シャドウ大戦介入～コルネリウス軍救援

■リプレイ

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「やっぱり勝敗は覆らなかったみたいだね……さあ、アタシ達の出番だね！」
　コルネリウス側の敗北が決し、戦線が崩れたと見るや、ロベリア・エカルラート（御伽噺の囚人・d34124）が、声を上げた。他の４班と共に、戦場へと突入していく。
　目的は１つ、コルネリウスを無事に撤退させる事。だが既に山田・透流（自称雷神の生まれ変わり・d17836）は、通信の類の一切が使えないことを把握していた。
　アガメムノン側の包囲網は、兵による物理的なものだけではなく、通信系にも及んでいるのか。コルネリウス達が拠点から外部に救援を頼むなど許さない、というアガメムノン側の意志を感じる。
　とはいえ、事前に他の班とも打ち合わせた行動プランは、神原・燐（冥天・d18065）の頭の中に入っている。この流動的な戦場で実行するのは容易ではないが、やり遂げて見せる。
「コルネリウスさん……早く合流しないと……」
「コルネリウスにはおいらも死んでほしくないっす。一緒にここから出るっすよ。絶対に」
　両陣営のシャドウ、そして灼滅者が入り乱れる戦場で、コルネリウスの姿を探すアリス・クインハート（灼滅者の国のアリス・d03765）と山田・菜々（家出娘・d12340）。
　デスギガス側のシャドウをあしらいながら、逐一、戦況の把握に努める装甲服の騎士……ユーリー・マニャーキン（天籟のミーシャ・d21055）。
　コルネリウス達救援対象の元には、別動班が向かっている。しかし、相手がすぐ撤退に応じてくれるとは限らない。それはわかっていても、焦りが皆を蝕む。
　不安を追い出すように、鳴海・歩実（人好き一匹狼・d28296）も自らを鼓舞する。
「今は仲間達を信じて待つだけ。私も、私ができる、やれるだけの事をしよう」
「そうだね。……あれは？」
　すると、ダイダロスベルトで敵を蹴散らしていた透流の瞳が、あるものを捉えた。
　灼滅者の集団が、こちらへと向かってくる。誰かを保護しているようだ。
「間違いありません、コルネリウスさんです」
　実際に対面したことのある燐の言葉に確信を得て、合流に向かうロベリア達。
　退路の維持は、同行していた二班が引き受けてくれる。
「ありがとうございます……ここは、お任せします……」
　道を付けてくれる仲間達に、お礼を述べるアリス。
「待たせたね。……ここまで支えて居てくれて、本当にありがとう」
　やってきた灼滅者の１人、鏡・エールは頭を下げると、後ろに居るコルネリウスを振り返った。
　コルネリウスの説得は無事成功したようだ。語られる経緯に、耳を傾けるアルディマ・アルシャーヴィン（リェーズヴィエ・d22426）。
　共にいた優貴先生の説得も難航したようだが、中神・通が、心配ない、と話を続けた。
「デスギガスが来るなら、先生のソウルボードでコルネリウスに警戒に当たってもらえばいい。そうすれば、コルネリウスも先生も我々が学園で守る事が出来る」
　受け入れるのがコルネリウス１人だけなら先生も眠り続ける必要はなく、学園に居れば、灼滅者がいつでも先生のソウルボードに入る事ができる。それが最善の方法だという結論に達した、と通は話した。
「じゃあ、優貴先生も、別の班が保護してるんすね。説得、お疲れ様っす」
　菜々の口から、自然と感謝がこぼれる。言葉を尽くすのは、剣振るう戦より難しいかもしれない。
「あなた方の熱意に応じて、この先はお任せしましょう。……離脱後、優貴のソウルボードを守ると約束します」
　毅然とした表情でコルネリウスが言うのを聞いて、アリスが微笑んだ。
「コルネリウスさん……今まで私達にお力添えして下さって……優貴先生の事も、護って下さって有難うございます……やっぱり、お優しい方です……」
　さあ、ここからは、自分達の任務だ。

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「コルネリウス殿、お怪我はありませんか」
　ユーリーが確認すると、コルネリウスはゆっくりと被りを振った。前線に出ていなかった事と、説得班の奮闘のお陰か、その可憐な容姿にも服装にも、外傷は見当たらなかった。
　安堵しつつ、菜々やアリスが、コルネリウスに帽子やマントを着せる。
「これは……？」
「『帽子屋』さんみたいですけど、敵に気付かれない様、これで変装を……」
「気休めみたいなもんすけどね」
「どうしてあなた達は、そこまで私のために心を砕くのですか？」
　気遣いに戸惑うコルネリウスに、燐が口を開いた。
「以前お会いした時コルネリウスさんは『全ての存在が幸福である世界を作る』と仰ってましたが……その存在に、わたしも含まれてますでしょうか？」
「それは、どういう意味でしょうか」
「もしも、わたしも含まれるのでしたら……コルネリウスさんが幸せになっていない世界では、わたしは幸福ではありません。……意地悪な言い方になりますけど、この場合はどうしますか？」
「…………」
　燐の問いかけの意図を察し、コルネリウスが沈黙した。
「私たち灼滅者の一部はコルネリウスさんの幸せな夢を否定したけど、私はコルネリウスさんが間違っていたとは思わない。だって、昔の私みたいな臆病な人間は、幸せな夢を見続けていたいと思ったはずだから」
　この貴重な対面の機会を逃すまいと、透流が思いの丈を吐露する。
「私はコルネリウスさんの慈愛が私みたいなみんなを救うと信じて憧れた。だから……コルネリウスさんだけは助けたい」
「先ほども、多くの方々から訴えかけられたばかりです。……わかりました。今はあなた方の気持ち、受け止める事にしましょう」
　コルネリウスの返答を受け、ロベリアが不敵に笑った。
「シャドウと共闘か……ま、出来る限りのことはするけどね。さあ、コルネリウスも無事確保できたことだし、さっさと撤退するよ」
　自分達の班が、先頭となって撤退を始める。
　だが、一度は蹴散らしたはずのシャドウの群れが、再びこちらへと集結してくる。
「やっぱり、簡単には通してくれないっすね」
　殲術道具を構える菜々。
　幸い、タロット兵の姿は見当たらない。各個撃破に向かった仲間達が、戦果を挙げているのだろう。ならば、この程度の敵など蹴散らして、先を急ぐのみ。
　そこへ飛来する黒の想念弾。ターゲットはコルネリウス！
　だが、風雅・晶が身を投げ出し、盾となった。即座に、射手を切り伏せる風真・和弥。
　敵を薙ぎ払うライラ・ドットハックや、氷塊を叩き込む戦城・橘花が、すれ違い様、コルネリウスに言葉をかけてくる。
　いずれも頼もしい仲間達だと、歩実も知っている。安心して後背を任せられる。
「お礼を言うよ！　コルネリウスさんは絶対に生還させてみせる」
　そう言葉を投げかけ、駆け抜ける透流。
　同道するユークレース・シファや、有栖川・真珠らも、コルネリウス死守の覚悟は既に固まっているようだ。
　コルネリウスは、撤退後、ソウルボードを切り離して敵が追撃できないようにするという。その準備に専念してもらうためにも、自分達が護衛の役目を完遂せねば。
　透流や燐が、敵の手薄な方向へと、仲間を導く。
　敵の数は多い。一秒でも早く敵を倒すことが仲間の安全につながると考えるアルディマは、ただ攻撃のみに心血を注ぐ。
　しかし守りを捨てたアルディマは、敵にとって都合のよい的でもある。
「させないっ！」
　だが、攻撃モーション中のシャドウを、歩実の影業が覆い尽くした。
　そのまま敵の身を放り出した歩実は、コルネリウス軍とおぼしきシャドウに声を掛け、
「貴方達の大将が進む道を開けるのを手伝ってほしいの」
　しかし、灼滅者の言葉に貸す耳などない、という事か。すぐに顔を背けると……歩実達を狙ったシャドウを殴り飛ばした。
　主を守る事など、言われずともわかっている、とでもいうように。

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　今優先すべきは、敵の殲滅にあらず。突破だ。
　ナビゲートは、仲間に託している。歩実は、それに従い敵を無力化していくのみ。
　透流の結界が敵を痺れさせ、ユーリーの霊糸が敵の四肢を拘束した。
　行動阻害を逃れたシャドウへは、霊犬チェムノータの六文銭の洗礼が待っている。
　そして今また立ちはだかるシャドウの頬が、殴り飛ばされた。ロベリアの持つ闇色に染まったリングスラッシャーが、その暗き想念を引きずり出す。
　だが、防御の隙をつき、１体のシャドウがコルネリウスへの距離を縮めていた。
　邪なる想念が発射される寸前……横合いから、アルルカンの霊撃が直撃した。暴発したエネルギー弾は、明後日の方へと消える。
　こちらが倒れれば、陣形が崩れる。そうはさせまいと、燐の夜霧が、敵の攻撃を阻害する。ナノナノの惨禍が立ちはだかるのを見たシャドウは、一瞥しただけ。だが、その背を、惨禍の物理的制裁が襲った。あなどった報いだ。
「通してもらうぞ！」
　アルディマの、炎刃と化したクルセイドソードが、シャドウを正確に貫いた。仕留めた事に気を抜くことなく、即座に地を蹴ると、新たな標的へ向け次なる技を放つ。
　既に勝利は決しているため、デスギガス軍シャドウの士気は高い。そこにきて敵の大将が目の前にいるのだ、その気迫は雑兵と言えども、あなどれるものではない。
　だが、シャドウがたじろぐ。傷を負ったアリスの胸元に、ハートのマークが浮かんだのだ。シャドウと同質の力は、より強固にアリスを再生すると、反撃を繰り出した。
　自分だけでは倒れぬと、シャドウが捨て身の攻撃を仕掛けた。体当たりを受ける菜々。しかし、その腕がどくんと脈打ったかと思うと、次の瞬間、シャドウは地面に叩きつけられていた。振り下ろされたのは、鬼神化した菜々の腕。
　続けて、歩実のレッドストライクが、シャドウを叩き伏せた。態勢を崩した敵達は、後続のチームがとどめを刺してくれた様だ。
　順調に続く撤退。その時、敵雑兵の中から、２つの影が飛び出してきた。明らかに他のシャドウとは異なる武器を手にしたダークネス。
「まさか、あれが……」
　目を見張るアリスの傍らで、ユーリーも確信する。
　コルネリウス暗殺を狙って、二体のタロット兵が追撃をかけてきたのだ。

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　他のチームによって大半が撃破されたのか。
　数こそ少ないが、タロット兵は一騎当千。
「こんな時に……」
「やるしかないかな」
　燐が唇を噛み、透流が足を止めかけた時。
　タロット兵の片方に、黒い触手が絡みついた。
「こっちは園観ちゃんたちに任せてくださいねー」
　そう告げたのは、触手の主、園観・遥香だ。
「今のうちに行ってください」
「コルネリウスさんをお願いします」
　榎本・彗樹や繭山・月子が、先を急ぐよう促す。
　もう一方の班も、既に二体目のタロット兵と刃を交えている。
　ならば、自分達のなすべき事は。
「コルネリウスは我々にお任せください。敵は強力です、どうかお気をつけて」
　一礼し、進むユーリー。託された使命を胸に。
　だが、シャドウ達の攻撃がやんだわけではない。チェムノータが、飛んで来た流れ弾を弾く。
「退く戦は攻める戦より難しい、とは言いますが、ここがまさに正念場ですね」
　紅蓮に染まった剣を敵の胸から引き抜き、ユーリーが告げる。
　歩実もここまでの戦いで、疲労と傷を蓄積している。だが、そんなことは微塵も感じさせない。攻撃のたびに一撃は研ぎ澄まされ、より鋭いものへと変化……いや、進化していく。
「邪魔はさせない！」
　影刃一閃。ロベリアが、敵の胴を両断。しかし、その背後には別のシャドウが、思念弾の準備を終えていた。
「エカルラート！」
　ロベリアの名を呼び、アルディマが瞬時に剣を納めた。拳を固めると、光速の連打をシャドウへと叩き込む。吹き飛ぶシャドウには目もくれず、再度抜剣するアルディマ。
　自分達が最後の守りだ。ゆえに、コルネリウスだけは絶対に。そんな透流の決意をくんだように、クロスグレイブの砲門が全展開。虚空を彩る全方位射撃が、シャドウを薙ぎ払った。
　弓を握る燐が、自らの見出した経路を皆に示す。
「あともう少し、諦めないっす」
　汗をぬぐう暇も惜しみ、菜々が宙を舞う。敵の横やりをかわし、自らを流星と化すと、敵陣の中へと飛び込んだ。
　シャドウの群れを蹴散らし、一息ついたところへ、タロット兵の迎撃に向かったチームが次々と戻ってくるのが見えた。
「タロット兵は無事に排除できたみたいだね」
　傷つきながらも再度合流を果たした二班に、歩実は安堵の表情をのぞかせる。
　周囲の敵も、ほとんど駆逐されている。ここまでくれば、もう安心だろう。
　そして、コルネリウスは言う。ソウルボード切り離しの準備が整った、と。
「コルネリウスさん……また、お会いできたら……」
　自分達の役目をまっとうしたと悟ったアリスが、コルネリウスに別れを告げる。
「決着はいずれ、ハッキリとつけてやる」
　今や遠くに臨む敵軍へと、断言するアルディマ。
　シャドウ大戦は幕を下ろし、武蔵坂学園とデスギガス軍が雌雄を決する戦いが始まろうとしていた。

作者：七尾マサムネ	重傷：なし 死亡：なし 闇堕ち：なし
種類： 公開：2016年11月16日 難度：やや難 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 1／感動した 0／素敵だった 3／キャラが大事にされていた 2
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