近い。
「あたしが倒れたとしてもここで殺す」
岩盤へ縫いつけられたように動きを鈍くしているものの、まだコウセンは余裕を残していた。恐らく蒼侍を排除すれば優位は揺るがないと確信していたのだろう、闇より濃い漆黒の目は児戯を見守る親のようで鈴莉は心底気に食わない。
戒理が走る方向とは反対側、コウセンの死角から鈴莉はバベルブレイカーを繰り出す。大きな動作を意識しコウセンの気を惹く作戦だったが、ようやく意図通り機能してくれたようだ。ぐわ、と鉄杭の獲物をふりかぶり尖烈のドグマスパイクを叩き込もうとした鈴莉の目に、赤い、コウセンの牙の中の光景が映る。
それを避けようとして、しかし、鈴莉は全身の苦痛で咄嗟には動けなかった。炎をまとった顎に右半身をそのまま持って行かれそうになりながら、なんとか踏みとどまる。そこまでが彼女の限界だった。
「鈴莉!」
悲鳴に似たウルスラの声を聞きながら、鈴莉は意識を手放す。
残る枢、そしてセレスティを初めとしたメンバーがその回復に手を回すも、鈴莉は起き上がる気配はない。やはり、いつのまにか鱗が剥げた部分が多くなっている気がするコウセンの視線を遮るように立ち、戒理はリングスラッシャーを構えた。
撤退、の二文字が戒理の脳裏を忙しくかすめる。しかしまだいたずらに頭数を減らしてはならない。激しく火花を散らせるエアシューズからの蹴りでもう一つ、コウセンに重しを加えておく。
ここにきて当初から足止めや催眠など、地味に、しかし確実に嫌がらせを重ねてきたウルスラを除く順番が来た、と鋼色の竜が考えたかどうかはわからない。ただ斬弦糸を見舞おうと踏み込んできたウルスラへ、どう見ても機会を狙っていたとしか思えないタイミングでコウセンは前へ出た。
時間の流れが急停止させられたように重くなる、奇妙な錯覚。
機能不全に陥りかけている前衛、ここで自分が倒れたとして万が一息のある者を退避させられる人数、もしコウセン討ち取りが叶わなかった時の犠牲、背後に残してきた大切なもの、他にも沢山の――。
(「ちゃんと返してね」)
死をもたらす一撃が迫る、迫る、永劫に似た一瞬でウルスラは考えうるかぎりの未来と可能性を天秤にかけ、そして決断した。
(「大事なものだから」)
鈴莉の腕のバベルブレイカーを一瞥し、それでも、避けられぬ痛打を軽減するべく無理な体勢から一歩を退がる。
「ウルスラ!!」
ぼろぼろの羽衣が駆け寄ろうとしたものの間に合わない。心臓を、両断されかねない深さで袈裟懸けにされ血柱が上がる。そのまま一歩二歩よろめいたウルスラの足元は、しかし、三歩目にはむきだしの岩盤をがつりと踏み砕いた。
足音を合図にしん、と静寂が降りる。
火の匂いの地下空洞へ、反転するように、冷たく甘美な闇の香りがひろがる。死より過酷で炎より苛烈な、何よりも暗い奈落への片道切符を手にしてウルスラは血濡れの顔を上げた。
「鈴莉」
豹変したウルスラを前に、コウセンはわずかに後退する。ひゅうひゅうと血臭の混じる喘鳴を吐き、低く囁いたウルスラの声にはダークネスの気配が匂いはじめていた。
「しばらく、預けるでゴザル」
倒れ伏したままの鈴莉が目を瞠る。朦朧としていた鈴莉の意識がその台詞で一気に覚醒するものの、もう遅かった。いちど力尽きた蓮華が再び姿を現し、起死回生を狙うにはこれ以上の劣勢に追い込まれるわけにはいかない。
「竜は乙女の歌に弱いのが相場デース!」
淫魔の歌声をコウセンが知っていたのかどうか。灼滅者にはありえない魔力を篭めたウルスラの歌声が鋼色の四肢を縛り、岩盤へ縫いつける。
この機を逃せば永遠に勝機は失われる、そう判断した悠仁は一気に攻勢に出た。戒理と羽衣、そして蓮華が倒れるまえに押し切らなければ今度こそ壊滅の危機が待っているだろう。
「……消えろ」
多少の被弾は致し方なし、と悠仁は考えていたのだが闇堕ちし今や莫大な力を手に入れたウルスラに勝る盾はない。いや、今はそんなことを考えるよりもより多くコウセンに打撃を加えることのほうが重要だった。
「畳みかけます、……もう、それしかありません!」
痛みを堪えるように唇を噛んだセレスティの叫びに呼応し、ビャクダンが飛び出す。次いで枢が吹かせた清らかな風に励まされた戒理の蹴りが、コウセン自身が纏う火炎とは別のそれを燃え上がらせた。
一瞬で形勢が逆転し、鋼色の竜が高く咆哮する。戦闘不能者を出してはいたものの、それまでに地道に積み上げてきたダメージに加えてのウルスラの闇堕ちでコウセンはみるみる窮地へ追い込まれた。
誰もが満身創痍、自分の脚で立っていられることさえ不思議なほどだったが、それでも壮絶を極める戦いに幕を引いたのは灼滅者の側。
これで最後です、と高らかに宣言したセレスティのティアーズリッパーが千々に鋼の鱗を吹き飛ばす。ゆっくりと長大な身を踊らせて仰向けに倒れたコウセンは、それきり二度と動かなかった。
一息つく間もなく、枢が羽衣の腕を引く。
「すぐ撤退しましょう。あれらのイフリートがどう出るかわかりません」
協調する意志のイフリートが戦意を奪っていた取り巻きのイフリートを指し、枢は素早く地下空洞の出口を目指した。意識のない蒼侍は戒理が背負い、何とか動けるようになった鈴莉には悠仁が肩を貸す。
しかし地下空洞の出口から数メートルの位置で、ウルスラは立ち止まった。
「拙者はここまで、デース」
ただひとり取り残される笑顔。意味を察し、ウルスラに駆け寄ろうともがく羽衣の腕を、セレスティと枢が力づくで抑え込む。
「いやだ……ウルスラ!! あんまりよウルスラ、こんな終わり方なんてないよ、嫌よ!!」
オロピカが暴れる羽衣の靴の端を咥えて引っ張り、撤退を促した。そのなりふり構わぬ叫びがいたたまれず、悠仁は聞こえなかったふりをする。
「急いで!! イフリートの抑えが効いているうちに退かなければ」
「今はつらいでしょう。しかし天鈴さんの決意を無駄にしてはなりません!」
セレスティと枢に両脇を抱えられ連れて行かれる羽衣を、まぶしげな表情でウルスラは見上げていた。
「行って」
瞼がじわりと熱を広げたのを無視して、務めて明るい声を上げる。
いつものように笑えているだろうか。いつものように、いつもの私のままで、いられているだろうか。まだ。
「私がまだ、正気の間に」
サイドテールの長い髪はもう淡い珊瑚色に染まりかけていた。その瞬間セレスティと枢はたしかに、羽衣が何かを飲みこむ音を聞く。
「迎えに行くんだから……絶対に。ういは、ういはね、しぬほど諦めがわるいのよ!!」
そして、一体この華奢な体躯のどこからこんな声が出るのか、という大声が響き渡った。洞窟の暗がりへ消えたウルスラへそれが届いたかどうかは誰も知らない。
作者:佐伯都 |
重傷:大和・蒼侍(炎を司る蒼き侍・d18704) 石見・鈴莉(虫喰の炎・d18988) 死亡:なし 闇堕ち:天鈴・ウルスラ(ファイター・d00165) |
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種類:
公開:2016年10月12日
難度:難しい
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 5/感動した 2/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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