女みこしは祭りの華よ!

     秋祭りの準備で賑わう、とある神社の境内に、姫条・セカイ(黎明の響き・d03014)や仲間達の姿があった。
     この神社をスタート地点として、もう1つの神社を目指すみこしが、幾つも準備されている。
     そのうち、1つは女性だけで担ぐもの……いわゆる女みこしだ。
     セカイが情報をつかんだのは、それを狙って現れる都市伝説『マツリスキー』。
     『マツリスキー』は女みこしが始まると同時に出現し、祭り衣装に身を包んだ女性をみこしのごとくワッショイ胴上げする。そのついでに、あんなところやこんなところに触ろうという算段だ。
    「なんと破廉恥な……!」
     まあ、それを除いたとしても、都市伝説の怪力に一般人の体が耐えられるはずもなく、被害者は十中八九大変な事になるであろう……!
    「というわけで、私達も祭り衣装でやってきたわけですが」
     担ぎ手として事前に一般参加者に紛れ込む。その方がすぐに対応できるし、うまくすれば灼滅者が被害を引き受けられるはずだ
     ただし、事前に人払いをしてしまうと祭り自体が行えず、都市伝説自体が現れなくなってしまう。出現後、速やかに一般人の避難を行うか、あるいは『マツリスキー』自体を別の場所に誘導する方法を考えた方がいいだろう。
    「いくら都市伝説を灼滅するためとは言え、お祭りを中止・中断させてしまうのは申し訳ないですから、なんとか被害を減らしたいところですね」
     『マツリスキー』は、言霊によってハッピ姿の男衆を召喚する。皆で大きなうちわを振るって毒の風を送る他、腕力にものを言わせてこちらを制圧しようとする。
     更に、その偏った祭り愛はあらゆるものをたぎらせ、燃やし尽すと言う……。
    「灼滅を終えた後、もし祭りに支障が出ていなければ、私達も屋台など見て回りたいですね。美味しい匂いがしてきますし……」
     セカイの視線が、屋台の列の方へと注がれる。
     楽しそうな雰囲気と、美味しそうな香りが、全力で手招きしていた。


    参加者
    姫条・セカイ(黎明の響き・d03014)
    銀・ゆのか(銀屋の若女将・d04387)
    綾瀬・一美(蒼翼の歌い手・d04463)
    天瀬・ゆいな(元気処方箋・d17232)
    東屋・桜花(もっちもち桜少女・d17925)
    東雲・蓮華(ホワイトドロップ・d20909)
    赤城・扶桑(扶桑樹に見る胡蝶の夢は・d23635)
    白臼・早苗(静寂なるアコースティック・d27160)

    ■リプレイ

    ●祭りだ祭り!
    「さあさあ! はっぴにサラシ、ふんどし締めて祭りの正装堂々と! 歌って踊って音頭も取れる新世代アイドルゆいなちゃん爆誕ですっ!」
     ばばばーん、と祭り会場でポーズを決めたのは、天瀬・ゆいな(元気処方箋・d17232)。ちょっぴりお尻は寒いけど気にしない!
    「あの、セカイさん……これ、正装なんですよね……?」
    「ねぇ、着てない人もいるんだけど……」
     サラシとふんどし姿の東雲・蓮華(ホワイトドロップ・d20909)と東屋・桜花(もっちもち桜少女・d17925)が、姫条・セカイ(黎明の響き・d03014)に訴えた。
     実際、白臼・早苗(静寂なるアコースティック・d27160)や赤城・扶桑(扶桑樹に見る胡蝶の夢は・d23635)は、上半身こそ祭り衣装だが、下はスパッツ。
     綾瀬・一美(蒼翼の歌い手・d04463)も、祭り風のアレンジを加えたゴスロリ浴衣に、下はフレアミニスカ。あえてふんどし以外を選ぶスタイル。
     果たして、セカイの回答は、
    「はい、正装のハズですよ。少し恥ずかしいですけれど郷に入っては郷に従えとも言いますし、無理なくお祭りに溶け込むには致し方ないかと……」
     真面目であるがゆえに、それがどこかで植え付けられた間違った知識だとは疑いもしていないセカイである……。
    「せ、正装なら着ないと、ね……でもお尻すーすーする」
    「肌が見えすぎて恥ずかしいですし……足回りがとても寒いです……」
     もじもじする桜花と蓮華を見て、やっぱりやめといてよかったと思う扶桑である。ふんどし組の度胸には、尊敬の念すら抱いていたりする。
    「まあ、お神輿かつぐと案外熱くなりますし、これはこれで合うかもですよ?」
     たはは、と笑うのは、はっぴにサラシ、ふんどしの三点セットを取りそろえた銀・ゆのか(銀屋の若女将・d04387)。
    「こうなったら、早くマツリスキーを見つけて……なっ」
     突然破けた。早苗のスパッツが。
    「そんな、始まる前から……いったい何が待ち構えているの……?」
     ともあれ、このままというわけにもいかない。この中に、着替えをお持ちの方はいらっしゃいませんか!
     すると出てきたのは、
    「ふんどし……」
     そうなるよね、仕方ないね。
    「にしても、お祭りにかこつけて触りに来るっていうのは、やっぱり男の人が流した都市伝説なんでしょうかね~?」
     ゆのかがサラシを確認しているうちに、そろそろ出発だ。
     やるからには気合入れていこう、と皆が決意も新たに、みこしを担ぎ上げた。

    ●奴の証言「お祭りが大好きです(建前)」
    「さぁみんな、威勢よくいくよー!」
    「はわわ~、わっしょい! わっしょい!」
     ゆいながみこしの上でテンション高く声を上げれば、『女神輿』と書かれた大きなうちわを仰いだ一美が、みこしを先導する。
    「それじゃあ……盛り上げちゃいましょう♪ わっしょい、わっしょい♪」
     ゆのかや桜花が、元気にわっしょい。蓮華も恥じらいつつ、顔を真っ赤に頑張ってわっしょい。みこしが上下するたび、セカイのたわわなましゅまろも、大きく揺れる。
    (お祭りにかこつけて女性を触ろうなんて、許せません……!)
     気弱で文句を言い出しにくいタイプではあるが、マツリスキーのような相手に対する怒りは人一倍。扶桑が内心憤っていると、早苗を悪寒が襲った。
    「ヒッ、凄い寒気……って、もしかして!?」
    「ひゃぅ!?」
     腿をなぞる感触に身を震わせるゆのか。だが、きりりと表情を引き締めると、
    「この感触っ……みつけたっ!」
    「わっしょーい!」
     はっぴ姿のあんちゃんが、皆の間に入ってみこしを担いでいた。無論、手伝いにきたわけではない。
     マツリスキーはどさくさ紛れにみんなに触れると、列から離れ、一美の元へ。
    「いいねいいね威勢がいいねえ! オイラも一緒に頑張るぜ! そーら!」
     すっ、と伸ばした手が、ぱちん、と叩かれる。一美が睨んでいた。めっちゃ、睨んでいた。
    「お祭りの最中にあんなことやこんなことするなんてとんでもないです」
    「これは不可抗力でい!」
     嘘つけ。
    「おいそこの変態! 一般人より私達狙え! へいへーい!」
     ゆいなが形のいいお尻を見せつけると、ぺちんぺちん、と叩いてみせた。
    「誰が変態だってんでえ!」
     お前だ。
     そのまま扶桑や桜花は、マツリスキーを森方面へと誘導していく。
     一方で、蓮華が近くのお客さんに声掛けすれば、早苗も接触テレパスを使ってこの場から離れるよう促す。
    「祭り会場は向こうかい!」
     ずいぶん大人しくついてくるなあ……と振り返れば、マツリスキーはセカイのふんどしに釘付けだった。Tフロント&Tバックの、六尺ふんどし風。清潔感溢れる白がまぶしい。
     セカイの人払いのフォローを行うゆのかにとっては、好都合だ。……若干申し訳ないが。
     すると、森の中から飛び出すライドキャリバー! 桜花のサクラサイクロンがマツリスキーを阻む!
    「お祭り、に……かこつけて……許しません……!」
     そして扶桑はみこしを下ろすと、縛霊手とクルセイドソードを構えたのである。

    ●わっしょいは魔法の言葉
    「破廉恥なの、許さない……許さない、からっ!」
     戦い始めの号砲は、早苗の断罪砲が務めた。
     手荒い歓迎に続いて、セカイが攻める。ダイダロスベルトがマツリスキーへと伸びるのと比例して、なぜか上昇するセカイの露出度。サラシの正体はダイダロスベルト……!?
     踊りめいたステップで回避するマツリスキーを、桜花が捕まえた。そのまま打ち上げ花火のごとく天へと跳び上がる。あれよという間に、地面に叩きつけられるマツリスキー。クレーターという名の花が咲く。
     頭から地面に突き刺さったマツリスキーを、サクラサイクロンが轢いていく。
    「うがががが!」
     逆立ち状態でスライドしていく都市伝説の先で、一美が待っていた。大鎌をタイミングよくスイングし、マツリスキーの胴体を一刀両断!
     更に、蓮華の鬼神変が炸裂。ただの羞恥心増幅装置だと思いきや、巨大化した腕を振り回すのには便利な服だった。
    「……ってぇ!? 服が解けかかって……!?」
     とっさに腕を元に戻し、押さえにかかる蓮華。
     その時、自由を取り戻したマツリスキーが、指笛を鳴らした。するとどこからともなく若い衆がどどど! と駆け付けてきたではないか。
    「わっしょいわっしょい!」
    「い、いや、それどころじゃ……こんな時に攻撃する……にゃぁぁぁーー!?」
     空気を読まない若い衆に担がれ、蓮華のサラシが限界を迎えた。マジカルにほどけると、桜花とミラクルに絡み合う。
    「な、ほどけない……っ!?」
    「が、頑丈なサラシ選んだの、裏目にでてしまいましたー!?」
     2人がとらぶるに見舞われる中、マツリスキーの攻撃はまだ終わっていない。
    「こら今取り込み中! 触るな絡むなー?! サラシが、ふんどしが解けるぅぅぅぅ?! やめ、ちょ、だめーーっ?!」
    「は、はわわっ」
     桜花が直接被害を受け、一美も餌食になる。サクラサイクロンまでわっしょい宙を舞う。
     こっそり混じって一緒にわっしょいしてたゆいなの背後に、桜花が忍び寄る。
    「えーい、死なばもろともーっ」
    「って私はいいですからぎゃーー!! ちょどこさわっぴゃああああ!!???」
     ゆいな、大変です。
    「ちょ、ふんどし引っ張っちゃだめ、ちょ、脱げ、ぎゃーー!!」
    「はわっ、ちょっ、なにするんですか~。はうぅぅっ、ひゃっん」
     もみゅん、しゅるるっ、ぱさっ。擬音と一美の阿鼻叫喚が、森に木霊する。まさに擬音祭り……!
    「いい仕事した……!」
     すがすがしい表情で消えていく若い衆を見送ると、ゆのかが七不思議の言霊を使った。
    「とりあえず皆さん落ち着きましょう~」
    「だねっ! 休憩タイム!」
     ゆいなが、額の汗をぬぐって祭霊光。祭りだけに。
    「ふう! ひどい目に遭ったよ!」
     しかしマツリスキーは、休む暇など、くれはしない。
    「同じアホならなんとやら! 祭りだ祭りだ!」
     若い衆、再び。労働環境が気になる。
    「わっしょい! WASSYOI!」
    「こ、こら……サラシ、が……ほどけ……っ!?」
     有無を言わせず、わっしょいタイムに巻き込まれる扶桑やゆのか達。
    「あん、もう……いたずらさんなんだから……めっ!」
     祭り衣装がはだけて、ゆのかはもうカンカンですぞ! でもこんな感じなら怒られても嬉しいです!
    「だ、駄目です、そんな所を引っ張らないで……食い込んで……んっ……見えてしまいます!」
     セカイの白い肌もまた、宙を舞う。桜花の紅潮した肌とは対照的で、2人合わせて紅白。なんかめでたい。
     いやいや、このカオスっぷりをおさめなくては。
     扶桑が、セイクリッドウィンド。服が脱げかかっているところに風。しかし安心めされよ、不思議パワーでしっとり癒します。
     早苗も、リバイブメロディでわっしょいムードに対抗する。なんとか被害を免れた事に安堵&感謝しながら。

    ●わっしょい無法地帯
    「くぅぅ……乙女の怒りくらえっ」
     先ほどのお返しだ。桜花のキックで、ずざざ、っと吹き飛ぶマツリスキー。だがその反動で、また桜花のふんどしがほどけそう。
     一方早苗も、ふんどしという慣れないものを急につけたせいで、非常に緩い。少しでも何かされたら取れてしまいそうだ。
     たとえば、うちわで仰がれる、とか。
    「そいやそいや!」
    「や、駄目だから! こないでこないで……!」
     若い衆がうちわで風を巻き起こすなり、仲間の影に隠れる早苗。奏でるディーヴァズメロディが、祭りばやしのように聞こえてくるから不思議だ。
     すると若い衆を遮るように、蓮華が十字架を降臨させた。ふんどしエクソシスト。
     ばらららっ、と乱舞する光に、一美の(色々はだけないかちょっと心配な)パッショネイトダンスが加われば、さながらここは異国情緒あふれる祭り会場。
     ちゃっかり踊りに加わろうとするマツリスキーの手を、ゆのかががっちり掴んだ。何せ素手縛霊手だ。力いっぱいぎゅぅっと握られれば、都市伝説だって身悶えしちゃう。
    「さぁ、そろそろフィナーレ、1つ、太鼓でも打ち鳴らすとしましょうかッ!」
     衣装はアレでも心は錦! ゆいなの腕が成長、鬼神変! マツリスキーという名の太鼓が、どむん、と鳴った。
    「ぐふうっ、こっちも負けてられっかい!」
     マツリスキーの投じた祭り魂が、日本刀を振るっていたセカイに命中。その弾みで、そばにいたゆのかと衝突。
    「ああっ、ごめんなさい!」
     幸い、セカイの豊かな胸がゆのかのクッションになった。さらしはもうすっかりずれてるけど。
    「わっしょいわっしょい、ハプニングは祭りにつきものさあ!」
    「そんな変態、には……お仕置き、です……!」
     豪快に笑うマツリスキーを、扶桑が追い詰めた。
     ドーピングニトロと場の雰囲気の相乗効果で、若干の暴走モードとなった扶桑が、思いの丈をサイキックで表現する。
    「ジャッジメント、レイ!」
    「ふんどし! ドシフン! ばんざーい! わっしょい!」
     ちゅどーん!
     やけにカラフルな煙と共に、マツリスキーが散華した。
    「ひ、酷い目にあいました……と、ともかく最後までやりきるのが祭りですよね」
     蓮華が衣服を正して、みこしを担ぎ直した。再びみんなで目的地の神社へGO!
    「もう……もう、何だったの、ねぇ、あれ……」
     何とか目的地にたどりつくなり、崩れ落ちる早苗。その目の前には、屋台の列が。神社の境内は、祭り特有の熱気に包まれている。
    「せっかくですし、このままお祭り観ていきましょうよ♪」
    「さんせーい!」
    「うん、楽しもうね、色々と忘れて……って、待って!?」
     あられもない恰好のまま行こうとするゆのかやゆいかを、桜花が引き止めた。
    「あ、いやー、ずっと着てるとこのカッコも馴染みすぎてもはや地肌の一部な気すらしてきますねー♪」
     全然気にしてないゆいなである。
    「はわ……」
     皆のスタイルの良さに、ゴス浴衣に着替えた一美は、目移りするばかり。セカイの大和撫子的容姿も、祭り風景とぴったりだ。
    「これ、で……ゆっくり……楽しめ、ますね……」
     扶桑も、羞恥心から解放され、安堵する。
     蓮華や早苗も、みんなで着替え終えたら、縁日へ繰り出そう。射的にくじにりんご飴。食べ歩きでストレス発散だ。
     お祭りは、非日常空間。イヤな事も忘れさせてくれる。
     ……そう、わっしょい変態男の事とか。

    作者:七尾マサムネ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年10月19日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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