こぼれ落ちる、アレ。納豆モッチア登場

    作者:聖山葵

    「広めねば……広めねばならんもちぃ」
     それは思わず二度見してもしようのない光景だった。亀甲羅のようにでっかい角餅も背負った納豆まみれの少女が頭に刻みネギという薬味をのっけてよたよたと人気のない通りを歩いていたのだから。しかも、歩くたびに納豆のいくつかがこぼれ落ちている。
    「以前見たご当地怪人に語尾が似ているであるな、シズナ様」
     傍らのビハインドに呼びかけたのは、目撃者である静守・マロン(シズナ様の永遠従者・d31456) 。
    「納豆餅を広めて私を馬鹿にしたあの転校生を見返して、なんやかんやで世界征服もちぃ!」
     ぐっと拳を握りしめた推定モッチアは、それにしても小腹が空いたもちぃねと呟くと、徐に服の襟元を広げ、腕を突っ込む。
    「ん、あったもちぃ」
     そのまま、突っ込んだ腕を引っこ抜けば、手に握られていたのは、糸引く納豆餅。
    「何故あんな場所に入れてあったのか理解出来ないものであるなぁ」
     ひょっとしたら、服の中は納豆餅でねちゃぐちょだったりするのだろうか。
    「ともあれ、これぞ好機であるな」
     ご当地怪人が懐から取り出した間食に夢中なうちにマロン達は踵を返したのだった。

    「納豆餅とかあるらしいであるが、もっちあも居たようである」
     集まった君達の前でそう言えばと首をかしげたのは、倉槌・緋那(大学生ダンピール・dn0005)。
    「いえ、気のせいでしょう」
     きっと、似たご当地怪人の討伐か何かに知人の自称「ごく普通の男の子」が赴いたとかそう言うことなのだろう。
    「しかし、そうなりますと私達に声をかけられたのは――」
    「むろん、あのままにはしておけぬからである」
     緋那が問いかけを終える前にマロンは胸を反らした。
    「そして、もう一度見つけ、倒すか灼滅者として救出するかということになろう」
     エクスブレインの居ないこの状況では件のご当地怪人が救出可能な闇もちぃしかけなのかただのダークネスなのかを見分ける術はない。ただ、いずれにしても納豆をこぼれ落としながら歩く上、世界征服すると宣言してるダークネスを野放しには出来ず。
    「接触と発見は納豆をこぼしながら歩いているから容易である」
     はっきり言って、落ちているのを辿るだけだ。
    「その後、説得するなら話しかければ良かろう。納豆餅を広めたいと口にしていたのでな、いきなり襲いかかってくることは無いと思うのである」
     先方は納豆餅布教をしてくるだろうが、この話を利用して逆にご当地怪人を説得し、後は戦闘に持ち込んで戦い、KOしてしまえばいい。
    「救出にも戦闘は不可欠、気にせずやってしまうと良いのである」
     ただ、戦いになった場合ご当地怪人がどのような攻撃手段をもって反撃してくるかは判っていない。
    「ご当地怪人であるなら、ご当地ヒーローのサイキックに似た攻撃はしてきそうですね」
     推測出来るのは、おおよそそれぐらい。他に判ることがあるとすれば、人よけと明かりが必要ないことぐらい。
    「見かけたのは人気のない通りであったし、日が落ちるのにはまだ猶予がありそうであるからな」
     おそらく、戦闘は夕方。オレンジ色の景色の中でとなるだろう。
    「ご当地怪人は自前で持っているようですが、話をするなら納豆餅を持参するのもいいかもしれませんね」
    「そうであるな」
     現状で想定して準備出来るのはそれぐらいか。
    「最初はただの疑問であったが、見つけてしまった以上看過は出来ぬ」
     よろしく頼むぞよと言うと、マロンは歩き始めた。
     


    参加者
    皇樹・零桜奈(漆黒の天使・d08424)
    博麗・夢羽(博麗の巫女・d16507)
    静守・マロン(シズナ様の永遠従者・d31456)
    癒月・空煌(医者を志す幼き子供・d33265)

    ■リプレイ

    ●やくそく
    「また納豆餅の……もっちあなんだね……。前回も……そんなのあったし……」
     二回目だった。皇樹・零桜奈(漆黒の天使・d08424)は間違いなく今月二回目だった、ただ。
    「怪我はありませんでしたか?」
    「「うん」」
     落ちてる納豆を辿りご当地怪人の捜索を始めるなり、納豆に滑って倉槌・緋那(大学生ダンピール・dn0005)を巻き込んで転んだ現実逃避も兼ねていると思われた。
    (「以前戦ったみたらしもっちあさんと同じ様な感じでしょうか?」)
     かつて助けた闇もちぃしかけだった人のことを思い出す癒月・空煌(医者を志す幼き子供・d33265)もまた、現実逃避の真っ最中だったと思われる。もっとも、こちらは転倒する大学生二人を助けようととっさに緋那の手を掴み支えきれずに倒れ込んだ小学生だったが、手をついた場所に問題が有りすぎ。
    「足下に注意が必要ですね」
     胸を鷲掴みにする形の手をどける様言うこともなければ、怒る様も見せないのは、そのストイックさからくるものか。
    「「ごめんなさい」」
     そーいう体質とはいえ、意図してやった訳でない二名は声をハモらせつつ緋那の上から退く。
    「厄介なのは臭いだけじゃないのね」
     一連のやりとりを目撃し、若干ひきつった顔で博麗・夢羽(博麗の巫女・d16507)が加害者二名から距離を取ったのも前例があるからやむを得ず。
    「その点でシズナ様は無敵であるな!」
     得意げに胸を反らす静守・マロン(シズナ様の永遠従者・d31456)の横で少し困った様子のビハインドであるシズナは成る程、下半身が存在しない。
    「確かに納豆を踏みつけて滑るってことはないよね」
    「それで勝ち誇って良いかは疑問だけど」
    「さ、追跡続行なのである!」
     揃って自身を見る空煌と夢羽の視線には気づかず、マロンは仲間達を促し、歩き出し。
    「まあ……とりあえず……見つけて……助けないとね……」
    「そうね。闇堕ちしかけだったら助けてあげたいわね。好きなものをすすめるのは悪くないのだから」
    「ですね、世界征服をさせるわけにはいかないですし」
     零桜奈の言葉に頷いた空煌と夢羽も後を追う。もっとも、ご当地怪人の探索にそう時間はかからなかった。
    「あ」
     声を発した零桜奈が目にしたのは、大きな角餅を背負った少女のモノらしい背中。
    「服も餅もそのまま……おそらく、あれであるな。近辺ででっかい角餅を背負うのが流行でもしていない限り」
    「流石にそんな奇抜な流行は無いと思いますが」
    「普通に考えればそうなんでしょうけど、学園の仲間にもダークネスにも個性が飛び抜けてる人は居るし」
     情報提供者にして唯一の目撃者ペアの灼滅者側の言葉に緋那がツッコむも、夢羽が何とも言えぬ表情で視線を逸らし。
    「変な都市伝説とかも偶に出ることあるし」
    「そうでしたね」
     続く空煌の言葉にも思い当たるものがあったのか、緋那は自身の過ちを認めた。
    「そもそも――」
     ご当地怪人を発見した以上、割とどうでも良いことを論じている時間はない。接触し、説得を始めるべき時に他の事に気をとられ、憶測している様な暇などないのだ。
    「ん? なんであるシズナ様? 『あの子実はねばねばに包まれてるのが好きなのかしら』? ははは、そんなわけないであるよー」
     おそらく、きっと。なので、足を止めたマロンがシズナとご当地怪人の趣好について論じていたのは、きっと気のせいだろう。
    「では、声をかけましょうか」
    「……うん。ただ……さっきのような……事がなければいいけど……」
     促された零桜奈は首を縦に振りながらフラグを立て。
    「うう、どうも納豆の匂いは苦手であるー! ねばねばもするし……」
    「なっ」
     マロンの声を耳にしたご当地怪人が目を見開き、振り返る。ご当地怪人からすれば、それが灼滅者達との出会いだった。

    ●おはなし
    「あんたの言う納豆餅ってこれよね?」
     驚きから怪人こと納豆モッチアが立ち直るより早く、夢羽は実物を手に問いかける。
    「うむ、まさしく納豆餅もちぃ! ……ん?」
     即座に頷いたモッチアはピタリと動きを止め。
    「待つもちぃ、見知らぬ人が納豆餅を持って話しかけてくると言うことは……私の納豆餅広報活動は知らぬ所でもう実を結んでいたもちぃか!」
    「えっと」
     ハッと顔を上げ盛大に勘違いするご当地怪人にどうしようかと言った顔をしたのは、空煌。
    「くううっ、完璧すぎる自分がちょっと恐ろしいもちぃ。これなら、あの転校生を見返すのもそう遠くないもちぃな」
    「これ、どう美味しいのか教えてくれないかしら?」
     勘違いというか自己陶酔というかそれは明らかに深まって言ってる様に見え、流石にこれは拙いと見た夢羽が言葉を続け。
    「どう美味しいのか? むぅ」
     オウム返しをして唸ったモッチアは再び考え込む。
    「これは、納豆餅の美味しさまでは広まっていなかったと言うこともちぃか……いや、考えようによってはここから美味しさを広めて行けば良いだけの話もちぃな。むしろ、これは好機と思うべきもちぃ」
    「……前向き、だね」
    「そうであるな。ただ、自己完結してしまうのは少々頂けないところであるが」
     ブツブツ呟く怪人の様子に零桜奈がポツリと零せばマロンが同意しつつ自身の思考の海に肩まで使ったモッチアを眺め。
    「……だけど、納豆餅を……広めるのに……その格好だと……逃げられるだろうから……、元の姿に……戻った方が……いいと思うよ……」
    「そうですね。その格好で近寄られたら誰だって逃げ出すと思うのですよ」
    「ん、逃げられるもちぃ?」
     考え込んでいた様でいて、しっかり零桜奈と空煌の二人分の忠告は耳に届いた様でご当地怪人は二人に向き直り。
    「うん。納豆餅を広めるのは悪い事ではありませんが、逃げられたら、広めるのは難しいと思うですよ?」
    「ちょっと待つもちぃ。逃げられたら広められないというのはわかるもちぃ、けど、何故逃げるもちぃ?」
    「えっ」
     心底不思議そうな表情のご当地怪人に空煌は言葉を失う。
    「あー、わかったもちぃ。お色気要素が足りないもちぃな? こう、胸元をもうちょっと開けて……ふふん、納豆餅も取り出しやすくなるし、一石二鳥もちぃ」
    「……こう、どこからツッコめば良いのかしら?」
    「まず、はずみで納豆が零れたことを指摘してみてはどうでしょう?」
     得意げな顔で胸を反らすモッチアを見て頭が痛いですのポーズを夢羽はするも緋那の口から出た提案は間違ってはいないものの正しいとも言い切れず。
    「とりあえず、人の話は聞かず、ゴーイングマイウェイって所はダークネスっぽいわよね、けど」
     夢羽達は説得する為に声をかけたのだ、黙って見ていても何も変わらない。
    「さっきの話の続きだけど」
    「おお、そう言えば納豆餅の美味しさについてきいていたのだったもちぃな? すまないもちぃ」
    「流石に自分の目的と関係のあることなら聞く耳は持つのですね」
    「やっぱり、納豆餅の美味しさの理由と言えば――」
     話を戻す夢羽に反応を見せる様へ緋那がポツリと漏らす中、ご当地怪人は嬉々として語り始め。
    「これで、何とか説得には持って行けそうであるな」
     マロンがシズナに耳打ちする。実際、良い雰囲気ではあった他者に納豆餅の魅力を話す内に納豆モッチアの醸し出す威圧感が徐々にゆるみ始めていたのだから。
    「もう一押しだね。じゃあ、ボクも」
     説得に加わろうと怪談で周囲の人払いを済ませ近寄ってゆく空煌。この時点で聡い者なら気づいたかも知れない。
    「……あ」
     そんな空煌の足下にご当地怪人が落としたばかりの納豆が有ることに気づいたのは、零桜奈。
    「……危」
     納豆に滑って転んだ記憶も新しい零桜奈としてはここでのとらぶるは避けたいと思ったのであろう。それは正しい選択だった。ただ、歩み寄った自分もそう言う体質の持ち主であることを失念していなければ。
    「うわあっ」
    「もちゃばっ」
     納豆を踏んで、倒れ込みながらご当地怪人を押し倒す空煌と、その腕を掴んだ瞬間、空煌が踏んだ納豆を踏んで滑り、バランスを崩した零桜奈。
    「どうしてボクたちこうなってるんでしょう?」
     もし、零桜奈と折り重なる形で納豆モッチアを押し倒す空煌がそう呟いて遠くを見ようとしてもきっと敵わなかったことだろう。空煌の頭はご当地怪人の服の中に突っ込まれていたのだから。
    「ん゛んぅう?」
     豊かな胸と服と納豆が織りなす暗く狭い世界で空煌が状況を把握出来るはずもなく、これはスカートの方に頭を突っ込んだ形の零桜奈も変わらない。
    「な、な、な」
    「ちょ、どこ触ってるもちぃ」
     顔を赤くして口をパクパクさせる夢羽の前で絡まる納豆まみれの男女。フラグはきっちり回収されたのだった。

    ●説得(物理)
    「……とりあえず、さっきのは無かったことにするとして」
     転校生を見返すことに協力してくれるのは本当もちぃかと問うモッチアに夢羽は首肯を返した。
    「ただし、条件があるのである。納豆餅の魅力、語って貰ったが言葉だけでは信用できないのである! なので、その素晴らしさを戦いの中でしっかと教えて貰いたいのである!」
     続く形のマロンがアドリブを入れたのは、おそらく問題なく戦いへ移行できるようにするためであり。
    「よかろうもちぃ」
     さっきのハプニングを忘れたいのか、是非とも協力して貰いたかったのかご当地怪人はあっさりと提案にのった。
    「ソノ死ノ為ニ……対象ノ破壊ヲ是トスル」
    「力を貸してっ!」
     故に納豆まみれの二人もスレイヤーカードの封印を解き。
    「準備は出来たようもちぃね、ならばっ!」
     アスファルトを強く蹴った瞬間、納豆がこぼれ落ち、もっちあ(名詞)が豊かな胸がたわんで弾む。
    「まずはさっきの礼もちぃ!」
    「無かったことにすると言ってたけど、実のところ根に持ってたみたいね」
    「わう」
     両腕を広げ零桜奈へ向かって行く姿を見て何とも言えない表情をした夢羽の横で霊犬の葵が鳴いた。本来なら仲間に攻撃を仕掛けようと言うのだから、声をかけるとか攻撃を妨害しようとするとかしても良かったのかも知れない。ただ、もうこの時点でどうなるかほぼわかってしまったのだ。
    「納豆餅ダイナミーッ」
    「させない!」
    「もちゃばっ?! あ」
     組み付いて持ち上げようとする直前に空煌の射出した帯に貫かれた納豆モッチアの上体が横に泳ぎ。
    「え」
     綺麗な蒼色を地斬疾空刀【瑠影】に宿し、迎え撃つつもりだった零桜奈も想定外の事態に一瞬硬直する。
    「ちょっ、そこを退い――」
     倒れ込みながら退いてもちぃと続けようとしたご当地怪人の瞳に映ったのは、いつの間にかつい先程までの死角、かつ零桜奈が唯一退避出来る場所を塞ぐ形で自身に斬りかかろうとする緋那の姿だった。
    「もちゃびゃぁぁぁ?!」
     転倒と身につけた衣服ごと斬られた悲鳴が巻き込まれた他者の悲鳴をかき消し。
    「まぁ、二度あることは三度あるであるな、シズナ様? む、シズナ様、これでは前が見えないであるよ?」
     折り重なる敵と味方を前にして振り返ったマロンは視界を塞がれて困惑した声を上げる。
    「……この有様じゃ、仕方ないわよね」
     言いつつ夢羽も空煌の視界を塞ぐ様に立って視線を逸らした。こう、ご当地怪人が服破りされたことも相まって小中学生に見せるのはまだ早い様な有様になっていたのだ。
    「あのまま攻撃しちゃっても良かったかも知れないけど」
     仲間にあたる可能性だってあった、だから仕方のないことであり。
    「ううっ、まさか戦う相手に気を遣って貰うもちぃなんて……手数をかけたもちぃ。これは感謝の気持ちもちぃよ」
    「そう、なら頂くわ」
     零桜奈達とのサンドイッチから抜け出した納豆モッチアが憮然としつつも納豆餅を差し出せば、夢羽は素直に受け取り。
    「もぐもぐ……確かに納豆餅は頂いたが、手は抜かないのである!」
    「ふ、当然もちぃ! 私は自らの力であの転校生にもお前達にも納豆餅の素晴らしさを認めさ」
    「そんな訳で幻狼銀爪撃である!」
    「もぢゃばーっ!」
     まるでコントの様な流れだった。
    「ぐぎぎ、この程」
    「いくぞ」
    「もっぢゃーっ! べっ」
     蹌踉めきつつ起きあがったところに叩き込まれたのは、零桜奈の振り下ろした一撃、とシズナの霊障波。
    「なるほど、納豆餅の良さは分かって来たのである……。シズナ様が隠さないと行けない程のナニカ、そして先程の餅と、我輩の一撃を受けてもすぐ起きあがってくる闘志――」
    「ちょと待つもちぃ! ありがたい、評価して貰うのはありがたいもちぃけど、一番最初のは」
    「ならば、やはりそれを世界征服の手段にするお主はどうかと思うのである! 転校生とやらも全うな手段で美味しさを宣伝するべきである!」
    「待って、私の話聞い、もちゃらばっ?!」
     喜びつつも一部訂正する必要に駆られた納豆モッチアはさらりと流され抗議の声を上げる途中で吹っ飛んだ。
    「わうっ」
    「悪いわね。今は戦闘の最中だから……真剣勝負に手を抜いちゃ駄目でしょ?」
     六文銭で抗議を遮った霊犬の傍らで、苦笑した夢羽はチェンソー剣を持ち上げる。
    「ちょっ、な、あ……もちゃーっ!」
     駆動音をあげながら襲いかかる斬撃はいろんな意味で無慈悲だった。
    「ひどい、もちぃ」
     ただでさえ切り裂かれた服をズタズタにされた上、そのままフルボッコされたご当地怪人はポテッと倒れると元の姿へと戻り始めたのだった。

    ●すれちがい
    「気が付いた様であるな」
     意識を取り戻したことへ気付き、マロンが口を開けば、少女はここはと問うた。
    「ひょっとして、堕ちかけだった時の記憶がないのかしら?」
    「一時的な記憶の混乱と言う可能性もありますが……」
    「けど、どっちにしても説明はしないといけないよね?」
     顔をつきあわせた面々は、とりあえず順をおって説明することにし。
    「……そうでしたか、そんなはた迷惑な怪人になってたなんて、この、大豆島・未納(まめじま・みな)一生の不覚です。ええと、ご迷惑をおかけしました」
     零桜奈や空煌の巻き起こしたアクシデントの部分だけ端折って説明された少女は申し訳なさそうな顔で頭を下げた。
    「……ダークネスの時と違って……真面目そうだね」
    「そうであるな。責任を感じている様でもあるし」
    「それで居て、ちょっと天然っぽい所もあるってとこかしら? 説明されるまで服がズタズタだったことにも気づかなかったところからすると」
     ヒソヒソと一行が言葉を交わす中、縮こまった少女とは対照的に服の破れ目からはみ出て自己主張する豊かな胸は男性陣にとって目の毒であり。
    「……怪我がなかったのは……良かったと思う」
    「そう、ですね」
    「はい、ありがとうございます」
     傷の確認をするつもりだった男性二名が遠回しに言っても少女は気づかない。
    「これは……もう先に次の説明にいっちゃうべきね。私達は武蔵坂学園から来たのだけど――」
     夢羽は諦めて武蔵坂学園について語ると、一緒に納豆餅を広めようと少女に手を差し伸べる。
    「どう? 私も手伝うわよ」
    「あ、ありがとうございますっ! 私――」
     かくして新たに誕生した灼滅者は夢羽の手を握り返し、マロンの発見に端を発したこの事件は幕を閉じたのだった。

    作者:聖山葵 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年12月23日
    難度:普通
    参加:4人
    結果:成功!
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