「お疲れ様でした、灼滅者の皆様」
戦いに傷ついた彼らをねぎらおうと、精一杯の笑顔を浮かべる鷹取・仁鴉(高校生エクスブレイン・dn0144)。
「……先の『垓王牙大戦』は、こちらの敗北という形で終戦を迎えましたが、ガイオウガにもまた、大きな痛手を与えることができました」
が、今は、そんな彼女の慰労に十分応えられるだけの余力を持った灼滅者が、はたしてどれだけいるだろうか。
いないとしても、事態は進行している。推移している。
「ガイオウガが傷の回復に専念しているこの時間は、猶予としてまちがいなく、皆様が勝ち得たものですわ。それを用いて、これから――」
それ以上悪化する事態は、止めに行くべきだ。行かねばならない。
例えどれだけ過酷で、困難な道行きとなろうとも。
「――可能な限りの最大戦果を取り返しに参りましょう」
「さて、現在ガイオウガは、日本各地の地脈からガイオウガの力を集めようとしておりますわ。その目的はひとえに傷の治療のため。もし全国のガイオウガの力が、復活したガイオウガのもとに統合してしまえば、ガイオウガは最盛期の力を取り戻してしまいますの。
皆様は、この事態を防ぐために、各地の地脈を守るガイオウガの力の化身……強力なイフリートの灼滅をお願いいたしますわ。
その強力なイフリートの周囲では、別のイフリートが多数、守備を固めております。ですがそれらは、垓王牙大戦で救出した『協調するガイオウガの意志』の力で、戦闘の意思を無くして無力化することが可能ですの。
しかし、その意志の力も、強力なイフリートには影響を及ぼせません。ですので、灼滅者自身の手で撃破する必要がありますわ。
加えて、周囲のイフリートが持つ戦闘の意思を抑えるためには、イフリートの戦意を刺激しないよう、こちらも少数精鋭で戦いを挑む必要がありますの」
つまり。
「これは非常に危険な任務となります。場合によっては、作戦を成功させるため、闇堕ちしなければならないような局面があるかもしれません。
できれば皆様、揃って無事にお帰りいただければよいのですけど」
本当に――と、仁鴉は憂う。
この班が戦闘に向かうのは、大涌谷地下空間にある地脈周辺だ。その地点への誘導や移動は、協調の意志を持つイフリートが行う。
到着に前後して、協調の意志を持つイフリートは、取り巻きのイフリートを無力化すべく力を尽くしてくれるので、我々灼滅者は強力なイフリートとの戦闘に集中すればよい。
その強力なイフリートは、名を『壊牙竜タガイガバジン』という。鋭く異様に巨大な牙を、上下2対・計4本備えた、竜型のイフリートである。使用するサイキックは、【炎】のバッドステータスを与えてくる『互い牙の獄』、追撃で大ダメージを被る可能性のある『削岩潰走』、バッドステータスを解除しやすくなる『牙鳴り音叉』の3つ。戦闘となればクラッシャーとして、こちらの命を容赦なく壊すべく集中攻撃を行ってくるだろう。
灼滅者・イフリートの双方が全力で戦ったとしても、地下空間の崩落の危険性はない。作戦立案にあたっては、ぜひ戦闘の勝利について注力してほしい。
「この戦いに、この敵に勝たなければ、復活したガイオウガを止めることは不可能となるでしょう。そうなった場合の被害は、想像もできません。
皆様の勝利と無事を、心からお祈りしておりますわ。……そうする他、私にはできませんから」
参加者 | |
---|---|
加藤・蝶胡蘭(ラヴファイター・d00151) |
アリシア・ウィンストン(美し過ぎる魔法少女・d00199) |
鹿島・狭霧(漆黒の鋭刃・d01181) |
峰・清香(高校生ファイアブラッド・d01705) |
ゲイル・ライトウィンド(ホロウカオシックコンダクター・d05576) |
リヒト・シュテルンヒンメル(星空のミンストレル・d07590) |
紅羽・流希(挑戦者・d10975) |
秦・明彦(白き雷・d33618) |
●地底の怒れる灼熱地獄
「ツイタ、ゾ」
先行する猫型イフリートの1匹が、こちらを振り返って言った。
「ありがとう、ここまででいいわ。後は、私達の仕事よ」
鹿島・狭霧(漆黒の鋭刃・d01181)が答えると、イフリートたちは耳を小さく動かす。
「タノム、すれいやー」
彼らが足音も軽く駆けていく、その先。地底へ続く小洞窟の最奥に、大広間がある。その壁面は砕かれ、あるいは杭のようなもので穿たれたものと見える。
「地脈に潜む、ガイオウガの力……だな。詰めきれなかったツケは高くついたか」
峰・清香(高校生ファイアブラッド・d01705)の見る通り、その暴威を示しているものだ。アリシア・ウィンストン(美し過ぎる魔法少女・d00199)も、小さく息を吐いて捨てる。
「こうなる前に手を打ちたかったのじゃが……、まぁ嘆いても仕方あるまい」
「私はぶっちゃけ、義務感とか正義感とかどうでもいいんですけどね」
語るのはゲイル・ライトウィンド(ホロウカオシックコンダクター・d05576)だ。彼は続けて、こうも呟く。
「なら、自分達のケツくらい自分達で拭けないと、でしょう」
失敗の後始末を付けていく為に……灼滅者たちは覚悟を決めて、境界線を越えた。
「暑……」
誰ともなく呟く。迫り上がってきた溶岩が、大広間の中心に溜まりを作っている。
間もなく敵の気配を捉えたか、秦・明彦(白き雷・d33618)が叫んだ。
「タガイガバジンッ!」
ビン、と空気が震えた。取り巻きのイフリートは、じっとこちらを伺っている。
「灼滅者と人とイフリートの共存の為、貴方にはここで倒れてもらう!」
「ガガガガガガ!」
ゴォォォァァァアッ!
と、中央の溶岩が立ち上がった。その身についた溶岩を雨滴でも払うかのように落とし、壊牙竜タガイガバジンが姿を現す。
「共存!? ハ! 脆弱ナル人間、蒙昧タル共存派、力無キ灼滅者ドモメ!」
「ぐうっ……!」
先の明彦に倍してなお余り有る、竜の音声。空間が威圧され、粘り付いてくる錯覚を得た。
「真実ハ唯一ツ、ガイオウガニ有リ! 我等ソノ力ヲ携エ、御身ノ基ヘ参集セン――!」
加藤・蝶胡蘭(ラヴファイター・d00151)は、その圧に心底から踏み抗って、前へと進む。
「そんなことは絶対にさせない、必ずこいつをここで仕留めていくぞ!」
「この戦いは絶対に負けられないですね……! 皆さん、エア!」
蝶胡蘭だけはでない。リヒト・シュテルンヒンメル(星空のミンストレル・d07590)も、紅羽・流希(挑戦者・d10975)も――全員が、必滅の意思をここで新たにした。
「こいつが最後なんかじゃありませんからねえ……。絶対に、皆で」
流希が日本刀『堀川国広』に手を掛ける。鞘からすべり出す時のその清音は。
「生きて、帰る!」
「死ネエエエエェェェェッ!」
削岩の轟音にかき消される。
●竜の牙、人の刃
「――!?」
視界が宙に浮いた。一瞬、狭霧は何が起きたのかわからず、追って酷い痛みと、空中のこちらを撥ねて追うタガイガバジンの姿を認識する。
「ガガガガ、軽イ命ダ!」
ズガァン!
極厚の尻尾の叩きつけは、空洞の床に狭霧の骨肉で痕を刻む。間一髪、飛行して後衛に下がることで難を逃れたアリシアは、息をのんでその様を眺めた。
「狭霧! く、恐るべきは竜種の力、か……!」
「こ……の程度、なら! みんな!」
狭霧は即座のヒールに助けられながらも、余力を最大限に振り絞り、声を上げる。
「いい気になるなよイフリート! さあ、勝負だ!」
タガイガバジンの背後を取った蝶胡蘭が、敵の巨体に駆け寄る。牽制に突き込まれる尻尾の先を、蝶胡蘭は側宙で避けた。ぎりぎりの、傷にもならない擦過に、焦がされるような熱を感じて。
「ひと、ふた、みい……インパクト! 今だ、クラッシャーッ!」
錐揉みからのスターゲイザーを当てると、その足止め効果を起点に、狭霧と清香とがそれぞれ対角線の位置を取る。
「ここからは、徹底的にヒット&アウェイよ」
先の無様は殺すことで取り返す。そう決めた彼女の気配が軽く、より黒くなった。
とん。
というのは、足音だったか。ナイフの柄が刃ごと竜皮に突き当たる音だったか。狭霧が得物を引き抜いて下がると、向かいの清香の歌声がとどろく。
(「私の歌に狂いな、タガイガバジン――な!?」)
「ギャギャギャギャギャギャ!」
声帯を絞り、極限にまで魔性を高めた妖歌はしかし、スピンターンを思わせる敵の挙動で回避されてしまった。清香は仕方なく歌を止め、眉をしかめる。
「歌から逃げる……くらいはまあ、私でも誰でもできるか。完璧負け惜しみだが」
「ナラバソノママ、負カシテヤロウ! ソノ女カラ順ニナ!」
反撃とばかりに地を蹴るタガイガバジン。狙うは、先も痛打をお見舞いした相手、狭霧だ。
「ソノ柔肉ハ気ニ入ッタ! ガイオウガノ糧トナレィ!」
「させるか! そう好き勝手にっ!」
明彦が立ちふさがった。上下左右から襲い掛かる四本の牙を、文字通り身を盾にして防ぐ。
「カカッタナ! 真ッ黒ニ焦ゲヨ、『互イ牙ノ獄』デ!」
ゴウ、と口から吐き出された炎塊が、明彦をその内に飲み込んだ。
「ぐぁ――あぁああああぁあああ!」
明彦は強引に牙を抜いて逃げ、敢無くその場で膝をつく。
「明彦さん! ――明彦さん!?」
リヒトの呼びかけに反応がない。文字通り火急の事態だ。リヒトは霊犬エアレーズングにも指示を出し、明彦の治癒を急ぐ。
「エアも浄霊眼を! 明彦さんを、連れては行かせない!」
それとリヒトが放る七色の光輪とで、ようやく明彦で燻ぶっていた炎が鎮まった。しかしあれは……戦場でさえなければ、すぐにでも……!
「明彦くん、明彦くんっ! これはオマケにすぎませんが……さあ、立ちたまえ!」
「立つ……立つ! 俺は!」
ゲイルはさらに防護符を上乗せすることで、一時しのぎと知りつつ、仲間につかの間の癒しを与える。
「そうです、立って! そんな痛みを強要する僕を、憎く思うなら目の前の敵にぶつけなさい!」
朗々と、鼓舞の言葉を口にする。
「うおああああああ!」
聖剣を振りかざす戦士。上げた蛮声とは裏腹に、心はなぜか、ひどく冷静だった。
――やるべきことは、シンプルなんだ。盾となること。だから――。
「タガイガバジイイイィィィンッ!」
ザンッ!
型通りに、習ったように剣を振る。敵の肉を割く、澄み切った剣閃をひとつ披露すれば、明彦はそれで『万全』を取り戻した気になった。
「獣なら知っているだろう? 手負い、ってヤツの恐ろしさを!」
引く隙を与えぬよう、流希がタガイガバジンの間合いに入る。この刀でどこを斬り、あるいは断つべきか、長くはない猶予時間で探すが……。
(「……部位を狙うなら、それなりの立ち位置で見定めないと、か」)
弱点打ちを諦め、ガードの空いていそうな場所に雲耀剣を叩き込んだ。結果、悪くはない攻撃になったものの、どこかで押し切れずにいる感覚がある。
「ガイオウガの力。やはり、生半にはいかぬか」
アリシアも空中から、短期行動予測をした上での砲撃を行っているが、それを含めどれも決定打になるような攻撃を、灼滅者たちは行えていない。
「さて、どれだけのスタミナを持っておるのじゃろうな、あやつは……!」
……そして、お互いに傷を負っていく戦いが続き、決定打を先に敵側へと叩き込んだのは、タガイガバジンの方であった。
●消耗戦の分水嶺
タガイガバジンの牙は、今度こそ深く、明彦の両手両足を食い破る。赤く開いた口に、地獄の炎が燃え盛っているのが見えた。
「ガガガガ! 小枝ノゴトキ命デアレバ、2ツニ折ッテ燃ヤシテ捨テテヤロウ!」
「ぐぁあああ……っ!」
ばきん。……ごくん。
明彦はそして、宣言された通りのことをされた。頬を膨らませて、火流ととともに彼を吐き捨てると、タガイガバジンは聞くに堪えない叫び声を上げる。
そんなものはどこ吹く風として、蝶胡蘭はこう言った。
「……よくやった、明彦。今ので確信した」
負傷の痛みに耐えながら、蝶胡蘭は一点を指さす。そこは、やられる直前に明彦が撃った影縛りが、深くタガイガバジンの足に食い込んでいる箇所だ。
彼の意地と誇りが叶えた一撃だ。それは同時に、ある事実を暴いている。
「敵能力値は、高い順に神秘・気魄・術式! 術式で仕掛けるんだ!」
再度のスターゲイザーが、タガイガバジンの膝関節を射抜いた。その足裏ごと岩盤に沈ませるほどの、重い一撃。
「ありがとうね、秦さん――このお礼は、勝つことで!」
狭霧の解体ナイフ『Chris Reeve “Shadow MKⅥ”』の刀身が、手の内でメキメキと形を変えた。
漆黒のカラーリングは、反射光での視認を許さない。ゆえに一陣の黒い風として、狭霧の攻撃は大広間を、タガイガバジンを駆け抜けた。流血を置き去りに、突き抜ける――!
「ふむ、我はやる事は変わらんのぅ。じゃが、どれ……はあっ!」
と、気合一拍。アリシアの作り出したマジックミサイルが、見る間に倍々と増えていく。上手くいった、とアリシアは不敵に笑った。
「全弾当たるぞ、タガイガバジン? 精々抗うてみせよ!」
ザダダダダダン!
広間の熱気を衝く幾重もの魔弾が、タガイガバジンの表皮に次々突き刺さっていく。その弾幕に潜むようにして、清香が精一杯に駆けあがった。
「こいつなら! 『ウロボロスブレイド・運命裂き』!」
オオオオオオ!
呪詛の声に似た風切り音を立てて、蛇剣がタガイガバジンの肉に食い込む。駒回しのように柄を引き切ると、鮮血が環状に迸った。
「恨みからは逃げられないんだよ、誰だって」
「まだまだ! 一気呵成に押し切るんだ!」
納刀した流希が、無手の拳で接近戦を挑んだ。バトルオーラ『精神壁』を纏えば、傷だらけの身体であろうと、断崖を穿ちえる無二の武器となる。
「いい加減、ここらで倒れときな、タガイガバジ」
「宜シイッ!」
全力を乗せたはずの流希の一撃は、しかし敵のカウンターとなる突進で弾き飛ばされた。ダメージこそないものの、拳に走る激痛の痺れは、彼に新たな脂汗を流させる。
「宜シイ。是ヲ以テ、貴様ラヲガイオウガノ障害ト見做ス! 故ニ我ハコウ返ソウ――」
タガイガバジンの姿が消えた。
「イイ気ニナルナヨ、灼滅者!」
と、前衛が全員、宙に打ち上げられている。分かっていて避けられなかった、次に来るのは尻尾の打ち下ろしのはず――狭霧は激痛の中で身構えるが、防ぐ術はなく。
「ゴガガガガガガガ!」
強かに打ち付けられ、朦朧と立ち上がって。
どうにか前を見ると、竜の形をした絶望が駆けてくるのが見えた。
「みんな、避けて」
「ワンワンワンワン!」
呆然と囁く狭霧の前に、エアレーズングが飛び出す。直後、お構いなしに突っ込んだタガイガバジンの衝突地点から、複数の赤い湿った何かが飛び散った。
それで終わり。タガイガバジンの血塗られた牙に炎が走ると、残留物が焼かれ灰になる。
「あ。あ。あ。あ、あ」
そんな。理不尽な。
リヒトは混乱する。
まさか、一撃で――ダブル? こんな強敵の――それより、ヒールを――何人、いや。
「――何人、生き残りました?」
「フ、虫ヲ数エル趣味ハ無クテナ。シカシ健闘ハタタエヨウ、灼滅者」
落ち着いた、慈父のような声は、タガイガバジンのものであった。
「イヤシカシ清々スルナ、虫ヲ潰ストイウノハ。之ニ懲リタラ、貴様モ頭ヲ垂レ大人シク」
「賢者モードの所恐縮ですが、誰一人殺せてはいませんよ、お前は」
ゲイル……の、様子がおかしい。姿こそ彼のままだが、何かが決定的に入れ替わったような。
まさか。
「誰一人として死なせるものですか。リヒトさん、あなたは戦える人間を優先してヒール。私のことは、ええ、ただの負けず嫌いと思ってもらって」
「ゲイル、さん?」
「負けっぱなしも、趣味ではないですから」
闇堕ち――!
●覚悟と憎悪と決意と忘却
それから長い潰し合いがあった。ダークネスとダークネスの、長い永い……。
明彦、狭霧、清香、流希。四名はかろうじて意識が戻ったが、戦闘中に十分な治療を施すことは不可能だ。もうしばらくは、堪えてもらう他ない。
蝶胡蘭、アリシアは、リヒトの支援を受けながら前線に立ち続けている。事前に決めた撤退条件を満たしてしまいそうな今、なおとどまり続ける理由は、一つだけだ。
ゲイル・ライトウィンド。
負けっぱなしは、趣味ではないと。そうとだけ言い残して過酷な道を行く仲間を、置いて行くことなどできようものか。
「グウッ! タカガ1頭のダークネスゴトキニ、コノヨウナ……!」
「数え方が不躾ですよ。そら、このようなのはどうですか?」
バイオレンスギターをかき鳴らし、ソニックビートを放つゲイル。その気になりさえすれば、殲術道具無しでもサイキックを使うことが可能かもしれないが……。
「スレ……と、して……ゲイルく……はっ!」
不甲斐ない、と明彦は未熟を悔いた。そして、どこかの戦場に立つ恋人のことを思い――。
「私も、喋る度にぼろぼろ中身が零れていきそうな気分なんですよ……。悔しいですけど、今は見守るしかありませんかねえ……」
流希の溜息が、穴の開いた胴を抜ける。と、新たな轟音が一つ、大広間をつんざいた。
「デッド……ブラスター……っ!」
サイキックを放ったゲイルが傾ぐ。己の内で煮えくり返る何かを抑えようとして、彼が胸元に手を当てた時。
「っ! ゲイルさん、もしかして、結晶化が……?」
ヒールを掛けようとするリヒトを、手のひらでゲイルは制する。
「ゴホッ……それには及びません、リヒトさん。今の一撃が、運よく致命傷となりましたので」
何をすべきかを悟り、蝶胡蘭はクロスグレイブを構えた。
「ああ、皆まで言うなゲイル! こいつは、私たち『灼滅者』が灼滅するから!」
虫の息のタガイガバジン。その心臓に深々と、蝶胡蘭は十字架を突き立てる。命を奪う手ごたえがあり、その死体は即座に風化し、散っていった。
「あぁ……。終わった、のか? ゲイル?」
清香が身を起こす。歩けるようになった彼女は、せめて歌の癒しをと近寄るが。
「だめ、清香さん。闇堕ちした灼滅者が、その後どうなるかは」
流希がそれを引き留める。いつの間にか、アリシアが二人を庇うように立っていた。
「また厄介事が出来たのぅ……。一喝入れねばならぬが、一先ず退散じゃ」
「…………?」
ゲイルではない何かは、そして灼滅者たちを一瞥すると、先にいずこかへと去っていった。
同じ帰り道。だが、追うだけの余力も、速度も、置いて行かれた彼らには残っていない。
帰る場所も、もう違えてしまった彼を、ただ想う――。
作者:君島世界 |
重傷:鹿島・狭霧(漆黒の鋭刃・d01181) 峰・清香(大学生ファイアブラッド・d01705) 紅羽・流希(挑戦者・d10975) 秦・明彦(白き狼・d33618) 死亡:なし 闇堕ち:ゲイル・ライトウィンド(カオシックコンダクター・d05576) |
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種類:
公開:2016年10月12日
難度:難しい
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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