口説き、口説かれ、口説き合い!?

    作者:芦原クロ

     気温も暖かく、十月の中旬頃まで海水浴が楽しめる、南の地域。
    『こんなに魅力的な女の子と出会えるなんて、ラッキーだな。君と2人っきりになりたいけど、ダメかな?』
     妙にキラキラしている男性が、一般人女性を口説いている。
     手の甲にキスをされた女性は赤面し、やがて膝の力が抜けて崩れ落ちた。
    「乙女ゲーの如く相手を口説き落としまくる都市伝説……彼に間違いないね」
     久寝・唯世(くすんだ赤・d26619)が、灼滅者たちに説明する。
     説明している間に、都市伝説の男性は、一般人の男性までも口説き始めた。

     この都市伝説は、老若男女問わず、口説くようだ。
     相手の好みを読み取って、姿や性格、口調も変える上に、とにかくキラキラしているので、とても魅力的な男性に見える。
     これは、都市伝説の能力だろう。
     都市伝説に対抗して、仲間を口説いたり、逆に都市伝説を口説いたりすると、都市伝説はどんどん弱体化するかもしれない。
     都市伝説そっちのけで、恋人同士イチャイチャするのも効果的かもしれないが、この方法は別の人から色んな怒りを買うかもしれない。
    「男性も口説くのは予想外……でもなんとかなるよ、みんな頑張ってー」
     唯世はほぼ棒読みで、応援した。


    参加者
    朏・凪咲(ムーンサイドのガラクタ姫・d10428)
    天津武威・彦姫(譲れない志なる・d14682)
    斉藤・春(冬色れみにせんす・d19229)
    真柴・遵(憧哭ディスコ・d24389)
    春日・葎(インフィニティ・d24821)
    久寝・唯世(くすんだ赤・d26619)
    ヴェルナリア・アルバ(焦ガレ華・d31402)
    篠崎・零花(白の魔法使い・d37155)

    ■リプレイ


    「……口説き、ね。俺的には真柴がどう出るかがすごく楽しみで……葎がどう出るのか予想できないって感じかな……?」
     朏・凪咲(ムーンサイドのガラクタ姫・d10428)は2人に眼差しを向け、期待を込めてほんの少し微笑む。
    「つーか、どーせなら美女の都市伝説として出てこいよ! てめーにはガッカリだっ!」
     グラサンを掛ける真柴・遵(憧哭ディスコ・d24389)だが、キラキラして見えるのは都市伝説の能力の為、意味が無い。
    「ぐあぁ……俺よりキラキラすんなっ、このイケメン野郎!」
    『なに言ってんだよ、おまえもイケメンだろ? 大丈夫だ、おまえも輝けるぜ』
     サングラスを投げ出す遵に、キラキラ男は兄貴っぽく、遵の肩を叩く。
    「しっしをイケメンって……」
     サウンドシャッターを展開した斉藤・春(冬色れみにせんす・d19229)が、ドン引きの冷え切った眼差しを、キラキラ男と遵に向けている。
    「しっしくんってイケメンだったんだねー、知らなかったよー」
     無表情で、のんびりとした口調で言う、久寝・唯世(くすんだ赤・d26619)。
    (「自分好みの人に告白される、ね……都市伝説じゃなければいい話なんでしょうけど……複雑ね」)
     キラキラ男を眺めながら、篠崎・零花(白の魔法使い・d37155)が思案する。
    「口説き合戦か……僕に務まるか不安だけれど、出来る限りやってみるよ」
     メモを用意している春日・葎(インフィニティ・d24821)は、周りの口説きを楽しみにしている。
     優れた言葉だと思ったものは、片っ端からメモをする気だ。
    「師匠以外の男は、眼中に無いな。他の子達が楽しみね。唯世や春日辺りは、口説くのが上手そう……斉藤や朏も、しれっと口説いてそうな感じがあるな、なんとなく」
    (「ツンデレキャラ全開で行きましょう!」)
     ヴェルナリア・アルバ(焦ガレ華・d31402)が仲間たちを見回して分析し、天津武威・彦姫(譲れない志なる・d14682)はキラキラ男を、けなす気でいた。


    『おい、おまえ。俺を選べよ、退屈はさせないぜ』
    「えっと、これって口説いてるつもり? わあ、マジうざー」
     彦姫は軽蔑の眼差しをキラキラ男に注ぎながら、鬱陶しそうに返す。
    『おまえみたいなヤツを相手に出来るのは、俺ぐらいなモンだと思うけどな。おまえ、性格悪いし』
     キラキラ男にけなされるが、実はM体質な彦姫は、ほんの少しときめいてしまう。
    「ひ……ひどい! この、悪五郎ぉ!」
    『おまえってホント、イジメ甲斐が有るよなぁ』
     胸をおさえて彦姫が叫ぶと、キラキラ男は冷酷な笑みを浮かべ、彦姫の短い髪に指を通す。
    「く、口説くのでしたら別の方にどうぞ!」
     本来なら笑顔で、はねのけるつもりだったのに、彦姫はキラキラ男の魅力に負けてしまった。
     キラキラ男を反転させ、その背中を一生懸命押し、他の仲間たちのほうへ向かわせるので精一杯だ。
    (「見境がないのには少し驚きね」)
     零花がその様子を眺めていると、キラキラ男は姿かたちを変え、優しい雰囲気の青年になる。
    『可愛い猫だね。翼の有る猫なんて、初めて見たけど、可愛い。きみも、白い髪と赤い瞳が、吸い込まれそうなほどキレイで、愛らしい。成長したら、美人になるんだろうね』
    「そ、そうかな……?」
     目線を合わせる為に膝をつき、優しい微笑みを浮かべながら零花を口説く、キラキラ男。
    (「嬉しい……でも、このままではいけないわ……」)
     零花は内心喜ぶが、はっと我に返り、キラキラ男にされるがままになるものかと口を開こうとする。
    『きみを独り占めにしたい。……そう言ったら、きみは僕を嫌いになるだろうか』
     真剣な表情で、キラキラしている男。
     零花の白く美しい髪を一房掬い、そこへそっと口付ける、キラキラ男。
     恋愛に関しては初心な零花はなにも言えず、ただただ、耳まで真っ赤になっている。
    「見境無く口説く男には風穴を開けてしまいたくなるな……っと、集中しなくてはね、これも依頼なのだから」
     ヴェルナリアが零花を守ろうと、近づく。
    「姿形を真似たとしても偽物だという事実がある以上、無意味なのよ。おわかり都市伝説さん?」
     さとすように告げるヴェルナリアの前で、キラキラ男は、またもや姿かたちを変えた。
     がっしりした腕に大きな手。顔は無精ひげが生えて、少し呆れたような笑顔を浮かべている。
     これは誰得なのだろうか。
     他の仲間たちが疑問に思う中、ヴェルナリアはほんの少し頬を赤く染めた。
    「し、師匠……」
     ヴェルナリアの好み、ドストライクだったようだ。
     偽物だと分かっていても、自分の好きな人と同じ顔をされては、さすがにヴェルナリアも落ちそうになる。
     とても魅力的な男性に見えるという、都市伝説の能力も合わさっているのだから、大変だ。
     だがヴェルナリアは崩れそうな足に力を込め、海の家からアイスやヤキソバを買って食べている唯世のほうへ向かう。
    「金色の、綺麗な瞳に惹き込まれそう……なんて、月並みよね。でも他に、気の利いた言葉が出て来なくなってしまう程に、目の前の君が愛らしすぎて、困ってしまうな」
     基本的に男性に対して口説くことはしないヴェルナリアは、女性の唯世を口説く。
    「ヴェルさん、かっこいいー」
     ヴェルナリアの口説き文句に、思わずキュンとする唯世だが、感情を滅多に表情に出さない為、無表情のままだ。
    「これおいしいよー」
     唯世は女性陣に、海の家で買った食べ物を配り、食事に夢中になっている。
    「このイケメン野郎は俺が口説き落としてやる! ヘーイ、彼女っ! ……いや、彼女じゃねーな!」
     1人でボケとツッコミを担当している、遵。
    「君、すっげーかわいーね……可愛くもねーな!! やべえ……男ってだけで俺の百戦錬磨の口説きテクが全然通用しねぇ……!! 通用したところで何も嬉しくねーけど!」
     両手で頭を抱え、遵は女性陣を振り返る。
    「なあ! 誰か女子! 俺のこと口説いて!!」
     結局はいつも通りになってしまう、遵だった。
    『口説いて欲しいのか?』
     キラキラ男が、遵に近づく。
    「や、やめろ……男に口説かれたくねえぇ……! 俺は甘やかしてくれる年上の巨乳お姉さんにしか靡かねーんだよ……いや、巨乳なら年下でもいーか……」
     遵は逃げ腰になるが、胸を揉ませてくれる人がいい、と言葉には出さずに考える余裕は有る。
    『イケメン同士ってのも、有りだと思わねェ? 世の中、女だけじゃねェんだ。男の好さを、俺がたっぷり教えてやるぜ?』
    「兄貴! 一生付いていくっす!!」
     男前でワルな兄貴タイプに弱い遵は、即落ちた。


    「ああ、美しい人よ、僕とアバンチュールしませんか? 誰にも邪魔をされない小舟に乗って、あの海原を渡りましょう。夕日が海に色を溶かすように……貴方をもっと知りたいのです。モン・シェリ……」
     葎はキラキラ男を、口説きにかかる。
     言っている内に段々恥ずかしくなり、最終的にはキラキラ男の様子をちらちらと見てしまう、葎。
    『ふふ、可愛くて面白い子ね。好きになってしまいそう』
     キラキラ男は、可憐で美しい、大和撫子のようなタイプに変わった。
     が、やはり男のままだ。性別までは変えることは出来ないようだ。
    「ああ、お姉さま……あっ、あっ、こんな好みのタイプ、永遠に自分の心に仕舞っておこうと思ったのに……屹度女性陣には引かれてしまうね」
     お姉さまというより、オネエさまである。
    『自信が無いのかしら? 大丈夫よ、惹かれることは有っても、引かれることは無いわ。貴方は優しくて、友達想いの、とても素敵な子だもの』
     葎は自信の無い自分を、叱咤激励しつつ見守ってくれるタイプに、弱いようだ。
     嬉しさと、口説かれる恥ずかしさとで、葎は赤面してしまう。
    「ぼ、僕は天使を見ているのかな……? 元は男性とか、どうでも良くなってしまうな……」
    「あんた誰の許可とって、りつのこと口説いてるの? りつはオレの大事なわんちゃんなんだけどーっ」
     許すまじ、とばかりに春が声を掛けると、葎は我に返る。
    「ハッ、春くん!? ぼ……僕は今、何を……? わ、わん……」
    「ちゃんとオレのとこ戻ってきたから、いいこいいこしてあげるね」
     葎は春のもとへ急いで戻り、春はそんな葎の頭を優しく撫でる。
    「好みかー。おいしい食べ物、くれるひとかなー」
     唯世は男性陣の写真を撮りはしても、男性陣の口説きには全く、ときめかずにいた。
    『ちょっと恥ずかしいけど、弁当、作って来た。食べてくれると嬉しい。……きみの、美味しそうに食べる姿が、可愛くて好きなんだ。叶うなら、きみの傍に、ずっと居たい』
     キラキラ男は唯世に弁当箱を渡した。
     多種多様な料理が入っている弁当に、唯世の瞳が輝く。
     一口食べると、あまりの美味しさから、唯世は珍しく、ほんの少しだけ口元を緩める。
     キラキラ男は今度は、春の好みのタイプに変わった。
    「いくら好みに化けたって、オレは好きって思う人が好きなんですー。やーい、ばーか、ばーか」
     春は揺らがずに、キラキラ男をけなしている。
    「ごめんね、今日は俺のだから」
     凪咲が、春と繋いでいた手を見せ、キラキラ男を追い払おうとする。
    「はるを甘えさせられるのは、俺くらいなんだから……はるの好みってどんなのか、少し気になるけどね」
     断る凪咲に、キラキラ男が口説きモードに入る。
    『狂おしいほど、きみが好きなんだ』
    「……俺? ……ふぅん、俺を口説くなんて、相当物好きだと思うけど。でも好きって気持ちをストレートに表わしてくれるのは嬉しい、な。と、……はる?」
    「おにーさん馴れ馴れしーんじゃないですか。どれだけみかの好みに化けてるのか知らないけど、好み云々よりオレのほうがみかのこといっぱい好きだし」
     凪咲を口説いていたキラキラ男に、春が割り込む。
    「みかだってオレと遊ぶほうが楽しいよねー? ね?」
    「ふふ、確かにはるのがいっぱい楽しいことを知ってるし……俺もはるがいっぱい好きだよ?」
     繋いでいる手を揺らしていた春は、凪咲の返答に、当然とばかりに得意顔を見せる。
     凪咲は、手を揺らす春が可愛いという気持ちを込め、握り返した。
    「そういうことだから」
    「どっか行って」
     凪咲と春が声を合わせ、キラキラ男へ「しっしっ」と言って、追い払う。
    「みかの好きなことだったらオレだってしてあげられるもんね。ふふ、何かしてほしいことある? 今日はとくべつに聞いてあげる。帰りが楽しみだね」
    「……やけに今日は優しいはる、というか……甘えん坊さん?」
     首を傾げ、柔らかく微笑む愛らしい春に、凪咲は和んでいる。
     恋人同士のような光景に、キラキラ男は存在感を失い、背景と同化しつつあった。
    「おい! お前ら兄貴に失礼だぞ! 特に春クン!」
     春を指差す、遵。
     完全に、寝返っている。
    「真柴兄は……いつも通りね、理解したわ」
     遵に容赦無く、銃口を向けるヴェルナリア。
     だがキラキラ男が弱体化していることに気づき、ヴェルナリアは戦闘態勢に入る。
    「なんか恥ずかしいから、とりあえず早く消えて」
     春が強烈な威力を秘めた矢で敵を撃ち、ナノナノのウララは回復役に回る。
    「今まで口説いたことも、口説かれたこともないんだけど。こういう感じなんだね」
     続く凪咲が、敵を攻撃。
    「そばにいてくれるんだよね? ならこれ位、平気だよね?」
     唯世は容赦なく言い放ち、魔力を宿した霧で前衛陣を包む。
    「もう十分満足したでしょ?」
    「……ただ、ぶっとばせばいいのかも? です! 無理をせず……ただ蹴り倒す!」
     ビハインドのノーラとヴェルナリアが続き、更に続くのは彦姫だ。
     2人で、息の合ったコンビネーション攻撃を炸裂させる。
    「この真のイケメン・真柴が成敗してやんよ!」
     あれ? さっき寝返ってなかった? と言いたげな仲間たちの視線もなんのその、遵は楽しげに魔槍を回転させ、敵を突く。
    「消滅せず、とどめを刺すのは心苦しいが、導眠……あ、あれ? あっ、ああ、持って来るのを忘れてしまった……」
     葎は途方に暮れるが、やはり男の子。
     頑張ろう、と。別の攻撃で敵にダメージを与える。
    「……恋をして告白をする……一体どんな感じなのか気になるわね……」
     零花は小さな声で、ぽつりと零し、ウイングキャットのソラに、指示を出す。
     相手が都市伝説でなければ……と言いたげな、残念そうな視線を送りながら、零花は魔法の矢で敵を射る。
     トドメを受け、キラキラ男、もとい都市伝説は完全に消滅した。


    「な……なんだか恥ずかしい、な。皆の口説き文句は勉強になったよ、後学に活かさせてもらおう」
     葎はきちんと書いたメモをしまい、1人頷く。
    「恋愛を始める前に、おしゃれが、できるようになりたいわ……」
     零花は、持参したクッキーを仲間たちに配りつつ、女性陣に色々と訊いて回っていた。
    「すべて演技! それで問題なし!」
     心をかき乱すものが居なくなった為、彦姫はやけにスッキリした笑顔を浮かべる。
    「んー……、この前いってた桜のミルクティーでも帰りにどうだろ? 今日だけとくべつ、ね」
    「わーい、あったかいのがいいな」
     凪咲の言葉に、喜ぶ春。
    「唯世、楽しめた?」
    「おいしい物たくさん食べられたー。ヴェルさんのイケメン行動も見れて良かったよー」
     ヴェルナリアの問いに、唯世がのんびりとした口調で答える。
    「俺よりモテる奴、みーんな滅べっ!」
     海に向かって叫ぶと、一部の仲間たちから冷たい対応をされてしまう、遵だった。

    作者:芦原クロ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年10月16日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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