実は……出るんだよ

    ●都内某所
     必ず『出る』と噂の墓地があった。
     この墓地は以前から『お化けが出る』という噂が流れており、雑誌やテレビで特集された事もある心霊スポットであったらしい。
     そういった噂が広まっていくうちに、都市伝説が生まれてしまったようである。

    「本当なら、幽霊なんて出なかったんだけどな」
     悪意のない噂ほど怖いものはないと思いつつ、神崎・ヤマトが今回の依頼を説明した。

     今回、倒すべき相手は、幽霊の姿をした都市伝説。
     イメージ的には白装束に三角頭巾、人魂をオプションの如く飛ばして、『うらめしや~』って感じのヤツだ。
     まあ、足がないから、一目でわかると思うが……。
     ちなみに都市伝説は肌が異常なほど白くて、影のある女性の姿をしている。
     そのせいか、下心を持ったオッサンとかがフラフラと行っちまうようだ。
     ただし、都市伝説に触れられたが最後。
     あっという間に全身の体温を奪われてあの世逝き。
     おそらく、お前達が現場に行く頃には、誰かが襲われているだろう。
     状況的に助け出す事は困難だが、可能であれば助けてやってくれ。
     それじゃ、よろしく頼むぞ。


    参加者
    アリシア・ウィンストン(美し過ぎる魔法少女・d00199)
    アルティ・スフォルツァート(バトルセラフ・d00231)
    月代・沙雪(月華之雫・d00742)
    玖珂島・蓮也(高校生ストリートファイター・d04694)
    浅儀・射緒(穿つ黒・d06839)
    山花・楽(色々と無理が出てきた年頃・d09197)
    高峰・紫姫(銀髪赤眼の異端者・d09272)

    ■リプレイ

    ●真夜中の墓地
    「幽霊もの……、日本にもあるのか……」
     都市伝説の確認された墓地に辿り着き、アリシア・ウィンストン(美し過ぎる魔法少女・d00199)が箒から降りる。
     墓地はひんやりとした空気が漂っており、足元の土が湿気を含んでジメジメしていた。
    「いかにもって場所だな。そりゃあ、幽霊の一つもできるわ」
     墓場をゆっくりと見回した後、玖珂島・蓮也(高校生ストリートファイター・d04694)がしみじみとした表情を浮かべる。
     ……色々な意味で怪しい。
     この状況で何も出ないという方がおかしく思えてしまう。
    「墓地で都市伝説なんて、お墓で眠っている方にも迷惑でしょうに……」
     どこか遠くを見つめながら、高峰・紫姫(銀髪赤眼の異端者・d09272)が溜息をもらす。
     だが、こういった場所だからこそ、逆に都市伝説が生まれたのかも知れない。
    「幽霊の、都市伝説。何を、考えて、人を、襲うの、かな。誰か、恨めしい? それとも、寂しい、の……?」
     不思議そうに首を傾げながら、シロナ・エンティミスタ(幽刻・d08554)が喪服姿で物陰からコッソリと呟いた。
    「もしも、都市伝説が喋れるとしたら、こう答えるでしょうね。みんなが噂していたから……って。全く……、出ようが出まいが、変な考えでこういう場所に近づくから、酷い目に遭うのよ。面倒ね……」
     やれやれと首を振りながら、アルティ・スフォルツァート(バトルセラフ・d00231)が墓地を歩いていく。
     その途端、奥の方から男の話し声が聞こえてきた。
    「……?」
     警戒した様子で物陰に隠れ、浅儀・射緒(穿つ黒・d06839)が声の聞こえた方向に視線を送る。
     男はいやらしい笑みを浮かべて、都市伝説にジリジリと迫っていた。
     おそらく、都市伝説が人間であると勝手に思い込んでいるのだろう。
    「まぁ、フラフラ寄っちまうオッサンの本能はおいておくとしてだ。さっさと退治して助けるとするか」
     都市伝説をジロリと睨みつけ、蓮也がスレイヤーカードを解除した。
    「下心からの行動とは言え、助けられるのなら、助けないとです。可能な限り急いで向う事にします」
     なるべく足音を立てないようにしながら、月代・沙雪(月華之雫・d00742)がゆっくりと距離を縮めていく。
     しかし、このままでは間に合わない。
     だからと言って、ここで飛び出せば、都市伝説に気付かれてしまう。
    「ねえねえ、こっちを見てェーん」
     すぐさまラブフェロモンを使い、山花・楽(色々と無理が出てきた年頃・d09197)が男の興味を引く。
     その途端、男の中で……何かが弾けた。
     男を愛して病まない円らな瞳。
     まるでハムスターのような円らな瞳が、真っ直ぐ楽を見つめている。
     マズイ……、非常にマズイ。
    (「まさか、ソッチの気が……。いやいや、そんなはずはない。見るからに女好きだろ、この顔は……! ひょっとして、俺は禁断の扉を開いてしまったのか!?」)
     楽の脳裏に過ったのは、激しい後悔。
    「ここは危険じゃ。妾に任せて、安全な場所に……って、どうしてそこで手と手を取り合っているのじゃ」
     楽達に生暖かい視線を送り、アリシアがダラリと汗を流す。
     それに気づいた楽が『ご、誤解だ!』と叫んだが、男の瞳にはハートマークが浮かんでいる。
     その後ろで都市伝説が申し訳なさそうに……、立っていた。

    ●一般人
    「悪いが、お相手交代だ」
     手を熊手の様な形にしてオーラを掌に纏わせ、蓮也が男を守るようにして陣取って都市伝説に言い放つ。
    「えっ? いや、その……」
     そのため、都市伝説が無駄に焦る。
     おそらく、予想外の出来事であったのだろう。
     妙にオロオロしていて、落ち着きがない。
    「これも、お仕事、だから……」
     都市伝説に語りかけながら、シロナがスレイヤーカードを開放する。
    「わ、わたしはただぬくもりがほしいだけ」
     ……それが都市伝説の答えであった。
     もちろん、都市伝説に拒否権はない。
     彼女が何と答えようが、倒す……のみ。
    「……そこ」
     都市伝説を射程内に捉え、射緒がバスタービームを放つ。
     それに気づいた都市伝説が墓石にサッと身を隠す。
     そのせいで、さらにガタブル。
     『寒い、寒い』と言って、身体を震わせている。
    「いや、俺の方はピンチだから! 背中に寒いモノを感じているから! ……というか、こっちに来ないでくれ!」
     誘惑した男に激しく迫られ、楽が涙目になってツッコミを入れた。
     身から出た錆ではあるが、時間を戻せるものなら戻したい。
     時間を戻して、過去の自分のコンコンと説教したい気分である。
     草葉の陰から見守っているナノナノのハッピータンの目が、何やら冷たく感じるのは気のせいだろうか?
     しかも、ここで気を抜けば、唇だけでなく、色々なものが奪われてしまいそうな勢いだ。
    「……悪く思うでないぞ」
     男の背後に回り込み、アリシアがぽふっと当て身。
     当然の如く、男がその場に崩れ落ちる。
    「これで戦闘に集中する事が出来ますね……」
     苦笑いを浮かべながら、紫姫が男を守るようにして陣取った。
     その間も都市伝説は墓石の後ろに隠れて、こちらの様子を窺っている。
     この状態だと何となく可愛らしく思えてしまうが、既に何人もの命を奪っているため、決して無害な存在とは言えない。
    「……焼き削る!」
     一気に間合いを詰めながら、蓮也がレーヴァテインを放つ。
     それに気づいた都市伝説がひょいっと後ろに飛び退き、『こ、殺す気ですか!』と涙目になって抗議をした。
    「……もちろん」
     既に死んでいるのではないかと思いつつ、アルティがバスターライフルを構える。
     だが、相手は都市伝説。
     幽霊とは違うので、まだ死んでいないのかも知れない。
    「大人しく滅されて下さい!」
     戸惑うハッピータンに合図を送り、沙雪が少しずつ連携を取っていく。
     そのため、都市伝説も覚悟を決めた様子で、沙雪達に攻撃を仕掛けてきた。

    ●都市伝説
    「もう、誰も、誰も、殺させない、の……!!」
     都市伝説を牽制するようにして、シロナがデッドブラスターを放つ。
    「い、いや、私はただぬくもりを……」
     そう言い訳しつつも、都市伝説がシロナに迫る。
     物凄い勢いで……!
    「……!?」
     ほんの一瞬、都市伝説の体がシロナに触れた。
     まるで氷に触れられたような感触。
     途端に全身が凍りついていくような錯覚を受けた。
    「……させない」
     都市伝説の死角に回り込み、射緒がバスタービームを撃ち込んだ。
     その一撃を食らった都市伝説が『ごめんなさい、ごめんなさい!』と叫んだが、まったく反省しているようには見えない。
     おそらく、これが都市伝説のやり方。
     相手を油断させて、一瞬にして命を奪う、非情な手段。
    「……抉る!」
     都市伝説の懐に潜り込み、蓮也が閃光百裂拳を叩き込む。
     すぐさま都市伝説が蓮也に抱き着いたが、その時には手遅れ。
     都市伝説の臓物が背中を突き破って派手に舞う。
    「闇よ、光を以て浄化されよ!!」
     それでも都市伝説が蓮也を凍りつかせようとしたため、アリシアが背後に回り込んでマジックミサイルを放つ。
     次の瞬間、蓮也が都市伝説を蹴り飛ばし、その場で自らの身を守る。
     それと同時に都市伝説に攻撃が命中し、辺りに断末魔が響き渡った。
    「皆さん、無事ですか?」
     都市伝説が消滅した事を確認し、沙雪が仲間達の安否を確認する。
     約一名を除いて、とりあえず無事。
    「あ、悪夢だ」
     酷く疲れた様子で、楽がその場に座り込む。
     何とか男は冷静になったようだが、あと少しでも遅ければ……大変な事になっていた。
    「でも、これでようやく静かに……。てお墓で眠っている方も静かに過ごせるでしょう」
     本当に心霊写真が撮れないか試すため、紫姫が墓石にむけてシャッターを切る。
     ……特に怪しいモノは写っていなかった。
     だが、それでいいのかも知れない。
     ここで眠る人達のためにも。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年10月19日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 5
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