武蔵坂防衛戦~朱雀と切り裂く爵の足音

    作者:幾夜緋琉

    ●武蔵坂防衛戦~朱雀と切り裂く爵の足音
     シャドウとの決戦の時を前にした灼滅者達。
     朱雀門との共闘を求め、交渉へと赴いた結果として得られたのは、爵位級ヴァンパイアがシャドウとの決戦に合わせて、大軍を率い武蔵坂へと攻め込む計画である。
     朱雀門の会長からの提案は、『武蔵坂学園がソウルボードの上で決戦を行う』という偽情報を流したうえで、先鋒として朱雀門全軍を引き手攻めてくる、という情報を得た。
     そして『朱雀門の軍勢が武蔵坂の奥まで侵攻する事を確認』することで、爵位級の軍勢が怒涛のように攻め寄せてくる手筈である。
    「そこで皆さんには、三つの選択肢があります」
     と、野々宮・迷宵は、集まった灼滅者達を見渡してから、その選択肢について説明を加える。
    「一つ目は、先鋒である朱雀門全軍を撃退する事です。
     朱雀門を撃退する事により、爵位級ヴァンパイアの軍勢は攻めてくることは無いと思われます。
     ただ、本当のシャドウとの決戦時に介入してくる可能性は高くなるのが難点です」
    「二つ目は、先鋒である朱雀門全軍を学園の奥までへ侵攻させ、爵位級ヴァンパイアの軍勢を釣り出して、爵位級ヴァンパイアの軍勢を出来るだけ多く撃破することです。
     この作戦が成功すれば、シャドウとの決戦時において、爵位級ヴァンパイアが介入してくることを防ぐことができるはずです」
    「最後は、朱雀門高校の軍勢を引き入れた後にだまし討ちにして、その後侵攻してくる爵位級ヴァンパイアを撃破する作戦です。
     これを成功すれば、最大の戦果を得る事が出来るでしょう……ですが、かなり危険な賭になるであろう作戦になります」

    「この三つの選択について、年末年始にかけて話し合いと選択を行った結果……武蔵坂としての選択は、朱雀門高校の提案を受け入れ、爵位級ヴァンパイアを誘き出して、灼滅する作戦になりました」
    「来るべきデスギガスとの決戦時において、爵位級ヴァンパイアからの襲撃があると、防ぎきる事は恐らく不可能ですので、この選択は止むを得ない所でしょう」
    「この戦いにより、数多くの爵位級ヴァンパイアを灼滅する事が出来れば、爵位級ヴァンパイアとの決戦において、かなり優位に立つことが出来ると思われます。ただ、朱雀門高校の戦力が裏切った場合は、大変な危機に陥る為、警戒を説くことは出来ません」
    「爵位級ヴァンパイアの有力な敵は『バーバ・ヤーガ』『殺竜卿ヴラド』『無限婦人エリザベート』『黒の王・朱雀門継人』であると想定されます。これら有力な敵に、配下の吸血鬼や眷属などが従っていますので、仲間同士で確りと話し合い、作戦目標を決定して頂きたいと思います」
    「尚、爵位級ヴァンパイアを撃破するには、3~5チーム以上のチームが力を合わせなければ撃退する事は出来ません。爵位級ヴァンパイアを灼滅するには、更に倍以上の戦力が必要になりますが……作戦によっては、より少ない人数で灼滅に追い込む事が可能になります」
    「爵位級ヴァンパイアと、配下の吸血鬼戦力を分断出来るか否かが、この作戦の成否のポイントになるかもしれませんね……」

     そして、迷宵は最後に。
    「何にせよ、この作戦の成否は皆様の手に掛かっています。仲間達と力を合わし、作戦の成功の為に頑張って頂けるよう、お願いします」
     と、深々と頭を下げた。


    参加者
    灯屋・フォルケ(Hound unnötige・d02085)
    アリス・クインハート(灼滅者の国のアリス・d03765)
    水走・ハンナ(東大阪エヴォルヴド・d09975)
    紅羽・流希(挑戦者・d10975)
    阿久沢・木菟(彼女募集中・d12081)
    東堂・八千華(チアフルバニー・d17397)
    風間・紅詩(氷銀鎖・d26231)
    九賀谷・晶(高校生デモノイドヒューマン・d31961)

    ■リプレイ

    ●朱雀の矛に
     朱雀門との提案を受けた灼滅者達。
     武蔵坂学園がソウルボードの上で決戦を行う、という偽情報を流した上で、朱雀門全軍を率いて攻め入る。
     その作戦に対し、提示された三つの作戦から、灼滅者達が選びしは、提案を受け入れ、爵位級ヴァンパイアを誘き出し、灼滅する作戦。
     そして……灯屋・フォルケ(Hound unnötige・d02085)達が選びしは、子爵級吸血鬼の、魔女バーバ・ヤーガの灼滅である。
    「ん、バーバ・ヤーガ? あんなのただのバーバァやーがな。HAHAHA……!」
     と、豪快に笑う水走・ハンナ(東大阪エヴォルヴド・d09975)。
     でも……周りの真剣な表情の仲間に笑いは無くて。
    「……笑えよ」
     と。それに東堂・八千華(チアフルバニー・d17397)と阿久沢・木菟(彼女募集中・d12081)が。
    「……ん、まぁ……オモシロイといえばオモシロイかな?」
    「そうでござるな。しかし……余り巫山戯ても居られないでござるよ」
     と。
     それにハンナがそうやね、とまた笑顔になりつつも。
    「まぁ、何にせよ取りあえず、爵位級に一矢報いる時が来たわね。無理をしない程度にその首、狙っていきますか。ま、これも仕事だしね」
     と言うと、紅羽・流希(挑戦者・d10975)とアリス・クインハート(灼滅者の国のアリス・d03765)も。
    「まぁ、負けられない戦いという奴ですかねぇ……?」
    「ええ。爵位級ヴァンパイアさん達……学園を蹂躙なんか、絶対にさせないです」
     と頷き合うと、それに風間・紅詩(氷銀鎖・d26231)が。
    「そうだな……」
     と頷いた瞬間。
    『こちらは屋上班。予想されるバーバ・ヤーガの軍勢の移動経路を割り出したよ。最適と思われる迎撃地点は……中庭だ』
     と、ロードゼンヘンド・クロイツナヘッシュ(華散し・d36355)から、フォルケのPRC-14CS無線機へと入る通信。
     屋上で監視している班からの入電。
    「皆さん、中庭です。中庭に向かいますよ」
     とフォルケは仲間達に伝えた上で、無線で。
    「contact……歓迎会をはじめましょうか……」
     と、応答を行う。そして。
    「良し。皆も覚悟はいいか? ……行くぞ」
     九賀谷・晶(高校生デモノイドヒューマン・d31961)の言葉に頷き、バーバ・ヤーガの進軍先に位置する中庭へ、同じくバーバ・ヤーガ班を担当する仲間達と共に急行していくのであった。

    ●闇から来る影
     そして、灼滅者達は中庭へと到着。
     ……暫しの間は、戦闘前の静けさに包まれている状態……しかし、程なくすると、遠くの方からドドドド、という侵攻の音が聞こえ始める。
     そしてその侵攻の影が視界に……バーバ・ヤーガを伴った、多くの鶏の足の小屋が徒党を組んで突撃為てきている。
     猛牛の群れが如き、彼らの突撃は、一部恐怖心を覚えそうになる……が、こちらも力強い仲間達が居る訳で。
    「現れましたね……ちょっと恐ろしい勢いですが……私達も、退く事は出来ません……」
    「そやね。うちらにも力強い仲間がおるんや。絶対負けられへん戦いやしな……!」
     とアリス、ハンナが気合いを高めると、他班の仲間達も……同じく気合いが入る。
     そして……バーバ・ヤーガが灼滅者達の前に対峙する。
     そんな鶏の足の小屋達に対し。
    「さぁさ、私たちと遊んで下さいな! 構ってくれないと……酷いですわよ?」
     と百合ヶ丘・リィザ(水面の月に手を伸ばし・d27789)らの言葉に、木菟が。
    「お久しぶりでござるぜ! 語りたい事は色々あるでござるが、戦場で言葉は無粋。言葉の代わりに、一手死合うて頂きましょう、でござるよ!」
     と、気合いと共に叫び出し、鶏の足の小屋への一斉攻撃を開始する。
     各班が、それぞれまずは前衛に出て来ている一体一体へ対峙……鶏の足の小屋は、先ずはその太い鶏足で、強力な蹴りを繰り出してくる。
     しかしその一撃を、咄嗟にカバーするは八千華。
     両手をクロスさせてどうにか耐えると、すぐに八千華のウィングキャット、イチジクがリングが光りで即座に回復。
     更にメディックのアリスは、その回復状況を見据えた上で。
    「回復を……皆さん……頑張って下さい……!」
     と、癒しの矢を飛ばし、体力を満タンに維持する。
     そして鶏の足の小屋へ、灼滅者達の反撃開始。
    「これ以上進ませられない、抑えさせて貰うからねっ!!」
     と八千華が気合いと共に、初手のクルセイドスラッシュの一撃を叩き込む。
     同時に木菟がトラウナックルの一閃を穿つと、彼のウィングキャットの良心回路が、前衛陣へのリングが光るでのEN破壊を付与していく。
     ディフェンダーに属する2人と二匹の攻撃に続き、今度はジャマーのハンナと、スナイパーの紅詩が動く。
    「中々強力やけど、うちらが興味あんのは後ろのバーバ・ヤーガや。立ち塞がる様ならば打ち崩すまでやで!!」
    「ええ。さっさと倒れて貰いましょう!」
     と声を上げつつ、紅詩がレーヴァテインを撃ち抜く一方、ハンナがギルティクロスで確実に傷付けていく。
     ……そして、最後に動くはクラッシャー陣。
    「さぁて、学校が消えない様にこっちも本気ださせてもらうぜ?」
     と晶がニヤリと微笑むと共に、螺旋槍で鋭く貫くと、フォルケ、流希も。
    「……fire」
    「喰らって貰おう……先に行きたいのならば、俺達全員を倒してにしてもらうぜ」
     と冷静な言葉で言い放ちつつ、デッドブラスターと、雲櫂剣で斬りかかっていく。
     ……そして、次の刻。
     今度は、その身体の中に在る歯車を高速回転させ、射出。
     高速回転する歯車が、服破りの効果で、木菟の防御を削る。
    「っ……中々痛い一撃でござるな」
     と唇を噛みしめる木菟。ただ、それだけでない。
     前線に立つ鶏の足の小屋ではなく、中衛、後衛に立つ鶏の足の小屋が、後方から同じく歯車を射出して、援護攻撃をしてくる。
     鶏の足の小屋からの援護攻撃は、灼滅者達の前衛、後衛に関わらず、嫌らしい攻撃で防御を削ってくる。
     ……でも、すぐ良心回路と、イチジク、更にアリスが集中して回復を飛ばし、全開ではないにせよ、少しずつ、少しずつ回復。
     体力の状況に応じ、シャウトや、セイクリッドウインドで自己ヒールを飛ばし、戦線を維持。
     そしてハンナ、紅詩は、中衛、後衛と一歩後ろに下がった所から、ギルティクロスや封縛糸を飛ばし、バッドステータスを蓄積していく。
     そして……フォルケ、流希、晶のクラッシャー陣は、回復より攻撃を優先し、立ち塞がる鶏の足の小屋へ熾烈な攻撃を叩き込んで行く。
     ……そして、数分が経過……どうにか、各班が一体ずつ、鶏の足の小屋を倒した後。
     ……今迄前へ前へ、と出てくるような動きをしていたバーバ・ヤーガの軍勢だが、七体を倒されたところで、その動きが明らかに変わり始める。
     バーバ・ヤーガを守る様に、鶏の足の小屋の軍勢は攻撃より、守りを固める作戦へとシフトしてくる。
     そんな敵の動きの変化……戦力的にはほぼ同等であろうが、相手にはバーバ・ヤーガが居る故、このままではジリ貧になりかねないだろう。
     と、そこに天鈴・ウルスラ(d00165)が。
    「わざわざ朱雀門と取引してまで作った状況デース。成果を上げなければ何の為かわからんでゴザろう。狙うは敵将の首一つ!!」
     と、強い口調で叫ぶ。それに。
    「そうだな。このままバーバ・ヤーガを倒さずに終わらせる訳には行かんな」
     と流希の言葉に皆も頷き、全班、一斉にバーバ・ヤーガへの攻撃を開始する。
     とは言え後衛に居るバーバ・ヤーガに届くは、遠距離攻撃のみ。
    「しゃーないな。でも、確実に倒すで!! 東大阪市のォォ科学力はァァァ世界一ィィィ!!!」
     と力強く、ソニックビートの一撃を放つと、フォルケのデッドブラスター、紅詩のディーヴァズメロディ、木菟がオールレンジパニッシャーを叩き込んで行くと、更に八千華もブルージャスティス。
     しかし、立ち塞がる他の鶏の足の小屋達が、バーバ・ヤーガへの攻撃をカバーリングしてくる。
     中々、バーバ・ヤーガの体力を削る事が出来ない……しかし、バーバ・ヤーガは接近してくる事はない。
     そんなもどかしい状況ではあるが、仲間達と連携を行う事で、少しずつ、少しずつ……バーバ・ヤーガの体力を削っていく。
     ……そんな、バーバ・ヤーガの体力を削り続け、暫しの後。
     周りの鶏の足の小屋を含めて、かなり体力が削れたバーバ・ヤーガ。
    「……またしても計算違いですか。いえ、これは裏切りですね。ならば、これ以上の戦闘に意味はありません。撤退します」
     ……と、言うと共に、バーバ・ヤーガは、鶏の足の小屋に後を任せ、其の場から早々に撤退していく。
     追いすがろうとするが……立ち塞がる鶏の足の小屋は、決して灼滅者達をバーバ・ヤーガに追いすがらせない。
    「……っ……邪魔でござるよ!!」
     と苛立つ様に木菟が叫ぶが、当然、バーバ・ヤーガを守る様に立ち塞がる鶏の足の小屋。そして、鶏の足の小屋を置いて、撤退していくバーバ・ヤーガ。
     みるみる内に、距離が離れていくバーバ・ヤーガ。
     だが、仲間達も、かなり疲弊している状況ではある。
     だが……どうにか、バーバ・ヤーガの手下へ反撃。
     先ほど迄、カバーリングしていた事も在る様で、体力は元々減っている訳で……確実に、敵の体力を削り取って行く。
     そして……完全にバーバ・ヤーガの姿が視界外に失われる。
    「っ……仕方ないだろう。後は、確実に仕留めるぞ!!」
     と、流希の言葉に皆も頷き……目の前の鶏の足の小屋を、力を合わせ、仕留めるのであった。

    ●絆
    「ふぅ……終わったか。DEADEND……ってね」
     と汗を拭いながら、呟くハンナ。
     そして流希が。
    「そうだな。でもこれで、又、大きく情勢が動くだろうな。さて、どうなる事か……」
     と言いつつ、空を見上げる。
     ……その横でアリスが。
    (「……そういえば……瑠架さん……大丈夫でしょうか……?」)
     と心の中で呟く。
     並行して行われている作戦の成否は……戻らなければ、解らない訳で。
    「……まぁ、何だ。後は仲間達を信じるでゴザルよ」
     と木菟の言葉に皆も頷く。
     取りあえず、自分達の作戦は、バーバ・ヤーガを撤退させる事が出来た訳で、作戦としては成功した訳で。
    「そうですね……一端、戻るとしましょう」
    「ええ……」
     とアリス、フォルケも頷き、そして灼滅者達は帰路へとつくのであった。

    作者:幾夜緋琉 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年1月20日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
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