炎獄の楔~猛りし焔虎

    作者:ねこあじ

     戦いの余韻を感じる暇は、無かったように思える。
     ある者は炎猛る戦場の熱を逃さんと拳を握りしめ、ある者は次の一手へと向きあうべく目を閉じ思考を切り替えていた。
     そして、
    「連れてきたよ」
     と、新たに合流した灼滅者達が五十嵐・姫子(大学生エクスブレイン・dn0001)へと声をかけた。
     合流した灼滅者達の後を、四体の猫型大型獣のイフリートがついてくる。
     あれは……と他の者が思ったその時、姫子が説明を始めた。
    「まずは、垓王牙大戦に赴いた皆さん、お疲れ様でした。
     結果、ソロモンの悪魔とご当地怪人達を退け、そして皆さんの決死の奮闘によって、ガイオウガも深く傷つき回復に専念する状況となったようです。
     ガイオウガは、回復のために、日本各地の地脈からガイオウガの力を集めようとしています。
     もし、日本中のガイオウガの力が、復活したガイオウガの元に統合してしまえば、ガイオウガは最盛期の力を取り戻してしまうでしょう。
     この事態を防ぐために、皆さんには日本各地の地脈を守る、ガイオウガの力の化身――強力なイフリートの灼滅をお願いしたいのです」
    「強力なイフリート……」
     灼滅者の言葉に、姫子はただただ頷いた。説明を続ける。
    「強力なイフリートの周囲には、多数のイフリートが守備を固めているようです。
     このイフリート達は、垓王牙大戦で救出に成功した『協調するガイオウガの意志』の力で戦闘の意志をなくして、無力化することが可能になっています」
     協調するガイオウガの意志――それは、垓王牙大戦で切り離したガイオウガの一部だ。
     学園に撤退後、この尾から多数のイフリートが現れ、灼滅者に協力せんとしている。
     それが『彼ら』だ。
     ですが、と姫子は続けた。
     協調するガイオウガの意志の力も、強力なイフリートには影響を及ぼせないため、強力なイフリート達については、灼滅者の手で撃破する必要がある。
     また、周囲イフリート達の戦闘の意志を抑えるためには、イフリートの戦意を刺激しないように、少数精鋭で戦いを挑む必要があり、かなり危険な任務になるだろうということを姫子は言った。
    「場合によっては、闇堕ちせざるをえない状況になるでしょう……」

     強力なイフリートがいる場所は、地下の地脈周辺。
    「その場所への誘導、竜脈への移動については、彼らが行なってくれます」
     彼ら――四体のイフリートを、灼滅者達は見つめた。イフリートは前脚を折りたたんで体の下に差しこんで香箱座りをしていたり、背筋を伸ばしきっちり座っていたりとしている。
    「よ、よろしく」
     灼滅者が声をかけると、野太い猫の声で応じるイフリート。会話はできないようだ。
     誘導ののち、協調の意志を持つイフリート達は、取り巻きのイフリートの無力化をすべく力を尽くすこととなる。そして灼滅者は全力で、強力なイフリートと戦う。
     強力なイフリート――敵は、焔虎マガツホムラ。
     虎を思わせる体躯。尾は重々しく竜種のような鱗に覆われたもので長さがあり、敵はウロボロスブレイドとファイアブラッドに準じたサイキックを使う。
     灼滅者達の雰囲気に、次々と四体のイフリートが身を起こす。戦場へ向かおうとする独特の空気。
    「今回の敵は、無傷での勝利は難しいと思われます。
     ですが、この敵に打ち勝たないと、復活したガイオウガを止めることは不可能となるでしょう……皆さんの勝利と無事を、ここで、祈っています」
     敢えて凛とした姫子の声に、灼滅者達は頷きを返した。


    参加者
    迫水・優志(秋霜烈日・d01249)
    栄・弥々子(砂漠のメリーゴーランド・d04767)
    霧凪・玖韻(刻異・d05318)
    サフィ・パール(星のたまご・d10067)
    御門・心(白の少女・d13160)
    木元・明莉(楽天日和・d14267)
    鈍・脇差(ある雨の日の暗殺者・d17382)
    琶咲・輝乃(紡ぎし絆を宝と想いし者・d24803)

    ■リプレイ


     協調するガイオウガの意志――イフリートたちに案内されて辿り着いた地下空洞内は、行き場のない熱気に満ち、常人ならば一分だろうともたない場だった。
     侵入者の気配に気付いたのだろう。多数のイフリートが瞬時に灼滅者たちを見、動いた。
     警戒し、唸り声をあげ、落ち着きなく歩き回る。
    「……囲まれたようだ」
     霧凪・玖韻(刻異・d05318)は上へと視線を向け、そう言った。新たに現われた数体のイフリートが、岩をゆっくりと伝い下りながら眼下の様子を眺めている。
     灼滅者を囲むイフリートたちよりも二回り、否、三回り以上大きな虎は横臥の状態で、全体の様子を見ていた。
     キリリと引き絞る弓弦のように、緊張と殺気が満ちていく。
    (「大変な状況で……大きな敵の前で足が震える、けど……」)
     栄・弥々子(砂漠のメリーゴーランド・d04767)は小さく震え、その手に拳を作った。
    「友達になってくれるイフリートさんもいるでしょか……?」
     たくさんのイフリートを見て呟くサフィ・パール(星のたまご・d10067)の脚に胴を擦りつけ、前に出るのは、ここまで共に歩んだイフリート。
     四体の協調するガイオウガの意志が各方向へ踏み出せば、敵イフリートたちは警戒のなりを潜め、後退する。
    「助かる。一斉攻撃を仕掛けられたらひとたまりもないからな」
     鈍・脇差(ある雨の日の暗殺者・d17382)が言う。眼光鋭き視線は、焔虎へ固定したままに。
     傍観の位置まで下がるイフリートたちに意識を向けた横臥の焔虎・マガツホムラが尾で地を強く打てば、岩は容易く砕かれた。
    「行こう」
     一挙一動見逃しはしない――洞内に響き渡る音に目を細める木元・明莉(楽天日和・d14267)の言葉に、灼滅者が彼我の距離をつめる。
    『ウウウゥゥ……』
     威嚇するマガツホムラが立ち、鋭く空を切った竜種の尾が振り上げられる。
    「気を付けて!」
     琶咲・輝乃(紡ぎし絆を宝と想いし者・d24803)が声を上げた瞬間、加速した尾が鋭い風圧で灼滅者の体を薙ごうとする。
     牽制か、否!
     今一度上空へいった尾が前衛へと鋭角に切りこんでくる。
    「先へ!」
    「わかりました」
     数歩先に出た明莉の声に応じた刹那、身を低く駆ける御門・心(白の少女・d13160)の目前から彼が消えた。肉を砕く音と重厚な風圧を感じ取りながらも、心は接敵していく。
     迫った玖韻が禍憑を振り上げた。鋼鉄の音が響き、牽制の敵尾が弾かれる。そのまま刃を立てた玖韻は敵胴へ重い斬撃を放ち落とす。
     中段となったの斬撃。そして下からの斬撃を繰り出すのは弥々子。
     合わせた動きで、弥々子が死角から敵の腱めがけて斬り上げれば、敵体内から糸を引くかの如く、炎が舞い散る。
     立ち位置故に二人の攻撃はやや的確に入るのだが、敵は動じる様子もなく近付いた灼滅者を退け、絶え間なく動いていた。
     守護嵐弓を構えた輝乃の動きに、勿忘草色と白を織り交ぜた着流しの裾が舞う。
     弦を引き絞り、左目を眇めて狙いを定めた。白く輝く弓から放たれる一矢が捉えたのは、迫水・優志(秋霜烈日・d01249)。
     尾の動きを注視し、間合いへと入る。
     優志は迫るマガツホムラの前脚を槍柄でいなし、素早い動作で石突と重心を地に預けると重力を宿した蹴りを放った。遠心を活かし、敵懐から離脱する。
     飛び退く仲間の影から跳躍した心のpleasure roundが敵を斬り裂いた。
     取った死角の位置そのままに、胴を蹴り距離をとる心。下方に、斬りこんでいく脇差の姿を見た。
    「手応えはやはり、心許ないように思えますね」
    「そして、隊列への攻撃には注意しておいたほうがよさそうだ」
     優志が応じる。
     決してこちらの霊力やオーラが弱いわけではない。ただ、敵霊力が強いのだ。
     一方。
     多角から次々と繰り出される攻撃に、焔虎が強靭な肉体をもって灼滅者を一人また一人と払い飛ばすのを見てサフィが呟く。
    「近付くの、むずかしそ、です……!」
     大きな体躯に素早い敵は、先の鶴見岳での戦場で対峙した敵頭領たちに似た動き。
     小さな体を利用し、難なく敵懐へ潜るのは霊犬のエルだ。
     サイキックエナジーを喰らうサフィの帯が、鎧の如く明莉を覆う。
     庇いに入ってからの更に一打、自身への攻撃はぶれる視界のなかで直感的に回避へと動いていた明莉は回復を受けながら影を飛ばした。
     エルの浄霊眼を受けた脇差が素早く駆けたのち、敵の死角をとる。
     マガツホムラが振り向く動きに合わせて回りこみ、黒い影の刃で横一文字に斬りつけた。
    「木元の読みは当たっている――が」
     初撃を受け、呼気に血臭が混ざったのを感じながら脇差が呟く。
     轟、と前脚の炎がより燃え盛った。輝乃に振り下ろされようとする攻撃を追い、身をもって少女への直撃を阻む。
     攻撃動作の予測は当たっている。しかしながら、分かっていたことだが焔虎の攻撃の的確さに速度。やはり強敵であった。


    「脚からの攻撃がきます」
     挙動に気付いた心が声を張り上げると、敵の炎が更に猛り四肢を覆っていく。
     尾を使った列攻撃、炎纏う単体攻撃と、積極的に灼滅者を倒そうとする二種の攻撃手段。
     それは灼滅者にとって先が読みやすく、対処もしやすいものだった。
     攻撃対象となったヨークシャーテリア――エルが吠えて合図を送り、方向転換する。
    「がんばる……ですよ」
     駆けるサフィがエルに声をかけながら、ダイダロスベルトを常に操って仲間を癒し守りを固めていく。
     敵がエルに攻撃を仕掛ける動線の最中、雷に変換させた闘気を拳に宿すと同時に踏みこみ、前脚を捉える明莉。
     振り上げた拳が焔虎の伸びた前脚へ打ちこまれ、逸らされた軌道によりエルへの攻撃は浅く入った。
    「大丈夫か」
     明莉の声に応え、エルが鳴く。
     敵の回避能力を削ぐべく、確実に、一撃。
     脇差と心の命中精度を上げた輝乃が一手を挟み、大地に眠る有形無形の畏れを纏って鬼気迫る攻撃を放つ。
     敵の赤炎と輝乃の纏う畏れが交差し、赤炎を散らした。右側の面で咄嗟に炎の残滓を受けたのち、輝乃が敵の懐から走り抜ける。
     初手から意識した敵の回避能力を削ぐ攻撃は、確かに今、効果を発揮し始めていた。
     だが。
    「いまだ、回復行動を起こしていないのが気になるな」
     そう言った優志が黒槍の柄を両の手で長く持ち、槍の妖気を引き出していく。
     常態ならば息をするのも億劫な熱が満ちる空間で、変換された妖気は数多な冷気のつららを作り出し、敵の大きな体躯に向かって射出した。
     肌を掠める冷気。
     対角の位置から弥々子が光の砲弾を放つ。
     冷気のつららと、同時に敵の「業」を凍結する黙示録砲。
     その串刺すような衝撃にぴたりと、一瞬だけ動きを止めた敵へ玖韻と心が斬りこんだ。
     更に間を置くことなく、二撃。灼滅者たちの密な連携は飛ぶ鳥を落とす勢いの如くだ。
    『ヴヴヴ――』
    「何かくる、の?」
     唸る敵を注視しながら死角へ移動する弥々子が言った。
     動きはそわそわとした様子にもとれ、敵の視野から逃れるように距離を詰める弥々子。
     接近する灼滅者から更に飛び退いて一定距離を保つ動きに、間合いとタイミングを計りかねた数秒ののち明莉とエルが敵の懐へと飛びこんだ。
    「鈍! 霧凪!」
    「!」
     跳躍し、後退した焔虎の着地点。
     身を屈め死角へ駆けた脇差が瞬時に殺戮経路を見出し、【黙】を振るう。実体を持たない黒刃が焔虎の炎を、肉を裂き、次いだ玖韻の上段からの斬撃に焔虎が吠声を上げた。
     今一度跳躍した敵が、自身を囲うように尾を巻きつける。
     玖韻を追い、攻撃を仕掛けようとした心がその変動に気付く――柄を長く持った冷気のつららを放つ姿勢からの切り替え。握りの位置をやや前に、浅い踏みこみを深く。
     螺穿槍で敵の胴を穿ち、穂先に力をこめて肉を削ぐように薙ぎ払った。
    「一度後衛にまわり、回復行動か」
     分析する玖韻の冷静な声に、優志もまた呟く。
    「いい具合に疲労感の増すことをしてくれるな……」
     攻撃を防ぐ盾――せわしなく動く尾の隙間を狙い、灼滅者たちが敵に付与された加護を砕き、一撃一撃を入れていくなかで回復行動は二回。
    「でも、チャンスですよ……!」
     そう言った心へ、輝乃の守護嵐弓から矢が放たれた。癒しの力がこもった矢は空間に流星の如き煌きを残し、心の超感覚を研ぎ澄まさせていく。
    「こちらの付与は崩れていない。皆、頑張ろうね」
     輝乃の言葉に、弥々子は頷いた。
     前衛から後衛、二度の回復行動、後衛から前衛へ。
     計4手の間に、灼滅者は態勢を新たに整え、そして焔虎もまた重厚感ある吠声とともに勢いづいていた。
    「攻撃くる、でしょか――気をつけるです」
     サフィの言葉に、子犬らしい声をあげたエルが前衛の灼滅者たちに向かって駆けていく。
     瞬間。
    『オオオオオオオオォォォォ!!!!』
     焔虎が吐き出しうねりをみせる炎の奔流が、その主の吠声をも吸収し、生きる龍が如く猛々しく前衛へと襲いかかった。心が明莉めがけて飛び退く。
     は、と息を吐き出し、サフィが駆け様に身を屈めてダイダロスベルトを繰った。
    (「揺るがないは、自分信じる事」)
    「サフィ、木元を頼む!」
     癒しのオーラが垣間見え、脇差の声が届く。
    (「人を守る為、戦っていると」)
     いわば焔龍。サフィの、巡る炎を避け地を這う低さで走る帯が、耐える庇い手を捉えて覆うのだった。


     灼けた体に巻き付いた尾が鋭く引いた時、凄まじい痛みと共に肉片がもっていかれる。
     中衛へ、続けて後衛と攻撃したマガツホムラは、やがて前衛に狙いを定めた。霊犬のエルは耐えきれずに離脱してしまった。
     焔虎の体力は如何ほどなのか。
     対峙する時間が経つにつれ、灼滅者たちの血肉は敵の熱に煽られるようだ。
     サフィに合わせて回復を行うも、回復できない負傷が蓄積していく。
     それでも冷静さを欠くことなく、敵の一手、仲間の一手を、地表をてらす月光の如く冴え冴えとした眼差しで戦場を見た。
     玖韻の予想ではあと数手、恐らくは前衛が瓦解する。
     敵も状態異常に蝕まれ、今は上手く動けていないようだ。
     地を滑る玖韻の影が接敵した瞬間、一気に膨れ上がり敵を飲みこむ。
    『殲滅……! センメツ……!!』
     玖韻と明莉、そして斬りこむ優志が増やしたトラウマが効果を発揮し、喋りと共に氷破片をまき散らしながら、焔虎は自身を攻撃した。
     だが、暴虐の限りを尽くす破滅の魔獣は攻撃の手を緩めない――。

     一手前の炎纏う一撃は避けた。しかし、
    『オオオオォォォ!!!』
     纏まらない炎。龍のようだった炎は、今や波状となっていたが威力は確かなものであった。
    「脇差!」
     炎に阻まれながらも、輝乃の声が微かに聞こえる。
    「倒れて、堪る……か!」
     庇った心に体当たりし、広がる炎から押し出した脇差の手から影の刀が――サイキックエナジーが途絶え、消える。
     倒れた脇差へ、心が声なき呟きを漏らした。
     そして炎の奔流が収まる前に、槍の妖気を冷気のつららへと変換し、敵の胴を穿つ。
     倒れる様を目にし、弥々子の呼気が震えた。それでも攻撃後の敵の大きな隙を逃すことなく、死角からの斬撃を放つ。
     弥々子の目がもう一人の庇い手を探した。
     二人の残体力は僅差だった――ハッと優志が息を呑んだ。
     熱気満ちる場を切り裂き、稲妻が走る。振り上げた腕、敵胴を穿った拳の戻りは速い。
    「木元……!」
     焔虎へ向いていた天秤が、大きく灼滅者側へと傾いた。
     自身の死を前に、闇堕ちを決断した明莉の目は青へと変化している。
    「過度な無理はするな。闇に堕ちた状態で倒れれば、命は無い」
     焔虎を追う玖韻の言葉に、明莉は頷き、
    「誰も死なせない、勝利を掴み、生きて戻る」
     瞳揺らぐ輝乃にもその声が聞こえた。戻るすべは、一度分かたれるけれども。
    「回復しますです。……エル。守るをお願いする、ですよ」
     心を癒しながらサフィがエルを呼び、戦線へ復帰させた。

     何分経っただろう。
    『ウウウゥゥ……』
     著しく回避能力の落ちた焔虎へ、螺旋の如き捻りを加えて黒槍を突き出す優志。穿った胴から炎が噴出するも、今一歩を踏み出し、突いた状態から斬り払った。
    「そろそろ、倒れてくれないか……!」
     炎の残滓が穂先に燻っている。
     輝乃と優志もまた、ダメージが蓄積しはじめている状態だった。
     ガガッと地面を敵の足が穿つ。よろめくような動きに、
    「あと少しでしょうか」
     熱を払ってしまうほどの激しい風の力。降ろしたカミの力で、渦巻く風の刃を生み出す心が敵を斬り裂いた。
    「……っ」
     天地を駆ける力を与えるミサンガ。流星の煌きと重力をこめた蹴りを放ち、輝乃が敵の機動力を更に奪っていく。
     威力が増した三度目の抗雷撃が、敵顎を捉え砕いた。
     勢いに首をもっていかれ、仰け反った焔虎が地に倒れる。
     明莉は引く己が拳を見た。一手また一手と重ねると、一人また一人と大事な人たちの記憶が消えていく。
    『ギャウゥゥ……ォォ……』
     倒れたまま足掻き、尾を振り回す焔虎が起き上がる前に、サフィと玖韻が攻撃をしかけた。
     大気中のエナジーを駆動力に、夜空を行くような流星の煌きを宿した飛び蹴りに続いてエルが斬魔刀で腹を見せる敵へ駆け、斬りこむ。
     背から斬撃を放った玖韻が再び攻撃をしかけ、放った影で敵を覆った。
    「これで終わらせる、の……!」
     弥々子のクロスグレイブが、肩を軸にして振り落とされる。
     肉を破壊する音。敵首を狙った叩き潰しに、溶岩のようなどろりとした塊が流れ出してびくりと焔虎が震えた。
    『……セン、メツ……』
     ヒュ、ヒュ、と空気の抜ける音を鳴らしながら言う焔虎が三拍後、静かになる。
     勝利を手にしたのは灼滅者。
     ガイオウガの力の化身、その一体である焔虎・マガツホムラの灼滅されたのだった――。

     傷ついた体を引きずり、協調の意志を持つイフリートたちと共に地下空洞を離脱する。
     離れれば無力化されていたイフリートたちは動きだすかもしれない。
     そう思い至り、ふと周囲を見回した時、既に明莉の姿は場から消えていた。

    作者:ねこあじ 重傷:鈍・脇差(ある雨の日の暗殺者・d17382) 
    死亡:なし
    闇堕ち:木元・明莉(楽天日和・d14267) 
    種類:
    公開:2016年10月12日
    難度:難しい
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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