芸術発表会2016~書いて描いて詠みあげて

    ●秋の風物詩
     芸術の秋。
     武蔵坂学園の秋を彩る芸術発表会に向けた準備が始まろうとしていた。
     部門ごとに芸術のなんたるかを競う芸術発表会は、武蔵坂学園の秋の風物詩である。
     灼滅者達にとって、大きな戦いが続いて忙しい中ではあるが、それでも自らの芸術を表現し、芸術の秋を楽しむことを忘れてはならない。

     今年の芸術発表会の部門は『写真』『詩(ポエム)』『人物画』『書道』『総合芸術』の5つ。
     芸術発表会に参加する学生は、これらの芸術を磨き上げ、一つの作品を作りあげるのだ。

     芸術発表会の優秀者を決定する11月25日に向け、学生達はそれぞれの種目ごとに、それぞれの方法で芸術の火花を散らす……!

    ●誰でもアーティスト!
    「芸術の秋だな! やるか吠太!」
    「やる気っすねー」
     初雪崎・杏(高校生エクスブレイン・dn0225)から芸術発表会参加に誘われた狗噛・吠太(中学生人狼・dn0241)は、ちょっぴり困ったような笑顔になった。
    「そうか、吠太は美術の成績が悪かったな」
    「ズバリ言うのは無しっす!」
    「まあまあ、テストではないし、やってみると楽しいぞ? それで今年は5部門か。私は『詩(ポエム)』、『人物画』、『書道』、『総合芸術』のどれかにしようと思っているが、吠太はどうだ?」
    「そうっすねえ……『詩』部門は、思いの丈をこめたオリジナルの詩を披露するんすね。テーマは自由。発表方法は、朗読か歌のどちらかっすか」
     日頃思っている事や、誰かに対する想いを、詩という形で表現するのだ。発表の際には、楽器を使って盛り上げても構わない。
    「『人物画』部門は、恋人や友達とか、自分の大切な人の絵を描くんすね」
     相手を思い浮かべて1人で取り組んでもいいし、相手と一緒に作画に取り組んでもいい。これを機に、気になる相手を誘ってみるのもいいかもしれない。
     クラブなど複数名での参加なら、モデルとなる仲間を決めて、絵の出来栄えを競うのも面白そうである。
    「3つ目は『書道』っす」
    「他の部門もだが、『書道』も1人1作品だぞ」
     特にお題となる文字はない。文字選びの時点で、既に戦いは始まっていると言っていい。書く際の服装やパフォーマンスに凝ってみても楽しそうだ。
    「それで『総合芸術』は……なんでもありっすか?」
    「まさに芸術の闇鍋だ。例年だと爆発だとか、RB的な作品も少なくない」
    「リア充爆破っすね……」
     芸術は爆発、という偉大なる先人のお言葉にならっているということか。もちろん、別に爆発限定ではないので安心して欲しい。
     どの部門も、1人でじっくり作品と向き合うもよし、みんなでわいわい取り組むもよし。
    「これで優秀な作品を仕上げた人が、芸術発表会当日にPTAの偉い人達に披露されるんすよね」
    「ああ。だが、大切なのは技術の優劣だけじゃない。作品にこめた思いや、作品を届けたい相手への思いだ」
     力強く語る杏に、吠太が羨望の眼差しを向ける。
    「初雪崎先輩はきっと絵心あるんすね……自分はあんま成績よくないんで羨ましいっす」
    「絵心? 私はただ、自分の感性に従っているだけだ。そのせいか、成績にはムラがあるが……どうした吠太、吹っ切れた顔をして」
    「いや、細かい事気にしてた自分がバカだったって気づいたっす。芸術ってつまり、当たって砕けろってことっすよね!」
    「ちょっと違う気もするが……まあ、やる気が出たならいいか」
     そう、最初から上手に作ろうと気張る必要はない。自分の内に秘めたる思いを、ただ自分なりに表現すればいいのだ。
     そんなわけで、みんなもレッツ芸術!


    ■リプレイ

    ●詩部門
     【星空芸能館】の今年のテーマは『希望』。
     1つよろしくお願いします、とウクレレを奏でる流希。
    「過行く待ちの足音が 色々載せて響いてく 私も一つ、貴方も一つ 違う音を響かせる
     奏でる音楽は何を示す? 明日の楽しみ? 今日の悲しみ? 誰かを探して迷う音?
     誰もが何かを求めて音を出す 誰の色んな思いを載せて、その音束ねてあなたの心に希望の花束プレゼント」
     詠み終えた流希の顔は、少し恥ずかし気。
    「次は俺の語りを聴きやがれーっ」
     ファルケはギターで、ゆっくりと弾き語る。
     タイトルは『自らの手で切り開け』。
    「希望なんてありゃしない、
     望んだだけでは何も叶わない、
     祈る前に自ら行動、
     見たこともない神様なんて、
     当てにしても何も変わらない、
     自身で考え、前へ進め、
     仲間に頼るもいいが最後に決めるのは自分。

     それが自分にとっての希望となる。

     神頼みってのは悪くはないが、
     最後に頼るは自分の力ってやつだな」
     ファルケの熱い演奏は、聴く者の心をも燃やすだろう。音痴なんて知った事か!
     続いて徒が謡うは、ずばり、『希望』。
    「いつか夢に見たものは、
     遥か遠い地の彼方。

     不安にかられ、
     足が止まる日もある、
     傷つき疲れ、
     下を向く時もある。

     顔を上げて前を向け、
     そこに何も見えなくとも、
     足を出して腕を振れ、
     そこに何かが待っている・

     一歩でも先へ、
     一秒でも早く、
     時は止まらない 未来へと、
     世界は変わり行く 昨日から、
     進み続ける その意思が、
     明日を繋げてゆく、
     夢を、現にする」
     部長をはじめ、闇堕ちした仲間達がこの場にいないのは、寂しい。
     だからこそ、仲間達の分まで盛り上げようと、徒は思うのだ。
     そんな仲間達の演奏を眺めていた流希は、ふとひらめきを得る。
    「『木枯らしに 耐えて誇れよ 希望花』……こっちの方が私的にはしっくり来ますねぇ……」
     思いを紡ぐ皆の姿こそ、希望そのものだ。

     放課後の軽音部部室には、くるみと音色の2人。
    「くるみちゃんのことを考えた詩、頑張って作るね」
    「音色ちゃんのための詩……がんばるもんですよ♪」
     互いを思う気持ちで紡いだ詩を、メロディに乗せる。
     くるみの詩のタイトルは、『Tone of the crystal』。アコースティックギターの演奏と共に歌い上げる。
    「キミが奏でるメロディ、
     色づきだす世界、
     キミと奏でるメロディ、
     輝きだす世界、
     優しく、温かく、美しい、
     透き通った音色、
     キミと出会えた奇跡で、
     世界が生まれ変わる、
     キミが奏でるメロディ、
     キミと奏でるメロディ……」
     音色の詩は、『My Dear』。
    「君が教えてくれた、
     陽だまりで笑い合う暖かさ、

     音を奏でるその意味、
     誰かを幸せにできる喜び、

     『がんばるもん!』って君の笑顔が咲く、
     だから私も前へ進める、
     大好きな君に、今、『ありがとう』を贈るよ、

     共に紡ごうよ、幸せの歌、
     今までも、今も、これからも、
     それがきっと生きる意味だから、

     私と君とで生み出すハーモニー、
     みんなみんな元気になぁれ、
     世界中へ届け!」
     音色のピアノの音に、くるみのギターのそれが重なる。
     今年も2人で演奏できる嬉しさを溢れさせながら。

     練習だろうと、遥香がこめる心は本番と一緒。
    「しっぽ しっぽー、
     ガイオウガの 尻尾ー、
     大きなリボン 結んで あげよう、

     アカハガネ ヒノコー、
     ヒイロカミー、

     可愛いしっぽー、
     尻尾ちゃん、

     しっぽ しっぽー、
     ガイオウガの 尻尾ー、
     すやすや眠り 大きく 育てー、

     シラミネ ツイナー、
     アカトラミサキー、

     夢見るしっぽー、
     尻尾ちゃん、

     しっぽ しっぽー、
     ガイオウガの 尻尾ー、
     みんなの想い 未来へ 届けー、

     チャシマ エンジュー、
     イヌガミヤシキー、

     希望のしっぽー、
     尻尾ちゃん、

     しっぽ しっぽー、
     ガイオウガの 尻尾ー、
     大きなリボン 結んで あげよう、

     リボン リボンー リボン リボーン、
     リボン リボンー リボン リボーン」
     これぞ、【ガイオウガの尻尾ちゃんのうた】。

     ニアラが、自嘲と冒涜を込めて朗じる詩、その題……【餓えるもの】。
    「未知。
     既知なる世界に存在する、超越の域。
     域は俺に息を齎し、活きる糧を孕み続ける。
     されど。俺は未知に遭得ず。
     道を外れて。探索せねば。
     闇への探求は覗く事柄。
     未知こそが甘美なる恐怖の種!
     餓(かつ)えるのだ!
     恐怖『種』を育む未知『栄養』を。
     宇宙的恐怖の棘在る花を。
     ああ。俺は未だ。光の中に」
     悦に浸り、肉体を震わせて。
     だが、それでも。
    「暗唱は完璧だが、迫力が足りない……」
     己が欲望を。隠れた真を。
     狂おしいまでの、未知への渇望を。
     黒に輝く多面体を掲げ、ニアラは詩を吐く。吐き続ける。

     夕方の教室。
     ギターの旋律に乗り、しっとりとした弾き語りが響く。
     お腹をすかせた残暑である。
    「明日のばんごはんを考えよう、
     明日のばんごはんはなんだろな、
     今日を元気に生きて行けば、
     明日はきっと良いばんごはん、

     今日のばんごはんを考えよう、
     今日のばんごはんはなんだろな、
     明日も楽しく生きて行けたら、
     明日のご飯も良いばんごはん」
     タイトルは、『明日のばんごはん』。
     最近大変な事ばかりだが、明日のご飯を皆で笑って食べられるのなら、きっとどうにかなる。そんな思いをこめながら。
     頑張って練習したら、帰途に就こう。そう、ばんごはんを食べるために!

    ●書道部門
     上は白色の着物、下は黒色の袴に身を包み、練習に勤しむ零花。
    「にゃー」
     励ますように鳴いたソラの首には、『一期一会』と書かれた紙がぶら下がっている。お手本である。
     習作の数は、10枚にも達しただろうか。
    「……つきあってくれてありがとうね」
     ソラへの感謝。零花の、表情の乏しかった口元が、その時だけ笑みの形になる。
     そして、再び着替えに移る。上が白色、下が黒に近い紺色の袴。
     いよいよ本番。本命の1枚を書く時。
     胸に『ここで出会った縁への感謝』を秘めながら。

     鶉は、日々、書の練習を欠かさずにいた。それは、自分の技量に納得がいくまで続いた。
     直前には、東北は岩手の寺院へと赴き、精神力を高めた。
     そして、いざ。
     眼を閉じた鶉の脳裏に浮かぶのは、自らが部長を務める『-Feather-』の仲間達の顔。
     学園に来てから経験した数多の戦い。死線をくぐり抜けてきた時、傍にはいつも大事な仲間がいた。
    (「本当に私は素敵な仲間に恵まれたもの――」)
     口元に微笑を浮かべつつ、ただ一文字を記す。
     『絆』。
     願わくば、これからも大切な仲間と素晴らしい時を。

     机の前に、正座する木乃葉。
     既に真っ白な行衣に着替え、冷水を浴びて身を清め終えている。
     墨を硯に擦りながら、精神を落ち着ける。
     そして細い筆を手に取り、向きあう半紙にしたためるは……般若心経。
    (「これから先、戦いはより厳しくなっていきますからね……」)
     ガイオウガとの決戦を経て、次なる相手はシャドウ。誰もが無傷ではいられまい。
     だからこそ、皆の無事と安全、闇堕ちした仲間の帰還を祈願し、一文字一文字、丁寧に書いてゆく。
     果たして、その出来栄えは。
    「うん、まぁ……下手なボクにしたら……綺麗に書けた方なんじゃないでしょうか……?」

     筆をとる、優奈。
     書道といえば、小学生の頃に習い事で母親にやらされていた時以来だが、うまくいくだろうか。いや、何事もやってみなければ。
     止めと跳ねを意識する、その点を心に留め、書かれた言葉は。
    「『日進月歩』、っすか」
     吠太が、その四文字を読み上げた。
     変化を続ける日常と共に、優奈自身も成長していきたい。この言葉を選んだのは、そんな思いからだ。
     だが、選んだ理由は、それだけではない。
    「実は、最近の時代の流れに少々ついて行けていない感じがしていてな、油断しているとあっという間に取り残されてしまいそうだ……おい、誰がババくさいだって……?」
    「な、何も言ってないっすよ!?」
     吠太が慌てて手を振った。

     悟がダイナミックに書き上げたのは、『一』。
    「っしゃ! 『ちょいさー』の完成や!」
     手で鼻の下をこすった拍子に、墨が付くのもおかまいなし。
     昨年まで書いて来た『ちょ』『い』『さ』と合わせれば、クラブ名の完成だ。
     それらは、年ごとの気持ちの頭文字でもある。『ちょ:ちょうイケとる』、『い:一緒にささえあう』、『さ:さっと駆け抜ける』。
     今年は『一:始めに戻る』。最初の文字を書いた頃から色々あった。今こそ初心に戻って自分を見つめ直し、後悔しないよう進んでいきたい……そんな悟の思いがこめられている。
    「一度しかあらへん今、一度しかあらへん唯一無二の一生の今や」

    ●人物画部門
    「今年はどんな風に描いてくれるんすか?」
     膨らむ期待を胸に、モデルとして座る菜々。その視線の先には、式がいる。愛しい人、大切な人だ。
     式とてその気持ちは同じ事。今日の為に、一年間絵の勉強をしてきた。恋人に恥などかかせないよう、一生懸命菜々の絵を描こうと、決意は固い。
    「菜々は座ってるだけでいいよ。寝てても良いし、楽にしてて。なんなら、僕の膝に座る?」
     ぽむん、と自らの膝を叩く式。
    「お言葉に甘えて……って、それじゃあ式が絵を描けないっすよ」
     でもそれで素敵な絵が描けるならいいかもしれないっすね、と菜々は笑う。
     それでは改めて。
     筆を執り、描画に没頭する式。頭の中は、菜々の事でいっぱいだ。集中、集中……。
    「真剣に絵を描いてる式も格好いいっすね」
     ふとこぼした菜々の言葉に、式の筆が滑りそうになったとかならないとか。
     さあ、どんな出来栄えになるっすかね。わくわくの菜々。
     待つ時間でさえも、今は楽しい。

     『総合芸術』の一環として、馬頭琴を奏でるカンナ。
     全身全霊をこめたパフォーマンスをする義娘こそ、雁之助のモデルだ。
    「うん、うちのカンナが一番楽しそうなのは演奏してる時だしね。まあ、全身全霊を持って家の娘の可愛らしさを表現してみせるんだなー」
     静かに始まったカンナの演奏は、徐々に激しさを増していく。一時の沈黙を挟み、悲しげな曲調に変貌するも、やがて穏やかな曲調へと。最後は、明るく楽しげに締める。
     それは、『病院』に所属し、仲間を喪い、学園に合流し、そして平穏を得る……カンナのこれまでの人生そのもの。自分を育ててくれた雁之助への感謝の想い、『病院』の仲間達への哀悼の念、学園と出会えた事の喜びと感謝が、この曲の中に籠っているのだ。
     そんなカンナの姿を描き終えた雁之助は、絵を元に、切り絵を作っていく。
     それに光を当てると、どうだろう。羽がカンナの背中に生え、翼が舞い散るような影を生んだではないか。
     様々な質の紙を使い分け、加工する事で、雁之助はそれを実現したのだ。そんな創意工夫も、大切な大切な義娘への愛のなせる技、であろう。

    ●総合芸術部門
     今年も、三線片手に民謡を弾き語る弥勒。
     昨年まで演奏メインで参加し続けていただけあって、その腕前は確かなもの。通りすがりの生徒達も、思わず耳を傾ける。
    (「やっぱり、三線は歌いながらが本領発揮だよねー♪」)
     選んだのは、王道、郷愁歌。ゆったりとしたリズムが心地よい。
     ふと奏でる手を止め周りを見れば、発表会に向け、練習や準備に勤しむ生徒達がちらほら。
    「迷惑じゃなければBGM代わりに、なんか適当に弾いてくよー? リクエストあるー?」
     弥勒が、笑顔で三線を鳴らした。

     今年の【糸括】も映画撮影。
     では明莉君、タイトルをどうぞ!
    「『君と僕の妄想ヒーロー☆メイド戦隊ウサミミ……』」
    「『純愛大ロマンス巨編 糸括のきらりん☆ウサミミ5 ひよこたんは渡さないっ♪」』で♪」
    「上書きされた!?」
     監督権限で題名変更したミカエラの今年の縛りは、『膝上13センチ』。
     皆の膝にマジックで線を引き、厳しいチェックを終えたら、演技スタート!
    「きゃあああ。たすけてーっ♪」
     全長15メートルのひよこ(着ぐるみ)の中から響く、杏子の悲鳴。
     その前に迫るは、お猿の着ぐるみを着用した理利。永遠の申年を叶える為に、酉年の象徴、ひよこたんをさらうつもりなのだ!
    (「シリアス、シリアス……!」)
    (「さとり先輩っ、そのお姿ではムリゲーなのよっ」)
     自称シリアス理利お猿は、杏子ひよこの巨体を見上げ、こう懇願する。
    「どうかおれの元へ来て下さい。ひよこマスターの名にかけて、オスメス判別つけましょう」
    (「!! そういえば、先輩は、ひよこの仕分けもこなす、ひよこマスター!」)
     お猿のひよこ愛に、ひよこたんも思わず前のめり。だが!
    「お猿め、来年も干支の座を譲らないとは人間の風上にも置けねぇ……って、そいや猿か」
     高所から現れる明莉の傍らには、4つの影。
     その1つは、黒い忍び装束、犬の面。戌年よりの刺客、脇差だ。
    「ささ、ここでテーマ曲! 色々演出指導はあかりん任せたっ」
     カメラ付ヘルメットのミカエラの指示と同時に、軽快なBGMがどこからともなく流れる。変身アイテム『大亀の甲羅(10kg)』を抱え上げ、明莉、変身!
    「♪変身しちゃうゾ☆ 揺れるミニスカ フリル丈は13センチ♪」
    「女子力ってすごいね」
     ノリノリで歌う和奏を見て、輝乃が、ぽつり。
    「だって今日のあたしは女子力の塊ですから!」
     ドヤ顔和奏が変身するは、凶悪女子力わかなっち。ウサミミと膝上スカートでキメ。色はもちろんピンク中心。
    「アイツのハートをK・O!しちゃい隊!♪ ウ・サ・ミ・ミ・5っ!(5っ!) そこ! KO! の声出てないヨっ」
    「絶対ワザとNG出してるだろ!?」
     明莉の指導に、赤面する千尋。
     恥ずかしいの? なんて問う輝乃は、真面目に大きな声で歌ってた。っていうか、歌の内容を理解してない。

    「琶咲はそこでかわゆくWink☆ こうっ!」
    「えぇっと、こう?」
     ぎこちなさが一周回って可愛い輝乃は、和風ミニスカドレスをまとって、キュアなでしこへ。顔の右側に、お面も忘れずに。
    「わっきちゃん絶対領域は確保してよねもおっ」
    「……野郎の絶対領域って誰得だよ」
     遠い目の脇差は、くるくる回ってウサ耳しゃきーん。黒×白基調のキュアコスチュームは、ひらひらミニスカート、ニーソとブーツ。
     そして、千尋ことウサミミブラック。かつて敵であったがなんやかんやあって仲間になった追加戦士である! 以上説明終了!
    「黒キュア? おかしいな、俺の方が可愛い」
    「何? 今日のあたしはキュアコスチュームだぞ! 可愛さで男子に負けてたまるかー!」
     真顔の明莉に負けじと、プリンセスモードを発動する千尋。
    「咬山が本気出しただと!? く、やるしかないのか……ぷ、プリンセスモード!」
     ヤケクソヤンデレ風味の脇差も加え、5人揃ってポーズ、ばしっ!
     目のやり場に困る理利お猿。主に男子2名のせい。
    「お猿さん、ひよこたんの方がいいの? あたしのこと、可愛いって言ってくれたのは嘘だったの!?」
    「えっ、わかなっちにそのような事を言った覚えは……」
     女子力に動揺するお猿。
     なんかもう色々振り切った脇差も、訴える。
    「犬好きだって言ったじゃない、あれは嘘だったの猿野郎!」
    「プリンセス犬野郎さんはそんな格好で何を言って……ともかく、ひよこたんは渡しません!」
     そして始まるバトル! 翻るミニスカ! まぶしい太もも!
    「あー、らぶロマンスだからね! 破廉恥禁止でっす。糸括くおりてぃ意識して~」
     ミカエラの演技指導!
    「このヒラヒラはやっぱり抵抗あるな……」
    「ちひろ先輩っ、カッコいいなのっ♪」
     コスチュームを気にしつつアクションする千尋へと、手を振るひよこ。
    「ん、いいねいいね~♪ 戻ってきたみんなも、参加できなかったの悔し……あ」
     ぐしゃあ。
    「み、ミカエラが潰されたぁ?!」
     ひよこが監督にダイレクトアタックを決めていた。
    「ちょっ、キョン、止めてー!?」
     輝乃の制止もむなしく、ひよこは杏子の制御を離れ、大・暴・走!
     間一髪、輝乃に引っ張られた脇差は、思わず胸キュン……。
    「……ってか首! 首絞まってるー!?」
    「ご、ゴメン! って、ひよこさん来たぁ!?」
     見境なく周囲を蹂躙するひよこに、巻き込まれる和奏。ドサクサ紛れに毛並もふもふ。女子力すげえ。
     そして潰される理利お猿。
     悪は過去となる為に成敗されるが定め。
    「猿を乗り越え、来年へ羽ばたいて下さい……」
     がくり。
     かくして、ひよこたんによって悪も正義も成敗された! 酉年最強!
    「元旦公開予定でっす♪」
     監督が復活してた。

     表現の形は人それぞれ。
     だが、作品にこめた思いの強さは共通だ。

    作者:七尾マサムネ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年11月25日
    難度:簡単
    参加:26人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 2/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 9
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