暗殺武闘大会武闘予選~血染めの円舞

    作者:六堂ぱるな

    ●悲鳴とワルツを
     かつて美しい薔薇に彩られた洋館も、今は見る影もない。
     豪華だっただろう荒れ果てた内装は在りし日の栄光を謳い、真紅の絨毯の柔らかな踏み心地だけがいくらか往時を偲ばせた。
    「目障りな灼滅者もボスとやらもまとめてぶっ飛ばしてやる」
     壁にかかった肖像画を眺めて鼻を鳴らすアンブレイカブルへ、緋色のソファにかけた六六六人衆がナイフを弄びながら唸る。
    「長居をするとブレイズゲートに取り込まれると聞いたぞ」
    「怖いならさっさとボスを倒して、予選を突破することだな」
     馬鹿にするような羅刹の言葉に場が静まり返った。一色即発の空気の中、テーブルの引き出しから鍵を取りだしたデモノイドロードがにやりと笑う。
    「取り込まれたら予選はタイムオーバーだ。手分けして手早く探索を済ませたいもんだね」

    ●遊撃せるは灼滅者
     暗殺武闘大会の暗殺予選が終わって間もなく。
     かけられた招集で教室へやって来た灼滅者たちは、埜楼・玄乃(高校生エクスブレイン・dn0167)の困惑した顔を見ることとなった。
    「横浜での暗殺予選阻止に動いた諸兄らの尽力に感謝する。敵の撃破に仲間の奪還など成果はあったが、予選を通過したものは出たようだな」
     例によってミスター宍戸は、暗殺武闘大会の内容を広く公開しているらしい。
    「それによると本戦に進む術は暗殺予選のみならず、武闘予選なるものもあるとか」
     武闘予選の内容とは、『武蔵坂学園の灼滅者が探索しているブレイズゲートを探索し、ボスを倒して帰ってくる』というもの。灼滅者による妨害を前提に、ブレイズゲートを突破するのが目標だ。
     つまり、今回もミスター宍戸の計画通りということになる。
    「無視したところで場所はブレイズゲート、一般人に被害が出るわけでもない。ないが、大会に参加するダークネスをここで減らしておくというのも一つの手だ」
     ブレイズゲートに侵入したダークネスを、可能な範囲で減らす。
     次の局面へと繋がる成果となるだろう。

     作戦自体は極めてシンプルだ。
     ブレイズゲートの中で迎撃ポイントを設定し、その場所まで探索を行って配置につく。あとはボスを目指すダークネスを迎撃し、できるだけ撃破する。
    「注意点だが、侵入してくるダークネスは複数で、わりと脳筋勢――六六六人衆やアンブレイカブル、羅刹にデモノイドロードだということだ」
     ボスに至るルートを完全に塞いで伏せる手法の場合、ダークネスが結託して襲ってくる可能性がある。敵が通行する可能性の高いルートで戦うなど工夫が必要だ。
     或いは、強いダークネスのみ撃破し、弱いダークネスは通すという手をとれば、武闘予選の意義自体がなくなるだろう。
    「ブレイズゲート内部の構造も考慮して、誰と戦うか、どんな作戦を取るかをよく練ることを推奨する。なかなかに危険な任務だ。無事の帰還を待っている」
     資料を配布した玄乃は渋面のまま、灼滅者たちに一礼した。


    参加者
    天方・矜人(疾走する魂・d01499)
    蒼月・碧(碧星の残光・d01734)
    天峰・結城(全方位戦術師・d02939)
    敷島・雷歌(炎熱の護剣・d04073)
    咬山・千尋(夜を征く者・d07814)
    エイジ・エルヴァリス(邪魔する者は愚か者・d10654)
    霧月・詩音(凍月・d13352)
    平・和守(国防系メタルヒーロー・d31867)

    ■リプレイ

    ●お手をどうぞ
     暗殺武闘大会、武闘予選。緋鳴館は変わらぬ退廃的な佇まいで灼滅者たちを迎えた。 
    「戦い慣れた戦場ではあるが……さて」
     HMG-M2C【ExCaliber】を掃射した平・和守(国防系メタルヒーロー・d31867)が唸る。声がくぐもっているのは頭部も装甲で覆われているからだ。迷彩塗装された全身装甲は滑らかに駆動し、人型兵器のようだった。室内を一回りしたヒトマルがエンジンを噴かしながら傍らに戻る。
     立ちこめる硝煙の匂いを押し返すほど溢れてくる薔薇の香りに柳眉を寄せ、霧月・詩音(凍月・d13352)がぽつりとごちた。
    「……暗殺の予選の次は、武闘予選ですか。まあ六六六人衆とアンブレイカブルが開催しているのなら当然ですか」
    「ったく、ブレイズゲートで予選たあいい趣味してやがるなあのオッサン。ま、向こうも俺らが来るってわかってんだからなにがあろうと恨みっこなしだよな?」
     軽々と肩に『富嶽』を乗せた敷島・雷歌(炎熱の護剣・d04073)が振り返ると、軍服を纏い顔と首に包帯を巻いた紫電が至極当然と頷く。いつものようにスカルマスクの天方・矜人(疾走する魂・d01499)としては大会の意味が気になった。
    「ダークネスも体張るよな。そこまでさせる何かが手に入るのか?」
    「宍戸の思惑がどうであろうと関係ない。一般市民の平和が脅かされる可能性があるならば、俺は戦う。一応、平和を守るヒーローなんでな」
     和守の基準はシンプルでぶれない。
     こくりと首を傾げたのは蒼月・碧(碧星の残光・d01734)。仲間たちに混じると線の細さや小柄さが際立つが、つい最近堕ちた闇を乗り越えてきた芯がある。
    「不謹慎ですけど暗殺よりはまだましかなって思ってしまいますね……でも、ダークネスはここで倒させてもらいますっ!」
    「左様、暗殺武闘大会――ミスター宍戸の企ては早々に潰さねばならぬ」
     碧の決意に重々しく首肯するエイジ・エルヴァリス(邪魔する者は愚か者・d10654)の傍ら、ジョンもきりっとお座りしている。
     漆黒の長い髪をかきあげ、居心地悪げな咬山・千尋(夜を征く者・d07814)も頷いた。
    「異存はないぜ。強い奴は出来るだけ討ち取っておこう」
     その時、部屋に立ちこめた薄煙を引き裂くような声が轟いた。
    「こっち向きなさいよ灼滅者! この屋敷に誘われた時の話をしてたでしょう?!」
     弾痕穿たれた八千代薔薇怪人たちが激怒していた。既に二人ばかり倒れているようだ。そういえば四階に上がるための鍵を取りに来たのだったと思い出す。
    「失礼。こちらの話が少々白熱しました」
     少しも失礼に思っていなさそうな顔で一礼した天峰・結城(全方位戦術師・d02939)が、おもむろに縛霊手を起動して先頭の怪人を殴り倒した。
    「慣れたもんだぜ、そらよっと。上に行く鍵を出してもらおうか!」
     銀の装飾装甲が際立つ黒いスカルコート・Dを翻し、矜人もタクティカル・スパインを手に挑みかかる。仲間に続いてチェーンソー剣のエンジンをかけ、詩音は残りの言葉を口にすることはなかった。
    (「予選の障害として利用されるのは癪ですが、ダークネスはダークネス」)
     ――一体でも多く狩りましょう。

    ●滅びのダンスホール
     かしゃり。
     微かなその音に、一行は警戒態勢に入った。
     誰かが四階に上がってきて、ばら撒いておいた割れたグラスを踏んだのだ。かしゃり、かしゃり――近づいてくる。だが、うろつくブレイズゲートの虜囚かもしれない。
     待ち伏せしている部屋に詩音がかけた鏡に映ったのは若い男だった。ナイフを弄びながらやってきて、半開きの扉ごしに鏡を目にして足を止める。
     いきなりのジャックポット。
     六六六人衆、それもレべルが高い。
     鏡に鏡を合わせて確認した一行は、男が階段の上へ注意を向けた瞬間に部屋を飛び出した。エイジが部屋の音を周辺から切り離す。
    「さあ、ここから先はヒーロータイムだ!」
     驚いた顔で振り返る男の顔面に、宣言しがてらの矜人の雷光這う拳がめりこんだ。不意を突かれた男が階段の手すりに激突したが、灼滅者が包囲陣形をとると同時に吐息をつく。
    「いたか、灼滅者。下でくたばったかと思ったぞ」
     男の身体からどす黒い殺気が噴き上がった。紫電とジョンが渦に巻き込まれ、避け損なった千尋を押し出した雷歌が咳き込む。
     碧は唇を結んだ。油断のできない戦いだが、大きな作戦で一緒になった先輩達もいるし心強い。だから頑張れる。
    「よし、後ろは任せてくださいねっ。今治しますから!」
     剣を掲げて浄化の風を吹かせた。身を蝕む殺気を念入りに消し去ると同時に、千尋が外しようのない間合いからオーラの砲撃で男を穿つ。
     舌打ちした男が反撃に出るより早く、ヒトマルが絨毯を焼かんばかりの急加速で激突。その瞬間を逃さず、和守の構えたガトリングガンが咆哮した。圧倒的な爆炎を次々と叩きつけて動きを封じこめる。
     低い姿勢で弾幕をくぐり抜けようとする男を結城が押さえに回った。牽制のナイフをバックステップでかわして縛霊手を起動すると、サイドから思い切り殴りつけて結界で縛める。
     足が止まった一瞬を狙った雷歌の蹴りを紙一重でかわした男だったが、紫電の軍刀からは逃げ切れなかった。ざっくりと胸を斬り裂かれた背後にエイジが回りこむ。
    「ちぇい! 忍法黒死斬!」
    「ちっ!」
     首を圧し切らんばかりの斬撃で血をばら撒き、ジョンの放つ六文銭の直撃を受けて男は忌々しそうに舌打ちした。包囲を破ろうと駆ける男の腹に、詩音の放った意志ある帯が翻って突き刺さる。
    「くそっ、何が易い狩りだ。ミスター宍戸とやらめ」
    「……どうやら、狩られるのはあなたの方だったようですね」
     詩音の言葉に苛立ったのか、ナイフを構えた男から毒の風が巻き起こった。見るまに竜巻となって前衛たちに襲いかかる。

     さしたる怪我もなく探索を終えたこともあり、灼滅者たちは順調に男を追い詰めた。高レベルの六六六人衆を大会に進出させるわけにはいかない。
    「……残念ですが、あなたは此処で脱落するのですよ」
    「黙れ!!」
     詩音の言葉に男が激昂する。それは少しばかり早い断末魔のようなものだった。
    「攻めつつ護る、なら俺の領分だ。護国の刃、その身で受けな!」
     雷歌の構えた軍刀が破邪の光を放った。盾の加護を得る斬撃が真っ向から男に振り下ろされる。腹腔まで斬り裂かれた男が血を吐いた。よろけて一歩、二歩と進む。
     手にしたVampirismをくるり、くるりと回した千尋が床を蹴っていた。彼女の衝動を具現化し、敵の加護すら切り裂く斬撃が鮮やかに深い傷を刻みつける。
    「何のために、ここに参加しているの?」
     ダイダロスベルトで雷歌の傷を癒しながらの碧の問いに、男は眉を吊り上げた。
    「勝者になりたいことに不思議があるか? くそっ、俺はまだ、こんなところで……」
    「何を得たかったのか知らねーが、アンタはここでゲームオーバーだ!」
     ナイフをやたらに振り回す男の間合いを外し、矜人が操る背骨を模したマテリアルロッドが鳩尾を抉り、次の瞬間流れ込んだ魔力が男の体内を焼いた。突きで吹き飛んだ体に追いすがるエイジの刃がざっくりと喉を裂く。
     壁に激突した男は立ち上がる力を失った。ゆっくり歩みより、唸りをあげるチェーンソー剣を掲げた詩音が囁く。
    「……せめて、最後くらいは静かに逝きなさい」
     両断せんばかりの重い斬撃。
     血をぶちまけた男は、床に倒れ伏すより早く黒い霧となって消えていった。

    ●あかい饗宴
     六六六人衆相手に楽勝とは言えず、待機する部屋に戻ると結城が身の裡のシャドウの力を吸い上げ始めた。詩音もシャウトを破壊して癒しきれない傷を治す。
    「羅刹……こいつも見逃しだな」
     輸血パックの血をストローで吸いながら、千尋が鏡を覗きこんだ。アンブレイカブルに続いて二人目だが、この程度なら通して予選の意味を失くしたほうがいい。
     そして戦いで消えた紫電とジョンが再び顕現した時、四人目の到達者が姿を見せた。
     現れたのはまたしても六六六人衆、それも高レベルだった。
     危険は承知だが、見逃すことはできない。

    「この先、進めぬ」
    「ここで待ち伏せか。なあるほど」
     包囲され、エイジの宣言に「ほお」と応じた男がぐるりと見回し、顎を撫でて笑う。
     無精ひげにヨレたスーツという格好ながら、侮れないどころか危険な気配を感じる。
    「こんな所まで来るなんて、やけに頑張るじゃねーか。そこまでして勝ちたいのか?」
    「そりゃあそうだ。勝負がどうでもいいならこんなとこにはいないだろ?」
     男の体から殺気が滲み出る。身体を蝕む威力からしてもこれは強敵だ。
     ジョンに殺気から庇われた千尋は、唇を噛んでオーラキャノンを放った。和守がガトリングガンを構えると、厚さすら感じる炎の弾幕を張り始める。
    「こういう使い方も出来るんだぜ?」
     オーラの直撃でよろけた男の目の前で斬艦刀を足場がわりに宙を舞い、雷歌は男の延髄めがけて星が落ちるような蹴撃を喰らわせた。同時の紫電の斬撃を受けながら男はまだ笑っている。
    「へえ、面白いことすんだねえ」 
     何も考えていなさそうな顔をして、男は時折碧を含めた後列を狙った。冷静に丹念に、防具で防ぎきれない穴を突いてくる。
     重なる攻撃で紫電が消え、ジョンが掻き消えていくのは前の戦いの再現のようだった。
    「……あなたは一体、何の為に大会に参加したのですか?」
     和守の放つ銃弾の雨が男を穿つ隙、滑りこんだ詩音が炎を帯びた回し蹴りを浴びせる。それには答えず、男の攻撃は不意に彼女へ向いた。
    「そらよっと!」
     喉を狙った剣閃が見えた瞬間、詩音の意識は奪われていた。絨毯の上に倒れ伏す。
     一人欠ければ戦線の崩壊が始まる。劣勢へと傾きだした瞬間だった。
     誰かが最初に倒れるのだ。わかっていても、それが仲間では冷静ではいられない。
    「この野郎……!」
     怒りの声をあげた矜人がコートを翻した。雷撃を伴う肝臓狙いのボディブローに男がげっと呻く。前屈みの体に結城の拳が連撃で叩きつけられた。幾度か骨を砕いた手応えすら感じ、退く結城に代わって和守がグレネード波の炎弾を撃ち込んだ。
     懐に飛び込んだエイジの斬撃で深々と傷口が開く。続いた雷歌の手で、軍刀が再び破邪の光を放った。下段からの斬撃で腹を裂かれ、男がたたらを踏む。
     その間に碧が中衛たちを癒す風を起こした。傷を塞ぎエイジの足を蝕む呪いを拭いさる。
    「蒼月殿、回復ありがたい! まだまだ粘れるでござる!」
    「ボクも頑張ります!」
     碧がエイジに笑顔を向けた。が、もはや癒せない傷が蓄積してきている。
     千尋の足元で影が深さを増した。底のない沼のような闇の中から、次の瞬間視界を覆うほどの蝙蝠の群れが飛び出した。男に殺到し覆い尽くす。しかし影はすぐさまガンナイフで引き裂かれた。
    「女の子に悪いとは思ってんだぜ!」
     無精ひげの男が放った弾丸は千尋を追って疾った。雷歌の反応が間に合わない。
     胸を撃ち抜かれた千尋が倒れるのを見ながら、結城は男のサイドへ滑りこんだ。ウィールが炎を噴き上げ、一瞬の停止から円を描くような蹴撃が炎を纏って男に捻じこまれる。
    「っ、ははっ、こりゃいい!」
     まともに食らって息を詰まらせながら笑う男へ、雷歌が食らいつくように距離を詰める。赤い絨毯を焼いて回る踵に彼自身の炎が宿っていた。
    「ファイアブラッドの炎だ、火傷で済むと思うなよ!」
     鳩尾を抉る蹴りをかわせず身を焼かれながら吹き飛んだ男に、矜人が渾身の力でしなるタクティカル・スパインを捻じこむ。
    「スカル・ブランディング!!」
     今度こそ男が声もなく悶絶した。そこへ和守のHMG-M2C【ExCaliber】が轟音をあげて、弾丸を叩きつける。雨のような弾がやむと同時、天井を蹴って躍りかかるエイジをかわせるはずもない。
    「忍法、縛霊撃! ちぇすとぉ!」
    「痛ってえなあ!」
     血と炎にまみれた男が笑いながら疾った。
     懐に入りこまれた雷歌が身を引くより早く、男の刃が胸を深々と貫く。仲間を守るため、盾の守りを重ねて踏みとどまってきた身体も限界だった。
    「敷島先輩!」
     矜人の回復に追われる碧が、意識を失い崩れ落ちる雷歌に悲鳴をあげる。
     縛霊手を起動しながら両者の間に身体を割り込ませ、短く息をつくと結城は思い切り男を殴り飛ばした。勢い余って壁に激突する男に矜人が雷光迸る拳を見舞う。
    「忍法、グラインドファイア!」
     まさに忍びのごとく、退く矜人と入れ替わりに炎をまとった回し蹴りを食らわせたエイジが跳び退いた。男が追うように壁を蹴り、放熱が追いつかない和守の炎の弾の直撃を食らいながらもコースを変えない。目標は彼ではなく――碧。
    「ハイ、おやすみ」
     目の前に現れた無精ひげの男がウインクした。碧にはそこまでの記憶しかなかった。
     深々と喉を裂かれ、血を撒いて小さな身体が倒れ伏す。エイジが思わず叫んだ。
    「蒼月殿!!」

    ●戦果はあれど
    「……潮時だな」
     不意に、男が囲みを突破した。階段の半ばまで上がって、追いすがろうとした結城の足元に銃弾を連続で撃ちこむ。
    「俺も痛えし、急いでんだ。勝負は預けるぜ。他の奴らにやられる前に家に帰んな!」
     にやりと笑って言い捨てると階段を駆け上がって消える。後を追いそうになったものの、結城と矜人は踏みとどまった。もう戦いにならない。
    「天方殿、天峰殿。口惜しいが、我々はこれが限界と存ずる」
    「ああ。六六六人衆を一人は潰したんだし、よしとするか」
    「手分けして背負って撤退しましょう」
     矜人に首肯して結城が倒れた千尋を背負い、装甲の焼ける匂いを漂わせながら雷歌を担いだ和守も同意した。
    「俺が殿を引き受ける」
     こちらも時間はかけられない。この状態で予選参加者に遭遇したらどうなるか。先頭きって絨毯の張られた階段を駆け下りながら、エイジは唸った。
    「これにて、任務終了でござる――さて、奇怪な大会は終わるや否や……」
     これが予選でしかないという事実は、不吉な予感を掻き立てる。
     不運にして高レベルの六六六人衆を連続で相手取ることになった一行は、かくして危険を避けながら緋鳴館を後にしたのだった。

     緋色の館で開かれた舞踏会は、ダークネスと灼滅者の血を平等に啜った。
     六六六人衆という危険の芽をひとつ摘み、灼滅者たちは暗殺武闘大会の本戦、ミスター宍戸の次なる一手を今は待つ。

    作者:六堂ぱるな 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年12月13日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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