暗殺武闘大会武闘予選~ブレイズゲート攻防戦

    作者:彩乃鳩


    「さっさとボスを倒して予選突破といこう」
    「ふふ、腕が鳴る」
    「灼滅者が邪魔に来るかもしれないという話だったが、さて……」
     六六六人衆、アンブレイカブル、羅刹、デモノイドロード……腕に覚えがあるダークネス達がブレイブゲートへと続々と突入していく。
     目指すは、暗殺武闘大会武闘予選を勝ち抜くための、このゲートのボスの撃破。
     横浜で行われた、暗殺武闘大会の暗殺予選は、それなりの成功を収めた。想定よりも予選通過者が多かったが、それは誤差の範囲内。
     そこで、予定通り、武闘大会の武闘予選を行う事になったのだ。
     暗殺予選が『暗殺されない為の隠密性や立ち回り』などが要求されたのだが、武闘予選で要求されるのは『戦闘力と、素早く目標を達成する実行力』となる。
    「おい、急ぐぞ」
    「ああ。長時間ブレイズゲートにいると、俺達は取りこまれてしまうからな」
     暗殺武闘大会武闘予選は『武蔵坂学園の灼滅者が探索するブレイズゲートを探索、クリアして帰還する』というもの。ダークネス達は、ブレイズゲートに取り込まれてしまう危険性があり、素早く探索して帰還する必要があった。
     もし、取り込まれたら制限時間オーバーで予選も落選だ。
    「絶対に、予選を突破してみせる!」
     多種多様な、ダークネス達がブレイズゲート内を駆ける。
     鬼気迫る戦意を胸に抱きながら。


    「横浜で行われた暗殺武闘大会の暗殺予選は、残念ながら完全阻止とはいかなかったようで、予選を通過したダークネス達が本戦に駒を進めてしまったようです」
     五十嵐・姫子(大学生エクスブレイン・dn0001)が、皆に説明を始める。
     本戦に進むための道はひとつではなく、暗殺予選とは別に武闘予選というのも行われるらしい。
     武闘予選の内容も、ミスター宍戸によって広く広報された為、その情報を得る事ができたが、『武蔵坂学園の灼滅者が探索しているブレイズゲートを探索し、ボスを倒して帰ってくる』というのが、その内容であるようだ。
    「今回も、灼滅者の妨害がある事を前提に、ブレイズゲートの制覇を目指すというのが、ミスター宍戸のプロデュースのようです」
     横浜の事件と違い、無視しても被害が出る事は無いが、暗殺武闘大会に参加するダークネスの数を減らす事は、次に繋がる成果であると思うので、可能な範囲で数を減らして欲しいと、姫子は言う。
    「まず、迎撃ポイントを選択し、その地点までの探索を行って配置に付いてください。そして、やってきたダークネスを迎撃して撃破するという形になります」
     また、ブレイズゲートのボス撃破のルートを完全に塞ぎ、やってきたダークネスを灼滅し続けると、予選突破の為にダークネス同士が協力して襲い掛かってくる危険性が出る。
    「これを阻止する為には、ボス撃破のルートを完全に塞がないような場所で戦うか、或いは、わざと一部のダークネスを通してクリアさせるといった工夫が必要です」
     有力なダークネスのみ襲撃して撃破し、弱めのダークネスを通すといった事をすれば、武闘予選の意義を失わせる事ができるかも知れない。
     探索に来るダークネスは、六六六人衆、アンブレイカブル、羅刹、デモノイドロードだ。
    「暗殺予選が終わったと思ったら、今度は武闘予選です。今回は一般人の被害者はでないようですが、こんなふざけた大会、好きにさせるわけにはいきません。皆さん、よろしくお願いします」


    参加者
    神夜・明日等(火撃のアスラ・d01914)
    刻野・渡里(大学生殺人鬼・d02814)
    佐津・仁貴(厨二病殺刃鬼・d06044)
    太治・陽己(薄暮を行く・d09343)
    森沢・心太(二代目天魁星・d10363)
    ローゼマリー・ランケ(ヴァイスティガー・d15114)
    ルフィア・エリアル(廻り廻る・d23671)
    荒覇・竜鬼(一介の剣客・d29121)

    ■リプレイ


    (「……前にあった何とかって言う密室殺人鬼の復活か、獄魔破獄のようなのでも狙っているのか。考え過ぎか」)
     刻野・渡里(大学生殺人鬼・d02814)は考え事をしながら、担当のゲートへと足を踏み入れる。
    「武闘大会とかなかなか興味深いですよね。とはいえ、後々楽にするためにも、強者はここで摘んじゃいましょう」
     森沢・心太(二代目天魁星・d10363)が続く。
     目指すは三階。レバーのある部屋だ。
    「……というか、ブレイズゲートか……選ぶ方も選ぶ方なら、参加する方も参加する方かもな……」
     先の予選から続いて参戦している佐津・仁貴(厨二病殺刃鬼・d06044)がひとりごちた。今回の予選は、ブレイズゲートに飲み込まれて、分裂体になる可能性もある……
    「まぁ、それだけ参加している奴も肝が据わっているということだろう」
     ……辞退は出来なかった……かもしれんが、と呟いて。
     先へと行く。仲間の言葉を聞きとったか、あるいは反響する靴音で打ち消されたか。荒覇・竜鬼(一介の剣客・d29121)は無言で階段を上る。
    「しかしまあ、分裂の危険をおかしてまでゲートに入ってくるとは……宍戸の手腕は確かということか」
     ルフィア・エリアル(廻り廻る・d23671)は、可能な限り目的地まで最短ルートで移動するように心掛けた。予選を突破せんとするダークネス達の迎撃が此度のポイントだ。その前に疲労しては、元も子もない。
    「敵サン、全員ブレイズゲートに取り込まれちゃえば良いんデスケドネ」
    「そうか」
     ローゼマリー・ランケ(ヴァイスティガー・d15114)が軽口を叩く。その横では、太治・陽己(薄暮を行く・d09343)が常に険しい顔をして、眉を寄せていた。彼は作戦中は自分の心を殺して、可能な限り作戦を成功させる歯車になろうとするところがある。ちなみに、先程の「そうか」はどちらかと言うと肯定的な意味合いである。
    「ブレイズゲートも何だか久しぶりな気がするわね」
     自分達が進んだ痕跡は残さないよう配慮し、神夜・明日等(火撃のアスラ・d01914)達はスムーズに進んでいった。問題なく三階に到着すると、次の階へと続く扉を開けるレバーのある部屋を確保した。
    (「敵だらけの場所だし少しでも油断せずに、ダークネスが来るのを見張るわよ」)
     部屋は開けたら扉が開けっ放しになるので、外から見られない死角となる位置に待機するよう注意。長期戦は避けられないし体調を気遣いながら潜伏を続ける。
    「目標以外のダークネスが来たら、扉を開けて探索せずに先に進めるようにしておく――」
    「逆に、決めておいた相手が来たら誘き寄せて即時戦闘だな」
     事前に打ち合わせおいた作戦を確認して、皆が頷き合う。
     暗殺武闘大会武闘予選。全ての者と闇雲に戦うのは効率的ではない。このゲートを担当した者達の標的は、六六六人衆とアンブレイカブル。それらに絞って今後を有利にする……灼滅者達は神経を尖らせて静かに戦いの時を待つ。


    「……来たな」
    「そうか」
    「あれはアンブレイカブルデスネ」
     ドアの隙間から鏡を使用して隣の部屋を確認していた陽己。その手鏡に写ったダークネスの姿にルフィアとローゼマリーが反応する。一目で高レベルの敵だと分かる、屈強なアンブレイカブルだった。
     まさに狙いの相手だ。
    「部屋に誘導させるようにしないとね」
    (「他のダークネスが乱入してくる可能性も出来る限り減らす」)
     仲間からハンドシグナルを受けた明日等は、すぐにスイッチで道を閉じる。竜鬼達はサウンドシャッターを発動させた。
    「む。扉が開かん。どうやら、仕掛けがあるようだな」
     アンブレイカブルは何度か開かずのドアを叩いていたが、やがて首を振って諦め。他の部屋を探索し始める。灼滅者達は、その隙に戦闘態勢を整えた。
    「こちらの部屋ではない……なら、ここか? まったく、面倒な武闘大会だ」
     ダークネスが一歩二歩と、灼滅者達が身を潜める部屋と近付いてくる。そして、その巨体が足を踏み入れた刹那。
    「おかげでこちらも、出張ることになりましたよ」
     心太がスターゲイザーで先制の狼煙をあげる。
     流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りが炸裂し、敵の巨躯がたたらを踏んで後退した。
    「貴様ら……灼滅者か!」
    「どうせなら、自分に不利な状況で、ここのボスに勝ってみたらどうだい? 自信が無いならすすめないけどな」
     渡里が誘い込みを狙って、上から目線の挑発を行う。
     同時にティアーズリッパーが一閃、ダークネスを鋭い斬撃が襲い。続いて仁貴も高速の動きで敵の死角に回り込みながら、身を守るものごと斬り裂く。
    「ふん、言ってくれる。良かろう、そちらこそ覚悟することだ!」
    「さすが、戦い好きのアンブレイカブル。やる気充分といったところだな」
     物凄い勢いでダークネスが突撃してくるのを、ルフィアは鬼神変で迎え撃つ。拳と拳がぶつかりあい、部屋中に衝撃が走る。このアンブレイカブルの力量のほどがうかがえる一撃だ。
    「こっちも負けてられないデス」
     ローゼマリーの戦闘スタイルはプロレスアレンジの格闘術だ。
     低空ミサイルキックのスターゲイザーが華麗に決まり、味方に存分にアピールした。もちろん戦闘自体は真面目に取り組んでいる。
    「さて、やるか」
     陽己は命中率を重視して、確実に相手を削っていく。
     黒死斬の斬撃が、縛霊撃の一撃が飛び。スナイパーとしての本領を発揮した。
    「ブレイズゲートで立ちはだかる側になるとは思わなかったわ」
    「はん! 立ちはだかるものは砕くのみ!」
     気炎を吐く相手に、明日等はレイザースラストで攻撃する。ウイングキャットには前衛を守ってもらう。その横には竜鬼のサーヴァントも一緒で、リングを光らせていた。主の方は、イエローサインを前衛へと施す。
    「悪くない手応えですね」
     こちらが押せば、アンブレイカブルはそれ以上の力で押し返してくる。それに負けじと心太は鬼神変で、また殴り返す。灼滅者達とダークネスの攻防は初戦から、激しい打ち合いとなった。
    「貴様らに長々と時間をかけるつもりはない。時間は限られているのでな!」
    「全く迷惑な話だな。分裂存在になってくれれば随分楽なんだが……ま、無理か」
     渡里が黒死斬を放ち、カウンター気味のダークネスの蹴りをぎりぎりで躱す。まともに喰らえば、相応の被害は覚悟しなければならぬ威力であることは明白であった。
    「いきなり強敵と当たったな……なら」
     やや遠目の間合いから仁貴が蛇咬斬を連発して、敵の注意を自分に向けさせる。気付かれないように少しずつ移動して、ダークネスから仲間の存在が死角になる場所へと誘導した。
    「隙ありだ」
    「!」
     すかさずルフィアが仲間の作ってくれた死角から、フォースブレイクを炸裂させる。剣の柄の部分の宝玉を叩き付け、流れた魔力が敵の内部から大爆発を起こす。
    「くっ、抜かった」
    「まだまだ、行きマスヨ」
     機を逃すまいと、ローゼマリーは縛霊撃による掌底を打ち込む。陽己がグラインドファイアで攻め込み、この隙に竜鬼はラビリンスアーマーで味方を回復させた。
    「集中攻撃で新たなダークネスが来る前に勝負を決めたいわね」
     明日等が螺穿槍を振るい、それに合わせるように皆もダークネスへと砲火を集中させる。今回の戦いは、どのレベルの敵があとどのくらい来るか分からない。ことによっては、ダークネス達を集団で相手どる可能性だってある。
     ただ、相手も高レベルのアンブレイカブル。
     なかなか容易には押し切ることはできず。灼滅者側の損傷も積み重なることは避けられない。
    「面倒なことにならないように、終わらせます」
    「この灼滅者が!」
     味方の援護を受けた心太が飛び込む。
     傷だらけとなったアンブレイカブルの拳が僅かに遅れ。懐に入り込んだ灼滅者の抗雷撃が、その巨体を大きく抉る。
    「予選突破ならずか……無念なり」
     闘気を雷に変換した一撃によって、致命傷を負ったダークネスは倒れることはなく。絶命した巨体が光の粒となって消滅した。
    「いやー手強かったですね」
     満足そうに心太は、光の残滓を見上げ。
     灼滅者達は、初戦の勝利をどうにかもぎとったことを理解した。


    「くくくく! 灼滅者! 灼滅者がいたわ!」
     二戦目。
     次に通りかかったのは、中レベルの六六六人衆だった。
    「ああ、俺達と戦った後だと、ここのボスに勝てる自信が無いわけだ」
     と渡里が誘うと、一も二もなく飛び付き。
     激戦による血の匂いが、むせるように部屋の中に漂う。
    「誰だろうが、この世の悪は許さない」
     仁貴がクルセイドスラッシュを繰り出す。女の六六六人衆に、破邪の白光を放つ強烈な斬撃が煌めく。
    「悪? 私、悪なの? くくくくく!?」
    「まあ、私達にとっては悪だな」
     ルフィアが殲術執刀法で攻勢に出る。灼滅者達は、彼女を含めて必要な人員は心霊手術を行って回復は済ませてある。連戦による疲れと、負傷はそれでも全快には程遠いが。
    「トラースキックをお見舞いデス」
     ローゼマリーのグラインドファイアが火を吹く。
     炎の蹴りを、六六六人衆はまともに受け。笑いながら血を流す。これまで相当の傷を負っているというのに、その不気味な笑みは決して消えない。
    「これで」
     陽己が鬼神変で、相手のエンチャントを削りかかる。竜鬼は攻撃より回復を優先して行動。癒しの矢でクラッシャーやスナイパーを援護した。
    「いい加減こんな大会は潰してあげないとね」
    「潰す? くくく、出来るかしら?」
     六六六人衆の斬撃が迫る。
     それを明日等が妖冷弾で撃ちにいった。冷気のつららが、戦場全体の温度を下げる。
    「今回も、なかなか楽しませてくれますね」
     心太が抗雷撃を叩き込む。
     六六六人衆が素早い身のこなしで、凄まじい連撃を見舞うと。灼滅者も渾身の打撃で応戦する。
    「ふふふ……くくくくく!?」
     背筋を凍らせるダークネスの哄笑はとどまる事を知らない。
     前回の戦いでのダメージも抜けきっていない灼滅者達は、想像以上の苦戦を強いられた。
    「サフィア、回復重視で攻撃をしてくれ」
     渡里はメディックについた霊犬に指示を出し。
     黒死斬を斬弦糸に切り替える。バッドステータスは確実に相手を追い詰めている。迷わず、それを広げていく。
    「切り刻む、切り刻む、切り刻む!」
    「させるか」
     六六六人衆が狂ったように斬撃を舞わせる。
     攻防一体となったブレイドサイクロンで、仁貴はそれを凌ぐ。武器を高速で振り回し、威力を加速させる。
    「ふむ、このダークネスを素通しするわけにはいかないわけだ」
     槍に螺旋の如き捻りを加えて突き出し、ルフィアが敵を穿つ。大真面目に言っているようにも見えるが、基本的に適当なことを言って突っ込みを待つのが彼女のスタンスだったりする。それが今は心強い。
    「出来るだけ長く戦線を維持しマス」
     味方と声掛けを密に連携しての、掌底と前蹴り。
     自身のサーヴァントと共にディフェンダーとして、ローゼマリーは攻撃に防御と回復と立ち回る。
    「……」
     往くぞ、山姫……という竜鬼の視線を受けてウイングキャットは敵に攻撃を行い続ける。サーヴァントを含めた味方へと、竜鬼自身はイエローサインを使い続けた。
    (「この作戦、必ず果たす」)
     険しい顔を崩さず、陽己は己が役割に徹する。
     炎が相手の傷を確実に削り、斬撃が更なる流血を誘い、捕縛の拳打が相手の行動の自由を狭める。
    「そろそろ、笑顔が強張ってきた頃ですかね」
     心太による鬼神変が決まる。
     自分自身も決して楽観できる身体の状態ではないが。相手はそれ以上にきついはず。そういう核心がある。
    「ッツ!!?」
    「予選に参加した事を後悔させてあげるわね」
     ダークネスにしっかりと狙いを付け。
     明日等が全てを薙ぎ払う。今までのツケがきた六六六人衆は、咄嗟に身体が動かすことが出来ず。研ぎ澄まされた一閃が、高らかに標的を貫く。
    「この大会……最後まで生き残ったら……見返りに何がもらえるんだ?」
     こんなところまで出向くぐらいだから、それ相応の見返りがあると思われる……今ならばと、仁貴は剣戟と共に抱いていた質問をぶつける。
     だが。
     六六六人衆の女は、ボロボロになりながらも。
    「――くく」
     最後まで笑みを崩さず。
     自分にトドメを刺す相手をまっすぐ見つめて。勝負が決した瞬間も、喚くことも答えることもなく。静かに消え去った。


    「だいぶ、やられたわね」
    「戦闘はあと一回が限界か」
     心霊手術をまた行い。
     灼滅者達は、また待機を始める。あと一戦やれるとしても、正直勝てるかどうかは怪しい。そんな状態で、次に現れたのは……羅刹。
     当初の予定通り、これは見逃す。
     次の階へと続く扉を開けたままにして、ダークネスを通す。幸か不幸か、あとはこんな調子が続いた。
    「今度は、デモノイドロード」
    「あ、もう二体来マス」
     デモノイドロードを続けざま三体通して。
     このゲートの……暗殺武闘大会武闘予選は終了した。
    「これ以上留まるのは不要ね、引き上げましょう」
     明日等が促すと、仲間達も頷く。
     全員ともに身体が重い。ぎりぎりのところだったのは間違いない。
    「さて、この苦労が後々良い方向に動いてくれれば良いですが、どうなりますかね」
     心太は血生臭い会場となった場所を振り返る。
     予選を突破した者、突破できなかった者。それに介入した自分達。それぞれの運命が混ざり合い、どのような道が生まれるか。灼滅者達は各々の想いを胸に、現場を後にした。

    作者:彩乃鳩 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年12月13日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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