フェンスを蹴り跳躍した黒い狼が、向かいにある大都会のビル屋上に降り立った。
黒い焔を身に纏った狼は大きい。
普通の狼の数十倍はある巨大な体を大きく振るわせた狼は、深紅の三眼で地上を見下ろした。
煌びやかなネオンサインが輝き、ヘッドライトの川がゆっくりと流れていく。
そこにあるのは、人々の営み。
人々の営みにあるのは、身を潜めるダークネスの営み。
黒狼は目を細めると、鋭い牙を剥きだしにした。
光の海の向こうには、戦いが待っている。
戦うことは生きること。生きることは戦うこと。
目的などどうでもいい。目標などなくていい。
力尽きるまで戦い、暴れることこそ本望。
光の海へ飛び出そうと一歩踏み出した狼は、足元で鳴る鎖付きの足枷に目を落とした。
四肢を拘束していた名残の鎖は、無理やり引きちぎったように壊れている。
かつて炎道・極志と呼ばれていた頃の名残が、足枷として残っているのか。
押し留めるように重い足枷をひと踏みした黒狼は、三日月に向けて遠吠えをすると地上へと降り立った。
●
「ガイオウガ決死戦で闇堕ちしはった、炎道・極志はんが見つかったで!」
興奮した面持ちで集まった灼滅者達を見渡したくるみは、東京都心の地図を黒板に貼り出した。
「極志はん……黒狼が現れるんは、このビルの屋上や。黒狼は戦うことを目的にしとってな、皆が仕掛けたら逃走せずに戦うはずや。理性や知性がほとんどない、ある意味イフリートらしいイフリートになってはる」
戦いになれば体力が続く限り暴れ続け、戦いこそが全ての戦闘狂と化している。
四肢を鎖付きの壊れた足枷で繋がれており、完全にイフリートと化してはいないことを物語っている。
そのため、説得されれば自分が説得されている理由を思い悩んで行動が鈍る。
真正面からぶつかり、倒すことで帰還の可能性が出て来る。
戦場は、誰もいないオフィスビルの屋上。
戦うには十分な広さがあり、一般人もいない。
潜入も問題なく行えるはずだ。
黒狼のポジションはクラッシャー。
ファイアブラッドのサイキックに加え、炎を槍のように繰り出したり、炎で分身を造り出して攻撃させたりする。
「今はまだ足枷が残ってはるけど、これが壊れてもうたら、もう二度と戻って来れへんやろう。そうなったら灼滅するしか方法はあらへん。そうならんように、皆の力を貸したってや」
くるみは灼滅者達を見渡すと、ぺこりと頭を下げた。
参加者 | |
---|---|
神凪・陽和(天照・d02848) |
四津辺・捨六(泥舟・d05578) |
紅咲・灯火(血華繚乱・d25092) |
堺・丁(ヒロイックエゴトリップ・d25126) |
アンリ・シャノワーヌ(ヴゼットトレジョリー・d25247) |
仲村渠・華(琉鳴戦姫クールドメール・d25510) |
グレゴリー・ライネス(どこから見たって立派なゴリラ・d26911) |
日輪・黒曜(汝は人狼なりや・d27584) |
三日月に向かって遠吠えした黒狼は、灼滅者達の気配に悠然と振り返った。
陣を組む灼滅者達の姿に強敵の予感を感じた黒狼は、炎をより一層燃え上がらせた。
これから始まる戦いに、黒狼は楽しそうに口を開く。
後衛を薙ぎ払うように、漆黒の炎が放たれる。
「迎えにきたよ。一緒に帰ろう!!」と書かれたプラカードを掲げたグレゴリー・ライネス(どこから見たって立派なゴリラ・d26911)は、燃え尽き落ちたプラカードに目を見開いた。
コミュニケーションの手段を封じられてショックを受けるグレゴリーを元気づけるように、癒しの風が吹き抜けた。
構えたクルセイドソードから清浄な風を拭き渡らせた紅咲・灯火(血華繚乱・d25092)は、炎を鎮めながら黒狼を睨んだ。
「絶対に、連れ戻す、ですよ」
黒こげになった柄を見つめるグレゴリーの耳に、美しい歌声が響いた。
グレゴリーを勇気づける歌を歌ったアンリ・シャノワーヌ(ヴゼットトレジョリー・d25247)は、戦いの気配に三眼を輝かせる黒狼を真っ直ぐに見据えた。
「黒狼。……私の友人、返してもらいます」
アンリの静かな決意に歯をむき出しにした黒狼は、楽しそうに喉の奥を鳴らした。
獲物を品定めするかのような黒狼に、堺・丁(ヒロイックエゴトリップ・d25126)はスレイヤーカードを構えた。
「境を繋ぐ堺の守護ヒーロー、ここに参上!」
ヒーロー姿に変身した丁は、黒狼に真っ直ぐ手を差し伸べた。
「聞こえているかわからないけど、極志くん! 今助けるからね!」
差し伸べた手を握った丁は、その手にクロスグレイブを取ると一気に振り上げ、振り下ろした。
強烈な打撃に吠える黒狼に、仲村渠・華(琉鳴戦姫クールドメール・d25510)は、スレイヤーカードを解放した。
「青く煌く海の心! クールドメール参上!」
変身の勢いのまま大きくジャンプした華は、マテリアルロッドを振りかぶると一気に振り下ろした。
強烈な一撃が黒狼を捉え、痛みに唸った黒狼は、灼滅者達の実力に炎をなお燃え上がらせた。
口の中に炎を湛えながら唸る黒狼に、華は冷静に語り掛けた。
「炎道君、同じクラブのよしみで助けに来たさぁ」
「帰ろう炎道くん!」
日輪・黒曜(汝は人狼なりや・d27584)が放つ蜃気楼のように白い炎が後衛を癒し、その姿を白くぼやかせる。
白い炎を背にした四津辺・捨六(泥舟・d05578)は、灯火を守って炎を受けたライドキャリバー・ラムドレッドをねぎらうように撫でた。
「それじゃあ、始めるか。『灼滅灼葬!』」
叫びと共にスレイヤーカードを解放した捨六は、クロスグレイブを構えると砲口を開いた。
業を凍てつかせる氷弾を受けて不快そうに吠える黒狼に、捨六は頭を掻いた。
「ーーーと、今回は葬っちゃ駄目だった。まあ、そこは根性見せてくれると期待してるぜ炎道君!」
「僕の役目は、皆さんの刃を届かせること!」
榎木・葵(高校生シャドウハンター・dn215)は解体ナイフを握り締めると、黒狼の死角へと回り込んだ。
鋭いナイフに足の腱を傷つけられた黒狼は、楽しそうに葵を振り払った。
戦いを心底楽しんでいる黒狼に、神凪・陽和(天照・d02848)は右腕を半獣化させると拳を握り締めた。
「暴れる事だけが、生きがい……?」
仲間として過ごした沢山の時間が、陽和の脳裏にいくつもよぎる。
それら全てを否定するかのような黒狼に、陽和はキッと顔を上げた。
「あなたをそのままにするのは、同僚として許せません!」
握り締めた拳をほどいた陽和は、黒狼に踊りかかると力任せに引き裂いた。
引き裂かれた腿を舐めた黒狼は、低い唸り声を上げながら踊りかかった。
●
巨体に似合わない俊敏さで飛びかかった黒狼は、華に牙を立てた。
炎を帯びた鋭い牙が、華の頭を噛み砕こうと迫る。
咄嗟に腕で頭を庇った華は、腕に食い込む牙の痛みに小さくうめき声を上げた。
間近で黒狼と睨み合った華は、好戦的な目の奥にあるわずかな迷いを鋭く見て取った。
さっきの説得が効いているのか。痛みに歯を食いしばった華は、それでもエアシューズを起動した。
至近距離で回し蹴りを放った華は、一瞬緩んだ牙から腕を外すと距離を取った。
「……生きることが戦いだってんなら、まず自分の闇(ダークネス)と戦いなよ!」
「極志くんも私たちのことを思い出して! 極志くんは無闇に暴れるような人じゃなかった!」」
Dragon Heartを起動させた丁は、流星の重力と共に黒狼を蹴り抜いた。
黒狼に掛けられる丁の声に、黒狼は感情を見せない声で唸る。
体に纏う炎が、少しだが小さくなった気がした。
少しずつだが、説得の効果がある。膝をついた華にラビリンスアーマーを放った捨六は、続く仲間を振り返った。
「盾役は任せろ! あっちに負けない高火力な説得を頼むぞ、みんな!」
捨六の激励に力を得た灯火は、華に癒しの矢を放つと唸る黒狼に声を上げた。
「……生きることは戦うことだけなんかじゃ絶対にない、ですよ」
「戦い抜いた先は辛いだけだよ……。戦い以外にも、楽しいこともいっぱいある」
声と共に放たれた黒曜のレイザースラストが、黒狼を大きく切り裂いていく。
何とか立ち上がった華は、エアシューズを起動させると宙に舞い上がった。
重力を帯びた蹴りを浴びせ、着地した華にアンリの歌声が響いた。
まだ腕を庇う華に「無理をするな」というように歌声を響かせたアンリは、改めて黒狼と向き合った。
「こんな炎を辺りに撒き散らすだけような燃え方は、極志さんには似合わないです」
皆の説得に足を止める黒狼を、陽和は真っ直ぐに見据えた。
炎血部に属する以上、部の掟である「闇堕ちはしない・させない・頼らない」はあの決死戦の状況から言って、守るのは困難だったかも知れない。
「……闇堕ちを決断した勇気には敬意を表します。だから、必ず連れ戻します!」
対具「凰」を構えた陽和は、真っ直ぐに伸びる影を黒狼に放った。
影に囲まれ、黒狼は大きな咆哮を上げた。
どんなトラウマを見ているのか。苦しそうに呻く黒狼の炎が、惑うように揺れた。
「あなたの帰還を阻むものを、裂いてみせましょう!」
黒狼の死角に回り込んだ葵は、鋭く解体ナイフを振り上げた。
鋭いナイフが毛皮を裂き、防護を弱らせる。
少しだけ揺らぐ黒狼を前に、グレゴリーは立った。
頼りにしているプラカードはそこにない。
思うように喋れないもどかしさ、情けなさ、そして仲間を助けたいという強い思いがない交ぜになり、声が喉を突いて出る。
「……ぇ…ェン、どぅ………炎道さん!」
おそらく初めて聞くであろうグレゴリーの肉声に、全員の視線が集中した。
●
「迎えにきたよ。一緒に帰ろう!! 炎道さん言ってくれたよな、俺が落ち込んでボロボロになってた時、力になるって、助けになってくれるって、頼ってもいいんだって!!」
グレゴリーの心からの叫びに、黒狼の炎が驚いたように揺らいだ。
警戒するような黒狼に、グレゴリーは続けた。
「嬉しかったよ、すごく救われたんだ。だから……今度は俺が助ける番だ!!」
決意と共に放った影業が、黒狼を縛りつける。
新たな足枷のように纏わりつく影に体を大きく震わせた黒狼は、炎を逆立てた。
咆哮と同時に、三体の黒狼が生まれ出た。
分身は黒狼の意思を受け取ると、獰猛な牙をむき出しにしながら後衛に向けて突進した。
そこへ、一人と一台が駆け出した。
グレゴリーを庇い、幻影の黒狼の炎を受けたシーサー君が弾き飛ばされる。
黒曜を庇い、黒焔の牙を受け止めたアンリは、黒焔を一振りで消し去ると黒狼を真っ直ぐに見つめた。
「目標に向けて全力で、ロケットのように一直線に、爆発するように向かってこその極志さんです」
「MMのみんな、心配してまってるよ♪」
アンリの後ろから駆け出した黒曜は、ダイダロスベルトを放った。
真っ直ぐに伸びるダイダロスベルトは迷いなく黒狼に突き刺さり、揺らぐ炎を大きく傷つける。
「思い出して。学園祭、皆で演劇やったよな。集まって、たくさん練習して、ライブ&ゲーム部門で優勝もしたよな。もっともっとたくさん楽しい思い出あるだろう?」
影業から伸びる影が、引きちぎられた鎖の代わりのように伸びる。
丁のライドキャリバー・ザインに守られた灯火は、グレゴリーの肉声に少し驚きながら、分身の攻撃を受けたアンリに癒しの矢を放った。
癒しの光を帯びた矢が、アンリに当たる寸前に消えて力となる。
「皆と一緒に学園で極志くんが楽しく笑ってたのを私、ちゃんと知ってる、です」
「戦う以外にも、灼滅者には人として日常生活を送らねば」
対具「凰」を構えた陽和は、伸びる影で黒狼を捕らえた。
引き止めるように縛る影から逃れようと、黒狼は大きく跳躍した。
距離を取り、威嚇する黒狼の後を追うように、丁はクロスグレイブを構えた。
丁が手にした巨大な十字架の砲塔から放たれる弾が、黒狼の業を凍てつかせる。
「思い出して! 皆でいろんなことしたよね! まだまだ遊び足りないよ!」
「華達だけじゃない、他のみんなだって心配しているよ!」
痛みの残る腕で放った華のフォースブレイクが、容赦なく炎の毛並みを打ち付ける。
「早く、帰ってきてください!」
葵が構えた解体ナイフの先から、猛毒の弾丸が放たれる。
大きく後ずさる黒狼の追撃はせず、捨六は交通標識を構えた。
「回復は任せろ!」
「攻撃注意」と書かれた黄色い交通標識から溢れ出す黄色い光が後衛を癒し、体調を整える。
決してあきらめない灼滅者達に、黒狼は炎の槍を生み出した。
●
螺旋状に伸びた焔群が、華に向けて放たれる。
衝撃を覚悟した華の前に、神之遊・水海が割って入った。
炎でできた黒狼の攻撃を受け止めた水海は、痛みに脂汗を浮かせながら黒狼に向かって叫んだ。
「炎道さんの炎はもっと熱かった! 心の奥まで熱くなるんだから! だからこんなモフリートに負けないで! 一緒に武蔵坂に帰ろう!」
「いつまでそこに閉じこもっているんだい、極志くん。君はそんなところで止まる程度の男じゃあないだろう?」
フードを脱いだ空月・陽太は、真剣に黒狼に語り掛けながら水海へラビリンスアーマーを放った。
「まだまだ終わらないよ、私達」
セイクリッドウインドで癒した有星・冷泉は、MM出張所のことを思いながら語り掛けた。
「だから戻ってきて」
サポートの説得に、黒狼は大きく頭を振った。
迷いを見せる黒狼を、九形・皆無は叱りつけた。
「炎道さんっ! 貴方は一体こんな所で何をしているのですか! 目を凝らしてよく見なさい、今貴方の目の前に居るのは貴方の敵ではないでしょう」
一歩下がり、場所を譲った皆無の前に、炎導・淼が立った。
「望まなくても、俺達がお前の大事な鎖の一つになって縛って連れて帰るけどよ、一応聞いとくぜ」
淼は、傷ついた拳を黒狼に掲げた。
「極志が望むなら、もう一度縛られに帰って来い! 今なら拳骨1発で許してやるからよ!」
「帰ってきたら模擬戦しようや、ルール決めてな」
気軽に、あくまでも平常心を保ちながら語り掛ける東・啓太郎は、鍵開けに使ったヘアピンをくるりと回した。
説得の言葉の数々に、炎の勢いを緩めた黒狼は低い声で語った。
「……タカガ足枷ニ、ナゼソコマデ拘ル?」
ぶっきらぼうに言い放つ黒狼に、捨六は頷いた。
「残念ながら縁は薄いが、俺の分までガイオウガと戦ってくれた戦友だ。今度はこっちがサポートに回る番だろう」
「そうだよ! 協力してくれてる人だっているんだから!」
サポートしてくれる仲間達を振り返った華の言葉を継いで、グレゴリーは拳を握り締めた。
「思い出して。学園祭、皆で演劇やったよな。集まって、たくさん練習して、ライブ&ゲーム部門で優勝もしたよな」
握り締めた拳の中に、交通標識が現れる。
赤く輝く愛用のプラカードに、黒狼は初めて臆した様子を見せた。
「もっともっとたくさん楽しい思い出あるだろう? こんな所で戦ってるだけが全てじゃないだろ!!」
「闇堕ち禁止」と書かれた愛用のプラカードが、渾身の力で振り抜かれる。
叫び声のような声を上げて下がった黒狼に、灼滅者達は畳みかけた。
大きくジャンプした華は、重力を帯びた踵を黒狼の脳天に叩き付けた。
「生きて戻って、またクラブで馬鹿騒ぎしようよ! みんなで!」
「負けないよ! 絶対極志くんを連れ戻すんだよ!」
華と呼吸を合わせて黒狼の懐に潜り込んだ丁は、俯いた黒狼の顎を上向かせるようにクロスグレイブを叩き付けた。
掬い上げるような顎への一撃に、黒狼は脳震盪を起こしたようにふらつく。
そこへ、黒曜のガトリングガンが火を噴いた。
「帰ろう炎道くん!」
思いと共に放たれる無数の弾丸が、黒曜の胸元に突き刺さる。
無数の弾丸の止めとばかりに、氷の弾丸が放たれた。
「炎血部の不死鳥の誓いを、もう一度誓い直しますよ!」
陽和が構えたrosa misticaから放たれた弾丸が、黒狼をクールダウンさせるように胸を凍りつかせた。
息を詰まらせたかのような黒狼が見せた隙に、アンリは天使のような歌声を響かせた。
美しい歌声は灯火を癒し、深い傷を癒す。
少し落ち着いた灯火に安堵の息を吐いたアンリは、黒狼を真っ直ぐに見た。
「あなたの希望と意志は、まだ燃え足りないでしょう!」
「だから、また皆で帰る、ですよ……皆の所に、ですっ」
後衛にセイクリッドウインドを放った灯火は、震える足を叱咤しながら立ち上がった。
説得と戦う意思を強く持つ仲間に、捨六は交通標識を構えた。
黄色い光が後衛を包み込み、傷を優しく癒していく。
「皆に説得の余裕ができるようにサポートするのが、俺の役目だ」
捨六の言葉に、黒狼は腹立たしげに足枷を踏みつけにした。
何故、この足枷が大事なのか。
疑問を振り払った黒狼は、闘志の炎を燃え上がらせると鋭い牙をむき出しにした。
「戦イコソ全テト知レ!」
屋上を蹴った黒狼は、灼滅者達に踊りかかった。
●
戦いは続いた。
黒狼の攻撃を庇いながら、厚い回復で戦線を維持した灼滅者達は、説得の言葉を更に重ねていった。
遠吠えを上げて回復を図ったが、バッドステータスは徐々に累積して黒狼の行動を阻害していく。
何故、灼滅者達は黒狼を説得しようとするのか。
その理由を見いだせないまま、戦いは最終局面へと移行した。
炎の勢いを弱らせた黒狼に、灯火が斬りかかった。
「こういう血の流し合いはあまり好みじゃないのですよー?」
血溜りの領地を振るった灯火は、赤くなった影で斬りかかった。
回復専門と思われた灯火の攻撃に、黒狼が一瞬動揺する。
その隙を突いたアンリは、エアシューズを起動させると一気に蹴りかかった。
「友達だけは、譲りません!」
「帰ろう、炎道くん!」
勢いの弱まった炎を裂くように、黒曜のダイダロスベルトが黒狼を切り裂いていく。
ゆらり、と揺れた黒狼を、金色が照らし出した。
rosa misticaに纏わせた黄金の炎が、黒狼の頭上に迫る。
「さあ、そんなところで腐ってないでさっさと戻ってきなさい!!」
真正面から拳骨のように頭上に放たれた一撃に、無傷の足枷が揺れる。
最後に大きく咆えた黒狼は、ついに倒れた。
目を覚ました極志は、周囲にいる仲間のホッとした笑顔に声を上げた。
「ここは……?」
まだ本調子じゃない極志に、灯火は笑いながら手を差し出した。
「おかえりなさい、です」
灯火の手を取り立ち上がった極志は、微笑む仲間に頬を綻ばせた。
「――ただいまっす!」
いつもの口調に戻った極志に、皆が祝福の声を掛ける。
三日月が見守る中、一人増えた灼滅者達は帰途についた。
作者:三ノ木咲紀 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
|
種類:
公開:2016年11月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
|
||
得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
|
||
あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
|
||
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|