●造形の暴威
それは文字通りの異形、悪夢の産物。
形を言うならば蜘蛛、であろうが、八本の足は肘で曲がり、五本の指と爪を備えた人の掌で巨体を支えている。頭部に鋏角はなく、上下逆さになった女の頭がついていた。
一緒に走り同じボールを追う仲間たちが、体育館を逃げ惑っている。
自分も逃げたいのに、縫いつけられたように足が動かない。
人の腕の形をした八本の足は異様に素早く、蜘蛛は仲間を捕えると、まるで玩具でも壊すように四肢を引き千切った。体育館に絶叫が響き渡る。
『これで 逃げられない ね』
掠れた男の声をもらして、蜘蛛が逆立ちでもするように腹を持ち上げる。迸ったのは黒い糸――否、それも黒い手が幾つも重なった何か。
糸に絡め取られた二人には目もくれず、跳ねた蜘蛛が別の仲間の上に飛び乗った。瞬きする間に足が千切れ飛ぶ。
震えながら、彼女は祈った。
夢、これは悪夢。はやく目が覚めて。こんな夢は見たくない。
彼女の望むとおり、それはただの夢だった。
その時までは。
眠る彼女のまわりで広がっていたおぼろげな夢の世界は今、破れてしまったのだ。
そこから音もたてずに抜けだしたのは、夢の中で人々を虐殺したかの蜘蛛だった。裂けたような唇から真っ赤な口腔を覗かせながら、それは確かに、笑った。
●益虫ならぬ蜘蛛なれば
現実世界へシャドウが実体化しつつある事件は続いている。招集をかけた埜楼・玄乃(高校生エクスブレイン・dn0167)はげっそりした顔で説明を始めた。
「木津の予測を元に調査したところ、シャドウの出現が予知できた。予測の提供に感謝するが、しかし、長時間の正視に向かない異形だな」
「正直ここまでとは思いませんでした。思いっきり悪夢ですねえ」
木津・実季(狩狼・d31826)が呆れたように応じるのも無理はない。外見までは予測していなかった。脳裏の映像を追い払うように頭を振り、玄乃は地図を黒板に貼った。
「件の蜘蛛は郊外のスポーツ施設の宿泊所に出現する」
フットサルの合宿中で、体調不良で早めに就寝し悪夢を見る女子の他、選手7人とそのコーチ、合宿所の経営者が平屋の建物の中にいる。
「いつ頃現れるんです?」
「午後10時前だ。悪夢を見ている女子以外を先んじて避難させ、体育館へ誘導して灼滅することを推奨する。外でもいいが、夜だし逃がすと厄介だ」
実季の問いに玄乃が平面図を示した。体育館は廊下で直通だから誘導は可能だろう。
シャドウハンターのサイキックの他に、無数の人の手を模した糸も使う。雑魚とはいえ、強化されているので油断は禁物だ。
「やはり、悪夢を見ている当人は攻撃しないんですかね」
「そのようだ。いざという時の退路でもあるのだろう。よって夢を見ている女子から引き離してケリをつけて貰いたい」
ソウルアクセスしての戦闘は、灼滅者の安全性とシャドウの逃走防止の観念上、非推奨。念を押して玄乃は話をまとめた。
「湧いてくるシャドウを順次撃破していくことで勢力自体も弱体化できるだろう。木津も手が空いていたら対応を願う」
「そうですね、考えてみます」
配布資料の蜘蛛の文字を眉をひそめて眺めながら、実季は頷いた。
参加者 | |
---|---|
稲垣・晴香(伝説の後継者・d00450) |
仲村渠・弥勒(マイトレイヤー・d00917) |
灰色・ウサギ(グレイバック・d20519) |
雲無・夜々(ハートフルハートフル・d29589) |
蔵座・国臣(病院育ち・d31009) |
木津・実季(狩狼・d31826) |
●異形に挑む者
日中から気温が十度も下がり、まばらに歩く人々が寒そうに首を竦めている。
宿泊所の窓に灯るオレンジ色の明かりは暖かそうで、これから中で起きる惨劇とはあまりにもそぐわない。だから灰色・ウサギ(グレイバック・d20519)は表情を引き締めた。
「ここでもシャドウが実体化か……一体でも多く倒して奴らの兵力を削がないと。もちろん、襲われる人たちのことも見逃せないし!」
「いよいよシャドウとの決戦も迫ってきた感じかな。その前に、少しでも人々の被害を食い止めていかないとね」
寒いと筋肉が委縮して怪我をしやすいので、入念なウォーミングアップをしながら稲垣・晴香(伝説の後継者・d00450)が応じる。フードのついた薄桃色のスウェットスーツで防寒にも余念がない。
その後ろでは渡された資料のシャドウの概要に改めて目を通し、仲村渠・弥勒(マイトレイヤー・d00917)と木津・実季(狩狼・d31826)が思わず異口同音に声を漏らした。
「わー……蜘蛛ー……?」
「おぉ……思っていたものの斜め上をいきましたね……」
二人ともげんなりしていた。弥勒が顔全面にうわーって書いたような顔で首を振る。
「凄いねー、ホラーってゆーか、B級ホラー映画的なー? そりゃあ、こんなの出たらホント悪夢だよねー……」
「こんな悪夢を見ていては可哀想ですし、早く追っ払っちゃいましょうか」
実季もため息混じりに頷いた。彼女と並んで立つ雲無・夜々(ハートフルハートフル・d29589)にとっても、悪夢の評価には異論がない。
「あの造形は悪趣味の域を超えているな。夜明けを待たずして消えてもらおう」
夢ならば消えるのが筋だ。時間を確認した蔵座・国臣(病院育ち・d31009)が身を預けていた宿泊所の壁から離れて声をあげる。
「そろそろ時間だ」
「おっ。実っ季ー、頼んだぞ」
「お任せを。迫真の演技ですよ」
にっこり笑う実季を残し、一行は動き始めた。
弥勒が合宿所のインターホンを押した。狼に身を変じ、離れた場所で遠吠えをしていた実季が近づいてきて、「グルルルル……」と野犬じみた唸り声をあげている。
しばらくすると玄関の引き戸が開いて、三十代ぐらいの男性が顔を出した。
「はろはろー。こーんばんはー合宿やってるって聞いてー差し入れでーす」
「差し入れ?」
怪訝そうな顔をしたが、人好きのする弥勒の笑顔、教え子たちと同年代の一行を見て若干営業スマイルを浮かべる。
「もしかして見学かな? 僕はコーチをしているんだ。ご丁寧にありがとう」
男性が弥勒の差し出す箱を受け取った。後ろから顔をだした管理人が吹き込む風の寒さに首を竦める。
「君たち、そこじゃ寒いだろ。お茶でも出すから中に入りなさい」
難なく合宿所の中へ招き入れられた。
●這い出た悪夢
食堂へ案内される仲間から国臣がそっと離れて、合宿部屋の中の様子を窺う。見咎められなかったことに安堵し、弥勒に夜々、ウサギ、晴香は食堂へ足を踏み入れた。
「ありがとうございます!」
食堂にいた女子部員は一礼するとコーチからマイルドに箱を奪い取った。みっちり詰まった可愛らしいイフリート焼きのミニサイズに歓声があがる。
「可愛い! 食べるのもったいなーい」
「めっちゃ美味しい!」
定番のつぶあん、こしあん、カスタードと抹茶がトータル10個に加え、変わり種10個はカレーにチーズにほうじ茶、フルーツ、ずんだあん、キャラメル味だ。みるまに減り始めて部員の一人が慌てた声を上げる。
「待って待って、ゆいの分とっとかないと!」
悪夢の主は『ゆい』というらしい。食堂内の女子の数は7人、それにコーチと管理人、予知の内容と符合する。
「ところで、フットサルって何ー? どんなのー?」
「んとねー、屋内でやる5対5の球技でね」
「そうなんだー? 管理人さんもどぞー」
「おっ、いいのかな」
嬉しそうに管理人も箱を覗きこんだ。手土産とラブフェロモンがうまく機能しているのを確認し、弥勒が情報を放りこむ。
「あ、そうそう、来る時に聞いたんだけど、この辺で大きな野犬がうろついてるってー結構狂暴っぽいから、気を付けてねー」
「野犬?」
「さっきの唸り声それだったんじゃない?」
「えーやだ怖い」
その時、ちょうど宿泊所のすぐそばから「ワオォーーーン」と遠吠えが聞こえた。選手たちが小さな悲鳴をあげ、コーチが立ち上がる。
「皆、窓は閉めてあるな?」
「閉めてます……ゆい、目覚ましたら怖いんじゃないかな」
腰をあげかけた女子部員の傍に寄って、晴香が笑顔で落ち着かせる。
「大丈夫、起きたら来るでしょう。バタバタして野犬の注意を引いても危ないわ。訓練でも一度避難したら戻らない、それが大切ってよく言うでしょ?」
女子部員は晴香の笑顔に宥められるように椅子に座り直した。ダイナマイトモードによる説得力も乗ったらしい。
「君たち、近所? 帰りは大丈夫かい?」
「なに、私達は通りすがりのマタギさ! 心配する必要はない、私達がなんとかする」
自信たっぷりの宣言に人々がきょとんと夜々を見る。瞬間、出入り口に陣取ったウサギを中心に柔らかな風が巻き起こった。ひとたまりもなく、室内の人々が眠りに落ちる。
拳をぎゅっと固めて、夜々は唇を噛んだ。
吐いた唾は飲めない、不誠実な仕打ちもした、これで負けたら嘘だ。
なんとしてもシャドウは打ち破る。
悪夢はそれからまもなく姿を現した。
音をたてず合宿部屋の扉が開く。そこから蜘蛛の生っ白い脚――形は人の手だが――が溢れ出た。続いて上下逆さになった女の頭が出てきて、首を傾げる。
「蜘蛛。いや、化け物だな、これは」
唸るように呟いた国臣は仲間の端末へ出現を告げた。建物内の人々を眠らせるより早く出現した時の策を練っておいたが、幸い空振りになったようだ。
「さあ、こっちよ!」
シャドウの注意を引くよう晴香が声をあげ、弥勒も国臣も走り始めた。
動きに刺激されシャドウが脇目も振らず追いかけてくる。それは八本の手にも見える脚を駆使し巨体の割に音をたてない、まさに悪夢のような動きだった。一足早く体育館に駆けこんだ弥勒が、自身と国臣、晴香に血が噴きあげる炎で加護をかける。
●歪ゆえの異形
大きく開いた扉を抜ける二人を追って、異形の蜘蛛も体育館へ入ってくる。途端にすぐそばに伏せていた実季が扉を閉めた。同時に体育館の中の音を外から切り離す。
「待ってたよ」
体育館の真ん中で仁王立ちの夜々が不敵に笑う。
「荒れる風は、灰色さっ!」
ウサギの解除に続いて、体育館で待ち受けていた面々が次々とスレイヤーカードを解放した。付近の人が近づかないよう殺気を放つ国臣の傍らに、相棒たる鉄征も姿を現す。
罠に落ちたことに気付いたらしく、シャドウの口元が歪んだ。
『わたし騙した ね』
蜘蛛の腹が持ち上がり、黒い糸が迸る。糸は無数の黒い腕が繋がった、やはり悪夢でしかありえない産物だった。弥勒を庇い鉄征が、晴香の前には実季が立ち塞がって攻撃を引き受ける。
封印を解いた晴香の姿は一変、きわどいカットが目を引く愛用の真っ赤なリングコスチュームへ変じていた。退路を断つように回りこみ、アッパー気味に蜘蛛の頭部を雷光這うエルボーで狙う。避けきれない蜘蛛の頭が衝撃でぐらりと揺れた。
「さっすが晴香先輩!」
槍を携えたウサギが跳ねるように懐へ飛び込んだ。螺旋を描く刺突が頭胸部に突き刺さる。ひょいとウサギの頭から飛び降りたランクマが小さな四肢を踏ん張り、鉄征のダメージを癒す眼光を放った。
踏み潰そうとする蜘蛛の8本の脚をかわす弥勒の炎が彼の影にまでまとわりつく。影は主の意のまま、蜘蛛の脚へざっくりと斬りつけた。血の代わりに黒い靄のようなものを噴き出し、蜘蛛が苛立ったように脚を振り回す。
『不愉快 とても不機嫌 ね』
「お互いさまだろう」
蜘蛛に律義に応じる国臣の肩で、バベルブレイカーが轟音を立てて起動した。高速回転する杭を思い切り手近な脚に叩きつける。勢い余って脚が吹き飛び、傾いだ蜘蛛の体にエンジン音を轟かせて鉄征が激突した。
「くらりん真面目だな」
バランスを崩しそうな脚を狙い、呟く夜々のまとう猫騙しのマントが翻り、狙いを補正しながら突き立つ。炎に巻かれて身をよじる蜘蛛を背に、国臣が重々しく頷いた。
「意見が一致したからな」
「こちらはどうも不本意みたいですけれどねえ」
いつの間にか死角に滑りこんでいた実季が、くすりと笑って胸甲にざっくりと深い傷をつける。甲殻の擦れる音をたてて蜘蛛の脚が実季を追った。両手で掴んでも指が回りきらないほどの脚の一撃に肩口を裂かれながらも、影を疾らせる。
「まあ、素直に倒れてくれそうにはありませんね」
「同感だ」
暴れまわる蜘蛛から素早く距離をとり、誰を回復すべきか夜々も考える。
雑魚とはいえ手強いのは、この蜘蛛も例外ではないのだ。
●現なればこそ
時間はかかったが、一行は着実に蜘蛛を追い詰めた。
名のとおり兎のように飛び跳ねて蜘蛛の目を眩ませたウサギが微笑む。既に現実へ現れたシャドウの討伐は二回、その経験が彼の勘を研ぎ澄ましていた。ランクマが浄霊眼で国臣を癒すさなか、蜘蛛の追撃をぶっちぎり、ほぼ真下へ飛び込んで氷弾を撃ち込む。
夜々のまとう猫騙しのマントが翻り、狙いを補正しながら蜘蛛に突き立った。そちらへ注意を引かれた隙に、死角へ回りこんだ実季の握る槍が蜘蛛の甲殻を深々と切り裂く。
『灼滅者 群れて歯向かうから嫌い ね』
蜘蛛が黒い影の凝った足を振り上げ、晴香に叩きつける。避けなかった晴香はまともにくらって思わず膝をついた。襲いくるトラウマを頭を振って振り切る。
「倒れるもんですか……プロレスラーは、苦しみから立ち上がる姿を魅せる商売なの!」
『痛みと 苦痛を選ぶ とは 愚かだ』
逆さについたシャドウの顔が忌々しげに吐き捨てた。既に脚を3本失った蜘蛛にしてみれば、晴香の選択は理解不能以外の何物でもない。しかし次の瞬間、鉄征が勢いよく突進してきた。揺らいだ隙に国臣が『ASCALON』で精神だけを切り裂く斬撃を腹に刻む。
「お前に四の五の言われる謂れはない」
そう、晴香にとってどうでもよかった。
自身が『プロレスラー』で在ることに意味があるのだ。
揺らぐ頭の芯をなんとか制し、王者の闘魂を奮い立たせると蜘蛛の腹を掴んで投げを打つ。渾身の力で豪快にぶっこ抜かれた蜘蛛は、晴香のバックドロップで体育館の床に叩きつけられた。
『 げ う 』
蜘蛛を挟んで駆ける夜々が実季へ声をあげる。
「合わせて行こうじゃないか、実っ季ー!」
「ふふ、ではひとつ、やりましょうか」
苦鳴をあげるシャドウへ実季の足元から影が滑り出た。現れた影はトラウマとなって蜘蛛を打ち据え、床を掻きやっと身を起こした途端夜々が躍りかかった。寄生体が呑み込んでいるのは鈍く光る湾曲剣。竜の骨すらへし折る斬撃を見舞う。
軽い足取りで間合いを詰めた弥勒が交通標識を振りかざすと、赤い輝きを宿した殴打が炸裂した。もはや蜘蛛の脚は自由にならない。
「おっけー、畳み掛けよう!」
ランクマが六文銭を放って蜘蛛を追いこむと、細い身体が信じられないほど華麗な身さばきでウサギがクロスグレイブの重心を操った。遠心力のついた十字架が蜘蛛を打ちすえ、突き、脚の一本を叩き潰す。
蜘蛛が糸を放って灼滅者の脚を止めようとしたが、もう遅かった。
唯一囚われかけた弥勒を庇って鉄征が飛び込み、一撃を引き受けた。横倒しに床を滑っていくとかき消える。勿論国臣は出遅れなかった。
「行くぞミルク!」
「はいはいお任せー♪」
弥勒の放った影が蜘蛛の視野を奪うように広がると、床に縛めた。更なる氷の呪いに蝕まれ、薄氷が這う体に晴香が綺麗な姿勢で放ったドロップキックが食い込む。
体を支えきれなくなったシャドウが床の上に崩れ落ちると、国臣が真正面に飛び込んできていた。『蜘蛛刺』の名を戴く十文字槍は既に狙いを定めていて。
「シャドウは嫌いだよ」
繰り出した鋭い穂先が蜘蛛の頭を貫いた。
ひと声も残すことなく。
蜘蛛はまるで幻のように、靄のように、散って消えていった。
●悪夢消え去り
さすがに巨体のシャドウ相手の戦いは、体育館に幾つもへこみや傷をつけていた。
「それなりの被害は覚悟していたけど、結構あるわね……!」
晴香が頑張って傷隠しのパテを塗りこみ均す。
その間にウサギと弥勒は食堂へ戻った。音漏れがなかったせいか皆ぐっすり眠っている。風邪をひかないよう二人で手分けして毛布をかけ、『野犬は捕まりましたよ』というメモを残して食堂を出た。
「なんかウサギちゃんも眠くなってきちゃったなあ、怖い夢見ませんよーにっ」
伸びをするウサギの視線の先、廊下を挟んで反対の合宿部屋には実季がいた。少女はもう悪い夢は見てないようで、穏やかな表情で寝息をたてている。
実季が枕元に書き置きを残している間に、夜々はそそくさと合宿所を出ていた。嘘をついた後ろめたさで長居をする気にならない。
「本当に野犬が入ってきちゃったら大変だよねー」
後始末を終えて全員が外に出ると、弥勒は戸締りをして持ちだしてきた鍵を郵便受けの中へ入れた。これで心配はない。
一足先に外へ出ていた夜々が実季に自販機で買った温かいドリンクを渡し、からかうように賞賛の声をかけた。
「野犬の真似はなかなか様になってたぞ、お疲れさま。意外と力入れてただろ?」
「ありがとですよー。ふふふ、これでも狼ですから」
彼女流の労いだとわかっている実季が受け取り、顔を見合わせて笑いあう。
二人の仲のよさが晴香には少し眩しかった。大切な人の行方はまだわからない。でもきっと、彼とまた笑いあえると信じてゆっくり歩を進める。
ふと立ち止まり、国臣は合宿所を振り返った。眠っている人々へ、悪夢に苦しんでいた少女へ――。
それは実季が眠る少女に残した書き置きと、そして口には出さなかったけれど、夜々が思っていたことと同じ願いだった。
「次こそは、いい夢を」
夜来る蜘蛛は盗人の先触れ。まして生命を奪う蜘蛛なれば。
悪夢に蹂躙される少女の眠りも生命を奪われんとしていた人々も守りきり、灼滅者たちは闇にまぎれて立ち去ったのだった。
作者:六堂ぱるな |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2016年12月9日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
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