真面目にやったら即撲殺! 地獄のマグロタァイム!

    作者:空白革命

    ●『マグロタイム』魔黒免次郎
     六六六人衆六六六人目の男、マグロタイムの魔黒免次郎。
     彼が何故、個体戦闘力トップクラスのダークネスにありながら最下位をキープしているのか!
     そしてなぜマグロタイムと呼ばれているのか!
     その理由は……!

    「貴様、今シリアスなことをしたな……ァ!」
     赤褌に裸体。何故か頭にマグロ一匹をどっかりと被った変態は、凄まじい勢いでジャンプすると空中で前に三回転後ろに四回転したあと重力を無視して回転しながら相手へ突撃。
     ローリングヘッドバッドによって道行く人をいきなり撲殺した。
    「キャー! 人殺しよー!」
    「マグロよー!」
    「マグロマンよー!」
    「貴様等、シリアスなことを言ったなぁぁぁぁぁぁ!?」
     相手の死角に潜り込み急所を容赦なくマグロアタック。
     相手の死角に潜り込み足の健などを容赦なくマグロアタック。
     形ある殺気を振りまき過程はよく分からないがとにかくマグロアタック!
     通行人三十名が次々とマグロアタックの餌食となり、辺り一帯が血の海と化すまで一時間……!
    「おっと……マグロタイム終了のお知らせだ」
     男(なのか?)は頭からがっぽりとマグロを取り外すと、表面を優しく撫でた。
     最初はかちんこちんに冷凍されていたマグロが、今やちょっとぐんにょりしている。
    「俺の殺人は、マグロがパーペキに凍っている時。そして相手がシリアスである時にしか行わない。それが俺のルール! それが俺の――」
     マグロを天に掲げる。
     男は、天へ向かって叫んだ。
    「マグロタァイム!」

    ●どう考えてもギャグ界の住人なのに下手したら死ぬ依頼
     神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)は賢者のような目をしながら、どこか遠くを見つめていた。
    「ダークネス、六六六人衆は恐ろしい奴等だ。灼滅者が束になっても敵わず、一度でも目を付けられたら確実に死の道を辿ることになる。それが最下位の奴であってもだ。それが、ダークネスの中でも屈指の個体戦闘力をもつ六六六人衆なんだ」
     未だ賢者モー……いや賢者の目のまま虚空を見上げるザキヤマ。
    「そんな六六六人衆がひとり、魔黒免次郎が事件を起こす様子が察知できた。なんでも、魚屋さんからスタートして公園や住宅街をランニングしつつ元の場所までもどるコースの間目につくシリアスそうな一般人を片っ端からジェノサーイドジェノサーイドしていくという事件だ。恐ろしい……」
     ハッと目に光を戻すザキヤマさん。
     あなたの目を見て、強く頷いた。
    「だが彼には特殊な性癖がある。こいつを利用すれば……被害を未然に防ぎ、尚且つ戦闘を一切せずにお引き取り頂くことが可能だ」
    「そ、それは!?」
     身を乗り出す灼滅者たち。
     拳を握るザキヤマ。
    「マグロタァイムだ!」

     説明しよう!
     マグロタイムとは、魔黒免次郎が自らに課した殺しのライセンスである!
     最大制限時間は一時間。
     周囲でなんかシリアスなことをしているヤツ、言っているヤツが居た場合のみ殺人するというものである。
     だが逆に、常にギャグとカオスに包まれていた場合、魔黒はマグロの如く非常に温厚な対応をとってくれるのだ!

    「これを使って、全力で時間を稼ぎ、全力でお引き取り願うんだ! ノルマは一時間。これさえ乗り切ればクリアーだ!」
     灼滅者パワー(じゃないけど)をフル活用し、被害を最小限に抑えるのだ!
    「頼んだぞ、灼滅者たち!」


    参加者
    龍宮・巫女(貫天緑龍・d01423)
    神代・紫(ウェポンルーラー・d01774)
    六六・六(不思議の国のアリス症候群・d01883)
    古樽・茉莉(中学生エクソシスト・d02219)
    那賀・津比呂(キャラ崩壊がデフォ・d02278)
    森本・煉夜(斜光の運び手・d02292)
    星野・優輝(銃で戦う喫茶店マスター・d04321)
    大條・修太郎(紅鳶インドレンス・d06271)

    ■リプレイ

    ●イッツ・ショォォォォォゥ――マグロタァイム!
     某所某魚屋さん。
     店主のオッサンは今日も元気に新鮮なお魚を売って行きましょーかねとばかりに店先に立ったその時、クラウチングスタート体勢の男を目撃した。
     全裸一歩手前の赤褌。
     頭にはマグロを一匹まるまる被り、マグロの頭部が地面に擦らないようギリギリ首を持ち上げていた。それが90度回転し、オッサンの方を見た。
    「そ、それはウチの売りもんじゃねえか! 通報されてえのかい!」
    「貴様、今シリアスなことを」
    「愛され魚介コーデが激アツッ!」
     頭に寒ブリ(冷凍)を被った大條・修太郎(紅鳶インドレンス・d06271)がスライドインしてきた。
     ちなみにネクタイ真っ直ぐのスーツスタイルである。
    「魚介ファッションの時代が来ると信じで数十年。やはり私は間違っていなかった。オゥFUNDOSI! traditional pants!!」
    「ですよねー、今の季節はやっぱり魚介ファッションですよねー」
     逆側からスライドインしてくる那賀・津比呂(キャラ崩壊がデフォ・d02278)。
     全裸一歩手前のトランクス。頭にはタコをすっぽりかぶっていた。
    「お、おめぇさんそりゃあ……」
    「新ジョブの海戦士だよ」
    「お前は永遠に出てくるな!」
     星野・優輝(銃で戦う喫茶店マスター・d04321)が端っこのダンボールを(内側から)パカッと開けて叫んだ。
     振り返る一同。閉じるダンボール。

     その様子を、電柱の影から見つめるエプロンスタイルの女性たちが居た。
     メイドさん的なアレではない。
     アリスさん的なアレでもない。
     パンチパーマのエツ子さん(47歳主婦)である。
    「あ、あの人達一体何を」
    「全米で爆発的人気の魚介ファッションだよ!」
     エツ子さんの影からぬっと出てくる神代・紫(ウェポンルーラー・d01774)。
    「私見たけど、渋谷のヤングたちは皆あの恰好してたわよ」
     紫の影からぬっと出てくる龍宮・巫女(貫天緑龍・d01423)。
    「うう、私もこれ乗らなきゃダメですかぁ……?」
     巫女の影からスッと出てくる古樽・茉莉(中学生エクソシスト・d02219)。
    「…………」
     茉莉の陰からぬらぁっと出てくる六六・六(不思議の国のアリス症候群・d01883)。
    「な、何か言ってください!」
    「にゃーお……?」
     首を120度(!?)ほど傾げてひとなきする六。
    「ふ、ふええ……」
     茉莉は今日のポジションをそこそこ認識するとともに、物凄く逃げたい衝動に襲われた。
     ちなみに、はたからは電柱を視点に五人の少女達(エツ子さん含む)がずらりと斜めに並んでいるのだが、ツッコミを入れてくれる親切なご近所さんは居なかった。

     一方。
    「まさか、俺の他にもいたとはな……おい、マグロ!」
     森本・煉夜(斜光の運び手・d02292)は物憂げな、それでいて悲しい過去を想わせる瞳で呟いた。
    「ムッ、シリアスの気配! ナニヤツ!」
     顔を上げるマグロ。
    「俺か? 俺は万の望みと書いて」
     民家の屋根の上。
     マンボウのキグルミ(リアル仕様)に包まれた煉夜がいた。
     由緒正しい『口から顔だけ出してる』スタイルである。
    「マンボウ!」
     効果線が奔った。
     マンボウの死んだ目を中心に。
    「この身体には多くの夢と希望が詰まっている。君の瞳は輝いているか。死んだ魚のような目では、駄目だぞ。ボウッ(とうっ)!」
     煉夜、いやさマンボウは屋根から飛ぶと空中で三回転。そして華麗かつ優雅かつ豪快に腹から落ちた。
    「モロヘイヤッ!?」
     血を吹き出す煉夜。
     死んだ目をして、そのまま地面で伸びた。
     聞こえてくる鐘の音。

     マンボウが体表の寄生虫を殺すため海面から飛び出すことは有名ですが、腹を叩きつけて死んでしまうものもいます。牧歌的でいて命懸けの行為なのです。

     何処からともなくガイドさん(エツ子さん)の声が聞こえてきた。
     マグロはこっくりと頷いて、魚屋のオッサンにお金を(褌の中から)払うと、クラウチングスタートで公園までダッシュを始めたのだった。

    ●ト・キ・メ・キ――マグロタァイム!
     閑静な住宅街に存在するなんちゃら公園は、子供とそれを見守るお母様方で賑わっていた。まるでそういうルールでもあるかのようにオホホホホと談笑するおば様方とは対照的に、刹那的かつ真剣に砂場遊びに興じる子供達。
    「トンネル開通しよっ。そっちから掘ってね。私はお山のこっ……」
     手を振れて初めて異変を察する幼女。
     そう、砂の小山だと思っていたものは、マグロの頭だったのだ!
    「ワ・リ・コ・ミィ――マァグロタァーイム!」
    「イヤアアアアアアアアア!!」
     砂場からすぼっと飛び出してくる褌にマグロの男、魔黒免次郎!
    「あ、貴方達は何ザマス!?」
     ミチコさん(27歳主婦)が眼鏡キラキラしながら駆け寄ってくる!
    「貴様、今シリアスな――」
    「エスッ!」
    「シィー!」
    「エェッス!」
     マグロを中心に紫、津比呂、優輝がずぼぼっと現れた。
    「スペシャル・カオス・スレイヤー共。通称SCS。それはホットデクールナパーリィバトラァーズ。彼等の任務は地球には居夜混沌を撃ち払い人々の笑いと秩序を守ることである」
     自分で解説し始める優希。
     滑り台の影からエツ子さんと一緒にぬっと出てきた修太郎が説明口調で叫ぶ。
    「あれは毎週日曜深夜27時15分放送のSCS! 女子に大人気の魔法少女もので劇場版も出ている。子供向けだからお母さんに言って見せて貰いなさい。あとスレイヤーの語尾にSをつけると偉い人から怒られるという噂だ!」
     続いてスッと出てくる巫女。
    「私見たけど、魔法も奇跡もあるんだねって思ったわ」
     続いてサッと出てくる茉莉。
    「イラストのタッチから想像できる通りほのぼのしたお話でした」
     続いてぬらぁっと出てくる六。
    「…………」
     息がかかる程の距離で横から見つめてくる。
    「ヒィッ!」
    「まあそういうワケだ、因みに俺は……カオスイエロー!」
     両腕を振り上げる『GOALしたと思ったら他人の開会式典だったグ○コ』のポーズで叫ぶ津比呂。手にはカレーが乗っていた。
    「カオスブラック。俺の美技に酔いな!」
     リボルバー式の拳銃の弾倉をジャカってやってカララーってやってサコサコサコってやってジャコーンってやってキラーンする優輝。
    「もう何も怖くない!」
     天に向かってティロフィナる優輝。
    「そして私がカオスパーポゥ……今宵の虎鉄は果汁に飢えている……」
     直刀式の日本刀をリンゴのツルツルにシャーコシャーコしてクルクルしたあとウサウサにしてプレートオンする紫。
    「ふ、またつまらぬ物を斬ってしまった」
     キメ顔で鞘に刀を戻す紫。
    『果物を切った後の包丁は洗うか拭うかしてからしまいましょう』
     エツ子さんのナレーションが流れ、砂場から先端だけでていたマンボウがピクピク動き始めた。
     こっくりと頷くマグロ。
     彼は砂場を飛び出すと、解き放たれた獣の如く住宅街へと駆け出して行った。

    ●マァグロタァイムヘーンシーン、マァグロタァイムヘーンシーン――。
     閑静な住宅街をおじいちゃんが散歩していた。
    「もしもし、道をお尋ねしたいのだが」
    「はいはい……」
     肩を叩かれ、おじいちゃんが振り返るとそこに居たのがなぁぁあんとマグロ!
    「ドキッ☆ 人間だらけのマァグロターイム!」
    「ギャヒイイイイイイイイ!?」
     おじいちゃんはびっくりしてひっくり返り、ブリッジ体勢で一気に七歩後じさりした。
    「へ、変質者じゃ!」
    「貴様、今尻――」
    「TOTUGEKI☆ 隣のバーベキュー!」
     巨大なシャモジをギターのように抱えて六がスライディングインしてきた。
     すっと地面にシャモジを置くと、木の棒を取り出す。
     立てるように置き、両手で先端を挟むと、手を擦り合わせるようにして木の棒を回転させ始めた。
    「なかなか火がつきません……」
    「はいっ、通りがかった肩の持っている食材をなんでもバーベキューしてしまおうというこの企画、ご協力ありがとうございます! あ、所でお名前は」
    「トメゴロウともうしますじゃ」
    「あっ、おじいちゃんじゃなくて……」
    「マンボウだ」
    「豚と、豚と呼んでくださあああああい!」
     マンボウ(煉夜)とブタコスした津比呂が網の上でスタンバっていた。
    「死ねえええええっ!」
     両目をかっぴらいて大型バーナーを点火する六。
     マンボウとブタ野郎が火に包まれた。
    「そんなに焼かれたいか、このブタ野郎! ふそそそそそそそ!」
    「もっと焼いてくださあああああい! らめぇ! 飛んじゃうぅー! 飛行ESPが身についちゃいまひゅぅー!」
    「ほらどんどん熱くなってきたよぉ、気持ちいのかこのブタ野郎!」
    「心頭滅却すれば火もまた涼し……そう……俺は……熱く等ない……!」
    「このド変態さんめ! ふそそそそそそそ!」
     全く正反対の反応をするマンボウとブタ野郎。
     その姿を見たミチコさんとエツ子さんはドン引きしていた。
    「ま、まあ何かしらあれは」
    「マトモな教育を受けた人間とは思えないザマス」
    「おっと、今貴様たちは尻アスな――」
    「まてぇい!」
     キャストオフした津比呂が宙返りしながら間に着地。頭にタコつけてカレー持ったまま下半身までキャストオフして叫んだ。
    「溢れ出る、青汁!」
    「…………」
    「…………」
    「…………」
    「マァグロ、セェーフ!」
     両腕を水平に広げるマグロ。
     ほっと胸をなでおろしたのもつかの間。
    「ねえあなただれ?」
     津比呂の股間に向かって問いかける幼女。
     場の空気が凍り……かけたその時!
    「何者だときかれれば!」
    「こたえてあげるが世の情け!」
     優輝と巫女が左右非対称なポーズで乱入。
    「カオスの世界を守るため!」
    「お茶の間の平和をまもるため!」
    「愛と真実の正義をつらぬく!」
    「ラブリーチャーミーな敵役!」
    「優輝!」
    「巫女!」
    「日常を駆ける二人には」
    「ブラックパール、黒い明日が待ってるぜ!」
    「にゃーんてな!」
     ご近所の勝手口をがらっとあけて修太郎が現れた。
     ネコミミを装備していた。
     どうでもいいが、このやり取りで理解できる子供って今どのあたりの世代にあたるのか。割と古いバージョンの筈なのだが。
    「あ、このブリも焼いて下さいニ゛ャ」
    「そんなに焼いてほしいのかいこのいやしんぼうめ!」
     明後日の方向へ向けて瞳孔かっぴらきながら寒ブリ(季節外れ)を八つ裂きにしていく六。
     優輝と巫女は、ぽかーんとした主婦層を前に若干居心地の悪い思いをしていた。
     彼らを無視してバーベキューに加わる紫。紙皿と割箸持参。
    「ねえ、ちょっと甘い物食べたくなったんだけど……」
    「カマトトぶってんじゃないよ! ふそそそそそそ!」
    「怖っ! 何それ笑ってるの!? 怖っ!」
    「とりあえずチョコ焼きときました」
    「液体になってる!?」
     そうしている間にも茉莉がメガホン片手にご近所によびかけを始めていた。
    「はい御町内のみなさーん、お魚はいかがですかー! ブリとタコとブタ野郎ですよー!」
    「あとマンボウが」
    「煉夜さんちょっと黙って下さい」
    「俺、ホライト優輝。皆愛し――ばぶりしゃす!?」
    「ここかーここがええのんかー」
     ここではないどこかを睨みながら巨大シャモジで優輝の頭を鉄板に押し付ける六。
     マグロはそんな姿を暫く眺めた後、こっくりと頷いて頭のマグロを取り外した。
    「あ、あれ? まだマグロタイムは終わってない筈だけど」
    「バーベキューの火でマグロが溶けてしまった。そこに気づくとは貴様天才か」
    「えっ」
     (普通に考えれば分かることなので)まさか褒められると思ってなかった茉莉はびくっとした。
    「一人も殺さないマグロタイムは実に久しぶりだ……その記念に、これをやろう」
     マグロ、いや魔黒免次郎は『ヌフゥン!』という掛け声と共にマグロに膝蹴りを入れると間でぽっきりと切断。バーベキュー中の六へと手渡した。
    「…………」
    「…………」
     無言で耳にぶら下げてみる六。
     振り返る。
    「……にあう?」
    「ある意味似合う」
    「ある意味似合います」
    「ある意味似合うな」
    「ある意味ね」
    「……うむ、さらばだ」
     魔黒免次郎は今度こそ深々と頷くと、クラウチングスタートから尋常ではない速度でダッシュを開始。瞬く間に見えなくなってしまった。

     かくして、このたびのマグロタイムは死亡者零人(火傷3人)という驚異的なレコードを刻んで終了したのだった。
     だが彼のマグロタイムがすべて終わったわけではない。
     またいつか、この脅威と戦う日が来るのだろう。
     だが心配することは無い。
     灼滅者たちはその時もまた、戦ってくれるのだろうから。

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年10月22日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 61/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 7
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