武蔵坂防衛戦~選択の行方

    作者:J九郎

    「……みんな、朱雀門との交渉の結果は知ってると思うけど」
     そう前置きして、神堂・妖(目隠れエクスブレイン・dn0137)は陰気な声でこれまでの経緯を説明し始めた。
    「……朱雀門との共闘を求めて交渉に赴いた結果、朱雀門会長のルイス・フロイスが『武蔵坂学園がソウルボードで決戦を行う』という偽情報を爵位級ヴァンパイアに流した上で、先鋒として朱雀門全軍を率いて攻めてくるという情報を得ることができた」
     そして『朱雀門の軍勢が武蔵坂の奥まで侵攻する事を確認』すれば、爵位級の軍勢が怒涛のように攻め寄せてくる手筈になっているという。
    「……これに対して、みんなに選んでもらった選択肢は3つ」
     妖は立てた3本の指を1本づつ折りながら、説明を続けた。
     1つ目は、先鋒である朱雀門全軍を撃退する事。
    「……朱雀門を撃退すれば、爵位級ヴァンパイアの軍勢は攻めてくることはなくなる。でも、その後のシャドウとの決戦時に介入してくる可能性が高くなる」
     2つ目は、先鋒である朱雀門全軍を学園の奥まで侵攻させ、爵位級ヴァンパイアの軍勢を釣り出して、爵位級ヴァンパイアの軍勢をできるだけ多く撃破する事。
    「……この作戦が成功すれば、シャドウとの決戦の時に爵位級ヴァンパイアが介入してくるのを防ぐ事ができるはず。でも、朱雀門高校の提案が罠だった場合は、取り返しのつかない事態になるかもしれない」
     最後は、朱雀門高校の軍勢を引き入れた後にだまし討ちにして、その後、侵攻してくる爵位級ヴァンパイアを撃破する作戦。
    「……成功すれば最大の戦果を得る事ができるはずだけど、かなり危険な賭けだと思う」
     そして、この3つの選択肢から灼滅者達が選んだのは、朱雀門高校の提案を受け入れ、爵位級ヴァンパイアを誘き出して灼滅する作戦。
    「……デスギガスとの決戦の時に爵位級ヴァンパイアからの襲撃があったら、防ぎきることはたぶん不可能。だからこの選択はありだったと思う」
     この戦いで、数多くの爵位級ヴァンパイアを灼滅する事ができれば、爵位級ヴァンパイアとの決戦でかなり優位に立つ事ができるだろう。
    「……ただ、朱雀門高校の戦力が裏切ったら、大変な危機に陥ることになるから、警戒は必要だと思う」
     爵位級ヴァンパイアの有力な敵は、『バーバ・ヤーガ』『殺竜卿ヴラド』『無限婦人エリザベート』『黒の王・朱雀門継人』 であるとであると想定される。
     この有力な敵に、配下の吸血鬼や眷属などが従っているようだ。
    「……この情報を元に、皆で話し合って、作戦目標を考えてほしい」
     爵位級ヴァンパイアを撃退するには、3~5チーム以上のチームが力を合わせなければ撃退する事は出来ないだろう。
     爵位級ヴァンパイアを灼滅するには、更に倍以上の戦力が必要になるが、作戦によってはより少ない人数で灼滅に追い込めるかもしれない。
     爵位級ヴァンパイアと配下の吸血鬼戦力を分断できるか否かが成否のポイントになるだろう。
    「……この作戦の成否が、来たるべきデスギガスとの決戦、そして爵位級ヴァンパイアとの決戦に大きく影響してくるはず。みんな、最善を尽くして頑張って」
     妖は手を握り締めて、そう灼滅者達を励ますのだった。


    参加者
    色射・緋頼(生者を護る者・d01617)
    九凰院・紅(揉め事処理屋・d02718)
    穂照・海(狂人飛翔・d03981)
    不動峰・明(大一大万大吉・d11607)
    備傘・鎗輔(極楽本屋・d12663)
    リアナ・ディミニ(不変のオラトリオ・d18549)
    海弥・障風(阻む風・d29656)
    押出・ハリマ(気は優しくて力持ち・d31336)

    ■リプレイ

    ●朱雀門高校、来たる
    「来たか」
     雲霞のごとく押し寄せ、武蔵坂学園を取り囲んだヴァンパイアの軍勢。その中でも先陣を切って突撃してきた一団の姿に、九凰院・紅(揉め事処理屋・d02718)は我知らず愛用のガトリングガンを握り締めた。
     もはや見慣れた朱雀門高校の制服姿のヴァンパイアを中心に、青き寄生体に包まれたデモノイド、天狗や任侠のような姿の羅刹など、その軍勢の構成員は多岐に渡る。
     攻め寄せた朱雀門の軍勢は、後続の爵位級ヴァンパイアを欺かんとするかのように、誰も居ない校舎にサイキックを放ち、或いはあたかも戦闘中であるかのような歓声をあげつつ、学園内部に侵攻を開始したのだった。
     そしてある程度学園内部に入り込んだ時点で、待ち構えていた灼滅者の存在に気付いた軍勢の中から、生徒会長ルイス・フロイスが姿を現す。
    「私の提案を受け入れてくれてありがとう。この後は、君達の指示に従えばいいのかな? とりあえず、戦闘中であるように示さなければならないので、しばらくはこのまま攻撃を続けさせてもらいましょう」
     ルイスに応じたのは、朱雀門の監視に当たることになっていた、もう1チームの灼滅者達だった。
    「ルイス・フロイス、とりあえず交渉時の提案通り動いているようですね」
     実際に彼との交渉に赴いたリアナ・ディミニ(不変のオラトリオ・d18549)はそう呟きつつ、注意深く軍勢の様子を探る。ロード・クロム、鞍馬天狗、うずめ様。朱雀門の有力なダークネスは、全員この場にいるようだ。
    (「そして、あれが例の9人か」)
     不動峰・明(大一大万大吉・d11607)が注視するのは、朱雀門側についた9名の闇堕ち灼滅者達。彼らも、1人も欠けることなく軍勢に加わっている。
    (「思ったよりも数が多いな。今攻めてきている爵位級の戦力全体の、3割程度といったところか」)
     朱雀門の戦力を観察していた海弥・障風(阻む風・d29656)は、心の中でそう結論付ける。協力相手としては心強いが、もし朱雀門が裏切ったとしたら、ここにいる灼滅者だけでは到底対処できないだろう。
    「とりあえず、爵位級ヴァンパイアが動き出すまでは戦ってる振りをしないといけないんだよね」
     備傘・鎗輔(極楽本屋・d12663)は淡々と呟くと、手近にいた刺青羅刹にサイキックをこめない拳を撃ち出した。相手も心得たもので、その拳をギリギリで避けると、見た目だけは派手なサイキックを、当たらないように撃ち返してくる。
     そんな見せかけだけの戦闘がしばらく続いた頃、穂照・海(狂人飛翔・d03981)の無線に、通信が入った。
    「爵位級ヴァンパイアの迎撃に向かったチームから連絡があった。爵位級が、侵攻を開始したようだ」
     それはつまり、爵位級ヴァンパイアの誘き出しに成功したということ。
    「まずは最初の目的を達成できたようですね」
     生徒会長ルイス・フロイスが、安堵の表情を浮かべる。彼にとっても、今回の提案は朱雀門の存亡を賭けた博打だったのだろう。
    「爵位級が動き出した以上、もうお芝居は必要ありませんね。布陣場所を変えましょう」
     色射・緋頼(生者を護る者・d01617)の提案に、ルイスが頷く。
    「武蔵坂学園内では地の利は君達にある。お任せしましょう」
     緋頼は、朱雀門の軍勢を、学園内のある一点に誘導していった。そこは、爵位級ヴァンパイアと直接合間見えない範囲で、爵位級勢力の先遣部隊や突破部隊を撃破できる地点。同時に、サイキックアブソーバーを始めとした重要拠点とは距離を置いた場所。
    「ここで、私達は爵位級勢力を迎撃しましょう」
     緋頼は心情的には生徒会長の考えに共感を持っている。もちろん学園を守るという目的が最優先だが、できれば朱雀門も守りたいと、そう思う。
    「! さっそく、ヴァンパイアのお出ましっすよ!」
     布陣してほぼ間をおかず、押出・ハリマ(気は優しくて力持ち・d31336)が突撃してくる爵位級勢力の先遣部隊の存在に気付いた。
    「さて、茶番劇でいい加減苛々が積もっていたところだ。好きに暴れさせてもらうぞ」
     これまで大人しく控えていた鞍馬天狗が一歩踏み出す。
    「好きにするといいでしょう。ただし、灼滅者達の目の届く範囲でね」
    「ちっ」
     生徒会長の返答に舌打ちを返しつつ、飛び出していく鞍馬天狗に、朱雀門の勢力が続いていく。
    「防衛戦……負けるわけにはいかないっすね!」
     ハリマも、朱雀門を監視しつつその援護に回るべく、その後に続いていった。

    ●闇堕ち灼滅者、動く
     それからしばらく、灼滅者達は休む暇もなかった。
     戦闘状況の中、生徒会長から眼を離さず、かつ、朱雀門の有力者達や闇堕ち灼滅者達が別行動をとらないかどうか、さらに部隊ごとにどこかに移動しないかどうかなどを、手分けして確認しなければならなかったからだ。
     結果として、攻め寄せてきたタトゥーバットやヴラド配下の騎兵などとの戦闘にはほとんど参加できず、朱雀門がそれらを掃討していくのを形ばかりアシストする形となった。
    (「だが、これでいい。万一の事態に備えて、戦闘による消耗は最低限で済ませたい」)
     紅は後方からガトリングガンを連射しつつも、朱雀門の動きに最大限の注意を向けていた。
     動きがあったのは、突出してきたバーバヤーガ配下の鶏の足の家をロード・クロム率いるデモノイド勢が破壊し、侵攻が一段落ついた頃だった。
     ルイス・フロイスが、「拠点防御なども、手伝わせてもらえないだろうか」と提案してきたのだ。
     確かに、現在布陣している地点まで攻め寄せてくる爵位級の軍勢はそう多くはなく、朱雀門の戦力を有効活用できているとは言い難い。だが、彼らを重要拠点に近づけさせることは、リスクが大きすぎる。
     念のためサイキックアブソーバーを始めとする防衛チームに連絡を入れてみたが、やはり返答は否だった。
    「残念ですが、この場で武蔵坂学園の決断に逆らう利がありません」
     ルイス・フロイスは、己の意見を押し通すことなく引き下がる。ここで武蔵坂と意見を違えても、得るものはないと判断したのだろう。
    「すみません。あなた達を信じていないわけではないのですが」
     謝罪する緋頼をルイスは片手をあげて制した。
    「ダークネスは本質的に利己的な存在。信用しないというのは正しい態度です。だからこそ、利用できるようなら利用するという割り切りも必要かとは思いますが」
     それはそうだろうと、障風も思う。お互い、利用価値を確かめるのが今回の共闘の重要な目的でもあるのだ。
    「代わりではありませんが、武蔵坂学園から来ている闇堕ち灼滅者のうち2人が、爵位級との戦いに参加する事を望んでいるようです。彼らだけならば、防衛戦で闇堕ちした灼滅者と区別がつかないと思いますので、向かわせたいのですが良いでしょうか」
     ルイスの言葉が終わると、朱雀門の軍勢の中から銀夜目・右九兵衛(ミッドナイトアイ・d02632)と詩夜・沙月(銀葬華・d03124)の2人が前に進み出た。
     この新たな提案に、灼滅者達は顔を見合わせる。
    「俺は反対だ。闇堕ち灼滅者は、朱雀門の総意とは別の意図で動く恐れがある」
     反対意見を明確にしたのは、元々朱雀門との共闘に否定的だった明だ。
    「僕も、彼らを目の届かないところに解き放つのは賛成しかねる」
     続いて、海も反対を表明する。
    「けれど、二人だけなら万一裏切るようなことがあっても対処は可能ではないでしょうか。配下を引き連れて行かないのならば、サイキックアブソーバーへの破壊工作なども不可能でしょうし」
     対して、リアナが悩んだ末にそう切り出し、
    「今は少しでも爵位級ヴァンパイアを撃破できる確率を上げた方がいいと思うっす」
     ハリマもそれに賛同する。他の灼滅者達からも特に反対意見が出ないことを確認すると、明と海もいつまでも自分の意見に固執することはなかった。
    「決定ってことでええんか? それなら自分は、黒の王さんのとこに助太刀に行ってきますわ」
     右九兵衛がそう言ってクヒャヒャと笑い、
    「私は、エリザベートとやらの首を斬り落としてやろう。鞍馬天狗、共に向かうか?」
     沙月は同じ羅刹の鞍馬天狗にそう声を掛けた。
    「そうしたいのは山々だが、今は動けん。先ほどまでのやり取りを見ていただろう」
     不機嫌そうな鞍馬天狗の返答に「それもそうか」と応じる沙月。
    「二人とも、健闘を祈ってるよ。武蔵坂の仲間達が苦戦してるだろうから、助けてあげて」
     鎗輔が、握手を求めるように手を差し出す。だが二人の闇堕ち灼滅者は、鎗輔を無視するように、それぞれの戦場に向かって駆け出していった。
    「共に戦う相手と握手も出来ない人は、信じられないなぁ」
     鎗輔のぼやきを耳にした明は、ルイス・フロイスに視線を向ける。
    「一応、向かう先には連絡を入れさせてもらうが、構わないか?」
    「援護として向かわせたのですから、事前に知らせるのは当然でしょう」
     そう返答を得ると、明と海は手分けして、黒の王とエリザベートの迎撃に向かっている灼滅者に「闇堕ち灼滅者の一人が増援としてそちらに向かった」と無線で連絡を入れた。できれば監視に人を割きたかったが、残念ながらそこまで人員に余裕がないのが悔やまれるところだ。

    ●迫る、軍勢
     爵位級勢力の軍勢は、その後も幾度となく押し寄せてきていた。
    「負けたら本気で全部がダメになるなら、勝って未来をつかみ取る!」
     ハリマは迫ってくる鶏の足の家を、腰を落として押し留めんとする。同じく何体かのデモノイドが鶏の足の家に取り付き、その動きを封じにかかっていた。
    「みなさん、持ち堪えてください」
     それでもずるずると押し込まれていくハリマ達に、緋頼が黄色に変化させた交通標識で癒しと護りの力を与え、
    「随分と燃やし甲斐のありそうな相手だな」
     紅の撃ち放った焼夷弾が、鶏の足の家に火をつけていく。
    「まさか、こんな形で共闘するとは、人生、何が有るか解らないものだね」
     そして頭の上に霊犬のわんこすけを乗せた鎗輔が、必殺の古書キックを叩き込むと、ついに鶏の足の家はドウッと横倒しになり、そのまま動かなくなった。
     だが、息をつく暇もなく、タトゥーバットの大群が頭上から迫ってくる。
    「雑魚もこれだけ揃うと侮れないな」
     オーラキャノンで確実にタトゥーバットを撃ち落としていく海の周囲では、朱雀門の制服を着たヴァンパイア達が次々に逆十字型の真紅のオーラでタトゥーバットを切り裂いていた。
     一方で、障風は馬に乗って駆け回るヴラド配下の騎兵の攻撃から、仲間達を庇っていた。
    「練度が低いことは自覚しているが、これ以上は下がれないからな」
    「だが、あまり無理はしすぎるなよ」
     明は気を集中させて障風の傷を癒しながらも、朱雀門の有力者達の動きを監視することも忘れてはいない。前線で戦う鞍馬天狗とロード・クロム、後方で指揮を執るルイス・フロイスとうずめ様。7人の闇堕ち灼滅者達はそれぞれがバラバラに戦っているが、いずれも、この戦場から離脱したり、灼滅者側に襲い掛かろうとする動きは見られない。
     戦いはいつ果てることなく続き、故にいくら戦闘への参加を最小限に抑えていても、傷を負う事は避けられない。前線で戦っていたリアナは、騎兵の突撃を受け、予想外の深手を負ってしまっていた。
    「不覚。でも私は焦らない、臆さない」
     それでも戦う意志を絶やさないリアナの周囲に、不意に爽やかな風が吹き抜けたかと思うと、彼女の傷を瞬く間に癒していった。リアナが振り向けば、そこには細い手をかざしたうずめ様の姿。
    「うずめ様は言いました。武蔵坂と朱雀門は、今はまだ争う時ではありません」
    「このまま、ずっと争わずに済むことを願っています」
     リアナはうずめ様にそう返すと、ヴラド騎兵に反撃すべく斬穿改式を構え直すのだった。

    ●趨勢、定まる
     攻め寄せる爵位級ヴァンパイアの軍勢の勢いが弱まった、そう感じたのは錯覚ではなかった。
    「爵位級ヴァンパイアが撤退したという連絡がきた」
     無線による連絡係を担当していた海が、前線からの報告を、皆に告げた。
    「それで、爵位級ヴァンパイアは討ち取れたっすか!?」
     期待を込めたハリマの問いに、海は淡々と事実のみを答える。
    「灼滅できたのは、4体の爵位級のうち、殺竜卿ヴラドだけだ」
     その報告に、生徒会長ルイス・フロイスは当てが外れたような表情を浮かべた。
    「もう一つ、悪い報告がある」
     同じく無線で連絡を取っていた明が、ルイス・フロイスに険しい視線を投げる。
    「闇堕ち灼滅者の銀夜目・右九兵衛が寝返って、黒の王に朱雀門の裏切りを告げたらしい」
     それを聞いたルイス・フロイスは苦りきった表情を浮かべ、しばし無言で考え込み始めてしまった。闇堕ち灼滅者を増援として送り出すという決定が、裏目に出てしまったからだろう。
     だがその結果、生徒会長が出した結論は灼滅者の予想を超えていた。彼は、残る7人の闇堕ち灼滅者を、武蔵坂に引き渡すと言い出したのだ。当然7人は困惑し、抗議したが、この場でルイス・フロイスに逆らうことは朱雀門全軍を敵に回すことを意味する。
    「さて、君達武蔵坂としても、いつまでも朱雀門の軍勢を学園内においておきたくはないだろう。この場からすぐに離れるので、先導してほしい」
     7人の闇堕ち灼滅者が拘束されたのを確認すると、生徒会長はそう切り出した。
    「これでお別れかぁ。一緒に戦ったのは短い間だったけど、なんだか名残惜しいね」
     鎗輔の言葉に、ルイス・フロイスは薄い笑みを浮かべる。
    「お互い、利用価値が残っていればまた会う機会もあるでしょう」
    「その時に、お前達が敵に回っていないことを祈っている。……こっちだ」
     障風の先導で、朱雀門の軍勢は灼滅者達に監視されたまま正門へと辿り着いた。
    「最後に、前回会談に参加した者として、共闘に応じて頂いたこと、改めてお礼を申し上げます」
     リアナがそう言って深々と頭を下げ、
    「我々の方こそ、殺竜卿ヴラドを灼滅してもらったこと、感謝する」
     ルイス・フロイスも優雅に一礼する。
    「それで、これからどこへ向かうつもりだ? 爵位級への裏切りが露見した以上、朱雀門高校には帰れないだろう?」
     紅の問いかけに、生徒会長は「ええ」と頷いた。
    「暫くは爵位級から身を隠すために、別に用意した拠点に向かう予定です。落ち着いたら、こちらから連絡を入れるので、その時はよろしく頼みますね」
     そうして生徒会長ルイス・フロイスは、再度深々と頭を下げると、見守る灼滅者達に背を向けた。ルイス・フロイスの考えに少なからず共感していた緋頼は、彼の後へ付いていきたいという思いを、必死に抑え込まねばならなかった。
    「彼らとは、これからも良い関係を築けるといいんですが」
     たとえそれが利用し利用される関係だとしても。敵対し滅ぼし合う関係よりはずっといいはずだから。

    作者:J九郎 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年1月20日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
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