消炭

    作者:森下映

     魂を焼き尽くすほどに今を生きてきた。
     求めるものに向け、惜しみなく全てを捧げ。
     怒りや憎しみをくべ続けた。
     持たなくては。持たなくては。
     そうでなければこの炎は消えてしまう。
     でも、ひとたび手を止めたなら。

    「……足をすべらせちゃったんですねえ」
     何かエレベーターを待てない理由でもあったのだろうか。滅多に使われない高層マンションの外階段の踊り場に、倒れ伏す少女と、明らかに死亡していることがわかる量の血溜まり。
     その傍らに、
    「……うん、なるほど……わかりましたよ。友達と遊びにいく約束があったと」
     どこまでも白と黒。白、黒、白、黒。
     胸にはハート型の孔。うつろう影絵のような少女が、死体の耳元にしゃがみこみ、何か話しかけている。
    「じゃあ、そういうことで。『カラダ』をあげます。そのかわり」
     影絵の少女が立ち上がる。瞬間壊れたテレビの画面のように、その姿が歪み、ぼやけ、滲み――。
     一呼吸後には、そこに『死体』として倒れていたはずの少女の姿になっていた。
     少女は肩上で切りそろえた黒髪をぱぱっと払い、スマホをポケットから取り出す。そして画面を見るなり、
    「あーもうこんな時間! みんな帰っちゃったかなあ〜どうしよ、とりあえず連絡して……」
     長く細い足でバタバタと外階段を駆け上りながら、スマホを操作。階段を上がりきると、マンション内へ続くドアを開け、
    「ママ心配してるといけないし、早く家帰らなきゃね! えっとそれから明日の授業の、」
     バタン。
     ドアが、閉まった。

    「ガイオウガ決死戦で闇堕ちした新路・桃子さんが見つかったよ!」
     須藤・まりん(高校生エクスブレイン・dn0003)が言った。
     まりんの説明によれば、桃子はシャドウとなった後、不慮の事故で死んだ高1の少女を見つけ、どうもその少女に成り代わっているらしい。自分自身に惜しむ程の価値を見出さず、自分の思考をほとんど持たないシャドウは、その少女に『代わりに思考してもらう』という形をとっている。
    「桃子さん……桃子さんだったシャドウは、成り代わったまま、ごく普通の高校1年生として楽しく日常生活を送っているみたい。仲の良い友達もいて、家族の仲もよいお家で……」
     現状、特にそれ以上の事件を起こす気もないようだ。
    「でも、放っておいたらどうなるかわからないと思う」
     シャドウ自体の性格は、良く言えば寛容、悪く言えば意志薄弱。敵勢力に容易に抱き込まれる可能性もある。
    「救出するなら今には違いないよ」
     まりんはシャドウが成り代わっている少女の家がある、高層マンション近くの地図を広げる。
    「彼女は学校帰り、友達と別れた後、この『路地』を通ってマンションに帰ってる。ここは近道ではあるんだけど、車が通れないくらいの狭さで街灯もないから、使う人は少ないんだ。みんななら道幅が狭くても戦闘に支障は出ないだろうし、ここなら接触後に封鎖して、人が近づかないようにすることも簡単じゃないかな」
     人払い、音の配慮、それから夕方ということで日が落ちた時の明かりの確保は自分が担う、と坂月・ルオ(中学生魔法使い・dn0247)が申し出る。
     まりんは頷き、
    「うん。みんなには戦闘と説得に集中してもらおう」
     シャドウは成り代わった少女の姿で現れる。リボンタイにブレザーの制服、黒髪、黒い瞳、ひょろっと背の高い、
    「当たり前だけど、闇堕ち前の桃子さんとは全く違う姿だよ。それに……中身も」
     シャドウの人格は外には出てこない。表向きは成り代わった死んだ少女の人格――明るくて慌て者、成績は中の中で特に気にしていない、いやなことがあっても一晩で忘れるタイプ――と相対することになる。

    「まだ今なら間に合うと思う。もちろん、救出が無理なら灼滅せざるをないけど、みんななら、きっと桃子さんを連れて帰ってきてくれるって信じてるよ! よろしくね!」


    参加者
    倫道・有無(サイキックハーツ・d03721)
    長沼・兼弘(キャプテンジンギス・d04811)
    太治・陽己(薄暮を行く・d09343)
    九条・御調(宝石のように煌く奇跡・d20996)
    倫道・マコト(倫道式創灼滅者・d23421)
    カンナ・プティブラン(小学生サウンドソルジャー・d24729)
    荒吹・千鳥(風立ちぬ・d29636)
    四方祇・暁(ヤングブレード・d31739)

    ■リプレイ


    「街灯つかないかなー」
     暗さが嫌なら通らなきゃいいと言われても、
    「近さの誘惑には……って、ええ!?」
     急に辺りが明るくなった。願いが叶った。わけない。バイクかなと手をかざして見れば、
    「見つけましたよ!」
     人。で、
    「病院もキャップも作家先生も組も――僕も忘れましたか!」
    「は? えと、ちょっと、」
    「冬で好うございました! 貴女の思い出を着て来れるのですからね!」
    「きゃ、」
     コートの前を両手で掴んだから、変態さんかと顔を覆う。結局そうじゃなかったけど、誰かが彼を犬みたいに宥めていて。巫女さんの格好? の女の子と、スーツに真っ赤なマフラー、妙にマッチョな……マスク。
    (「ヒーロー物流行ってるから? でもあれって」)
    「すまない、君には用はないんだ」
    「あんたの中身の方に会いに来たんよー」
    「そう、君の中の新路桃子に用が……と話、きいてくれてるかな?」
    「あっ」
     きいてなかった。マッチョさんが小脇に抱えているものが気になって。
    「これか」
     気づいて、マッチョさんがそれを見せてくれた。
    「ジンギスカン鍋だ」
    「じんぎすかん! えっと何か焼くんですよね! なんだっけ、」
    「羊じゃ」
    「そう、羊! テレビでみたことが、」
    「桃子殿が帰って来た折には、育てておる羊を潰そうかと考えているところじゃぞ」
     すぐ近く、白い髪の女の子が赤い瞳で私を見ていた。あれ、
    「お主はもう『死んだ』」
     今度はマッチョさんの隣、お揃い? のマフラーをした男の子。
    「今のお主はシャドウがフリをしているだけに過ぎん」
     おぬし?
    「拙者達はその体の本当の主に用がある」
    「せっしゃ!?」
     『そこ?』って笑う声がした。
    「ま、あれじゃ」
     白い髪の子が言う。
    「同情せんでもないが、死は決して覆る物ではない」
    「そうそう、死んだ子は黙ってようねー」
     さっき笑ったのと同じ声が言った。白い髪の子は軽く首を横に振り、
    「悪いが其方の内に居る、物騒な眠り姫を連れ戻させて貰うぞ?」
     そういえばこの子も妙な喋り方。なんて場合じゃない。何か、
    (「いっぱいいる!?」)
    「仲の良い友達に仲の良い家族もいるシャドウ……不思議な感じですね。寛容なところは元人格と似ておられますけれど」
     真っ白なドレスの女の子。
    「仲の良い友達はこちらにも居ることをお忘れなきよう。あざとい桃ちゃん先輩が居なくなってはわたくしも、ウチの野郎共も悲しみますから」
    「そうやで。事務所の皆も心配しとるんやから」
     向き直ると、巫女服の子の笑顔。と、
    「お久しぶりです、桃子さん」
     茶色の髪に……耳? 犬みたいな、
    「帰ってきてもらうためにみんなと来ました。生徒として灼滅者として戻りましょう」
    「いつまでそんなことをやってるつもりですか。皆さん待ってますよ」 
     長い黒髪の女の子も言う。別の小柄な女の子は、
    「だいぶイメチェンしたっすね。あの豊満はどうしたっすか? いらないなら辻ちゃんにちょうだい!」
     両手を差し出した。そして、
    (「!」)
     遠くから、じっと見ている視線に気がつく。
    (「泣いてる……?」)
    「御調ねえさま……」
     寄り添っている子が言った。それじゃあ、
    「貴様」
     大柄な男の人。比べたらすごく普通。だけど、
    「全てを忘れて生きる? ふざけるんじゃない。貴様から受けた被害を俺は未だに忘れていないぞ。弱みを握られて毎晩のように呼び出されては殴り合った屈辱の日々を」
     喋る喋る。
    「精神安定剤代わりに殴りあうのはやめろと何度言ったら分かるんだ。ポロッと漏らしたことをすぐ広めるのもやめろ。あの後どれだけ大変だったか……」
     聞いてるうち、さすがに腹が立ってきた。初対面の人のファーストキスとかドーテイがどうとかなんて話をなんで聞かされなきゃいけないんだろう。けどおかげで冷静にもなれた。この人達、人違いしてる。
    「あの!」
    「人の高校生活をギタギタにしておいて自分はやり直すとか図々しすぎだろう。大体大学生が高校生のコスプレをして恥ずかしくないのか」
    「恥ずかしいわけないです! 私、」
     彼の顔が険しくなる。でも負けない。
    「永遠の17才ですし」
    (「え」)
     両手で口を押さえた。そして見てしまった。明らかにほっと緩んだ、彼の顔を。
     怖かった。私は16才だなんてことより、ずっと怖かった。
    「もう来月はクリスマスですね」
     後ずさる私に、オレンジ色の髪の男の人が言う。
    「昨年は美味しいローストチキンを頂きました。新路さんは料理がお上手です。今年はケーキも作りましょうよ、俺も食べる分は働きますよ」
     ケーキ。去年は作る気力がなくて、
    「ウチ達、ひどいことをするんだよね。偽者だとしても、誰かの人生を終わらせるんだから……」
     眼鏡をかけた灰色の髪の女の子……じゃない、男の娘が、
    「……みんな、それでもって決めてここに来た。それなら、ウチだって!」
    「鍋と炬燵、楽しくなかったか?」
     眼鏡に黒いスーツの女の人。そんなの最高だ。あと酒があって長沼の筋肉が触り放題だったら、
    「私はまだ、お前とは喧嘩とかしたいんだがな」
    「ちゃんと帰ってくるんだろう?」
     俺からの言葉など必要無かろうが、とライトの横、黒尽くめの男の子。
    「帰ってくるよなぁ? いつかみたいに恋バナとか、もっと話したいんやから」
     巫女服の子が言う。
    「覚えているでござるか?」
     マフラーを引き下げ、男の子が言った。
    「『貴女』はユーリィとの仲を取り持ってくれた。拙者のつまらぬ悩みに明け方まで付き合ってくれた……揶揄われたことも一度や二度ではござらんが」
     そっか。あれは、
    「現実にどうしようもないほどの激情を抱えているのに、拙者達と共にいてくれた」
     いつもの彼のマフラーじゃない。キャップと、同じ、
    「貴女はとても不器用な人で……拙者にとって、大切な姉貴分だ」
     此岸、六情。
    「桃子殿。其方も病院での戦いの日々は覚えて居ろう?」
     白い髪の子が言う。
    「本当に簡単に、さっきまで笑い合っておった仲間が喪われてしまう日々を……!」
     彼女の背中に、白い羽根が生えた。
    「覚えて居るならば、自分を手放すなどという贅沢、言語道断じゃろうが! 妾達の戦友は生きることさえ出来なかったのじゃぞ!」
     白い梟。馬頭琴。震える少女の肩にぽんと手が置き、キャップが話し出す。
    「お前とは色々あったな、喧嘩したり……ベッツィの誕生日プレゼントの相談に乗ってもらったり、蕎麦を食ったり」
     彼は声を落とし、
    「一緒になれなかったのはすまないと思ってる。俺には役目があって、そして隣に居る人が大事だったんだ」
     それは私も帰るつもりだった。待たせてる男もいた、
    「ところでさ。お前の戦いはもう終わりかい?」
     戦い? お前の? 誰の、
    「残される想いを知っているお前が同じ道を選ぶのかい? 闇に人生を狂わされたお前がそのままでいいのか?」
     そうじゃないだろう? と彼は首元のマフラーを引き抜き、
    「『お前の大事なものは何だい?』」
     スーツ姿が変化した。痛い。胸が、
    「昔、貴方は迷いなく答えたわよね。大事なものはこの『焼け野原みたいな世界に輝いて見えるもの全て』だって」
    「!」
     藍色の髪の女の人が突然、自分の腕を傷つけた。
    「私だって言える。ここに集まっている者は全てその輝いているものよ」
     傷口に炎が灯っていく。
    「私にとっては貴方も同じ大事なもの。焼け野原で光ってる……それをもう一度大きな火にするためなら、血の炎なんて何リットルだって惜しく無い! 諦め悪く未練たらしく、消炭にでも何でも火をつけて、戻ってきなさいよ桃子!」
     その炎に照らされて辻ちゃんが笑う。
    「辻ちゃんの知ってるももちゃんは、寂しくて人恋しくて暴れん坊で意外とマジメ。そんなももちゃんのこと、辻ちゃんは大好き」
    「自分が誰か思い出せ。たとえ貴女が満足していても、拙者はこれで終わらせたくない」
     彼の影が蠢き、狼になり、
    「新路桃子の人生を、他人の紛い物で終わらせてやるものか!」
    「ともかく青春のやり直しは俺が許さん」
     あの背の高い男の人が片腕を持ち上げ、
    「どれだけ居心地がよくとも、首に縄をかけて地獄に連れ戻してやる」
    「……あの時、私に、云ったじゃない……ごめんねが、言えるうちに、言おうね、って……一緒に、帰ってくれた、じゃない……」
     そう言った妹の隣、まだあの子の目からは、ぽろぽろ、
    「早く、戻って……心配かけて、ごめん、って……しようよ……みんな、桃子おねーさんの、こと……待ってる、よ……私も……」
     一息切れ、
    「私だって、待ってる……から……っっ!」
     声の限り叫んだのがわかった。あの子のフードが落ちて、黒髪のツインテールが見えたのも。
    「聞き覚えのある言葉はありましたか。見覚えのある人はいますか。全てあなたが、新路桃子として関わってきたものです!」
     狼耳の女の子が言う。ニージ、
    「モモコ」
     零した途端、両肩を掴まれた。あの子だった。
    「一緒に笑ったよね一緒に泣いたよね。恋バナしたり、ふざけたり、喧嘩したり、色んなこと一杯……」
     彼女はまくしたて、
    「私ね、まだ足りないの。もっと一緒に居たいのもっとお喋りしたいの……だから」
     泣きはらした、目で、
    「返してよ、ニセモノ」
     彼女の指が食い込む。
    「私の『いつもどおり』を返してよ! 私の『親友』を……『新路桃子』を返してよッッ!」
     肩を揺さぶる彼女の首で、19才の誕生日に贈ったパールのネックレスが揺れる。
    「他愛ないことで笑って他愛ないことではしゃいで他愛なくないことで助け合ってきたじゃない! これからも一緒よ! シャドウの都合も死人の都合も桃子ちゃんの都合も知らない! 私の都合で連れ帰るッッ!!」
     黒いスーツのボタンが外れ、裏地の牡丹が、
    「もう一度聞くぜ」
     キャップがマフラーを投げた。それは彼女ごと私の肩にかかり、
    「『お前の大事なものは何だい?』」
     胸が『真っ二つ』に張り裂けた。


    「夜道で襲ったのを思い出すね。いや襲われたのだつけ? どちらでもいいよねえ」
     倫道・有無(サイキックハーツ・d03721)が言った。
    「時に少女、時に研究者、時に覇者、いやあ実に遊び相手として不足ない」
     浮かべた帯群に、黒外套の真紅の裏地と白のフリルが浮かれ踊る。
    「悪いけど私、実験しに来たんだ」
     有無は左右大きさの違う目でうずくまり動かない少女を見遣り、
    「『今一度人造灼滅者に手術』を目論む。そのための『クリプトダーム』」
     それは桃子の剥がれた肌。手には一時桃子が執心したと記憶する『小鳩包丁』を握る。
    「うちが知っとる限り、『人間』としてモモちゃんさんほど強い人他におらへん」
     荒吹・千鳥(風立ちぬ・d29636)は広がる黒霧を薙ぎ払って進みながら、
    「シャドウやとか成り代わりやとか、そんなもんで消えてまうなんて有り得へんよ。そやろ? モモちゃんさん!」
     くま太郎がよーいドン、
    「せやから一発、キッツイのいくでぇ!」
     ダッシュ! 少女を殴り飛ばした。対し少女が胸下から振り上げた稲妻鳴る拳は、真上から太治・陽己(薄暮を行く・d09343)がガシリと掴む。
    「この忌々しい手管。お前が新路桃子でなければどうして戦える!」
    「新路さんは教えてくれました。自身の未来予測ばかりしていた私に相手を理解しろと。戦う時でも相手を理解しながら向き合って、そして最後には克てと」
     鈴音が言う。
    「あの言葉そのまま返しますっ。今新路さんは向き合えてますかっ!」
    「シャドウだのになんとなりゃァ殺気の具現と拳の業を頼みに振るう。自ら認めてるようなモンじゃァありやせんか!」
     弾丸が荒れ狂う中、鈴音を守りながら娑婆蔵が言う。
    「どれだけガワを取り繕うがブろうが、その根にゃァ誤魔化せねえ程に生き様が染みてるんでござんすよ! 新路の姉御の魂は消炭になんかなりゃしねえ! 燃え尽きるとしても微温湯の中でなんかじゃァ断じてねえ!」
    「ねえ新路さん」
     『モモちゃんさん』とは呼ばず想司が言った。
    「いつか本気で殴り合ったときは楽しかったですね。またやりましょう」
     血の気の多さでは通じるものがあると思ってるんですよと呟いて。入れ替わり、掴みかかり斬りつけるカンナ・プティブラン(小学生サウンドソルジャー・d24729)。
    「妾は其方に居なくなってほしくない! 皆にあの、傍にいた誰かの命が零れ落ちてしまう、あんな思いはさせたくないんじゃ!」
     涙声、言葉がかすれ、
    「妾自身もう御免じゃ! もう二度と!」
     叫べば宙に涙が散った。隣、熾天狼を構え、四方祇・暁(ヤングブレード・d31739)。
    「諦めるものか、たとえ貴女が燃え尽きることを望んでも!」
     近づけまいとするように荒れ狂う弾丸を耐え、
    「貴女が淹れてくれたココアの味を覚えている! 一緒に食べたラーメンの味を覚えている!」
     非物質化させた刀身で少女の『内側』を断つ。
    「我儘を言うでござるよ、戻って来い! 『押し付けるな』と言わば言え! それでも拙者は押し付ける!」
    「これからも生きるんだろ! ヒーローに吠え面かかせるんだろ!」
     長沼・兼弘(キャプテンジンギス・d04811)は鍋で弾丸を消し飛ばし、
    「桃子嬢!」
     倫道・マコト(倫道式創灼滅者・d23421)は自分も黒い殺気を放った。
    「僕は貴女が居なければ、ずっとこのろくでなしと共に人間から程遠い生活と考えに疑問も持たず生きていたことでしょう」
    「酷。だったら首輪とってくれない?」
     有無が口を挟む。
    「日々が有ること、平穏が愛せること、家族が居たこと。戦いの痛み、苦しみ、その先の目標、人と人が居ることの幸福」
     霧と霧が鬩ぎ合い、
    「戦う以外何を覚えるでもない僕に日々をくれた、新路桃子をどうして忘れることができましょうか!」
    「犠牲もあるだろう。けれど戦う力と意思と仲間も在る。だからキャプテンジンギスはここに来た」
     兼弘の掌が大きく開かれた。
    「戻ってよ! 帰ってきてよ! 他人のフリしてないでッ! 私の為に帰ってきてよッッ!」
     泣きながら殴り続ける九条・御調(宝石のように煌く奇跡・d20996)。
    「ろくでもない女に引っかかったなどと笑えますか! 地獄に咲き誇る一輪の華を忘れるものですか!」
     マコトが叫ぶ。
    「あの日の言葉返しますよ! 『無事帰ってこれたら軽率にデートしましょう』!」
     兼弘は少女へ掌をあて、
    「思い出せ、ワンインチだ!」
     ビームを放った。御調が手を止める。仰向けに転がったのは『女子高生』ではあったが、
    「そんなこと、言ったっけねえ……」
     動く唇が薄らぎ、影となり、そして。


    「モモちゃん、そろそろケツがイタいんですがぁ」 
     それ位何だと陽己が言った。桃子の胸は御調が独占しており、首にはマフラーが巻かれている為だろう、マコトは桃子の足にしがみついて唸っている。
     桃子の表情からは、全てを覚えているのかはわからない。
     何れにしても、ここに居るのは紛れもない、新路桃子だ。

    作者:森下映 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年11月28日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 3/素敵だった 7/キャラが大事にされていた 8
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