炎獄の楔~炎熊嵐

    作者:ライ麦

    「皆さん、ご無事ですか……!?」
     垓王牙大戦より帰還した灼滅者達を、桜田・美葉(桜花のエクスブレイン・dn0148)は本当に心配そうな面持ちで出迎えた。無理もない。今の別府周辺の光景を思えば……。敗北。その事実が灼滅者達の心に重く圧し掛かる。本当に、後一歩だった。あと少しで、勝利に手が届いたのに。悔しげに唇を噛む灼滅者を気遣うように、集った灼滅者達の無事を確認した美葉が声をかける。
    「……どうか、自分達を責めないでください。皆さんが決死の思いで戦ってくださったから、ガイオウガも深く傷つき回復に専念しているんです。この隙に、まだやれることが……いえ、やらなければいけないことがあります」
     垓王牙大戦でお疲れのところ申し訳ありませんが……と俯いて遠慮がちに述べた後、美葉は面を上げ、再び口を開いた。
    「……ガイオウガは、回復の為に、日本各地の地脈からガイオウガの力を集めようとしています。もし、日本中のガイオウガの力が、復活したガイオウガの元に統合してしまえば、ガイオウガは最盛期の力を取り戻してしまうでしょう。それを防ぐため、皆さんには、日本各地の地脈を守る、ガイオウガの力の化身……強力なイフリートの灼滅をお願いしたいんです」
     よろしくお願い致します、といつものように帽子を押さえて深々と頭を下げた彼女はしかし、いつも以上に深刻な顔をしていた。強力なイフリート、というのは脅しでもなんでもなく、その言葉相応に強い相手なのだろう。
    「……強力なイフリートの周囲には、多数のイフリートが守備を固めているようですが、幸い、このイフリート達は、垓王牙大戦で救出に成功した『協調するガイオウガの意志』の力で戦闘の意志を無くして、無力化する事が可能です」
     『協調するガイオウガの意志』を守り、救出できたことがここで生きてきた。これもまた、灼滅者達の奮戦の賜物だろう。だが、それでも美葉の表情は浮かばない。
    「……けれど、残念ながら……この意志の力も、強力なイフリートには影響を及ぼせない、んです。だから、強力なイフリートについては、皆さんの手で撃破してもらう必要があります。それに……」
     俯いて一旦言葉を切った彼女の肩が、小さく震える。振り切るように再び面を上げた美葉は、ひどく沈痛な顔をしていた。
    「……それに、戦闘の意志を抑えるためには、イフリートの戦意を刺激しないように、少数精鋭で戦いを挑む必要があります。場合によっては、闇堕ちしなければ届かないかもしれません……かなり危険な任務となりますが、できれば……無事に勝利して、皆で帰ってきてください」
     お願いします、と美葉は祈るように、再び頭を下げた。

    「戦闘が行われる場所は、地下の地脈周辺の地下空洞です。地下の空洞での戦いになるとはいえ、崩落等の危険は特にないようですから、そこは安心してください。その場所への誘導や、竜脈への移動については、協調の意志を持つイフリートが行ってくれます」
     顔を上げた美葉が、必要事項の説明を始める。
    「その後、協調の意志を持つイフリートは、取り巻きのイフリートの無力化をすべく力を尽くしてくれますから、皆さんは全力で強力なイフリートと戦ってください」
     ここで戦う強力なイフリートは、体長3メートル程の巨大な熊の姿をしたイフリート。胸元に「袈裟懸け」と呼ばれる、ツキノワグマのような白い斑紋があることが外見的な特徴になるだろうか。ポジションはクラッシャーになる。
    「どうやら単純な力押しを好む、暴力的なイフリートのようです……ただ、単純な力押しと言っても、そもそものパワーが桁違いですし、知能もそう低くはありません。舐めてかかると痛い目をみるでしょうね」
     また、このイフリートの特徴として、執着心が強いことが挙げられる。一度狙った敵は執拗に狙い続けるし、逃げようとすれば追いかけてくる。逆にこうした性質を上手く利用できれば戦いもやりやすくなるかもしれないが、気を付ける必要があるだろう。
    「攻撃方法は、炎を纏った爪による一撃に、広範囲に炎をばらまく吐息。それに、噛みつきですね。特に噛みつきによる攻撃はダメージが大きいようです。気を付けてください。後はシャウトも使うようですね」
     説明を終えた美葉は、ぎゅっと胸の前で固く手を組む。
    「……今回の敵は、無傷での勝利は難しい強敵なのは間違いありません。ですが、なんとかして勝たなければ、復活したガイオウガを止める事は不可能になってしまうでしょう……皆さんのご武運と、ご無事を、心からお祈りしています」
     どうか。
    「どうか、私にお帰りなさいって、言わせてください」


    参加者
    椿森・郁(カメリア・d00466)
    東当・悟(の身長はプラス七センチ・d00662)
    花守・ましろ(ましゅまろぱんだ・d01240)
    若宮・想希(希望を想う・d01722)
    神崎・摩耶(断崖の白百合・d05262)
    吉沢・昴(覚悟の剣客・d09361)
    天宮・黒斗(黒の残滓・d10986)
    シャオ・フィルナート(女神様に弄ばれる系おとこのこ・d36107)

    ■リプレイ


    「我はクロキバとヒイロカミの友。絆が我らに力を与えんことを!」
     作戦が始まる少し前。神崎・摩耶(断崖の白百合・d05262)はそう言って、猫型大型獣イフリート達に軽く会釈した。想いが伝わったのだろうか。猫型イフリート達も、言葉こそ発しないものの、軽く会釈を返してくれた。その間、東当・悟(の身長はプラス七センチ・d00662)と若宮・想希(希望を想う・d01722)は物陰から戦場となる地下空洞に目を凝らす。戦場が暗かった場合に備えての行動だったが、イフリート達の纏う炎のおかげで明るさは十分そうだった。――そう、イフリート達。地下空洞には、多くの熊型イフリートがひしめいている。エクスブレインの言っていた取り巻きのイフリートだろう。そして、その中心には一際大きく、「袈裟懸け」の白い斑紋を持つ熊型イフリートが鎮座していた。あれが、今回戦う強力なイフリート。その姿に、椿森・郁(カメリア・d00466)は初めて受けた高難易度の依頼を思い出す。相手の種も、自分のポジションも一緒だ。尤も、あの時戦ったイフリートよりさらに手強い相手ではあるのだろうけれど――それは、こちらとて同じだ。ここが正念場。ただいまを言えるようにと、郁は改めて気合いを入れ直す。シャオ・フィルナート(女神様に弄ばれる系おとこのこ・d36107)もまた、決意を新たにしていた。
    「イフリートさん達と、約束……したから……絶対に……終わらせる……」
     淡々とした口調ながら、強い想いを込めて呟く彼に、摩耶も頷く。
    「ああ。負けられない、今回だけは」
    「せや。逃がしてしもたから、ここで止める……全員無事で帰るで!」
     力強く言う悟。思いは想希も同じ。今までの経験全てを生かし、皆で勝って帰ること。
    (「今度こそ必ず届かせる……!」)
     指輪ごと武器を握り、かけていた眼鏡を外す。それを悟にすっと差し出せば、何も言わずに預かってくれた。二人の間に言葉はいらない。花守・ましろ(ましゅまろぱんだ・d01240)もそっと指輪に触れる。
    (「これ以上被害を増やさないように、皆で一緒に、ちゃんと『指定席』に帰れるようにがんばるよ……守って、ね」)
     と。一方で、吉沢・昴(覚悟の剣客・d09361)は死さえ覚悟して熊型イフリートを見やる。失敗は許されない。黒斗も同じ思いの筈、と天宮・黒斗(黒の残滓・d10986)に視線を向ければ、彼女も目を合わせて頷いた。ツイナと、また会う為に。共に生きる未来を掴む為に。
    (「もう失敗は許されない……この命を懸けて、私は戦う。立ち続けて、生き延びて、皆と一緒に、勝利をもぎ取るんだ」)
     一つ息を吐き、強敵をしっかりと見据え。皆で一斉に駈け出す。その前に、取り巻きの熊イフリート達が立ちはだかった。だが、ついてきてくれた猫型大型獣イフリート達が強く大きく鳴くと、取り巻き達は戦意を失ったように下がっていく。その中で、一際大きいボス熊イフリートだけが、爛々と目を光らせていた。威圧感がものすごい。強敵なのだと、纏う空気だけで分かる。それでも。負けるわけにはいかない、と灼滅者達は大型熊を睨み返した。
     取り巻きと猫イフリートが静観する中、ボス熊はおもむろに立ち上がり、後衛に向かって炎の吐息を吐きつけてくる。すかさずその前に盾役の面々が立ち、庇った。燃え上がった炎が容赦なく体を焼く。やはり、攻撃力は灼滅者のそれとは段違いだ。黒斗は咄嗟に敵に背を向けて、皆が居るのと逆の方向へ逃げる。途端に、熊は唸り声を上げて黒斗を追いかけてきた。だが、これは相手の性質を利用した囮。作戦は成功、そこを狙って攻撃を叩き込む――!


     黒斗の動きを囮に、昴は死角から一息に近付いた。そのまま、身体毎小脇差を突き刺し、動きを鈍らせる。その隙に悟は仲間の背に隠れる様に身を低くし駆け、背後から斬撃を浴びせた。彼と息を合わせ、想希も死角となるような位置から帯を射出する。黒斗一人に重荷を負わせはしない。摩耶と郁は同じ妄葬鋏で、的確に熊の怒りを引き付けようと試みる。
    「前衛のみんなにイエローサイン、いっくよー!」
    「じゃぁ……俺は、天宮さんに」
     癒し手の二人は声を掛け合い、無駄なく回復を施していく。ましろが黄色にスタイルチェンジさせた標識で先ほど庇ってくれた盾役を癒せば、シャオも黒斗を帯で鎧の如く覆い、防御力を上げさせた。しかし、それを尻目に大熊は黒斗に盛大に牙を立て、噛みつく。
    「く……っ」
     咄嗟に防御しようとして振り上げた腕からぼたぼたと、鮮血が流れ落ちる。一撃が、ひどく重い。荒い息を吐きながら、自らに回復を施す。そうしなければ、たぶんあまり長くは持たない。彼女のことを気にかけつつも、昴は奇襲を狙って上段の構えから飛び込み、片手面の要領で熊に毛抜形太刀を振り下ろした。防御も回復も火力も仲間任せだ、外す事は許されない。続く悟が、「永遠」の名を冠する指輪から魔法弾を、あえての至近距離で放つ。間髪入れずに、想希は妖の槍「望奏」から冷気のつららを撃ち出した。主力となる火力班が攻撃を集中させてくれている間に、摩耶が、ましろが、そしてシャオが黒斗の傷を癒し、守りの加護を与える。回復は手厚い。ならばと郁は瞳を赤く煌かせ、郁子の姿をした影を放った。伸びる蔓が相手を絡めとる。しかし熊は、纏わりつく影に煩そうに頭を振りながらも、なおもしつこく黒斗に炎を宿した爪を振りかざした。
    「させない!」
     摩耶が飛び込み、代わりに爪をその身に受ける。身体に食い込み、燃え上がる爪が痛い。受けたダメージは決して小さくはないだろう。だが、それでも。仲間との絆がある限り、盾は倒れない。摩耶はきりりとした瞳で敵を見つめ返した。


     長期戦になるだろうという予想はされていたし、事実としてそうなっていた。無慈悲な程暴力的な熊の一撃は、癒し手の手を休めることを許さず、時折盾の中からもいくらか回復に回る者も出る。それに加え、相手には体力もある。それでも。悟が、想希が、昴が、様々な動きと工夫で敵を翻弄し、果敢に攻め続ける。負けじと熊が地を揺るがすような咆哮を上げると、いくつかの傷が塞がり、異常が吹き飛んだ。つけられた怒りも消え、再び黒斗に狙いをつける熊を見据えて、郁は鋏で相手を斬り裂く。怒りに狂った熊が郁に炎の爪を振るった。郁子の影をかざしても防ぎきれない痛みに息を吐く。大丈夫か、と摩耶がシールドを施しつつ、そっと盾役全員に小声で問うた。
    (「……あとどれくらいいけそうだ?」)
    (「……あと一撃か、二撃か。いや、致命的な一撃が来れば持たない可能性もあるな」)
     敵の腱を絶ちつつ、答えた黒斗は汗を拭う。怒りで引き付け、また庇い合い。盾役で均等に痛みを分担しようと試みたことが功を奏して今なお立ち続けてはいるものの、集中狙いされている黒斗にそう余裕があるわけではない。敵の一撃が大きいからこそ、余計に。
     と、前衛の立ち位置を活かし、攻撃しつつも敵の息遣いや動作を確認していた悟が叫ぶ。
    「噛みつき、来るで! 気ぃつけや!」
     はっと顔を上げ、熊が大口を開けて迫っていることを察知して飛びのく。だが、防ぎきれない。容赦なく牙は深く黒斗の体に食い込んだ。意識が一瞬遠のくのを感じつつ、それでもギリギリのところで踏み留まる。倒れずに済んだのは、警告と、それに伴う回避行動と、仲間達が幾重にも施してくれた加護、それら全てのおかげだろう。けれど、これ以上盾として立ち続けるのは危ない。このタイミングで交代すべきかと、後ろの仲間に目配せした。意図を読み取った癒し手二人が頷く。
    (「おっけー。それじゃ、まずはわたし、出るね」)
     幸いにして、癒し手の二人とも直接狙われてはいない。なので、耐久力でやや上回るましろがまずは前に出、シャオが引き続き回復を施す。交代の隙は突かせない。仲間の癒しを受けつつ、下がろうとする黒斗を隠すように、悟と想希は熊の前に立ちはだかった。
    「行かせません!」
    「お前の相手は俺や!」
     邪魔するように、派手に攻撃する。しかし、敵とて移動のために手番が空けば、それを察しないほど鈍くはない。熊の瞳が鋭く移動する黒斗を捉える。こおお、と開けた熊の口の中に炎が渦巻いた。それに気づき、昴は警告を発する。
    「炎の吐息、来るぞ!」
     黒斗は息を飲む。たとえ後衛に下がろうとも、この熊の性質上狙いは変わらないだろう。そして、先ほどの移動で手番を使った分、回復も追いついてはおらず、ダメージ半減の恩恵も既にない。であれば、とましろは声を上げた。
    「熊さんこちら、手の鳴る方へっ!」
     あえて挑発するように言い、逃げるフリで気を引く。熊の注意が確かにましろの方に向いた。瞬間、狙いを変えた吐息が彼女を含む前列を包み込む。けれど、これで黒斗の危機はひとまず去った。


     黒斗に代わり、新たに標的となったましろに熊の容赦ない攻撃が浴びせられる。庇う郁も、事前に決めておいた交代基準を既に上回りつつあった。たまらず、シャオは声をかける。
    「……大丈夫? そろそろ……俺も、代わろうか」
    「……だねー。そろそろ交代してもらった方がいい、かも」
     郁が頷く。先ずはシャオが前に、次の手番で郁があたかも攻撃の為移動する体で後衛へと移る。彼女を背に庇いながら、シャオはヴァンパイアの魔力を宿した霧を展開し、前衛の攻撃力の底上げを図った。余裕のあるうちに交代し、戦線を長く持たせる。それも作戦のうち。しかし、摩耶だけは壁として最後まで立ち続けると決めていた。なればこそ、一番ダメージの大きい噛みつきにも果敢に立ち向かい、ましろを守る。だが、最初から盾として庇い続け、今では前衛でただ一人怒りを引き受ける彼女に、遂に限界が訪れた。次の一撃は耐えられないと感じた摩耶は、叫び声を上げ、敵に背中を向けて走り出す。熊が追う。無論、これは単なる逃走じゃない。逃げる者を執念深く追う敵の性質を逆手に取って注意を引き付け、味方に背後を取らせる作戦。その意を汲み、仲間達もここぞとばかり攻撃を集中させる。彼女が捨て身で作ってくれたチャンスを無駄にはしない。摩耶もまた、熊の背を「影」を宿した武器で思い切り殴りつけた。一撃が、熊の肉にずぶりと深く沈む感覚。反撃とばかりに熊が炎の爪を摩耶に深く突き立てる。意識が薄れる。凌駕も叶わない。ここまでか、と、摩耶は覚悟を決めた。この選択に悔いはない。自らの闇に、身を委ね――。
    (「……できない!?」)
     目を見開く。そして思い出した。闇堕ちは、仲間全員が絶体絶命の時にしかできないことを。今はまだ、全員が立てている。
    (「そうか。まだ――」)
     そこまで思って、摩耶は意識を手放した。深手を負わせた摩耶から爪を引き抜き、熊は獰猛な瞳でましろを睨みつける。これで仲間の一人が倒れた。それでも、ましろの気持ちは揺るがない。
    (「気持ちは折れない、負けない!」)
     だって。
    「皆と一緒なら絶対大丈夫って、信じてるから!」
     言葉と一緒に、ローラーダッシュの摩擦を利用して放った炎の蹴りは、寸でのところでかわされる。それすら好機とするように、悟は妖冷弾を叩きつけた。彼の気もまた、折れない。続く想希が激しく渦巻く風の刃を放ち、呟いた。
    「どんな時も希望は捨てない。勝って帰る。……必ず」
     頷き、郁も催眠をもたらす神秘的な歌声を紡ぐ。倒れるまで、何があろうと動揺は見せず、役目を全うする。そう決めていたから。一方の熊は裂帛の叫びを上げ、傷と異常を癒したが、黒斗の一撃が、再び熊の足取りを鈍らせる。その隙に昴は摩耶を掴んで後退した。


     熊にとて、確実にダメージは蓄積しているはず。その表れか、熊はますます苛烈にましろを攻めたてた。シャオが懸命に庇い、下がった二人も癒すが、追いつかない。トドメとばかりに放たれた噛みつきが、ましろを地に転がした。これで倒れた仲間は二人。次に狙われるのは……攻撃しつつも、気付いた想希が声を上げる。
    「……危ない!」
     瞬間、炎が後衛の3人を包み込む。元々ダメージの大きかった黒斗は耐えきれず、その場に倒れ伏した。当初の標的を倒した熊の狙いは、弱っている郁に向かう。
    「……だめ……!」
     シャオが咄嗟に庇いに向かう。しかし、全ては庇いきれない。二撃、三撃と重なる攻撃が、郁に膝を付かせた。残るは4人。そして、残る盾はシャオ一人。元々体力も仲間の中では一番低く、仲間を庇い続けている彼に余裕はない。尤も、熊の方とて大分消耗している。或いは、これもギリギリのラインかも知れない――だが、押し切るチャンスは確かにある。この場にいる8人の連携が生み出したチャンスが、だ。だからこそ。シャオはいっそ、回復を捨てて破邪の白光を放つ強烈な斬撃を繰り出した。襲い来る牙をものともせず、残りのメンバーで猛攻をかける。熊が咆哮を上げ、態勢を立て直そうとしたものの、昴の黒死斬で、熊が大きく態勢を崩した、そこに想希が迫る。
    「この先へ行く為に……!」
     しっかり地面を踏み込み、力を込めて螺旋の如き捻りを加えた槍で熊を穿つ。それに続き、悟が渾身の力を込めた帯を放つ。
    「まだ倒すべき奴がおるから……その首貰うで!」
     全ての思いを込めた、その一撃が熊の心臓をあやまたず貫く。どうと音を立てて、熊の巨体が地に倒れた。


     強力なイフリートの灼滅を確認した猫イフリート達は立ち上がり、灼滅者を促すように鳴き声を上げる。取り巻きを押さえていた猫イフリート達が撤退すれば、取り巻き達も動き出すかもしれない。ここに留まるのは危険だ。目配せして頷き合い、戦闘不能になったメンバーを抱えて撤退にかかる。
    「良く頑張ったな」
     昴は動けない黒斗を抱え、優しく声をかけた。本当に激烈な戦いだった。あと一歩違えば誰かが堕ちていても不思議ではなかったと思う。現に、深い傷を負ったものもいる。それでも。エクスブレインには、胸を張ってただいまを言えそうだった。

    作者:ライ麦 重傷:花守・ましろ(ましゅまろぱんだ・d01240) 神崎・摩耶(断崖の白百合・d05262) 天宮・黒斗(黒の残滓・d10986) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年10月12日
    難度:難しい
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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