●悪夢来たりて悪闇が纏う
ベッドの上、額に玉の汗を浮かべ、苦しむ男。
「う……うう……や、やめてくれ……来るな、来るなああああ!!」
叫び声を上げる彼……そんな彼の周りに、半透明の様に、映像が……ふわり、浮かぶ。
地下下水道の様な場所で、ゾンビの様なものに追いかけられる……そんな映像。
苦しむ彼の悪夢の映像は、次第にはっきりと映像化していき……そして。
『……っ!!』
と、その悪夢を引き裂く様に、姿を現わすダイヤのシャドウ。
現実世界へのシャドウの具現化と共に、その悪夢の映像は靄のように消え失せる……そして。
『……ははは!! 良し、実体化出来たぞ!! これで現実世界に我の好む悪夢を次々と作り出す事が出来るぞ!!』
と、何処か嬉しげなシャドウ。そして彼は、未だ眠る彼の部屋を抜け出し……次々と、眠る彼の家族達を蹂躙し、殺していくのであった。
「皆様、お集まり頂けましたね。それでは、私からご説明差し上げます」
と、執事服に身を包んだ野々宮・迷宵は、集まった灼滅者達へ、早速説明を始める。
「先ずは先日の、シャドウ大戦介入作戦はお疲れ様でした。タロット兵の戦力も削れ、作戦は成功と言えると思います」
「その後、サイキックリベレイターの影響で、デスギガス軍の中でも力の弱いシャドウ達が現実世界に、次々と実体化し始めている様なのです」
「この現実世界に現れた車道は、現実世界で自由に行動出来る……そんな状況に浮かれて、周囲の人間を斬殺したり、恐怖を与えるといった行為を行い始めています」
「皆さんには、この浮かれて出現してきているシャドウを灼滅してきて欲しいのです」
そして、更に迷宵は。
「今回のシャドウですが、ダイヤのスートのシャドウです。千葉県郊外のとある一軒家に深夜に現れ、男性に悪夢を見せた上で、そこから現実世界に姿を現わします。そこに皆さんは待ち伏せをする事で、出現したシャドウに対峙可能です」
「幸い、シャドウは悪夢を見ている一般人を攻撃はしません。ですがこれは、シャドウとしてはいざという時の退路である、と考えて居るからかもしれません。夢の中へと再度逃げ込まれると、シャドウを灼滅する事が出来なくなりますので、逆に悪夢を見ていた一般人からある程度離れた場所で戦闘を仕掛けるのが良いのかもしれません」
「シャドウ自身の戦闘能力ですが、基本的には影を作り出し、それを鞭のように活用して攻撃してくる様です。手足に絡みつけば捕縛効果、剣の形状で切り裂けば、ドレイン効果のある斬殺攻撃となります。一撃一撃、中々強烈な攻撃なのでご注意下さい」
そして、迷宵は最後に。
「今後も、サイキック・リベレイターの影響により、現実世界に出てくるシャドウは増えるかと思われます。これらシャドウ達を順次灼滅する事で、敵勢力の弱体化も可能だと思われますので……出来る限り灼滅為ていただける様、宜しくお願いします」
と、仰々しく一礼するのであった。
参加者 | |
---|---|
鏡・剣(喧嘩上等・d00006) |
片倉・光影(風刃義侠・d11798) |
伊庭・昴(天趣奈落・d18671) |
遠夜・葉織(儚む夜・d25856) |
辻凪・示天(彼方の深淵・d31404) |
春野・透馬(全て謎に包まれた者・d36606) |
禰宜・汐音(小学生エクソシスト・d37029) |
●悪間
すっかり夜の帳が落ちた、深夜の刻。
シャドウ大戦から暫し経過し、突如現れるようになった、夢から現実世界に姿を現わすというシャドウ。
……男性に悪夢を見せた上で、その悪夢から姿を現わし、周りに居る人達を次々と殺してしまうという、そんな話を迷宵から聞いた灼滅者達。
シャドウが現れるという、千葉県郊外の一軒家へと向かう道すがら、遠夜・葉織(儚む夜・d25856)が。
「悪夢を見せる、とは相変わらず趣味が悪いな」
と……深い溜息を吐くと、それに春野・透馬(全て謎に包まれた者・d36606)と、辻凪・示天(彼方の深淵・d31404)の二人も。
「全くだ。本当に、シャドウが現実世界で実体化するとは……」
「そうだな。それにシャドウは悪夢を見ている一般人を攻撃はしない、か……」
示天は軽く考える風にしつつ。
「確かに状況からして、実体化した際に媒体となった人間を処理せずにいるならば、何らかの理由で『生きた人間』が必要だ、と考えるのがだろうだろうな。死体でも構わないのならば、少なくとも携帯するのに都合のいいサイズに解体するだろうし」
……死した人間を持ち運ぶ、と言う言葉に、流石に顔をしかめる透馬。とは言え、まだまだシャドウの動静は解らない部分も多い訳で。
「……確かに、そうだね。でも、こちらもこのままにしておくつもりはありませんし、急いで灼滅しましょう」
そして、鏡・剣(喧嘩上等・d00006)、片倉・光影(風刃義侠・d11798)、禰宜・汐音(小学生エクソシスト・d37029)らも。
「んまぁ夢ン中にはいるとかどうにも気が乗らねえからな。向こうから出て来てくれるってんなら願ってもねえぜ」
「天網恢恢疎にして漏らさず、自分達灼滅者の目が黒い内は、シャドウの好き放題にはさせないぜ」
「ええ。夢は夢で終わらせたい、です。悪夢ならそれが現実になるのはとても辛い事、ですから。私も……何度も辛い夢は見てきました。それが目覚めた時はほっとしました……この方も、そんな悪夢で終わらせたいです」
……そして、そんな仲間達の言葉に、葉織、伊庭・昴(天趣奈落・d18671)が。
「ああ。趣味が悪いシャドウの企みを、阻ませて貰おうか」
「そうだな。さて、久々の依頼だしな……腕が鈍ってないといいけれども。軛が解き放たれたのをいいことに好き勝手する連中を放置するわけにはいかないし……落とし前はつけさせて貰う」
そして、灼滅者達は、急ぎシャドウの現れし家へと急ぐのであった。
●闇からの姿
そして灼滅者達は、その家の前。
「風よ、来れ」
とスレイヤーカードを解放した光影、他の灼滅者達も、それぞれがスレイヤーカードを解放し、準備を整える。
……そして、息を潜めながら家の中へ侵入。
青年の部屋から。
『う、うう……』
と呻き声を上げている横から、シャドウが。
『ふ、ふははは! やった、やったぞ!! やっと出てこれたぞ!!』
と、嬉しそうに叫んでいる。
そんなシャドウの声を聞きながら、灼滅者達は、一端その部屋から離れる。
そして、改めて作戦を相互に確認すると、息を潜め、足音も立てないようにして、部屋の前へ。
……シャドウは。
『良し、この実体化できた空仇を使い、更なる恐怖を与えるのだ!!』
と、一層嬉しげに叫ぶシャドウ。
ガタン、とドアを開けて、中から出て来たところで……すぐさま、灼滅者達が突撃。
眠りに落ちている彼を透馬が保護し、護る様に入口に完全に立ち塞がる。そして透馬は彼を抱えて、更に奧の方へと抱え運ぶ。
……そんな灼滅者達の突如の動きに、シャドウは。
『ぬ……!? 何だお前達は!!』
と。
それに昴は無言で妄葬鋏を叩き込み、取りあえずは怒りを付与。
更に。
「全く……行動が可哀想なシャドウだな」
と、敢えて怒りを買う言葉を投げかける。
そして剣、葉織、光影も。
「ったくよ、こそこそ隠れてたと想ったら、今度は現実世界に出て来てヒャッハーってか? まったく、お調子者にも程があるな!」
「そうだな。まぁ、今迄夢の中だけで大手を振るっていたんだろう? 所詮井の中の蛙ってこった」
「そうだな……ほら、これでも喰らえ」
と、次々挑発の言葉を放ちながら、次々に攻撃。
光影のシールドバッシュに、葉織の紅蓮斬、剣の抗雷撃。
シャドウの身体に確実に傷痕を残しつつ、夢から出てくる母体となった男との距離を少しずつ、少しずつ押し込み、広げていく。
シャドウは最初の一撃で、自分が危険だと感じたようで、一端夢の中に戻ろうと、灼滅者達に。
『くそ……この、どけ、どけえ!!』
と叫びながら、反撃してくる。
無論、その反撃に負ける事無く、更に灼滅者達は反撃。
示天が雲櫂剣を使い、火力を削ぐと、光影のライドキャリバーがキャリバー突撃。
又、透馬が神薙刃、汐音がレイザースラスト、と更に連打。
そして、次のターン。
スナイパーの透馬、汐音が先に立ち。
「厄介な技を使いますよね。早急に片を付けなくてはいけませんね」
「ええ……」
と言いながら、透馬が封縛糸で縛り上げ、汐音も。
「悪夢は悪夢のままで……目覚めた時に安心して頂く為にも……負けられません……!」
と、強い口調で斬影刃。
対し、攻撃を受けたシャドウは。
『くそ……!!』
と恨み節を吐きながら、反撃。
そんなシャドウに汐音は敢えて。
「私も悪夢は見ます……眠る度にもう目覚める事は無いかもしれない……そんな怖れを抱いて生きていました。だからこそ……悪夢が現実になるなんて……許せる事ではありません……! 夢は夢で……辛いものならそれで終わらせます……!」
と、真っ直ぐにシャドウを見据えて、強く告げる。
そんな汐音の言葉に、シャドウはぐぅ、と唇を噛みしめる。
そして……更にライドキャリバーが、シャドウに機銃掃射で足止めを行いつつ、光影のシールドバッシュ、葉織の黒死斬で怒りを付与しつつの足止め。
そして、剣、昴、示天のクラッシャー三人が、連携し、レーヴァテインやティアーズリッパー、そして閃光百列拳でガツガツと体力を削り続り続ける。
明らかに苦戦しているシャドウ……それに。
「そらどうしたどうした、それぐれえじゃ止められねえぞ、もっときばりな!!」
と、更に獰猛に笑い、叫び、拳を突き立てる。
どうにか反撃に、影を作り出して剣の形状で切り裂くシャドウだが……光影のライドキャリバーが身を挺してカバーリング。
……そして、シャドウを足止めしながら、対峙する戦いは、続く事十数分。
『グ、ウ!!』
と胸元を押さえ、体制を崩すシャドウ。
そんなシャドウの動きの変化に示天が。
「……どうした? もう終わりか?」
と言い放つ。シャドウは。
『うるせえ……うるせえうるせえうるせえ!!』
と怒り狂い、再び立ち上がるシャドウ。
だが、今迄のような勢いは最早なく、怒りにまかせて、半ば自暴自棄になり、灼滅者達へと攻撃を叩きつけるばかり。
そして、そんなシャドウに昴の蒐集鋏、示天の制約の弾丸。
透馬の神薙刃と、汐音の影喰らいがシャドウを喰らいとる。
更に、葉織が至近距離からの紅蓮斬の一閃を穿ち、ライドキャリバーもキャリバー突撃にて、体当たり。
そして、光影が。
「そろそろ悪夢も終わりにしようか。あの男性が苦しみ続けるのを、これ以上見て張られないからな」
と言うとともに、居合斬りの一閃。
頭部から、一刀両断に穿たれた一撃に、シャドウは痛みに、悲鳴、絶叫。
その絶叫にニヤリと笑いながら、剣が地面を蹴って、シャドウの身体を駆け上がる。
そして。
「おらぁ、これでトドメにしてやるよ!!」
と、威勢良く叩き込んだ鋼鉄拳。
その拳が影を打ち砕く様にシャドウを砕き……シャドウは。
『ガアアアア……!!』
耳を劈く断末魔の悲鳴を上げて……そして、影は闇に呑まれるが如く、暗闇の中に消失していくのであった。
●虚ろう
……そして、シャドウの姿が、完全に闇の中へと消失した後。
「……終わったか」
と、示天が武器を降ろし、構えを解いて息を吐く。
そして透馬も、そんな示天の言葉にこくり、と頷きつつ。
「そうですね……何というか、疲れましたね」
少し、溜息がちに、肩を竦めながら頷く。
……ただ、透馬はそんな仲間達の言葉を聞きながら。
「しかし……サイキック・リベレイターの影響で、現実世界に出てくるシャドウは今後も増えていくんですよね……?」
と小首をかしげると、光影が。
「そうだな。切っ掛けは何にせよ、次々とシャドウが現実世界に現れている……それは事実だ。自分達の仕事も、これからは増えるかもしれないな」
そして昴は、死したシャドウに対し、片手拝みで南無阿弥陀仏を唱え、弔いを上げてから。
「……まぁ、確かにコレで終わるなんて事はないんだろうね。これは、始まりでしか無いんだろうね」
と。
……何はともあれ、これをこのまま放置しておく訳にはいかない。
一つ一つ……現れしシャドウを確実に対処していく事が、重要な役目になる事だろう。
「……これは、頑張らなくてはいけませんね」
と、透馬の言葉に昴もこくり、と頷く。
そして灼滅者達は……シャドウの母体となってしまった一般人の元へと向かう。
呼吸も落ち着いており、汗も引いて、落ち着いている。
……程なくすれば、悪夢から目覚める事だろう。そうすれば……彼は再び、安らぎを得る事が出来る筈。
そんな彼の安らかな寝息を立てるのを眺めながら……今後出てくるだろうシャドウという新たなる脅威に。
「……このようなシャドウの出現事件……止めてみせます……」
そんな、汐音の言葉に、葉織はこくりと頷き、そして灼滅者達は、宵闇乃中、帰路へとつくのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2016年11月30日
難度:普通
参加:7人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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