「……みんな、垓王牙大戦お疲れさま。ガイオウガの灼滅にはあと一歩及ばなかったけど、ガイオウガも大きなダメージを受けて、今は回復に専念してるみたい。……あの巨大なイフリートをそこまで追い込んだだけでも、すごいこと」
鶴見岳から帰還した灼滅者達を、神堂・妖(目隠れエクスブレイン・dn0137)はそう言って出迎えた。だが、続けて妖が告げたのは、より絶望的な事態だった。
「……今ガイオウガは回復の為に、日本各地の地脈から『ガイオウガの力』を集めようとしてる。……もし、日本中の『ガイオウガの力』が、復活したガイオウガの元に集まれば、ガイオウガは最盛期の力を取り戻してしまうかもしれない」
でも、と妖は灼滅者一人一人に目を向ける。
「……日本各地の地脈を守る、『ガイオウガの力』の化身……強力なイフリートを灼滅すれば、そのような事態を防げるかもしれない」
それは、激戦を潜り抜けてきたばかりの灼滅者にとって、過酷すぎる任務だろう。だが、エクスブレインである妖には、他に頼るべき者もない。
「……でも、この戦いに身を投じるのは、私達だけじゃない。……仲間は、いる」
妖の言葉に、何人かの灼滅者ははっと顔を上げた。
「……強力なイフリートの周囲には、多数のイフリートが守りを固めてる。……けど、このイフリート達は、垓王牙大戦で救出に成功した『協調するガイオウガの意志』の力で戦闘の意志を無くして、無力化する事ができる」
そう。垓王牙大戦で敗北したとはいえ、やってきたことの全てが無駄だったわけではない。
「……でも、この意志の力も、強力なイフリートには影響を与えられない。……だから強力なイフリートについては、灼滅者の手で撃破する必要がある」
また、戦闘の意志を抑えるためには、イフリートの戦意を刺激しないように、少数精鋭で戦いを挑む必要があるのだという。
「……これは、かなり危険な任務。……場合によっては、闇堕ちをする覚悟も必要になるかもしれない。……でも、できればみんな、無事に勝利して帰ってきてほしい」
妖は切実な様子でそう言葉にすると、倒すべき『強力なイフリート』について説明を始めた。
「……みんなに倒してもらいたいのは、『蒼炎の暴魔竜』の二つ名を持つゼノザギラという竜種イフリート。……肉食恐竜T・レックスのような姿のイフリートで、その全長は10メートル近い」
ゼノザギラは、その巨体と怪力を生かした攻撃を得意とする他、蒼炎という二つ名の由来ともなった超高温の蒼い炎を口から吐くのだという。
「……体が大きい分動きは遅いから、攻撃は当てやすいと思うけど、恐ろしい相手。くれぐれも気を付けて」
なお、戦いの舞台となるのは地下の地脈周辺の大空洞だ。
「……道案内は、協調の意志を持つイフリート達が行ってくれるから、迷うことはないはず」
ちなみに協調の意志を持つイフリート達は道案内を終えた後は、取り巻きのイフリートを無力化すべく力を尽くしてくれるという。
「……だからゼノザギラとの戦いには手を貸してもらえないけど、その分みんなはゼノザギラとの戦いに集中できるはず」
一通り説明を終えた妖は、再び灼滅者一人一人に目を向けていった。
「……ゼノザギラは、恐ろしい相手。無傷での勝利は難しいかもしれない。でも、この敵に打ち勝たないと、復活したガイオウガを止める事は誰にもできなくなる。……無茶なお願いかもしれないけど、皆、無事に戻ってきて」
そう言って、妖は祈るように胸の前で手を合わせた。
参加者 | |
---|---|
垰田・毬衣(人畜無害系イフリート・d02897) |
穂照・海(夜ノ徒・d03981) |
伊庭・蓮太郎(修羅が如く・d05267) |
不動峰・明(大一大万大吉・d11607) |
エリノア・テルメッツ(串刺し嬢・d26318) |
ファム・フィーノ(太陽の爪・d26999) |
真波・悠(強くなりたいと頑張るココロ・d30523) |
月影・黒(涙絆の想い・d33567) |
●地下空洞の巨竜
とある山脈の地下深くに、その大空洞はあった。
今、その大空洞内には、無数のイフリート達が布陣していた。その中央に控えるのは、全長10メートルに達しようかという巨竜だった。
『ギャガアッ!』
その巨竜――蒼炎の暴魔竜ゼノザギラが、地下空洞全体を振るわせるような咆吼を上げた。表情の読めぬ爬虫類のような瞳に映るのは、この大空洞に侵入してくる協調派のイフリート達と、その後に続く灼滅者達の姿。
「取り巻きの無力化よろしくなんだよー。一緒に帰れるよう、気を付けてね」
垰田・毬衣(人畜無害系イフリート・d02897)の呼びかけに黙って頷くと、4体の白いライオン型イフリート達は、取り巻きのイフリート達の前に立ちはだかった。両者がにらみ合う中を、灼滅者達はゼノザギラの巨体目指し、疾駆していく。ゼノザギラが、灼滅者を迎え撃つべく、その太く長い尻尾を振り上げた。
「かっこいいライオンのイフリートさんも頑張ってくれてるんだし、絶対勝つ!」
だがその尾が振り下ろされるよりも、真波・悠(強くなりたいと頑張るココロ・d30523)が妖の槍から氷柱を撃ち放つ方が速かった。氷柱は狙い違わず、巨竜の額に直撃する。だがゼノザギラはうるさそうに軽く頭を振っただけで、振り上げていた尾を勢いよく振り下ろしてきた。狙われたのは、先頭を駆けていたエリノア・テルメッツ(串刺し嬢・d26318)だ。しかし、その尾がエリノアに届くことはなかった。素早く前に出た穂照・海(夜ノ徒・d03981)が、構えた龍砕斧で尾を受け止めていたからだ。
「ヒノコ達の気持ちに応えるんだ……! やられはしない」
かつて交流を持ったイフリート達への想いを胸に、必死に尾を止めようとする海だったが、巨竜の怪力は、予想以上だった。海の体は尾の重さと勢いに押され、ずるずると後退していく。それでも、巨竜の一撃目を、防いだのは大きい。
「ガイオウガの力の化身が相手でも、今回は負ける訳にはいかないわ」
庇われたエリノアが、妖の槍に捻りを加え、全力でゼノザギラの尾に突き立てた。
『ギャオオオン!!』
悲鳴のような咆吼と共に、海を押し込んでいた尾の力が弱まる。
「『決死戦になる』とは前々から聞かされてはいたが、前評判に違わぬ強敵だな」
その隙に、伊庭・蓮太郎(修羅が如く・d05267)が、尾の下に体を滑り込ませた。
「ならばこそ、まずは守りを固めさせてもらう」
そして、広域を覆うエネルギー障壁を展開し、一気に尾を跳ね除ける。ゼノザギラが一瞬バランスを崩した隙を逃さず、ファム・フィーノ(太陽の爪・d26999)がトーテムポールから放った光条が、ゼノザギラの瞳を直撃していた。普通であれば瞳が潰れるか、激しい光で視力を失っても不思議ではない一撃。だがゼノザギラは、直撃を受けた瞳で何事もなかったようにファムを睨みつけていた。
(「アタシね、ホントはガイオーガさんとも、ゼノザギラさんともナカヨクなって、お遊びしたーい」)
その視線を受けてもなお、ファムが心に願うのはその一点。だが、ならばこそ、絶対にここで負けるわけにはいかない。
「やはり、地道でも確実に、ダメージを積み重ねていくしかないか」
不動峰・明(大一大万大吉・d11607)が火石槍を振り抜けば、放たれた氷弾が、ゼノザギラの腹部に突き刺さる。例え一撃で大きな傷を与えられなくとも、体内に侵入した氷は刃となり、巨竜を徐々に蝕んでいくはずだ。
『ギャガオオオッ!!!』
ゼノザギラが、再び咆哮を上げた。見れば、その口内から蒼い炎が漏れ出ている。
「! ホノオ、くるよ!!」
巨竜の動きを注視していたファムが警告の叫びをあげた、その時。
「炎を吐く直前はやっぱり動きが止まるね」
いつの間にかゼノザギラの足元に回り込んでいた月影・黒(涙絆の想い・d33567)が、その柱のように太い脚を、血獄刀・涙絆の血色の刃で切り付けていた。しかし、ゼノザギラは痛覚を持たぬかのように、そのまま口を大きく開いたかと思うと、二つ名の由来となった蒼炎を吐き出していた。炎はまず足下の黒を舐め、次いでゼノザギラの頭部の動きに合わせるように、灼滅者達を薙ぎ払っていく。
炎が止んだ時には、一気に体力を削られた灼滅者達の姿が、そこにあった。特に、咄嗟にエリノアを庇っていた明の傷が深い。
「後方から全力で支えるんだよ!」
毬衣の放った聖なる風が、炎の直撃を受けた灼滅者達にまとわりつく炎を鎮火していくが、その傷を癒しきるまでには至らなかった。
「蒼炎の暴魔竜、か。厳しい戦いになりそうだ」
明は自ら傷を癒しながら、その瞳にバベルの鎖を集中させていく。わずかな勝機を、見逃さないために。
●荒れ狂う暴魔竜
「来るぞ、穂照」
「ああ」
明の指摘を受け身構えた海に齧り付かんと、ゼノザギラの巨大な頭部が迫る。すでに、かわす余裕はなかった。
巨大な顎門が海を嚙み砕こうと閉じられる。だが海は、全身にオーラを展開し、辛うじてこれを耐えた。
(「うわあ、やっぱり恐竜だー! めっちゃ強そう♪」)
いかにも恐竜らしい戦い方に、悠は内心で歓声を上げつつも、自らの為すべきことは忘れていない。己の影の先端を刃に変じると、高く跳び上がりゼノザギラの顎に切り付けた。
「これだけ体が大きければ、外しようがないね」
黒も、自らの右手に柄を巻き付けた黒鎌・怨嗟を振るい、暴魔竜の顎を切り裂く。2人の攻撃に顎の力が緩んだ隙を見計らい、海はゼノザギラの口内に向け氷柱を撃ち出し、その反動を利用して顎門から脱出した。
「追い打ち、いくよー」
直前に顎に受けた傷の影響か、獲物に逃げられても口を開いたままでいるゼノザギラの口内を狙い、ファムが黙示録砲を放つ。その一撃は狙い違わず巨竜の口の中に吸い込まれていき、そして、ゼノザギラの頭部が大きくのけぞった。口内で、光弾が炸裂したのだ。
『ギャオオオン!!』
流石にこたえたのか、ゼノザギラが絶叫を上げる。と、その雄叫びに呼応するように暴魔竜の周囲の大地がひび割れ、溶岩が噴き上がった。そして溶岩は次々とゼノザギラに降りかかる。通常の生物であれば致命傷となり得る灼熱。だがガイオウガの化身たるゼノザギラにとっては、何物にも勝る妙薬なのだろう。その体に受けた傷がみるみる癒えていき、それと共に全身に埋め込まれていた氷が解けていく。
「これだけ頑丈だと、短期決戦は難しいか」
難敵だけに、できれば短期決戦をと考えていた海だったが、相手の巨体ゆえのタフさを見せつけられた今、考えを改めざるを得ない。加えて、巨体から繰り出される一撃はどれも威力が高く、前衛といえど自ら回復していかねば、追い付かなかった。必然、その分攻撃の手数が減ることになるのだ。だが、それはゼノザギラとて同じこと。今のように回復に回れば、その分だけ猛攻は止む。
「我、死地に踏み入り、心清浄ならん。どのような難敵であろうと、ただ闘うのみよ」
蓮太郎は、最初から覚悟を決めてここに臨んでいる。例え長期戦になろうとも、一歩も退くつもりはない。
「ゼノザギラとか言ったか! こちらを向け!」
頭部の傷も癒え、再び動き始めたゼノザギラの眼前に敢えて走りこむと、挑発するように叫び、拳を構えた。
「シッポ、危ないよー!」
ファムの声に、守りを固める蓮太郎。だが、尻尾が襲い掛かったのは、後方で仲間の回復に専念していた毬衣だった。
「しまった!」
想定外の動きに、常に後衛にも意識を向けていた明ですら、わずかに動きが遅れた。その間に、尾は毬衣の小柄な体を強打する。
「あいたた……、今のは効いたんだよ」
吹き飛ばされ、地面に叩きつけられながらも、毬衣は指先に集めた霊力を自らの体に流し込み、なんとか立ち上がる。
「あいつ、狙いは完全に無差別なのか」
相手の動きを探っていた黒は、ゼノザギラの行動をそう理解した。例えるなら、ゼノザギラは天災のようなもの。恣意的に誰かを狙うことはなく、不作為に襲い掛かる。
「つまり、頭悪いってことだよね!」
悠は楽観的にそう解釈したが、それが灼滅者達にとってよいことなのかどうか、判断は難しかった。
「なんにせよ、ここで確実に倒しておかなくちゃ。最盛期のガイオウガと殲術再生弾無しで戦うなんて御免だもの」
だから相手の動きは関係ないと、エリノアは跳び上がり、ゼノザギラの腹部に無数の拳を叩きつけた。どんなに強大な相手でも、ダメージを蓄積していけば、いつかは倒せるはずだから。
●覚醒する闇
『ギャガオオオッ!!!』
ゼノザギラが、暴魔竜という二つ名を体現するかのように、荒れ狂っていた。その巨体で駆け回るだけで、まるで暴風が吹き荒れたような惨状が巻き起こる。
「エリノア、危ない!」
ゼノザギラの進路上にいたエリノアを咄嗟に突き飛ばした海は、代わりに巨竜の突進をまともに喰らてしまっていた。
「だが、それでも……、僕はその意思を否定する!」
しかし、海が構えていた龍砕斧は、ゼノザギラの突進の勢いも利用して、その脛を深く切り裂いている。
「暴魔竜だって、相当弱っているはずなのに」
庇われたエリノアも、駆け抜けていったゼノザギラの背後から、氷弾を叩きつけた。自分達が体力を大きく削られているのと同じように、ゼノザギラもかなりのダメージを受けているはずだ。だが巨竜は、痛覚が相当鈍いのか、一向に動きが衰えない。
「! また炎を吐く気だ、気を付けて!」
暴魔竜の口元から蒼い炎が漏れ出ているのに気付いた黒が警告を発した直後、ゼノザギラの口が大きく開き、蒼炎が吐き出された。その炎の狙いは、後方に控えるファムと、毬衣。
「同じミスは、繰り返さん!」
そして、いち早く反応したのは、明だった。明は毬衣を庇うように立ちはだかると、その背中で超高熱の蒼炎を受け止める。
「ここで回復役の垰田を失うと、総崩れになる、からな」
毬衣の無事を確認した明の体が、くずおれた。これまで誰よりも仲間を庇い続けてきた明の体力が、とうとう限界に達したのだ。
「明、しっかりするんだよ!」
毬衣が明の体を揺さぶるが、既に明は意識を失っているようで、反応はない。
きわどい均衡を保っていた彼我の戦力バランスが、崩れた。
「ボクが代わりに前に出るよ!」
悠が、明の抜けた穴を埋めるべく、前衛に出る。だがその間も、ゼノザギラの猛攻は止まらない。
(「いざとなれば、闇堕ちをしてでも、食い止める」)
海はゼノザギラの猛攻から仲間を庇いながら、そう決意を固めていた。もし闇堕ちしても、仲間が救出してくれると信じているから。
だが次の瞬間、海にゼノザギラの尾の強烈な一撃が、叩き込まれた。それは、残り少なかった海の体力を根こそぎ奪い去っていくのに充分な、致命的な一撃で。暴魔竜は、闇堕ちする暇すら、与えてくれなかった。
「これはさすがに、厳しくなってきたかな」
血獄刀・涙絆でゼノザギラの牙を1本砕いた黒だったが、それでこの劣勢が覆せるものでないことは理解している。
「それでも、塵も積もればなんとやら精神で!」
悠の戦法は、戦況や自分の立ち位置が変わっても変化することはない。ひたすらにゼノザギラを氷漬けにするべく、氷弾を撃ち込んでいく。
「アタシも、前、いくよー!」
その間に、ファムも前衛に加わっていた。
「もう、誰も倒れさせないんだよ!」
毬衣の放った聖なる風が、仲間たちの傷を癒していく。だが、サイキックをもってしても癒しきれぬ傷が、全員の体を蝕んでいる。もはや、次に誰が倒れても不思議ではない状態だった。
そして今、ゼノザギラの巨大な顎門が、黒を噛み砕かんと迫っていた。
「やらせるものかよ」
だがそこに、WOKシールドを展開した蓮太郎が割って入る。ゼノザギラの巨大な口腔は、蓮太郎を丸呑みすると、ガシッと閉ざされた。
「この、蓮太郎さんを放せー!」
悠が解体ナイフをゼノザギラの下顎に突きつけ、そのままジグザグに切り裂いていくが、暴魔竜は意に介さず、首を大きく持ち上げていく。そして――、
『……善きかな』
ゼノザギラの口腔の内から、そんな言葉が聞こえた次の瞬間。ゼノザギラの顎が、吹き飛ぶかという勢いで開かれた。
そして中から現れたのは、蓮太郎であって蓮太郎でないモノ。上半身の衣服が弾け飛び、腕部が異様なまでに膨れ上がったその姿は、まさにアンブレイカブルのものだった。
「墜ちたのか、蓮太郎君……」
黒とて、敗北を喫するくらいならば闇堕ちをする覚悟はあった。だが、いざ実際に仲間が闇堕ちしたのを見ると、やはり無念さが込み上げてくる。
蓮太郎は、それぞれに自分を見つめる灼滅者達にニヤッと笑いかけると、
「我、闇に惑いて心清浄ならん!」
顎を砕かれ、悶絶するゼノザギラに飛びかかっていった。
●燃え尽きる蒼炎
蓮太郎が闇堕ちしたことで、形成は逆転した。
「このような善き敵を喰い残して、逃げることなどできるものかよ!」
蓮太郎の手刀が、鱗に覆われたゼノザギラの巨体を、いとも容易く切り裂いていく。
「もう、回復する暇は与えないよ! 氷漬けだ氷漬け!」
蓮太郎に続けと、悠は妖の槍から連続して氷柱を撃ち出して巨竜に打ち込んでいき、
「ゼノザギラさん、ズタズタ、するよー」
ファムはトーテムポールをチェーンソー剣に持ち替え、ゼノザギラの腹部に鋭利な傷を刻んでいった。
『ギャオオオンッ!!』
だが、それでもゼノザギラは戦意を失わず、顎が砕けて開きっ放しになった口から、蒼炎のブレスを放つ。
「みんな、もう少しの辛抱なんだよ!」
その炎に対抗するように、毬衣がクルセイドソードを振りぬけば、巻き起こった風が蒼炎をわずかなりとも吹き散らした。
「いい加減に、倒れてくれないかな」
そして、蒼炎を裂いて飛び出したのは黒だ。黒鎌・怨嗟を構えて大きく跳び上がると、そのまま鎌の切っ先をゼノザギラの瞳に突き刺した。
『ギュエエエエエッ!!』
片目を潰されたゼノザギラは、狂乱したように暴れ狂う。そんな中、エリノアは冷静にゼノザギラの動きを見極めると、妖の槍を水平に構えた。
「慄け暴魔竜、今宵はお前が串刺しよ!」
そして、全身をバネに変えて大地を蹴る。妖の槍は、狙い違わず、暴魔竜ゼノザギラの喉に突き刺さっていた。
喉に空いた穴から、蒼炎が漏れ出る。そして噴き出した炎は、たちまちのうちにゼノザギラ自身の身を、焼き尽くし始めた。
「終わったか。ならば、もはやこの地に用はない」
ゼノザギラの巨体が轟音と共に倒れたのを確認すると、蓮太郎はくるりと暴魔竜に背を向け、ゼノザギラの取り巻きと協調派のイフリートが睨み合う中を、平然と歩み始めた。
そんな蓮太郎にファムは、
「いってらっしゃーい」
と笑顔でお気楽に手を振る。いつかきっと、絶対に帰ってきてくれると、そう信じて。
作者:J九郎 |
重傷:穂照・海(両刃飛翔・d03981) 不動峰・明(大一大万大吉・d11607) 死亡:なし 闇堕ち:伊庭・蓮太郎(修羅が如く・d05267) |
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種類:
公開:2016年10月12日
難度:難しい
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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