炎獄の楔~そは死地ならずとも

    作者:聖山葵

    「垓王牙との戦いのことは聞いている。激しい戦いだったようだな」
     結果として敗北に終わった訳だが、決死の奮闘により深く傷つき、回復に専念して居るとも座本・はるひ(大学生エクスブレイン・dn0088)は言う。
    「ガイオウガが引きこもった結果、失われずに済んだ命もあると私は見る、よってまずはお疲れさまと言わせて貰おう」
     ただ、ガイオウガも引きこもっただけではなかったらしい。
    「ガイオウガは、回復の為に、日本各地の地脈からガイオウガの力を集めようとしている。日本中のガイオウガの力が復活したガイオウガの元に統合してしまえば、それ即ち最盛期の力を取り戻したガイオウガの誕生を意味する!」
     当然だが座視することなどできない。
    「よって君達には、この事態を防ぐために日本各地の地脈を守るガイオウガの力の化身……強力なイフリートの灼滅をお願いしたい」
     強力なと前に言葉が付いているのだ、生半な相手では無かろうが、それがはるひから君達への依頼だった。
    「さて、話を続けよう。まず、問題のイフリートのそばには多数のイフリート居り、守りを固めている。ただし、これについては考える必要もない」
     はるひ曰く、それらの護衛は垓王牙大戦で救出に成功した『協調するガイオウガの意志』の力で戦闘の意志を無くして無力化することが可能なのだとか。
    「無論、件の強力なイフリートには影響を及ばせないので、そちらは君達が叩く必要があるのだがね」
     しかも少数精鋭で戦いを挑む必要があるのだとはるひは言う。
    「護衛についているイフリートの戦意を刺激すると協調するガイオウガの意志が、彼らをおさえきれない可能性があるのでね」
     よって厳しい戦いになるのは想像に難くない。
    「誰かが闇堕ちをしなければ倒すことは能わない、と言っても過言でない程厳しい状況になる。私としてもこれ程厳しい状況を押しつける形になるのは不本意だが……」
     感情を抑え込むかの様にはるひは拳を握りしめ。
    「説明を続けよう。戦場となるのは地下の地脈付近、イフリートの熱気で干からびた地底湖の底となる」
     もっとも問題のイフリートを倒したところですぐ地底湖に戻る訳でもなく、地形的な意味で君達が気にしなければいけないようなことは何もない。保護したガイオウガの尾から生じた四体のイフリートが、竜脈への移動や護衛の無力化のため同行してくれるのだが、彼らの炎が照らしてくれる為、明かりを持ち込む必要もないのだ。
    「純粋に戦って倒してくるだけ、至ってシンプルではあるが、その相手は強敵だ。名はハイシマ、白と灰の縞を持つ赤眼の虎型イフリートで、ファイアブラッドのサイキックに似た攻撃の他、生成した炎の大盾を投げ敵の後衛を一度に攻撃する技や、大盾自体で近い相手一人を殴りつける技を持つ」
     大盾を武器とするだけあり、守りに重きを持った戦い方をするそのイフリートにとって最大の武器は、大盾での攻撃やレーヴァテインもどきに付与された炎だ。
    「自身は守りを固めて耐えつつ、攻撃によって敵の身を包み焼き焦がさんとする炎を重ね、敵が全滅するのを待つと言うのが主な相手側の戦法となるだろう」
     むろん、一撃の威力とて相応のモノと覚悟せねば不覚をとるだろうが、状態異常を解消する手段を幾人かが用意すれば敵の思惑を破ることは出来る。
    「だが敢えて言わせて貰おう。私は厳しい状況になると言った、あれは敵の思惑を破ることを前提とした上でだ」
     それ程までに件のイフリートは強いのだろう。
    「だが、敢えて頼む……」
     脅しではなく、純粋な事実を伝え終えたはるひは、赴き勝ってきてくれと君達に頭を下げるのだった。
     


    参加者
    花藤・焔(戦神斬姫・d01510)
    神楽・三成(新世紀焼却者・d01741)
    ジュラル・ニート(メトロシティ市長・d02576)
    鷹合・湯里(鷹甘の青龍・d03864)
    聖刀・忍魔(雨が滴る黒き正義・d11863)
    八葉・文(夜の闇に潜む一撃・d12377)
    赤城・碧(強さを求むその根源は・d23118)
    安藤・ジェフ(夜なべ発明家・d30263)

    ■リプレイ

    ●望む
    「グルルルル……」
     干からびた地底湖の底を踏みつけ、睨んでくる灰色と白の縞を持つイフリートを前に、なんやかんやで難易度上がり過ぎだよねこれと漏らしたのは、ジュラル・ニート(メトロシティ市長・d02576)だった。
    (「今はこの場を押さえるのが先決。だが……本丸の前から厳しそうだな……」)
     もっとも、厳しそうと見たのは、赤城・碧(強さを求むその根源は・d23118)も同様か。
    「ガイオウガ復活……すぐに活動を開始できない状態まで追い込めたのは不幸中の幸いと言えましょう。だからこそ絶対に――」
     止めなくてはならない。たとえ同時に四体のイフリート達に誘われ訪れたこの地が死地ならずとも不帰の地となる可能性があったとしても。故に鷹合・湯里(鷹甘の青龍・d03864)はいつもの笑顔のまま言った。ただ、この状況でも笑っていられるなんてと言われれば、おそらくこう答えただろうが。
    「これがいつもの顔ですよ」
     と。
    「ええ、ガイオウガとの決戦の為にも負けるわけにはいきませんね」
     湯里の笑顔に頷きを返し、花藤・焔(戦神斬姫・d01510)が向けるのは、呪黒の帯の先端。
    (「……負けは負け、この戦いも、今後の影響も含めて受け入れないと……ね」)
     閉じていた目を開き、黒焔鳳凰の柄を握る手に力を込めた八葉・文(夜の闇に潜む一撃・d12377)は動き出す。
    (「そして今後をよりよく繋ぐためにも……ここは負けられない」)
     危険と知って尚、追い込んだことを活かす為、ここまでやって来たのだ。眼前の敵を倒すと言う意思とされど負けるつもりがないという気持ちの二点はおそらく全員が抱いていた。
    「ヒャッハー! 落とし前を付けにきたぜイフリート! いざ決戦だぁ!!」
     雄叫びの如く神楽・三成(新世紀焼却者・d01741)の声が響いた直後だった。
    「ガアアアッ!」
     身体を拘束する不可視の鎖を断ち切られたかのように、白と灰の虎は飛び出した。当初、守るが如くそのイフリートことハイシマを取り巻いていたイフリート達は、一体たりとも後には続かないが、付いてきてくれた犬や猫のイフリート達が抑えてくれているのを知っている一同にとって、後者は気を割くにも値しない。
    「ウチは刃、あんたの闇を切り裂き、穿つ……」
     ただ、具現化させ口でくわえた大盾が叩き付けられるよりも早く小さな声が漏れた、ハイシマの死角から。
    「刃や」
     想定外の強襲だったのであろう。だが、種はまかれていた。ダイダロスベルトで自らを覆いつつある三成が先程叫んだことで、イフリートの注意が動いたのを利用し、文は回り込んでいたのだ。黒焔鳳凰の穂先が縞の毛皮を斬りつけ、急所への斬撃が見舞われた。
    「ッ」
    「喰らえ」
     これを上空で見ていた聖刀・忍魔(雨が滴る黒き正義・d11863)は流星の煌めきと重力を宿したまま、斬られたイフリートへ突き刺さった。
    「鷹甘の青龍、参ります!」
     ほぼ同時に振り下ろされる巨大化した腕。
    「逃がさんっ」
     更に碧が影から放った触手が地を這うように伸びて急に跳ね地を蹴ったハイシマの右前足を狙い絡み付こうとする。しかもビハインドの月代が放った霊障波の援護付きで。
    「ガアッ」
     五人がかりの連係に逃げ場はなく、触手は前足を捉え、巨腕がイフリートの身体に叩き付けられた。
    「ガアアッ!」
    「なっ」
     ただ、攻撃をモロに喰らって尚、白と灰の虎の勢いは殆ど減退せず。
    「グルオオオッ」
    「このっ」
    「にゃっ」
     跳躍したハイシマに向かって飛んだ者が居る。輝きながら繰り出した安藤・ジェフ(夜なべ発明家・d30263)の跳び蹴りはハイシマの左目の下に炸裂し。続いてウィングキャットのタンゴも猫魔法を放つ。
    「グルアアアッ」
    「ちょ」
     微かに減速はした、だが虎イフリートの足は止まらなかった。身の守りに重点を置いたことで衝撃の何割かを受け流していたとでも言うのか。炎の大盾が叩きつぶさんばかりに振り下ろされた。
    「鷹合先輩!」
     巻き起こる土埃、叫ぶような声が落ちた盾の下に誰が居たかを語り。
    「……それなりに、痛いですね」
    「こっちの攻撃をものともしないとか……軍師殿や、楽に勝てるチート的なアイテムとかバグとか裏技とかは……」
     だが、倒れては居ないことを知らせる湯里の声を聞きながら、ジュラルはちらりとナノナノの軍師殿の方を見やり。
    「ナノ」
    「ですよねー」
     頭を振りつつ、ハートで仲間を癒やす軍師殿の回答に知ってたと言わんがばかりの表情で夜霧を展開する。
    「それでも傷は付いています、なら――」
     やることに変更はない。焔の射出した帯が身体の向きを変えようとする白と灰の虎目掛け、撃ち出された。

    ●強者
    「負けない……」
     片腕を半獣化させた忍魔が地を蹴って前へ飛ぶ。
    「ガアッ!」
    「っ」
     牽制すべく振るわれた前足という迎撃があと少しの距離を阻んだ。だが忍魔は一人ではない。
    「お返し、させて頂きますよ」
    「合わせるで!」
     別方向からは射出された光の刃がイフリートへと迫っていたし、文が氷柱を飛ばしたのもこの直後だった。
    「支援射撃か、複数方向からの同時攻撃ならな……」
     そして、この時碧の利き腕も殲術道具ごと寄生体に飲み込ませ、巨大な砲台へと変じていた。
    「月代」
     一人が気を惹けばその分他の灼滅者達からは注意が逸れる。攻撃の好機だ、名を呼ばれたビハインドも忍魔同様、白と灰の虎へ肉迫して行き。
    「ガッ」
    「まだだっ」
     砲台から放たれる死の光線を浴びせ、氷柱や光刃が突き立つべく殺到し、牽制で僅かに間合いに入るのが遅れた忍魔も引き裂くべく爪を振るう。
    「グルオッ」
    「何っ」
     だが、返ってきたのはまるで金属同士が奏でるような悲鳴とかたい手応え。
    「大盾で――」
     攻撃の威力は大きく削がれた。おそらく連係攻撃を受けたことで幾分冷静になり、本来の戦い方をし始めたのだろう。
    「グルアアッ」
    「しまっ」
     そして、攻撃を受け止めたところで反撃に転じる。首のスナップによって虎は大盾を投げ。
    「きゃあっ」
    「くっ」
     だが攻撃の代償は灼滅者達を斬り裂く形で大きく弧を描く。
    「ガウッ」
     幾らか身の傷を増やした白と灰の虎が戻ってきた大盾を口で受け止め。
    「ぐっ、範囲攻撃でこの威力ですか……」
     巻き添えを食らう形になったジェフは傷ついた片腕をだらりと下げたまま、もう一方の手を眼鏡に添えた。
    「その上、大盾で身を隠し、こっちの連係にまで対処してくるとか巫山戯てるぜ」
     守りに主体を置く戦い方の本領発揮と言うことか。
    「それでも一応、全部はカバー出来ず、当たってる攻撃もあるみたいですけどね」
     ジェフが示した先、イフリートの身体に生えるは一本の光刃。おそらく大盾でカバー出来ない角度から撃ち出されたのだろう。
    「しかし、名前といい守備に自信的な戦法といいチャシマさんを思い出すよね軍師殿。見た目は全然似てねーけど」
    「ナノ」
     学園に好意的だったイフリートの少女の名を挙げジュラルがナノナノに話しかければ、羽扇で口元を隠したまま軍師殿がこれに首肯する。猫と虎、色も違えば、盾の形状も異なる、そもそも。
    (「チャシマとは、違う。強さの質も、目も――」)
     ガイオウガとの合体を阻止すべくイフリートの少女を止めた時、不本意ながらも戦うこととなったからこそ忍魔には判る。いや、それ以前の問題か。
    「弱らせましょう、動きがもっと鈍れば……」
    「……それしかないか」
     ちらりと湯里が視線を向けた先、虎イフリートが絡み付いた触手を無理矢理引き摺る様を見て碧も同意すると影を手繰った。
    「グルオオォォッ!」
     戦いは、続く。面を被るようにくわえた大盾で身を守る炎獣へと射出された帯が伸び、イフリートの防御行動を学習した先端が試すように軌道を変えて虚を突けば、注意が逸れた機を見計らい、再び影の触手が四肢目掛けて這い寄る。
    「グゥッ」
    「ヒャッハー、やったぜ!」
     そして巻き付いたのは右後ろ足。三成が快哉を叫ぶ。まだ守りを崩すには居たらずとも、灼滅者達は少しずつハイシマの動きを鈍らせつつあった。

    ●獣、手負えば
    「だいぶ、効いてきたでしょうか?」
     呼吸を荒くしつつ、殲術道具を構えたままで湯里は呟く。
    「グルルルルルル……」
     低く唸る白と灰の虎は幾本かの絡み付かせた触手を引き摺り、足の動きも片方を庇うかのように左右非対称。
    「おそらくは……」
     灼滅者達の狙い通り動きが鈍っているのは確かだった。ただ、それはあくまで事実の一面のみ。
    「ガアッ」
    「ぐあっ」
    「月代っ」
     虎イフリートが思うように動かぬ身体の苛立ちをのせるように食い破らんがばかりに噛んだ大盾を投じれば、焔の円盤と化したそれに削られながら燃やされたジェフが吹き飛ばされ。胴を半ば両断されたビハインドが消滅する。
    「っ……消耗してるのは、こちらも同じか」
     傷を癒し、支える者が居ようとも完全に傷を癒せる訳ではない。身を焦がす炎をすぐに消し止めても身を焼かれていた分は消耗するし、ダメージは確実に蓄積して行く。
    「だが、今度こそ負けないと決めたんだ……俺達と共に進む友のために!」
     火傷を負った肌をそのままに忍魔が飛び込むは、手にした【鋸引鬼】斬魔の間合い。
    「こんな所でな……止まれるかぁっ!!」
    「ッギャァ」
     大盾を投げ、身を守るモノを一時的に失った虎が落ちた超弩級の一撃に無理矢理叩頭を強いられ。
    「仕掛けますよ……全力で!」
     孤高の竹箒『晴耕雨読』を振り上げた湯里が地を蹴る。
    「ガッ」
     大盾がなく、動きは鈍い、一撃は顔を上げようとした虎イフリートの顔面を強く打ち据え。
    「ヒャッハー、その調子だぜ! フォローは任せろー!」
     味方の奮戦を見る三成が剣に刻まれた「祝福の言葉」を風に変換し解放する。
    「ありがとうな。 さて、ここで一気に圧さへんと拙い。赤城さん、うちらもいくで?」
    「ああ、借りは返さねばな」
     答えるが早いか、撃ち出されたオーラを隠れ蓑に、文は死角へ回り込む。
    「じゃ、こっちも動きますか、軍師殿」
    「ナノ」
     解体ナイフの刃をジグザグの形状に変えたジュラルは、仲間達の攻撃の成否も確認することなく文とは逆方向へと飛び。
    「逃げられませんよ」
    「グギャアアッ」
     次の瞬間、目にしたのは、焔に腱を斬られ悲鳴をあげるイフリートの背中。
    「前をカバーすんなら、こっちは無防備。逆にこっちを振り向けば無防備な背中を味方に晒す。これで私も些少は貢献出来るんじゃないかとね」
     変形した刃は、攻撃される真っ最中のハイシマへ容赦なく振り下ろされ。
    「グガアアァァァ」
    「おっと……拙っ」
     怒りに満ちた咆吼と共に迫ってきた大盾からジュラルは身をかわすも、それは反撃ではなく、大盾を投げる為の前動作だった。
    「避け――」
    「っ」
     声はかけた。実際、それで炎獣の動きに気付き、回避行動を取り始めた者も居た、居たが。
    「ワイドガードも用意しておくべきでした……ね。そうしたら、もう少し……は」
     再び大盾の直撃を喰らったジェフが崩れ落ち。
    「く……」
     左肩を押さえながら碧が地に膝をつく。
    「狙い通りに……事が運んで、これ……ですか」
     焔の脳裏に浮かぶは敵の思惑を破って尚厳しい戦いとなると言うはるひの言葉。
    「私は……」
     先に言葉は続かない。
    「ガアアアアアアッ」
     いや、続かせなかった。手負いの獣が凶暴さを増したのだ。
    「っても、身を挺してここまで繋いでくれてるみんなのことを考えるとアレだし」
     各々が認識するピンチと現状にはまだ差があろうとも、仲間が倒れればソレを意識してしまうのはやむを得ぬこと。
    「けどなぁ、頭に血が上ったなら冷静な防御なんて出来ひんやろ!」
     だが、灼滅者達は窮地に陥ると諦めた訳でも勝てないと見た訳でもなかった。ジェット噴射と共に飛んだ文がしかけ。
    「ガアッ」
     金属同士が削り合うのにも似た音を立て、突き出した五連粉砕爪の先端が出現した大盾の表面を滑る。
    「っ、これだけ凶暴になって尚――」
    「グルアアアアッ」
     一撃を受け流した炎獣が吼えた。全てを焼き尽くさんとするかのように燃える赤眼と文の目が合い。
    「あかん」
     と漏らす暇すらなかった。
    「させ――」
     ん、とまで言い終えることなく、飛び出した碧の身体が宙に舞う。
    「ガアアアッ」
     そして、直後に白と灰の虎は苦痛の咆吼を上げた。
    「花藤……てめぇ」
    「ワタシ……」
     弾かれたように幾人かが見る先にいた焔は無機質な動きで、ハイシマの身体に突き立ったイクス・アーヴェントを引き抜く。闇堕ちによって威力の跳ね上がった一撃はイフリートへ深手を負わせ。
    「すまねぇ」
     短い謝罪の言葉と共に三成は再度指先に集めた霊力で味方を癒した。戦況は覆った。これでおそらく勝ちは揺るがないだろう。だが、払うことになった代償は、あまりにも大きかった。

    ●決着
    「ガアアアッ」
     突如出現した、強力な敵。
    「花――」
    「損傷、軽微」
     焔をそう認識した白と灰の虎が前足を叩き付ければ、獲物を盾にしつつ吹っ飛ばされたは何事もなかったかのように起きあがる。機械的に一番ダメージの少ない受け方を選び、自ずから吹っ飛ばされることで衝撃を殺したのだろう。
    「ギャウッ」
    「それはそれとして、よそ見は感心せんね」
     血でも払うようにたった今虎イフリートを斬りつけた解体ナイフを一振りしてジュラルは言い。
    「ここまでして貰ったんだ……決めさせて貰う!」
    「終わらせましょう」
     ただじっと何体ものイフリート達が成り行きを見守る中、忍魔が湯里が、干からびた地底湖の底を蹴って飛ぶ。
    「グ」
     絶叫をあげる事すら能わない。オーラに飲まれたハイシマはオーラごと【鋸引鬼】斬魔に断ち切られ。
    「灼滅」
    「あ」
     まだオーラの中に見えていたシルエットを焔は両断し。そのまま一人去って行く。
    「っ」
     何とも言えない表情でその背を見ていた文が顔を上げたのは数秒程の血のこと。
    「さぁ、やること終わったなら……とっとと帰ろうか……後の事は、落ち着いてから、考えようか」
    「そう、ですね……抑えてくれているとは言え、護衛のイフリート達は無傷ですし」
     振り返る文へもとに戻った三成は応じると、倒れていたジェフの身体を抱え上げた。
    「戻りましょう、学園へ」
    「ええ」
     来る時より数を一人減じつつも強敵を倒し、一同は帰路へ付く。激しい戦いではあったが、この勝利が明日に繋がると信じて。


    作者:聖山葵 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:花藤・焔(戦神斬姫・d01510) 
    種類:
    公開:2016年10月12日
    難度:難しい
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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