暗殺武闘大会武闘予選~炎上、新宿橘華中学

    作者:空白革命

     新宿橘華中学。未だ尚ダークネスたちの終わりなき学園戦争が続くブレイズゲートでのこと。
    「なんだテメェ、ダークネスのくせにこの学校に入ってくるとはよ。なんにせよレアな敵だ、ヤらせてもら――」
     釘バットを繰り出すアンブレイカブルの分裂体。だがそのバットは羅刹の男によって素手で受け止められ、そしてべきりとへし折られた。
    「力ないの無い残滓が……吠えるな」
     拳が相手にめり込む。はじけ飛ぶアンブレイカブル。
     羅刹の男は振り抜いた拳をそのままに、深く息をついた。
    「下らん遊びだ。さっさとボスを倒して、予選とやらを終えてやろう」
     

    「皆、暗殺武闘大会のことは知っているか」
     所変わって武蔵坂学園空き教室。大爆寺・ニトロ(大学生エクスブレイン・dn0028)は集まった灼滅者たちに依頼内容を説明していた。
     暗殺武闘大会。その暗殺予選はある町で行なわれ、人知れず一般人を殺していくというものだった。
     武蔵坂灼滅者もその大会に介入し、色々な手がかりから数々のダークネスを撃破した。
    「あの後、予選を通過したダークネスが本戦に駒を進めているようだが……もう一つ気になる企画が立ち上がっている。それが『武闘予選』だ」
     ミスター宍戸によって広報された暗殺武闘大会武闘予選。
     それは武蔵坂灼滅者が探索しているブレイズゲートを探索し、ボスを倒して帰ってくるというものだ。
    「暗殺大会とは打って変わって武闘派な、まさに武闘予選だな。それに俺たち武蔵坂が介入することを完全に意識したステージ選択だ。黙ってみてる手は無ぇよな? のこのこやってきたダークネスをぶっ倒してやろうぜ!」
     
     作戦内容は少しばかり複雑だ。よく聞いて欲しい。
    「俺たちが向かうのは新宿橘華中学だ。まず、ブレイズゲート内で迎撃ポイントを選択してその地点まで進行。配置につく。そこへやってきたダークネスを迎撃、灼滅するって作戦だ。勿論場所はブレイズゲート内だからな。途中の戦闘は必要になるぜ」
     だがこれには条件がある。
    「ブレイズゲートのボス撃破までのルートを完全に塞いでダークネスを灼滅し続けていると、予選突破のためにダークネスたちが協力して襲いかかってくる危険がある。この大会に挑む程の連中だ。いっぺんに相手するのはかなりヤバいだから……」
     ボス撃破の必要ルートからやや外れたところに陣を敷くか、わざと一部のダークネスを(隠れてやり過ごすなどして)通してしまうか……といった柔軟性が必要になる。
     有力なダークネスだけを狙って撃破し、弱めのダークネスをわざとクリアさせるといったプランをとればこの大会自体のメンツを弱体化させることも可能なのだ。
    「挑戦するダークネスは六六六人衆、アンブレイカブル、羅刹、デモノイドロードの四種類だ。ブレイズゲート内の構造もふまえて迎撃作戦をとってくれ。ここは廊下と教室で構成されているから、迎撃ポイントも見つけやすい筈だ。皆、頼んだぞ!」


    参加者
    久織・想司(錆い蛇・d03466)
    白金・ジュン(魔法少女少年・d11361)
    流阿武・知信(炎纏いし鉄の盾・d20203)
    志穂崎・藍(蒼天の瞳・d22880)
    琶咲・輝乃(紡ぎし絆を想い守護を誓う者・d24803)
    月影・黒(涙絆の想い・d33567)
    茨木・一正(無貌なる憤怒の形・d33875)
    矢崎・愛梨(中学生人狼・d34160)

    ■リプレイ

    ●新宿橘華中学・武闘予選
    「ヘッ、久々にレアな敵だ。楽しませてもら――」
    「こっちはもう見慣れたんですよ!」
     一階の階段前を陣取っていた分割存在アンブレイカブルの顔面を、久織・想司(錆い蛇・d03466)の拳が思いっきりとらえた。
     きりもみ回転して飛んでいくアンブレイカブルが壁を跳ね返る。その間バトルオーラをアームブレードのように伸ばして鋭利に整えると、戻ってきたアンブレイカブルを真っ二つに切り裂いた。
     粉々に散っていくサイキックエナジーを浴びながら、細く息を吐く想司。
    「さあ、手早く目的のエリアまで探索してしまいましょうか」
     想司は勿論、今回のメンバーの多くはブレイズゲートをそれはもう単純作業の如くデスマし続けてきた灼滅者の猛者たちである。
     ボス直前のエリアに行く程度のことは全く難しくない。
    「しかしブレイズゲードで予選とは……ここに来るのも久しぶりですね。それはさておき――」
     白金・ジュン(魔法少女少年・d11361)は槍のような長いステッキをずんと垂直に突き立てると、サイキックエナジーを自らの周囲を渦巻いていく。フリルの衣装を靡かせて、いまいちを目を開く。
    「希望の戦士ピュア・ホワイト! 参ります!」
     廊下を突き進みながら、襲いかかる合成眷属を蹴散らしていく。
     その一方で、流阿武・知信(炎纏いし鉄の盾・d20203)がカードを翳して装備をチェンジ。
     青い局部装甲服に身を包むと、腕から巨大なエネルギーシールドを展開。
     ゾンビの繰り出す巨大なハンマーをはじき返すと、そのままタックルをかけて相手を吹き飛ばした。
    「いつもとは少し雰囲気が違うけど……怖がってなんかいられないよね」
    「ん……っ」
     志穂崎・藍(蒼天の瞳・d22880)は腰の帯をぎゅっと締め直すと、青い道着の周囲に雪のようなオーラを展開。
    「大会と聞くとわくわくしてしまうのは、私の業でしょうか」
     雷門のような怪人コンビが襲いかかるが、それを両手で受け止めて強制停止。
     気合いで二人をはじき飛ばすと、嵐のような連続突きでまとめてサイキックエナジーへと還していく。
    「ココは来たこと無いから道とかわかんないなあ」
     矢崎・愛梨(中学生人狼・d34160)はかくんと首を傾げつつ、飛来する機関銃の射撃をダイダロスベルトでガード。変形させた布を槍のように整えると、相手の分割体羅刹を貫くいた。
     ギリギリで腕を異形化させた所で茨木・一正(無貌なる憤怒の形・d33875)が急速突撃。
     黄色い旗を棒術の要領で叩き付け、相手を粉砕した。
    「やれさて、ご勘弁願いたいところですなぁ全く。あ、道に関しちゃご心配なく。頭に入ってますんでね」
     こつこつとこめかみを叩いて見せる一正。
     愛梨はこくこくと頷いた。
    「お願いね。じゃあ、次はどこへ行けばいいの? こっち?」
    「否、ボスまで行っては意味は無し……」
     がらりと教室の扉を開くと、無数の眷属や分割ダークネスが振り向いた。
     どこからともなく刀を取り出す琶咲・輝乃(紡ぎし絆を想い守護を誓う者・d24803)。
     刃に灰色の気を纏わせると、敵の群れへと突撃。
     うごめく絵画を真っ二つに切断し、返す刀で委員長めいた生徒の胸を貫く。
    「ここが、いい」
     輝乃がピックアップしたのは進行度五割程度の地点にある教室である。
     場合によっては通過に不必要な場所へ下がることができるという絶好のポイントだった。
    「分かった。なら、敵を倒しておかないとね」
     月影・黒(涙絆の想い・d33567)は輝乃の意見に賛成するように頷いて、真っ赤な刀を引き抜いた。
     紫色の煙がふわりと上がり、都市伝説存在が実体化したその瞬間に横一文字に切断。
     更に周囲の敵を切り裂いて全滅させると、さくりと刀を収納した。
    「それじゃあ、行こうか」

    ●ロール6:アンブレイカブル(高レベル)
    「日本酷拳法六章六十七条――司法拳!」
     真っ白な学ラン姿のアンブレイカブル。彼の拳がまっすぐに叩き込まれ、知信はエネルギーシールドを最大展開。
     両腕に装備した盾をフル活用して打撃を受けたが、そのまま吹き飛ばされて壁に激突した。
    「一人目からこんなレベルのアンブレイカブルを相手にすることになるなんて……」
    「けど、消耗が少ない序盤のうちに当たって良かったとも言えますよ」
     藍は知信との間に割り込むと、リボンを拳巻き付けてグッと固めた。
     口の端からたれた血を手首でぬぐう。
    「あなたを倒せば本戦に出られるかしら……なんて。参りますよ」
     藍は一気に距離を詰めると、目にもとまらぬ速度で拳の連打を繰り出した。
    「五章六十五条――行政拳!」
     対抗してマシンガンパンチを繰り出すアンブレイカブル。
     二人の拳が空中で幾度となくぶつかり合う。
     最後に違いに拳に雷を込め、正面から叩き付け合う。
     クロスした拳がお互いの顔面に激突。
     打ち負けたのは藍の方だ……が、アンブレイカブルにくっきりと生まれた隙をジュンと想司は見逃さなかった。
     ステッキを槍のように構えて突撃するジュン。
     対するアンブレイカブルはオーラを両手で凝縮して砲撃。
     胸を貫かんばかりの衝撃だがしかし、背後から手のひらを叩き付けた想司がオーラによる対抗衝撃をかけて相殺。
     ジュンは黄金の輝きと共にアンブレイカブルの胸へとステッキの先端――エネルギーの刃を突き立てた。
    「ぐっ……貴様、何者……!」
    「希望の戦士ピュア・ホワイト」
     エネルギー噴射によって廊下の上を水平に飛び、壁に相手を激突させるジュン。
     飛び散るガラス片を浴びながら、小さく呟いた。
    「あなたたちダークネスの凶行は、ここで終わらせます」

    ●ロール5:アンブレイカブル(中レベル)
     第一の敵を倒した彼らへ追い打ちの如くやってきたのはまたもアンブレイカブルだった。
    「これも清掃委員のつとめ――人類を、清掃する!」
     フェンシングに使うような剣を構え、全身に鎧を纏うアンブレイカブル。
     高速で距離を詰めてくると、光を伴って愛梨へと突きを放った。
     咄嗟にリングスラッシャーとダイダロスベルトを重ね合わせた浮遊盾を翳して致命傷を避けるが、あまりの衝撃に大きく押し込まれる。
     あんとかこらえようとする愛梨に、一正がずんと巨大な旗を構えた。
    「鬼の先駆け導き行かん!」
     旗へ鬼めいたオーラが巻き付き、やがて全部を包んでいく。
     気合いと共にオーラを放つと、愛梨へとエネルギーが流れ込んでいく。
    「ありがとっ……!」
     回復したエネルギーを全身に漲らせ、愛梨は両足を突っ張って強制ブレーキ。
     盾を起点にして相手の懐へ潜り込むと、腕をとって足払い。
     一本背負いの要領で高く投げ放った。
    「何ッ――しまった!?」
     アンブレイカブルの焦りはなにも空中に投げ放たれたからではない。
     その空中の更に上。天井に伏せるかのように両足をつけていた輝乃を目撃したからである。
     魔力を足に込め、反転キック。
     地面に叩き付けられたアンブレイカブルはバウンドして回転。剣を構え直すと、追撃に飛びかかった黒と輝乃の両方をいっぺんに相手取った。
     気を纏った刀を抜く輝乃。真っ赤な刀を抜く黒。
     二人はそれぞれ刀にエネルギーを漲らせると、アンブレイカブルめがけて連続で切りつけた。
     常人であれば目で追うことすら叶わないほどの高速連撃だが、それをアンブレイカブルはギリギリの所で弾いていく――が、最後の一撃だけはよけきることが出来なかった。
     黒の身体から放たれた膨大な影業がアンブレイカブルの足や腕に絡みつく。
     目を細める黒。このアンブレイカブルが足運びによってアドバンテージを得ていることに気づいたのだ。
     終わりだ。そう言って横を抜けていく黒。
     アンブレイカブルを切り裂いて、刀を大きく振り切った。

    ●ロール6:アンブレイカブル(高レベル)
     話し合いの結果、低レベルのダークネスを意図的にスルーすることに決めた彼らは、三体目の六六六人衆とデモノイドロードをこっそりと奥の教室内から見送りつつ、次なるダークネスの到来を待っていた。
     そこへやってきたのは……。
    「はっはー、におうピョン。灼滅者のにおいがするピョン……」
     にやありと笑って足を止める、バニーガール衣装のアンブレイカブルであった。
    「高ランク。灼滅対象――ですね」
     がらりと教室の扉を開けた藍に、アンブレイカブルは振り向いた。
     敵である彼女を見つけても襲っては来ない。その代わり、くいくいと指招きをした。
     ハンデのつもりか。藍は最初から全力を出すことにした。
     右腕を異形化。左腕に雷を纏わせ、地面を滑るかのようななめらかなスウェーでもって距離を詰めにかかる。
    「強い敵と戦えること、光栄に思います。そして、楽しませて頂きますよ」
     雷を伴った手刀をバックスウェーでかわすアンブレイカブル。続いて繰り出した鬼神変を膝蹴りで相殺。
     身体をそのままスピンさせると、強烈な回し蹴りでもって藍を蹴り飛ばした。
     机や椅子をボーリングのピンよろしく吹き飛ばして教室の奥へ吹き飛ぶ藍。彼女と入れ違うように飛び込むジュン。
     加速に加速を重ねたダッシュからのドロップキック。
     対するアンブレイカブルはピンヒールの踵を突き出すような蹴りでもって対抗した。
     エネルギー噴射で押し込もうとするジュンだが、相手はびくともしない。
     足技主体。それもバランス感覚の強いタイプだ。
    「さすが灼滅者。めちゃつよピョン。舐めプしてると瞬殺されちゃうから……悪いけど本気ピョン!」
     アンブレイカブルはジュンの足を自分の足で挟むようにして捻ると、地面へ強烈に頭を叩き付けた。
     床が抜けるのではと思うほどの衝撃に白目をむきかけるジュン。
     そんなジュンをひっぺがして後方の仲間に投げる想司。
     他の仲間の攻撃を弾幕代わりにしながら。想司と知信は顔を見合わせた。
    「合わせ技で行きましょう」
    「わかった、いいよ……!」
     知信と同時にエネルギーの渦を展開。
     そんな彼らを蹴散らすべく、まず知信へと連続宙返りからの踵落としを繰り出すアンブレイカブル。
     知信はフェニックスドライブを展開してガード。その背中に縛霊手を押し当て、オーラを全力放出することでガードを補助。
     エネルギーが拮抗し、それでもごり押しで踏みつぶそうとするアンブレイカブル――の眼前に、藍が現われた。
    「なかなかの攻撃ですが、まだ足りませんでしたね」
     目を見開くアンブレイカブル。藍は腕に全力を込めると、アンブレイカブルの顔面めがけて叩き込んだ。
     吹き飛び、窓ガラスをフレームごとぶち破ってアンブレイカブルは外へと落ちていった。

    ●ロール10:デモノイドロード(中レベル)
     まだ戦いは続けられる。目標である六体目のダークネスの到来を待って、一正は廊下の中央に陣取っていた。
     そこへ現われたのは、半身をカラフルな石膏めいた結晶で包んだデモノイドロードである。
    「行く手を阻む灼滅者。うーん、予選に相応しい」
    「こちらは付き合わされて迷惑してるんですよ。他にやることねェのかニートども!」
    「人間にはわかるまいて!」
     デモノイドロードは両腕をガトリング砲に変化させると、大量のチョークを発射した。
     砕けるカラフルな毒煙の中を駆け抜けるのは輝乃と一正。
     仲間の援護攻撃や回復を受けながら、一正は八方結界を展開させた。
    「畏の八峰、納め鎮めて奉れ!」
     遅れて放たれた巨大なチョークによる砲撃をカウンターヒールで弾くと、輝乃に目で合図した。
     小さく頷く輝乃。
     相手の眼前へ急接近すると、扇を展開。
     咄嗟に繰り出したデモノイドの打撃を舞うように回避し、側面から腕を打った。
     内部から爆発し、チョークガトリングが粉砕。
     痛みにもがくデモノイドロードに、愛梨はレイザースラストを発射。
     腹にざくりと刺さった布槍の上を駆け抜けると、リングスラッシャーを直接切りつけた。
     もう一方の腕をざっくりと切断されるデモノイドロード。
     両腕を失ったデモノイドロードだが……。
    「これで終わったわけではないぞ!」
     口を大きく開き、巨大なキャノン砲を露出。
     砲撃。
     爆発。
     吹き飛ぶ仲間たち――の中で、黒は唯一立っていた。
     それも、デモノイドロードの背後にである。
     手を、背中にぴったりと当てる。
     翼のようにオーラが展開。
     それらが複雑に凝縮し、彼の手から放たれた。
     胸を貫いて飛び出していくオーラの砲撃。
    「ば、ばかな……!」
     デモノイドロードは口から膨大な血と粉を吐き出して、その場にがくりと崩れ落ち――そしてサイキックエナジーへと散っていった。

    ●撤収
     それなりのダメージを受けはしたものの、なんとか高レベル帯のダークネスを撃破した灼滅者たちはこれ以上の損傷は危険になるとして撤収した。
     欲をかいてボス部屋の直前に陣取ったり、進行に必要なルートを塞いでいれば後から来たダークネスたちと鉢合わせて大損害を受けたかも知れないが、ここは見事なリスクマネジメントである。
     かくして、任務達成。
     高レベル2体、中レベル2体のダークネスを灼滅し、彼らは無事に帰還したのだった。

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年12月13日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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