生の渇望、死の要望

    作者:幾夜緋琉

    ●生の渇望、死の要望
     人通りの多い、繁華街。
     そこから少し離れた所に……闇墜ちした、アトシュ・スカーレット(黒兎の死神・d20193)の姿があった。
     小さな子供のような外見に、長く伸びっぱなしの髪と、入院着。
     更に目の周りを、緩めに撒かれた包帯で隠している彼は……。
    「……あ、あははは……」
     と、何処か狂気に包まれたが如く笑い声を上げている。
     ……しかし、時折その表情は曇り、そして。
    『……死にたい……死にたい……誰も、殺したくない……』
     と、呻くように呟く。
     そんな言葉を呟いたかと思うと、それに。
    「ねぇ……? 何で死にたいなんて言うの? 僕は生きたいんだよ。お兄ちゃんは、大人しく待っててよ」
     と吐き捨てると、その両腕の仕込み刃をシュッと取り出し、構える。
    「僕は生きたいんだ。もう、お兄ちゃんみたいに、死に急ぎたくないんだよ。生きる為に……ね……?」
     と言うと共に、彼は……闇から闇へ歩き出すのであった。
     
    「皆さん。集まっていただけましたね……今回、皆さんには、とある事件の解決に力を貸して頂きたいのです」
     と、五十嵐・姫子は、集まった灼滅者達に、真摯な表情で話始める。
    「東京都の郊外にある、繁華街の裏路地。ここに六六六人衆の一人が現れた様なのです。今の所は、目立った事件を起こしては居ないのですが……このままでは、いつ大量殺戮事件が起きるとも分りません」
    「更に……どうやらこれは、闇墜ちした、アトシュさんの様なのです。彼は、闇堕ちした人格と、元人格の狭間に今せめぎ合っている状態であり、それが殺戮事件をギリギリの所で止めている、という状態になります」
    「この様な元々の人格と、闇堕ちしている人格がせめぎ合っている状態は、長くは持ちません。このままの状況が続けば、元人格が負けてしまう事でしょう」
    「又、人を殺すという様な切っ掛けが、彼を完全な闇堕ちに引き寄せる事もあるでしょう……そうなる前に、皆さんは彼へ接触し、彼の救出作戦を遂行して欲しいのです」
    「今の人格である、闇堕ちした彼は……かなり計算高く、冷静で的確に状況を判断出来る様です。そしてその手に備えられた仕込刃を鋭い勢いで振り回して来ます」
    「又、一度のみではありますが、その刃を多重且つ、連続で叩きつける事で、即死にもなりかねない超高攻撃力での攻撃が可能です。この攻撃を行う際の動きには違いは無い様ですので……攻撃を受けたとしても、それをカバー出来る体制を確実に整えるようにして下さい」
    「後、もう一つ……理由は分らないのですが、彼は灼滅者の皆さんとの交戦は、避ける様な傾向がある様なのです。元々周囲が暗い繁華街の裏路地ですから、彼にとっては逃げやすい環境であると言えます。ですから、彼を逃さない様、包囲陣を築くのも重要になると思います」
     そして姫子は。
    「闇堕ちした彼を救えるチャンスは、この一度のみでしょう……この機会を逃せば、完全に闇墜ちし、ダークネスと化してしまいます。そうなれば……私達の仲間である彼を失う事になるのです。このまま見過ごしておく訳には参りません」
    「どうか彼を救出して貰いたい……とは思います。しかしながら、決して油断出来る相手ではないのも確かです」
    「一つの迷いが、彼に逃げる隙を与え、人を殺し、ダークネスへと墜ちていく……そんな未来は十分にあり得る話です」
     そこで一度瞑目する姫子。
     ……暫し無言で、拳を握りしめる彼女が……再び目を開くと。
    「……最悪の状況を招かない為にも、救出不可能であるのならば、灼滅せざるを得ないでしょう。その判断は皆様にお任せします。彼が戻らぬのならば……灼滅者として、彼を倒してきて下さい。宜しくお願い致します」
     と、深々と頭を下げ、皆を送り出すのであった。


    参加者
    魅咲・彩織(蒼鴉の傭兵・d23165)
    ジュリアン・レダ(鮮血の詩人・d28156)
    蔵座・国臣(病院育ち・d31009)
    月影・黒(涙絆の想い・d33567)
    白峰・歌音(嶺鳳のカノン・d34072)
    貴夏・葉月(紫縁は終末に咲く月華のイヴ・d34472)
    アメリア・イアハッター(ロマン求めて空駆けよ・d34548)
    月影・木乃葉(人狼生まれ人育ち・d34599)

    ■リプレイ

    ●闇に掛けた足
     闇堕ちせし者、アトシュ・スカーレット。
     小さな子供のような外見、長く伸びっぱなしの髪と、入院着。そして目の周りを緩めに巻いた包帯……。
     いつもの雰囲気とは全く違う彼に、一部驚きを覚えつつも……彼の救出へと集まった8人の仲間達。
    「もう……なんかちっちゃ可愛くなっちゃって。本当に……」
    「そうですね……でも、見つかって良かったです……本当……」
     アメリア・イアハッター(ロマン求めて空駆けよ・d34548)に、月影・木乃葉(人狼生まれ人育ち・d34599)も小さく微笑む。
     ガイオウガ決死戦で闇堕ちし……それから約1ヶ月という月日が過ぎている。
     そしてこの戦いを成功させなければ、完全にダークネス化してしまい、闇堕ちから戻って来れなくなる事だろう。
     つまり……負ける訳には行かない、それこそが、決意。
    「彼とこうして向き合うのは不思議な気分だ。連れ戻したいな。貴方にそちら側は似合わない、と言ってあげたいね」
    「ああ。絶対アトシュ兄を正気に戻してやるんだ。絶対に、助け出すんだ!!」
     と、ジュリアン・レダ(鮮血の詩人・d28156)に白峰・歌音(嶺鳳のカノン・d34072)が拳振り上げて声を上げる。
     それに貴夏・葉月(紫縁は終末に咲く月華のイヴ・d34472)が。
    「私でも、誰かを救う手助けが出来たのね……」
     と、ぽつり呟いた一言。
    「ん? どうしたんだ?」
     と月影・黒(涙絆の想い・d33567)が首を傾げ顔を向けると、葉月は。
    「いや、何でもない。気にするな」
    「そっか。まぁいい。何にしても、アトシュを救う事が今回の目的だが、周りの一般人に被害を及ぼさないのも重要だろう……死にたい、けど殺したく無い、と言っていた様だからな」
    「そうだな。しかし死にたいのに、殺したく無い、とは……どういう事なのだろうな?」
     蔵座・国臣(病院育ち・d31009)が首を傾げると、アメリア、木乃葉が。
    「恐らく……だけど、あぎとん先輩は人を殺したく無い、と想ってる。でも、闇堕ちしているちっこ可愛いあぎとん先輩は、生きる為に殺さなければ、と思って居るのかな?」
    「ええ……だからこそ、死なせませんし、人を殺させません……絶対に、連れ帰らないといけません……!!」
    「そっか……となれば、人払いも重要か。とは言え事前に展開しては気付かれて逃げられてしまう、と……先ずはアトシュを早く見つけ出さなければならないか。打ち合わせた通り、3班に分かれて探すとしよう。地上からの二班と、上空からの一班にな」
     と魅咲・彩織(蒼鴉の傭兵・d23165)が作戦を提案すると。
    「そうね。かのちゃんと私で空から探すわ。あとこれ、無線機を渡しておくから、見つけたら相互に連絡、宜しくね」
    「はい、解りました」
    「うん。解ったよ」
     アメリアに頷く木乃葉、ジュリアン。
     そして灼滅者達は、アトシュの居るという、繁華街に向かうのであった。

    ●闇からの糸
     そして、夜の帳が落ちた繁華街。
     上空から歌音、アメリアがエリアを俯瞰する様に巡回し、小さな白い入院着の姿を探し回る。
     目をしっかりと凝らして、歩く人一人一人を俯瞰、判別。
     ……そして捜索し始めて、数十分。
    「……? ……あ、あれじゃない、あー姉?」
     と歌音が指指した先。
     路地を幾つも入った、灯も無い暗い間道。
     その手についた仕込み刃が鈍く煌めいたのを、上手く見つける。
     そしてアメリアもその姿を視認し……改めて確認すると。
    「うん、あぎとん先輩だ! みんな、あぎとん先輩見つかったわよ!」
     と嬉しげな口調で、スーパーGPSを踏まえた位置情報を仲間達に無線で伝える。
     その無線を受けて、地上班二班が、彼を取り囲む様、行く道、帰り道を塞ぐように追い詰めていく。
    『……!』
     そして、行く道に現れた木乃葉、黒、葉月。
    「アトシュ先輩! 見つけましたよ!!」
     と木乃葉が言うと、踵を返し、反対の道の方から逃げようとするアトシュ。
     しかし、逆の道にも……彩織、ジュリアン、国臣の三人が立ち塞がる。
     前後封鎖されたアトシュはジリ、ジリと下がり、丁度真ん中辺りに。
     それと共に、人払いの為黒が殺界形成、葉月が魂鎮めの風、木乃葉がサウンドシャッターを使い、周囲からの一般人を排除。
     ……そして、上空から降りてきた歌音、アメリアも前後に降りて、完全に包囲。
    『……逃げられない……か……』
     と、少し諦めるような言葉を呟くアトシュ。
     そんな彼に、先ず彩織が。
    「アトシュスカーレット。死にたいだなんて言うなよ。今のお前は生きたいって言ってんだから」
    「生きたい……?」
    「そうだ。お前が絶望して悲嘆して恐怖して畏怖して狂気して死を選ぼうとしているんだろうけど、今、他人を殺してでも生きたいと言っているのもお前なんだろ?」
     生と死……二つの自分。
     アトシュを理解し、そして敢えて口にする事で、彼を理解する様に、強い口調で語りかける。
     ……だが、アトシュは。
    『そんなこと、ないよ、お姉ちゃん。僕は、殺したいんだ。みんなを、ね。誰も、殺したくないから』
     傍から聞けば、矛盾する答え。でも、それは二つの人格が同居しているから故。
     それを理解為た上で、黒と国臣が。
    「うん、誰も殺したく無いから死にたいね……面白くも無い言葉。そんなので誰も死なないと想ってるの? 君が諦めたら、君の闇堕ちした人格が更に殺し続けるんだよ? だから、戻って来なよ」
    「そうだ。お前は生きていていいし、人を殺さなくても言い。生きる為に殺す必要も無ければ、殺さぬ為に死ぬ必要も無い」
     生と死を理解する言葉、そしてアメリア、木乃葉が数歩前に進み出て。
    「もう殺さなくていいのよ。貴方を殺そうとする人はいないよ。何があっても一緒にいるよ。だから、一緒に生きようよ? それに、何があっても私達が助けてあげるわ。だって友達だもの!!」
    「ボク達が傷付ける人から護ってみせますし、支えます。もう傷付けなくても、傷つかなくてもいいんです。ねっ? 一緒に帰りましょう?」
    「そうよ。みんな、あぎとん先輩の帰りを待ってるのよ! るーちゃんなんて帰って来ないと絶対許さないってさ! だから、また色んな事して遊ぼうよ!」
     目を真っ直ぐに見据えての言葉。
     それに、う、うう……と唸り、軽く頭を抱える動きをするアトシュ。
     それに歌音が。
    「アトシュ兄の帰りを待ってる仲間がいっぱいいるんだ。勉強とか、お祝いしたい事とか、伝えたい事、やってほしい事……その想いは、アトシュ兄が死んじゃったら全部殺されてしまうんだ。アトシュ兄は迷っている……」
     と呟きつつ、彼女も前に一歩進み出てから。
    「みんな帰りを待っているんだぜ……そんなオレ達の想いを無視して、アトシュ兄死ぬつもりかよ! オレ達の想いを見殺しにするつもりかよ! 命の危機があればオレ達が駆けつけて助ける! 殺戮衝動が出たらオレ達に掛かって来やがれ! 全部受け止めてやる! それが出来るって事を今この場で見せてやるぜ、アトシュ兄!!」
    「そうだ。貴様も大切な仲間だ。我等の大切な仲間である貴様自身を我等の許可なく勝手に殺そうとするな。貴様が戻ってくるのを待っている奴がいる。オカエリ帰って来てくれて有難う、そう言いたくて待っている奴等がいる。戻ってこい、アトシュ・スカーレット」
     歌音も、葉月も、辛辣ながらも、強い口調で語りかける。
     ……そして、更にアメリアは、背負ってたカバンから何かを取り出す。
     黒い兎のぬいぐるみ……そして幼い手書き文字で書かれた「まってる」というプレート。
    「これ、誰からか、わかる? ……何があっても私達が助けてあげるわ。だって友達だもの!!」
     ……と、アメリアは言いながら、黒い兎の縫いぐるみをアトシュに投げ渡す。
     そのぬいぐるみを、受け取るアトシュ。
    『……シャ、オ……』
     ぬいぐるみのプレートをなぞり……不意に……ぽろっ、と零れる涙。
     そして、アトシュはそのぬいぐるみプレートをそっと地面に置くと……。
    『……もう、いい。お兄ちゃん……死んで貰うよ』
     と、くすりと笑うと共に、その仕込み刃を構える。
     それに葉月、ジュリアン、歌音が。
    「さぁ、運命の分かれ道だ。滅びか栄か、選ばせてやろう」
    「そうだね。貴方はかつて、仲間が堕ちた時に帰還を信じてくれた。だから、オレも信じる。あなたの望む道は奪い、死なせる道では無いと……穢れも、罪も共に」
    「生死の矛盾に迷い込んだその道程! その矛盾、オレ達の想いで道を示し、その矛盾を打ち砕く!!」
     強い口調で、スレイヤーカードを解放し、戦闘態勢を取る。
     アトシュはその仕込み刃を振り回し、斬りかかる攻撃。
     その攻撃に、即座に国臣のライドキャリバー、鉄征が車体でカバーリング。
    「大丈夫!?」
     と、すぐアメリアがラビリンスアーマーを飛ばして回復。
     そして、反撃に国臣が十字架戦闘術を叩き込む。
     更に、木乃葉が白炎蜃気楼で妨アップを自己付与すると、スナイパーのジュリアン、歌音がソニックビート、ご当地ダイナミック。
     敢えて、アトシュの身体にではなく、その武器を狙い澄ましての攻撃。
     そして彩織が。
    「腹にナイフを突き刺せてでも死なないと言いたいものだ。そんな柔じゃない。弱くない、薄情じゃない。生きたいからこそ素、で、殺したく無いから死にたい……殺させんよ。誰かにお前を殺させないし、誰かをお前に殺させない。自分は何でも屋だからな。それくらいなら金額次第で幾らでもやってやる」
     と敢えて挑発するような口調で言い、手招き。
     それにアトシュはギロリと睨み付ける。
     そして葉月がオーラキャノンで後方から攻撃する一方、彩織がクルセイドスラッシュ、黒が影縛りを叩き込んで行く。
     そして行動は一巡し、次の刻。
     小さい身体を素早く翻し、仕込み刃による一閃を突き立てていくアトシュだが、しっかりと鉄征が身を持ってカバー。
     そんな仲間が倒れないように、すぐにアメリアがラビリンスアーマーで回復を行い、状況によっては葉月も怪奇煙や闇の契約で回復に加わる。
     そして、他の仲間達で以て、アトシュに正気を取り戻すために、攻撃。
     ……激しい剣戟により、火花が闇に散る。
     でも、絶対に負けられない……アトシュを、助けたいから。
    「あの日、帰ってくるって約束しましたよね……今からでも遅くないです。一緒に帰りましょうよ先輩……クラブの皆も、寮の皆も先輩の事、待ってますよ?」
     と、木乃葉が祈るように告げる……しかし、アトシュは。
    『……!!』
     と、ひたすら、その刃をふりかざす。
     そして……確実に体力を削られた彼。白い入院着も、仄かに赤く色付きつつある。
    『はぁ、はぁ……』
     と息を荒げる彼に、彩織が。
    「全ての殺意を向けてみろ。自分は死なんよ。死ぬ気が無いからな。否定するなら殺して見せろ。全力で、本気で、意地で、殺意で……死力を尽くして、力尽くで解らせて見せる」
     と、挑発。
     それにアトシュが。
    『……殺す、殺して上げるよ……!』
     と、その刃を構え……凄まじいスピードで多重、且つ連続で穿つ。
     が、その攻撃に。
    「菫! 貴様は我が盾だ!」
     と葉月が宣言すると、それに従い、彩織を身を挺しカバーリングする菫。
     フルメタルアーマーを着込んでいるとはいえ、その攻撃力はとても強大で、大ダメージを負い、其の場に崩れる。
     アメリア、葉月がすぐに回復を飛ばしつつ、歌音、ジュリアンが攻撃後の隙をついて接近。
    「もう、これで終わらせる。これ以上、貴方を苦しめさせはしない」
    「そうだぜ! アトシュ兄、頼む、戻ってこいよ!!」
     と声を上げて、両手の仕込み刃に、黒死斬と閃光百列拳を、強烈に、真っ正面から叩き込んで行く。
     その一撃に、仕込み刃が鈍い音と共に割れてしまう……武器を失い、アトシュの表情は、驚きを浮かべる。
     ……そして、そこに。
    「アトシュ……これで、終わりだ」
     彩織が、渾身のクルセイドスラッシュ。
     身体を翻しながら、体当てと共にその一撃を食らわせ……アトシュは壁へ叩きつけられ、そのまま気を失った。

    ●救いの手
    「……う……う……ん……」
     そして……数分。
    「……気付いた……ねえ、アトシュ……気付いた?」
     気を取り戻したアトシュ……その表情は、今迄のような幼さの残る表情から、いつもの表情。
    「……アメリア、か……それに……みんな……」
     闇堕ちからの復帰……そして、記憶に残る、みんなの言葉。
     それを思い出しながらも……見知った顔に、安堵するアトシュ。
    「あぎとん先輩。戻って……きたんだね!?」
     と真っ直ぐに瞳を見つめてくるアメリア。
     すでにその視界は曇りなく、正気を取り戻しているのは明らか。
    「……そうだな……すまん」
     と、その一言に、木乃葉が。
    「良かった……本当、良かったです……先輩……おかえりなさいです……ぐすっ……」
     アトシュの胸元に飛び込み、涙をポロポロと流す木乃葉。
     そしてその後ろでは、アメリアも、歌音も……涙を拭いながらも。
    「良かった……あぎとん先輩、おかえり……」
    「アトシュ兄。ほんと、おかえり……おかえり!!」
     と。
     そして葉月、ジュリアンも。
    「おかえり、帰って来てくれて有難う。そして、これからも、宜しく」
    「そうですね。本当、お疲れ様でした。そしていずれ、また、日常にて……ね」
     ……そんな仲間達の言葉に、流石に少し、気恥ずかしさを覚えて、仄かに顔を染めるアトシュ。
    「あー……ああ、た、ただいま……だ」
     と、言うのが精一杯。
     そんなアトシュの言葉を聞いて、更に木乃葉、アメリア、歌音が嬉しそうに、抱きついてくる。
     ちょっともみくちゃにされつつも、アトシュは仲間達との再会に、嬉しそう。
     そして鉄臣が。
    「お嬢がな、帰ってこんと許さん、だそうだ。ほら、さっさと帰ってメシにしようぜ?」
     敢えて、いつもと変らぬ様に言葉を告げる。
     その、表に出ない優しさに、アトシュは。
    「そう、だな……流石に、腹が減ったよ。ほら、みんな、帰ろうぜ」
     と立ち上がる。
     それにアメリアが。
    「そうだね! 私の所にも早く行こう! オカエリパーティー、みーんなで盛大にやらないとね!!」
     と、涙に濡れた表情で、満面の笑みを浮かべる。
    「解った解った。罰ゲームじゃないよな?」
    「うん、勿論だよ!」
    「先輩が帰ってくるんですから、そんなことありませんよ!!」
     アメリア、木乃葉が笑い、そっか、と笑うアトシュ。
     そして、鉄臣に肩を貸して貰いながら、灼滅者達は、アトシュと共に帰路につくのであった。

    作者:幾夜緋琉 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年12月1日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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