黄龍は武の玉座を目指す

    作者:朝比奈万理

     山陰地方の深い深い山奥に、その建物はあった。
     木造の平屋建てで小ぶりの武道館のよう。
     こんな夜更けにも関わらず激しい衝突音が響き、時折建物が軋みを上げる。どうやら夜通しでの修業が行われているのであろう。
     ここはアンブレイカブルの道場。人里離れたこの地に道場を構え、修行を行っていたのだ。
     落ち葉を晩秋の乾いた夜風が舞上げ、真っ暗な夜空が吸い込んでいく。それを見送り彼女は、前をまっすぐ建物を見据えた。
    「見つけたのじゃ……」
     龍を模した黄金に輝くバトルスーツに体を包んだ小柄な少女。額から目元までを隠す大きなバイザーの奥の瞳は爛々と輝かいていた。
     一歩、また一歩と歩を進めるたびに、黒々としたオーラが燃える炎の如く揺らめく。
     武の頂に上り詰めるためには、強敵と死闘を繰り広げる必要がある。
     自分を満足させるのは雑魚ではだめだ。幹部級のダークネスでなくてはならない。
     そしてやっと見つけた。
     自分を満足させてくてる相手が、いま目の前にいる。
     少女は興奮で身を震わせた。武者震いだ。
    「さて。存分に楽しませてもらおうかのぅ」
     にっと口角を上げ、いざ参らん。
     死闘のその先へ――。

    「山陰地方の山奥のアンブレイカブルの道場が破られる。その道場破りをするダークネスは、武蔵坂の灼滅者だった少女だ」
     浅間・千星(星導のエクスブレイン・dn0233)は教室中に向けて行った後、ぽつり独り言つ。
    「よかった。やっと見つけることができたぞ。館・美咲(四神纏身・d01118)」
     彼女はガイオウガ決死戦で闇堕ちしながらも、皆を守る盾となった。その後行方不明となっていたが、千星の全能計算域にその動向が引っかかったのだ。
     闇落ちした美咲の目的は『武の頂きに到達すること』。それも、敵とギリギリの死闘を繰り広げ勝利することが前提だ。
    「そのため美咲嬢は、地域を統べる力を持つであろうアンブレイカブルに戦いを挑む」
     その一人が今回の標的だ。
    「幸い相手は人間はない。だけど、美咲嬢は死力を尽くして戦った末、満足して敗れたら、相手に殺されるのも本望だと考えている」
     そうしたら、戻ってくるどころか永遠に――。千星は小さく頭を振る。
    「だから皆には、この道場破りに介入して、美咲嬢に接触してもらいたいんだ」
     介入タイミングは道場破り前でも道場破り後でもかまわない。しかし、どちらを選んでもリスクがある。
     道場破り前を選んだ場合、アンブレイカブルたちに気づかれずに美咲を道場から引き離したうえで、彼女と戦闘を行う必要がある。
    「もし美咲嬢の誘い出しに失敗した場合、アンブレイカブルが騒ぎを聞きつけて外に出てくる可能性が大いにあり得る。そうなればこの敵も相手にすることになり、武蔵坂との接触を避けてきた美咲嬢が彼と組むこと予想される」
     そうなれば、救出はおろか、灼滅も非常に困難なものとなるだろう。
     道場破り後では、美咲はアンブレイカブルと死闘を繰り広げ勝利した後になる。運が悪ければ、アンフェアを嫌う美咲に逃げられたり、包囲でき手戦闘になったとしても、下手したら灼滅してしまうリスクが伴う。
    「どちらにしても危ない橋であることには変わりはないが、救うタイミングはそこしかない」
     
     
     千星は神妙に告げると、千曲・花近(信州信濃の花唄い・dn0217)を見、
    「一緒に行って、手助けをしてくれ」
    「わかった。がんばるよ!」
     気持ちのいい返事に、一つ頷いた。
    「美咲嬢はまだ一般人を殺していないとはいえ、この先もダークネスを狩り続けたらどうなるかはわからない。もし救う手立てがないのなら、灼滅も視野に入れてくれ」
     ここで逃がしたら、彼女はもう戻れなくなってしまうだろうから。
     そういうと千星は、いつものように自信に満ちた笑みを見せて前髪を掻き上げる。ちらりと見えたのは。おでこ。
    「どうか、皆の心に浮かぶ最良の未来を信じて、彼女を救い出してくれないか?」
     


    参加者
    葛城・百花(デンドロビウム・d02633)
    辰峯・飛鳥(紅の剣士・d04715)
    月島・立夏(ヴァーミリオンキル・d05735)
    巳葦・智寛(蒼の射手・d20556)
    マサムネ・ディケンズ(乙女座ラプソディ・d21200)
    午傍・猛(黄の闘士・d25499)
    未崎・巧(緑の疾走者・d29742)

    ■リプレイ


     山陰地方の人里離れた山の奥。
     乾いた音を立てる葉を、時折、強い風が巻き上げる。

     この地域を統べるアンブレイカブルの道場では、今も灯りが煌々と灯され、建物が時折揺れるほどの激しい戦闘音が響く。
     この戦闘音は、アンブレイカブルの修行などではない。
     アンブレイカブルである勅使瓦・重鬼と、闇堕ちした灼滅者である館・美咲による死闘が繰り広げられている音の合間。
     道場前で身を潜める灼滅者の耳にも聞こえる。
     アンブレイカブルの男と少女のの怒号が……。
     灼滅者はただ黙って、その時が来るのを待った。
     決着の、その時を。
     激闘の末、ぴたりと音の止む瞬間が訪れたのは突然だった。
    「無念……」
     掠れた男の声の後、響いたのは、床に倒れる激しい音。灯かりも振動とともに揺れる。
    「……重鬼、中々骨のある男じゃったぞ」
     息も切れ切れに少女が倒れ散った男に敬意を表する。
     決着がついたようだ。ならば――。
     扉をあけ放った道場内部には、彼女ただ一人。この道場のアンブレイカブルはすべて黄龍のバトルスーツの少女――美咲によって灼滅され、消えたのだろう。
    「アンフェアな介入の仕方でごめんな。美咲っちこういうの嫌いだろう?」
     そう断りを入れつつも、マサムネ・ディケンズ(乙女座ラプソディ・d21200)は板張りの道場に上がりこんだ。
     続いたマーテルーニェ・ミリアンジェ(散矢・d00577)は、美咲を見据え。
    「力試ししませんか?」
     肩で息をしながら仁王立ちの末に振り返った美咲は、その言葉に一瞬だけ眉根に皺を作った。そして目を細めて鼻で笑う。
    「灼滅者が。お主等など、妾の敵ではないのじゃよ」
     地域を統べるアンブレイカブルをも死闘の末に倒せるほどの力が、己にはある。灼滅者が束になろうと、今の自分は倒せまい。
     だが、連戦となると分が変わってくることもわかっていた。
    「アンブレイカブルと同じように、わたしたちとも是非手合わせをお願いしたいんだけど、だめかな? 美咲ちゃんならきっと受けてくれると思って楽しみにしてるんだけどなー」 
     赤の強化装甲服に身を包んだ辰峯・飛鳥(紅の剣士・d04715)も、一歩、美咲に寄る。
    「美咲姉ちゃん滅茶苦茶強いからなー。今の美咲姉ちゃん相手だって、オレたちが束になってかかっても敵わないかもだし。だけど、お互い全力で目一杯ぶつかってみたいだろ?」
     緑の強化装甲服の未崎・巧(緑の疾走者・d29742)が美咲を誘うと。
    「お前さんにとっちゃあんなもんは小手調べだろ? 本番はこれからだ、たっぷり楽しんでくれや!」
     午傍・猛(黄の闘士・d25499)も黄色の強化装甲服を身にまとい、戦闘態勢をとる。
     月島・立夏(ヴァーミリオンキル・d05735)も武器を手に、美咲を見据える。
    「厳しい戦いは願ったり叶ったりっしょ? それにこの状況でもオレらにゃあギリギリッス、勝てる保証もねェ」
     片や、連戦のアンブレイカブル。片や、ダークネスには能力で劣る灼滅者8人。
     不利はお互い様だ。
    「でも、だからこその勝負じゃん、勝ちが決まってる戦いはただの蹂躙と変わらねェ」
     死闘の後ちゅう訳だが戦いはまだ続くんスよ。と、続け、武器を構えた。
     葛城・百花(デンドロビウム・d02633)は道場の引き戸をゆっくり閉めながら、黙って行く末を見守る。
     アンブレイカブルとの戦闘後でアンフェアな状況だが、皆の説得に美咲が応じてくれるかどうか……。
    「死闘を望むのならば今ここで決着をつけよう。よもや挑戦を蹴って逃げる無粋はすまいな?」
    「逃げる。じゃと……」
     青い強化装甲服を鳴らし巳葦・智寛(蒼の射手・d20556)が告げる。その挑発に、今まで黙って美咲の目つきが変わる。
    「この妾が? 逃げる? お主等相手に?」
     一方的に封殺されたり封殺したりするのは好んでいない。だけど、戦いに身を投じるものとして、ここまで言われて逃げることは、まさに恥ずべく行為。
    「灼滅者よ。そこまで言うのなら、存分に妾を楽しませてくれるのかえ?」
     ニッと口角を上げた美咲が得物を構えると、バトルスーツの隙間から漏れ出る黒いオーラを強く噴出させた。
    「妾は武の頂を目指す者。お主等など、手負いの身体で充分じゃ」
     連戦の疲れなど感じさせない笑みを浮かべて美咲は、武器を構える灼滅者を迎え撃つ。
     道場の四隅で揺れる裸電球が、ゆらりと揺らめいた。


     この戦いはただの力試しではない。
     美咲にとっては、己の武道家としての誇りを掛けた戦い。
     灼滅者にとっては、この目の前のアンブレイカブルから、灼滅者である館・美咲を取り戻す戦い。
     お互い、一歩も引く気はない。
    「おぉぉぉぉぉぉっ!!」
     吼える美咲は、得物の槍を振り回す。狙いは猛。
    「通さないよ!!」
     彼の前に飛鳥が立ちふさがり、螺旋の攻撃をもろの受ける。姿かたちは美咲そのものなのに、その重い攻撃にダークネスの力を感じ、思わず唸り声が漏れる。
     その脇を掠めて飛んだのは、マサムネ。
    「なぁ目を覚ませ、闇に堕ちた美咲っち……!」
     やっと見つけた戦友を連れ戻したい。その強い気持ちを唸る槍の穂先に込めて。
    「厳しい戦いがアンブレイカブルとしての心からの願いなのはもうわかった。でも充分戦い尽くしただろ?」
     穂がバトルスーツの脇腹を抉る。鮮血が散るが、美咲はそれを払いのけ。
    「……強い者を求めるのなら弱い者いじめはしたくねーだろ? 強さを目指すのならさ、またライブハウスで一緒に戦おうぜ!?」
     な? と説得する彼の言葉に返したのは、不敵な笑み。
    「まだじゃ、まだ妾は戦い足りぬぞ。武の頂は遥か彼方じゃてのぅ」
     狂気に笑む美咲を、仲間の陰にいた百花のロッド『春雷』が捕らえた。
    「真正面からぶつかるの、苦手なのよ」
     独り言のように呟き思い起こすのは、学園祭でのこと――。自分を楽しませてくれた彼女の姿。
    「アンブレイカブルと戦った後とはいえ、黒美咲っちが余裕があるのはわかってるッス」
     でも、美咲を連れ戻す機会は今しかない。いつもはチャラい立夏も、マジモードだ。
     サムズアップでイイ笑顔を見せると、
    「そのおデコに陰りナシッスから!」
    「……!」
     一瞬、美咲の体が揺らぐ。
    「コォォッ、波紋の呼吸ッス、嘘ッス!」
     その隙にオーラを癒しの力に変えて飛鳥の傷を癒す。
     ライドキャリバーのランスロッドはエンジンを吹かすと、息を呑む美咲を派手に跳ね上げた。が、空中で体勢を立て直した美咲は、軽やかに床に着地した。
    「……」
     さっきの動揺は……。美咲は胸を一瞬押さえたが。
    「美咲ちゃんが身を挺してわたしたちを守ってくれたおかげで、ガイオウガを倒せたんだ。だから、もういいんだよ。一緒に学園に帰ろう」
     ガイオウガを倒せたのに、その代償が大切な仲間の闇堕ちだなんて……。だから美咲は必ず連れて帰る。
     サイキックソード『PLBG-11 拾壱式光刃刀』に決意の炎を宿して、飛鳥は美咲に斬りかかった。
    「フィールドスキャン完了」
     炎を振り払う美咲目掛け、智寛が指先から生まれ出でるのは、魔法陣。
     払った犠牲は大きかった。だけど、ガイオウガが灼滅できたのも、闇堕ちしてまで尽力した灼滅者の犠牲の賜物。
    「これはその払った犠牲に対する清算だ。灼滅者の始末は灼滅者の手でつける」
     魔法陣から繰り出された圧縮された魔法の矢は、美咲の鳩尾を抉る。
     間髪いれずにマーテルーニェは己の影を美咲に伸ばすと、ナイフを形取らせて一気に突き立てた。それはマーテルーニェが思い描く強さの象徴。
     猛は己の拳に雷をまとわせる。
     ガイオウガを倒しても、そのせいで仲間が闇堕ちしてダークネスと化してしまうのでは元も子もない。
    「ここは一丁、ガツンとやってやるぜ!」
     美咲を救うために、この拳を振るうのだから――。
     危機を感じとっさに飛び上がった美咲を負って、猛も飛び上がる。
    「オォォォォ!」
     捻じ込んだのは気迫のアッパーカット。
     装甲服の硬質な衝撃音が床に響く。顔を上げた美咲の目の前に広がったのは、巧が放出する白い炎。
    「美咲姉ちゃん、こういうトリッキーなのもお好みなんだろ?」
     弾む声に、美咲はかっかと笑った。
    「お主等がここまで妾と渡り歩けるとは、正直、思っておらんかったわ」
     暗黒のオーラは、金色の龍の神々しさを増さんとさらに揺らぐ。
    「実に愉快。さぁ、思う存分死闘を繰り広げようぞ!」


     闇に堕ちた灼滅者は、強い。
     その暗黒の信念が燃えれば燃えるほど、攻撃は重くなり、灼滅者を翻弄する。
     だけど灼滅者には、伝家の宝刀がある。
     今はバイザーによって隠れている、美咲の額の話だ。
    「そんな黒いバイザーしてたらせっかく可愛いおでこなのに、もったいないよ!」
    「……ひっ、額は出ておっ」
     美咲の返しもそこそこに、飛鳥は光を帯びた剣で彼女に斬りかかる。本来なら避けきれたであろう攻撃をもろに喰らった。
     やっぱり。
     灼滅者の中で可能性が確信に変わる。
     額の話を出すと美咲の挙動がぶれるのは、きっと灼滅者である美咲が反応を示している確かな証拠に他ならなかったから。
    「……な、なんじゃ、この、心の揺らぎは……」
     ギリッと歯を軋ませた美咲は頭をぶんぶん振ると、ぎろり、バイザーの奥から灼滅者をにらんだ。そして手にしたのは、得物のロッド。
     吼え、駆け出す。目の前にはマサムネ。
    「……!」
     息を呑んで防御態勢をとる彼の前に出たのは、マーテルーニェ。
    「! マテ子っち!」
    「……通さないわよ、美咲さん」
     これは力と力の戦い。だから守り手は守ることに専念する。マサムネの声にも彼女はしっかり前だけ見据えていた。
    「美咲姉ちゃんのキュートでチャーミングなおでこ、もっと見せてくれよ!」 
     軽く言いつつ、巧は夜霧を発生させてマーテルーニェの傷を癒し、美咲の目を撹乱させる。
     その霧の中から飛び出したのは、ロケットハンマー『RH-07 七式推進装置搭載型粉砕槌』を構えた猛。
     ハンマーからは炎が噴射し――。
    「おうおう、デコのおかげでこの暗がりでもお前さんの位置がよくわかるぜ!」
     避ける隙さえ与えない。強烈な殴打が美咲を襲う。
    「額が広い事を気に病むことはない。それが良いという人間も存在する」
     晴れていく霧の向こう。智寛の声の後に響くのは、ガトリングガン『MGR-09 九式多目的機関銃』の連続射撃の銃声。
    「……ぐっ……」
     防御態勢をとりながら美咲は、たんと床を蹴って銃弾の雨を逃れる。
    「美咲さん、ダークネスとの戦いはこれからが本番です。それを逃してまさかそんなダークネスの好き放題行動させたりはしませんよね?」
     美咲の足が床に着くか否かの一瞬。マーテルーニェの縛霊手が美咲を掴む。
    「一緒に最後まで戦い抜きましょう」
     美咲の戦いに対する姿勢に尊敬している。そして彼女の耳にこの言葉は届いている。
     だから、彼女は応えてくれると信じている。
     この言葉だけでも。
     だんっと床に転げる美咲を見つめ、もう一言。
    「戻ったら四神型装甲服【黄龍】ですか?」
     楽しみにしてますよ。と、マーテルーニェはかすかに笑んだ。
     体勢を立て直す美咲は、ぐっと胸を押さえ――。
    「額が曇ってきたッス、フフン、疲労が見て取れるッ」
     立夏の声にはっと息を呑めば、ランスロットの機銃掃射。
    「満足したら美咲ちは返して貰うぜ、なァに退屈はさせねェッス!」
     縛霊手に炎を宿し狙いを定め。
    「燃えろ! リツカァッ!」
     叫び、しゃがみ込みから炎のアッパーを決める。
     飛ばされ際にぎりぎりで体勢を立て直し、美咲は床に膝を着く。
     このままでは、やられる。
     どこかの窓からでも……と周囲を窺う美咲を逃がすまいと、百花はダイタロスベルト『迅狼』で、彼女を穿つ。
    「美咲ちゃんとはあんまり長い間一緒に過ごしたわけじゃなかったけど、皆から親しまれてるのは良く分かってたわ」
     いままでの皆の奮闘を見ていたら、わかる。
    「私の無茶ぶりにも応えてくれたし……貴女みたいな良い子、ここで終わるには勿体ないもの。皆の為にも、戻ってきてちょうだい」
     転げてもなお必死に起き上がる美咲を、百花は陰のある瞳で見つめ。
    「その時はおデコ、磨かせてもらうわね?」
    「……! っ磨かせません!!」
     美咲は声に出してはっと口を手で覆う。
     灼滅者の誰もが確信する。
     後、もう少し。
    「いつだって光ってたぜ、美咲っちのおデコ!」
     以前も今も、これからも。
     マサムネはかなえていたバベルブレイカーで、美咲の額を思いっきり殴りつけた。
    「ぃ……たぁ!」
     声を上げて仰向けに倒れ込む美咲。
     衝撃でバイザーが床に転げ落ち、カラカラと音を立てていた。


     美咲が目を開けると、見えたのは木目調の天井と心配そうに自分を覗き込む仲間の顔だった。
    「……あれ、私……」
     起き上がる美咲のきょとんとした表情に、皆が安堵の笑みを浮かべる。
    「おかえり、美咲ちゃん」
    「おかえりなさい」 
     帰還の祝福の声に美咲は急に頬を膨らませる。
    「そうです、おでこの事はみんな聞こえてましたよ!」
     キュートでチャーミングだの、可愛いだの、広い事を気に病むなだの、光ってるだの、曇ってきただの、磨かせてもらうだの、好き勝手言ってくれてたのは。
     でも、それも、自分を闇から引き上げてくれた言葉だから。
     美咲は瞳とおでこをキラキラ輝かせて笑った。
    「でも、皆さんありがとうございました。ただいま……帰りました!」

    作者:朝比奈万理 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年11月20日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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