「垓王牙大戦の戦いはお疲れさま。後一歩というところで残念な結果になってしまったけれど、ガイオウガも深手を負って回復に専念する状態にあるみたいだね」
疲労を浮かべる灼滅者達に、能登・誠一郎(大学生エクスブレイン・dn0103)が励ますように声をかける。
「ガイオウガは回復する為に、日本各地の地脈からガイオウガの力を集めようとしているんだ。もし日本中のガイオウガの力が集まり、ガイオウガと統合してしまえば、ガイオウガが最盛期の力を取り戻してしまうんだ」
険しい顔で誠一郎が事件の説明を読み上げる。
「そうなる前に、みんなに日本各地の地脈を守るガイオウガの力の化身である、強力なイフリートを倒して欲しいんだ」
今ならば敵が動き出す前に介入する事が出来る。
「強力なイフリートの周囲には、他のイフリート達が守備を固めているみたいなんだけど、このイフリート達は、垓王牙大戦で救出に成功した『協調するガイオウガの意志』の力で戦闘の意志を無くしているよ」
この意志の力も強力なイフリートには影響を及ぼせない。強力なイフリートは灼滅者の手で倒さなくてはならない。
「それと、戦闘の意志を抑えるためには、イフリートの戦意を刺激しないように、少数精鋭で戦いを挑む必要があるんだ。少数で強力なイフリートと戦うのは危険な任務だよ。闇堕ちをしなければ倒せないかもしれない……でもみんななら上手くやり遂げる事も可能なはずだよ」
誠一郎は真剣な目で灼滅者を見渡した。
「場所は地下にある地脈周辺での戦いになるよ。そこまでの移動は協調の意志を持つイフリートがやってくれるみたいだ。何もない空間での戦いになるから、人を巻き込む心配も無いよ。だから戦いのみに集中してほしい」
お膳立ては整っており、敵との戦いだけに全力を注ぐ事が出来る。
「敵は巨大な炎を帯びた獣、獅子に近い姿をしているよ。その牙は人を容易く噛み砕き、爪は鉄をも切り裂くほど鋭いよ。何よりも巨大さに見合わぬ瞬発力を持っているから気をつけて」
肉食の獣らしく狩猟者としての能力に長けている。油断すれば一瞬にして戦闘不能へ追い込まれるだろう。
「今回のイフリートは強くて、厳しい戦いになると思う。だけどこの戦いに勝利しなくては、ガイオウガという更なる脅威を止める事が出来ないんだ。垓王牙大戦から休む間もなく戦いになるけれど、それでも、みんななら何とかしてくれるって、そう信じてるよ!」
頭を下げる誠一郎に、ある者は真剣に、ある者は不敵に笑みを浮かべ、任せろと肩を叩いて戦いの準備へと動き出した。
参加者 | |
---|---|
神坂・鈴音(魔弾の射手は追い風を受ける・d01042) |
華宮・紅緋(クリムゾンハートビート・d01389) |
花檻・伊織(蒼瞑・d01455) |
神宮時・蒼(大地に咲く旋律・d03337) |
識守・理央(オズ・d04029) |
撫桐・娑婆蔵(鷹の目・d10859) |
中川・唯(高校生炎血娘・d13688) |
アデーレ・クライバー(地下の住人・d16871) |
●炎獄
そこは岩肌に灼熱の熱が吹き出る地底。噴き出す炎が赤く岩肌を染め、まるで地獄のような光景だった。
「案内してくれてありがとう」
道案内を終えて去っていくイフリートに、中川・唯(高校生炎血娘・d13688)が感謝の言葉を投げかけた。
広い空間の中央に鎮座する獣。それが灼滅者達に気づき顔を上げた。それは炎を纏う巨大な獅子。
「死闘の幕開けですね。こんなに熱いのに鳥肌が立ってきました」
見ただけで本能的に敵の強さを悟った華宮・紅緋(クリムゾンハートビート・d01389)は、 粟立つ腕を摩る。
「必ず勝って、生きて戻る」
識守・理央(オズ・d04029)は震える足を叩き、逃げ出したくなる心を叱咤する。
「各々の仕事が出来れば何とかなるでしょう」
体操服にコート姿のアデーレ・クライバー(地下の住人・d16871)が、サングラスを外して戦闘態勢に入った。
ゆるりと獅子が立ち上がり、正面を向けた。
「行かせない。なんとしてもここで抑え込むわ。何があっても」
「相手に不足はございやせん。目にもの見せてやりやしょう」
覚悟を決めた神坂・鈴音(魔弾の射手は追い風を受ける・d01042)と撫桐・娑婆蔵(鷹の目・d10859)は、頷き合い一歩を踏み出す。
「……今は、精一杯、やれることを、やります。……協力して、くれた、イフリートさんの、為にも」
この場に連れてきてくれたイフリートに感謝し、神宮時・蒼(大地に咲く旋律・d03337)は迫る戦いの熱気に集中する。まずはと手にした黄色の標識を立て、前衛の仲間達へ耐性を与える。
「ある神話の大英雄は、最初の試練で化物獅子を退治したというけど。それを彷彿とさせる状況だね」
現状を伝説に見立て、花檻・伊織(蒼瞑・d01455)はこれからの激闘を予感する。
『グオオオオォッ』
空気が震えるような雄叫びと共に獅子が駆け出す。一歩ごとに地面が揺れるような圧力が迫る。
「けど、切り抜けさせて貰う――早く帰って新発売のゲームやりたいものでね。いや本当に早くプレイしたいんだよ」
真顔で冗談めいた事を言いながらも、伊織は太刀を抜き放ち神速で前に出て振り下ろす。頭をかち割る軌道と速度、だが獅子は避けずに真っ直ぐに加速し、刃は鍔元で浅く肌を斬る程度で止まった。逆に体当たり伊織を吹き飛ばした。
●猛狂う獅子
『オオオオォッ』
追撃しようと獅子はそのまま駆けて後を追う。
「敵の動きをよく見ていくよっ」
些細な動きも見逃さぬように、立ち塞がった唯は獅子の動きに合わせて剣を構え、振り下ろされる爪の引っ掻きを弾いた。そして返す刃で肩を斬りつける。
「……すぐに、治療、します」
美しい歌声を蒼が紡ぐと、その音色が優しく伊織の傷を癒していく。
「華宮・紅緋、これより灼滅を開始します」
魔力を弾丸に変えて紅緋は指輪から撃ち出す。魔弾は獅子の足を抉り動きを僅かに鈍らせる。
「君の相手はこっちだよ」
敵に考える間は与えないと、伊織はベルトを矢のように撃ち出し反対の足を貫いた。
「攻撃を集中されると危ない、か」
続けて理央も漆黒の帯を撃ち出す。帯は体を捻った獅子の顔を掠めて額から血が流れ落ちた。その視線が理央に向けられる。
『グルォオオ!』
獅子の鬣が燃え盛り、炎の渦が巻き起こって周囲を薙ぎ払う。
「炎が来るわ!」
鈴音はエアシューズの吸気口から空気を噴射し、大きく跳躍すると炎を飛び越えた。
「わたしの後ろへ攻撃は通させません」
仲間の前に出たアデーレはオーラを纏って攻撃を受け止める。気合で負傷を耐え凌ぐが、激しい炎はオーラを貫いてその身を焼き、周囲の仲間にも飛び火して燃え移る。
「そこまでよ」
空中で鈴音は重力を強くする魔法を使い、流星のように落下し飛び蹴りを背中に浴びせた。
『グァッ』
「歯の手入れが出来ちゃいねェようでござんすね」
踏まれ口を広げたところへ、踏み込んだ娑婆蔵が構えた刀を振り抜き、獅子の牙を数本斬り落とした。
『グゥオオオオッ』
苦悶と怒りの籠もった咆哮。獅子は娑婆蔵に向かって突っ込んで来る。
「気をつけて、来るよ!」
唯が敵の動きを潰そうと帯を飛ばすが、獅子は牙で噛み砕き足を止めない。だがほんの僅かに足が鈍った隙に伊織が割り込み、振るわれる爪を太刀で受け止めた。
「重い一撃だね、だが耐えられないほどじゃない」
力を受け流しながら伊織は刃を滑らせるように前足を斬りつける。
『グォア!』
だが反転した獅子の後ろ足が跳ね上がり、伊織の腹部を抉った。伊織はあえて力を抜き、衝撃の逃して後ろに下がる。
「……早く、炎を、消さない、と」
鎮火させる為に蒼は黄色の標識を地面に突き立て、仲間の治療と共に火に対する耐性を与える。
「簡単には見切らせないわよ」
今度は回り込むように駆け出した鈴音はシューズから空気を噴射させて加速すると、火花を散らして背後から回し蹴りを叩き込む。
『グォォッ』
獅子がそれを追おうと足に力を溜める。
「撫桐娑婆蔵――いやさ、『撫で斬り娑婆蔵』たァあっしのことでござんす!」
そこへすれ違い様に娑婆蔵が刀を振るうと、後ろ足を深く斬り裂き刃が骨に達する。がくんと獅子が姿勢を崩した。
「もう負けられない戦いです。私達には後がない。あなたを倒して、垓王牙も灼滅する。機会は今だけ」
紅緋の足元から血のように赤い影が広がり、溺れさせるように獅子を包み込んだ。
「敵は強い、けど……覆す。必ず!」
そこへローラーダッシュで駆け寄った理央は、炎を宿した足で腹を蹴りあげる。
『グガォオオオオッ!』
影を突き破って跳躍した獅子が理央の頭上を取る。
「後ろへは通さないと言ったはずです」
アデーレが獅子の体に影の縄を巻き付け引き寄せる。射程の狂った獅子の爪は空を切った。そこへ魔弾が飛び込み獅子を撃ち抜いた。
「あなたの為に色々と搦め手を用意しておきました。どうです、動きが鈍っては来ませんか?」
敵の反応速度を確かめながら、紅緋が魔弾を撃ち込み神経を麻痺させていく。
「こっちだ! この調子でいけば……!」
勢い良く飛び込んだ理央は蹴りを背中に浴びせ、そのまま背中を押し込むように跳躍して離れる。獅子はそれを逃すまいと振り向く。
「あっしの炎も、負けちゃあいやせんぜ」
駆ける娑婆蔵の足元が炎を帯び、前蹴りで獅子の鼻面を蹴りつけた。
『グゥォッ』
「ここで一気に叩き込むわ」
怯んだところへ、鈴音は右の回し蹴りから左の後ろ回し蹴りと軽やかに連続蹴りを打ち込む。
『グオオオォォ!!』
怒りに獅子は立ち上がるようにして両の前足で鈴音に襲い掛かる。
「危ないっ、間に合えっ!」
飛び込むように割り込んだ唯が、剣で爪を受け止める。だが止め切れなかったもう片方の爪が肩から胸へと4本の爪痕を残し服を赤く染める。その傷口から目晦ましのように炎が上がった。
「このっ」
唯は踏み止まり、剣に炎を宿し獅子の腕を燃やし始めると、嫌がった獅子は一歩引いて爪を振り上げる。
「そうはさせないよ」
その前足に伊織が放ったベルトが突き刺さる。一瞬怯んだ間に唯は距離を取った。
「次はわたしが相手をします」
治療の時間を稼ごうと、アデーレが前に出て先に受けた傷口から酸を撒き散らした。肉が溶ける強酸を浴びた獅子は驚いて間合いを開ける。
「……誰も、死なせたり、しません……!」
急ぎ蒼が光輪を投げると、小さく分裂して宙に漂い敵を妨害しながら唯の傷を癒していく。
●死闘
『グルゥゥゥオオッ!』
炎の鬣が渦を巻き、地獄のような炎の波が駆け抜ける。
「炎が来ます、後ろへ!」
気合を入れて体を活性化させながらアデーレが前に出て盾となる。少しでも仲間の被害を減らそうとその身を灼熱の炎に晒す。
『グォォッ』
その炎を突き抜け、獅子が眼前に飛び出す。アデーレは咄嗟に腕を砲台に変えて光線を叩き込む。直撃を受けながらも獅子はアデーレの脇腹に牙を突き立て、肉をこそぎ獲った。
クチャクチャと口を動かし、灼滅者達を見回し歯を剥き出しにする。
「誘ってるつもりなの? なら行ってあげるわ」
鈴音が突っ込むと待ち構えたように獅子が爪を振るう。だが鈴音はシューズの噴射で急停止し、空振りしたところへ槍のように顔面に蹴りを放った。
「……これ以上、攻撃を、受けるのは、危険、です!」
歌でアデーレの傷を治療した蒼が、癒えぬ傷跡を見て忠告する。
「ふふ、死線の上で遊ぶのも楽しくなってきましたよ」
戦いの高揚に笑みを漏らしながら、紅緋は場所を転々と変えて死角に回り込み、伸ばした影の刃で獅子の腹を斬りつける。
鬱陶しそうに獅子は間合いを取り、獲物を狙うようにじりじりと動き、一気に紅緋へと跳び掛かった。
「強い、けどどんな強敵だろうと背中は向けられないからね」
伊織は太刀で敵の爪を受け、衝撃に仰け反りながらも蹴り上げ、腹に爪先をめり込ませた。苦悶に顔を歪めながらも獅子は押し切り伊織に馬乗りになり、その牙を首筋に向ける。だが咄嗟に差し込んだ左腕に噛み付く。牙が骨を砕き、腕が食い千切られそうになる。
「怖いなんて、言ってられない!」
それ以上はさせないと理央は巨大な十字架砲から光線を撃ち、一瞬にして獅子の顔を凍結させる。どんどん広がる凍結から逃れる為獅子は牙を抜いて離れる。
「撫で斬りにしてやりまさァ!」
そこへ娑婆蔵が刀を振るい、爪ごと指を斬り飛ばす。
『グゥオオアア!』
怒った獅子は牙を娑婆蔵に突き立てようとするが、その前に唯が剣で受け止める。しかし横薙ぎに爪が振るわれ、腰に食らった唯は宙を飛び地面に叩きつけられた。
「このくらいじゃ負けないよっ」
唯が大きな声で気合をいれ、傷口を手で押さえながら起き上がり自らの傷を癒す。
『グルゥゥゥ』
弱った者から始末しようと獅子は狙いを定める。
「搦め手が効いてもまだこの力、流石に強いですね」
そこへ紅緋が風の刃を放ち胴を斬り裂いた。そして足を止めずにすぐに射線を変える。すると先ほどまで居た位置に炎の渦が叩き込まれ、熱風で紅緋は吹き飛ばされる。
『グルゥッグルルゥゥッ』
喉を鳴らすように鳴いて獅子は目を細めた。
「……勝ったつもり、かな? まだ、立てるよ」
血を流しながら太刀を杖にして、伊織は左手をだらりと下げたまま立ち上がる。すると弱った獲物を仕留めるように獅子が押し倒そうとしてくる。
「絶好の好機とあって大振りになりやしたね」
娑婆蔵が刀を下から斬り上げ、左前足を斬り飛ばした。バランスを崩した獅子が顔を地面にぶつける。
「こんな所で負けられないのよ」
その隙に鈴音は右左と連続蹴りを打ち込む。そして最後にトンッと跳んで右の回し蹴りを浴びせた。
『グルルゥッガァ!』
「手負いの獣ですか、でもそれはこちらも同じです」
残った右前足で体を支えた獅子が砲弾のように突っ込んでくる。それをアデーレが受け止めた。強い衝撃に傷口が開く、そこから発する酸を至近距離で浴びせ獅子の顔を溶かした。相打ち覚悟の攻撃。獅子は顔をぐずぐずにしながらも一歩も引かずにアデーレの体を頭を振って弾き飛ばし、その意識を刈り取った。
「ちくしょう……負けたくない」
仲間が倒れたのを見て諦めの心が疼く。だが歯を食いしばり理央は手を振る。縦横に鋼糸が獅子に襲い掛かり体を切り刻む。
「後少し、敵だって弱ってるんだっ」
横から唯が剣を脇腹に突き立て、炎を纏わせ内部から体を焼き付ける。
「……まだ、みんなが、戦って、います。……最後まで、諦め、ません……!」
治療が追いつかぬ負傷でも、蒼は声の限り歌って治療を続ける。仲間同士の信頼と連携が戦線の崩壊を防いでいた。
獅子は全身傷だらけになっていたが、それと同じように灼滅者も傷だらけだった。
『オオオオオゥッ!』
「任せてっ!」
敵の行動を察知し、放たれる炎の渦に唯が立ち向かう。仲間の盾となって全て受け止めると耐え凌ぐ、だがついに体力の限界に達し、炎が途切れると力を失い膝から崩れ落ちる。その間にも紅緋が風の刃を巻き起こして獅子の全身を切り裂き、理央が蹴りを腹に叩き込んで燃え上がらせる。それでもまだ倒すには至らない。傷だらけの獅子が次の獲物を狙う。
「次は俺の番かな」
仲間を護る為に満身創痍の伊織が矢面に立つ。だがその背後から娑婆蔵が姿を現した。
「花檻の兄貴にばかり頼る訳にもいかねェ、あっしもカッコつけさせてもらいやす」
覚悟を決めて前に出た娑婆蔵の胸がドクンッと激しく脈打つ。その鼓動が全身に共鳴したように体が震え、肌から血の気が無くなっていく。カッと見開いた目は真紅に染まり、痛いほどの殺気が周囲に放たれる。そこに現われたのは六六六人衆へと闇堕ちした姿だった。
「さァて、その毛並みのいい皮を剥いでやるとしやすか……」
無造作に娑婆蔵は間合いを詰める、すると獅子も強敵と見て牙を剥いた。刃と牙が交差する。刀は獅子の左肩から胴を薙ぎ、牙は娑婆蔵の左太腿の肉を噛み切った。
傷ついた獅子と、まだ墜ちたばかりの娑婆蔵との戦力は拮抗していた。両者は雌雄を決する一撃を放とうと睨みあう。
「バカッ」
それを破ったのは鈴音の怒った声と共に放たれた帯の一撃。その帯は獅子の右目に突き刺さった。そして気を取られたところへ背後から伊織が太刀を薙ぎ、獅子の後ろ足を斬り捨てた。
『グゥゥウオオオオッ』
痛みに猛る獅子、その首が天高く打ち上げられる。娑婆蔵の刀が横一閃、首を斬り飛ばしていた。
●去る者
「はっ、畜生なんざ刀の錆にもなりゃしねェ」
刀の血を振るい落とし、興味を失ったように娑婆蔵の視線が獅子から灼滅者へと移る。普段なら決して向けぬ殺気の籠もった視線を鈴音に向けた。その殺意に当てられ灼滅者達の武器を持つ手に力が入る。
「あっしはこれで失礼させていただきやす」
娑婆蔵は涌き出る殺意を押し殺すように背を向け、獣のような速さで駆け去った。
「倒せはしましたが、闇堕ちが出てしまいましたね」
終わったと思った瞬間、緊張の糸が切れて紅緋は座り込む。
「まだ試練は続くか、ゲームを楽しむのはもう少し後になりそうだ」
必ず助けてやると見送り、伊織は太刀を納めたところで力尽き倒れた。
「……大丈夫、ですか。治療は、任せて、休んで、ください」
倒れている唯とアデーレを治療していた蒼が、慌てて伊織の体にも癒しを与える。
「もっと、力があったら……」
そうすれば闇堕ちなんてさせる必用は無かったのにと、理央は口惜しそうに唇を噛んだ。
「引っ叩いてでも正気に戻してやるんだから」
鈴音はいつまでも娑婆蔵が消え去った方へ視線を向け続け、自らの心を奮い立たせるように怒ってみせた。
敵を倒してもまだ終わってはいない、闇に墜ちた仲間を助け出してようやく事件は終わるのだと、灼滅者達は去った仲間の事を想い、救出を胸に誓うのだった。
作者:天木一 |
重傷:花檻・伊織(蒼瞑・d01455) 中川・唯(高校生炎血娘・d13688) アデーレ・クライバー(地下の住人・d16871) 死亡:なし 闇堕ち:撫桐・娑婆蔵(鷹の目・d10859) |
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種類:
公開:2016年10月12日
難度:難しい
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 5/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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