●経緯
「朱雀門高校との交渉の結果は、もう聞いていると思うわ」
夏月・柊子(高校生エクスブレイン・dn0090)は、年始の挨拶もそこそこに、教室に集まった灼滅者達に話を切り出した。
朱雀門高校との共闘の為の交渉。
その結果、朱雀門会長『ルイス・フロイス』から、爵位級ヴァンパイアがシャドウとの決戦に合わせて大軍を率いて武蔵坂に攻め込む計画だと言う情報を得られた。
「更に、ルイス会長からは作戦の提案も受け取る事が出来たわ」
その内容は、ルイスが『武蔵坂学園がソウルボードで決戦を行う』と偽情報を流し、先鋒の朱雀門の全軍を学園の奥まで侵攻したように見せかけ、続いて攻め込んで来た爵位級ヴァンパイア軍を共闘して壊滅させる、と言うものだ。
対して、武蔵坂が取り得る選択肢は3つ。
1つ目は、先鋒である朱雀門全軍を撃退する事。
この場合、爵位級ヴァンパイアの軍勢が攻めてくることはなくなるだろうが、本当のシャドウとの決戦時に介入してくる可能性が高くなる。
2つ目は、先鋒である朱雀門全軍を学園の奥まで侵攻させ、爵位級ヴァンパイアの軍勢を釣り出して、爵位級ヴァンパイアの軍勢をできるだけ多く撃破する。
この作戦が成功すれば、シャドウとの決戦時に爵位級ヴァンパイアが介入してくるのを防ぐ事ができるだろう。
最後に、朱雀門高校の軍勢を引き入れた後にだまし討ちにして、更に侵攻して来た爵位級ヴァンパイアも撃破すると言う作戦。
成功すれば最大の戦果を得る事ができるが、かなり危険な賭けになるかもしれない。
●灼滅者の選択
「皆には、この3つの選択肢について年末年始に話し合って貰ったわね。結果は、ルイス会長の提案を受け入れる事に決まったわ」
朱雀門高校を引き入れ、誘き出した爵位級ヴァンパイアを灼滅する作戦である。
「デスギガスとの決戦時に爵位級ヴァンパイアからの襲撃があったら、防ぎ切る事はおそらく不可能よ」
ダークネスとの共闘には思う所ある者もいるかもしれないが、この選択になったのは止むを得ない所だろう。
「この作戦で複数の爵位級ヴァンパイアを灼滅する事ができれば、爵位級ヴァンパイアとの決戦でかなり優位に立てる筈よ」
ルイス・フロイスも交渉の席で言っていた。この作戦が上手く行けば、サイキックリベレイターを使わずに決戦に出る事も可能になると思う、と。
ただ、朱雀門が裏切った場合は、大変な危機に陥る事になるのだが。
「警戒は必要かも知れないわ。でも、爵位級ヴァンパイアは何れも強敵よ。朱雀門を警戒しすぎてそちらに敗北しては元も子もないわ」
バーバ・ヤーガ、殺竜卿ヴラド、無限婦人エリザベート、黒の王・朱雀門継人。
爵位級ヴァンパイアには以上の有力な敵がいると想定される。そして、それらの元に配下の吸血鬼や眷属などが従っているようだ。
「いずれも、撃退するのに3~5チーム以上が力を合わせることが必要になるわ。灼滅するなら、更に倍以上必要よ」
作戦によってはより少ない人数で灼滅する事も可能だろうが――。
「爵位級ヴァンパイアと配下の吸血鬼戦力を分断できるか否か。そこがポイントになるかもしれないわ」
新年早々、中々に頭の痛い状況であるが、デスギガスとの決戦を控えている今、ここは何とか切り抜けなければならない。
「私からは、以上よ。大丈夫、皆なら、きっと良い結果に出来るわ。今までだって、何とかしてきたんだから」
参加者 | |
---|---|
李白・御理(小夜鳴鳥の歌が聞こえる・d02346) |
蒼間・舜(脱力系殺人鬼・d04381) |
伊庭・蓮太郎(修羅が如く・d05267) |
フローレンツィア・アステローペ(紅月の魔・d07153) |
森沢・心太(二代目天魁星・d10363) |
水無瀬・旭(瞳に宿した決意・d12324) |
崇田・來鯉(ニシキゴイキッド・d16213) |
土屋・筆一(つくしんぼう・d35020) |
●誤算
――こ、これから後方へ突撃を開始します!
「同じく。最後尾、仕掛けるよ」
そんな緊張をはらんだ声を告げてきた無線機に、蒼間・舜(脱力系殺人鬼・d04381)が余りやる気の感じられない声で返す目の前で、仲間達が校舎を飛び出していく。
「ヴラド公の元には行かせません」
李白・御理(小夜鳴鳥の歌が聞こえる・d02346)は空中を一度蹴って、着地を待たずに蛇皮の尾飾りを最後尾の竜騎兵に降り注がせる。
『新手だと!?』
攻撃に気づいて上を仰ぎ見ようとした時には、既に数人が着地していた。
「反応が遅い!」
伊庭・蓮太郎(修羅が如く・d05267)は着地の為に曲げた膝を、そのまま跳躍のタメに変えて跳びかかる。
「まだ上にもいますよ!」
こちらも一度空中を蹴ってタイミングをずらした森沢・心太(二代目天魁星・d10363)が、拳を構えて竜騎兵の頭上に迫る。
上と下から同時に繰り出された雷気を纏った2つの拳が、竜騎兵に反応する暇を与えず叩き込まれる。
「ミッキーは、回復優先で!」
ゴールデン・レトリバーに似た霊犬ミッキーにそう命じて、崇田・來鯉(ニシキゴイキッド・d16213)が意志もつ帯を撃ち込んだ。
『クッ』
下がろうとした竜騎兵の馬の脚元に、巨大な双刃の馬上槍が差し込まれる。
「目の前にすると、上から見ていた以上に凄まじいまでの威容だ。だけど、後の為にも打撃を与えないとだな」
水無瀬・旭(瞳に宿した決意・d12324)は巨大な双刃の槍を慣れた様子でぐるんと回して、騎馬の足を払い騎手の脚に斬りつける。
「貴方達の血が、絞首卿の奴隷より質が良い事を願うわ。精々血を流して頂戴?」
長身の後ろから飛び出し、値踏みするような視線を向けて。フローレンツィア・アステローペ(紅月の魔・d07153)が鉤爪を備えた手甲を着けた腕を振るう。
ヒュッと数多の糸が風を切り、竜騎兵の服が紅く染まる。
そこに、舜が空中から放ったどす黒い殺気が、虫が群がる様にして竜騎兵達を包み込んでいく。
その殺気が消えた時、灼滅者達には竜騎兵達が両手に持った銃口が向けられていた。
「ちぃっ!」
「ミッキー!」
銃声が響き渡ると同時に、旭と來鯉、霊犬のミッキーが飛び出す。
だが、敵の数が多い。2人と1匹は体を盾にしたが、防ぎきれなかった弾丸が彼らの後ろの3人も少なからず撃ち抜いていく。
「この弾、打ち消す力がありますね」
纏っていた雷気の残滓を打ち消され、心太が呟く。
そして、竜騎兵達は銃を撃つばかりではなかった。白と黒、竜騎兵達の駆る2色の騎馬の巨体が灼滅者達を次々と吹き飛ばす。
「っ……支えます、任せてください」
空中で着地の体勢を整えながら、土屋・筆一(つくしんぼう・d35020)は旭の背中に小さく分けた光輪を飛ばしていく。
「くっ……強いよ、こいつら!」
着地したものの衝撃が手足に残っている來鯉に、ミッキーが魂を癒す視線を送る。
攻撃の範囲の広さもそうだが、奇襲に成功しても1体も倒せなかった。
そんな敵が、1体や2体ではない。
「連携先は大丈夫でしょうか……」
筆一が呟いた言葉は、誰もが似た事を感じ取っていた。
同じ部隊の前後で戦っているのだから、向こうも同じ様な状況だろう。そして、敵の間に入っていった分、負担が大きいのは向こう側だ。
「行きましょう。戦場を黒にひっくり返させるわけには行きません」
御理は今回、オセロの『隅の1枚』になるのだと思っていた。だが、隅を取って挟んでも、オセロの様にひっくり返すには戦力不足。それが、事実だ。
ならば、あとは白が黒に飲み込まれないようにするしかない。
「分断もこの戦いを左右する大事な役目。疎かには出来ませんね。向こうは退路がなさそうですけど」
「うむ。背水の陣か、上等だ」
苦笑を浮かべた心太に、蓮太郎は敵を真っ直ぐ睨んで頷く。
「こちら最後尾。事情が変わった。ウチは分断側に合流するよー。……後方部隊は何とかする。ヴラドは、任せた」
めんどくさくなった――とでも言いたげな顔で、旬は通信機に告げた。
●一点突破
分断側に合流する。
その為には、竜騎兵達の向こう側に行かなければならない。
「――あそこだ。突破する!」
蓮太郎がそう言うなりジェット噴射を上げて飛び出した先には、馬の向きを変えようとしていた1体の竜騎兵。
『何? ヴラド様の所に襲撃だと?』
ヴラド側の戦況に気を取られた声が聞こえたわけではない。
戦いに生きるものの嗅覚、勘のようなものか。
いずれにせよ、勢いに乗った杭の一撃は竜騎兵の横腹に痛烈に叩き込まれた。
「いきなり行くなよなー。着いて行くのも大変だぞ」
「でも、蒼間くんも崇田くんも着いてきてますね」
唐突な蓮太郎の飛び出しに、梁山泊の仲間はいち早く反応していた。
衝撃でよろけた竜騎兵の騎馬の脚を舜がナイフで斬り裂き、杭打ち機を足場に跳んだ心太が、鬼の拳を騎兵の方に叩き込む。
『ぬぉぉっ!?』
3点を連続して攻撃され、さすがに竜騎兵もバランスを崩す。その馬体は、ほんの十数秒、他の竜騎兵達の障害となる。
『何をしている! 俺が止め――』
「にーちゃんたち、後ろも注意しなよ!」
動ける竜騎兵が飛び出そうとしたが、それは來鯉が体当たりで止めに入った。
勢いに乗る前でも竜騎兵の巨躯がぶつかった衝撃は甲冑を突き抜けて響いて来たが、気にせずに九芒星が浮かぶ拳をそのまま騎兵に叩き込む。
「ここは押し通らせて貰います!」
出足を止められた竜騎兵に、追いついてきた御理がダメ押しで風の刃を放つ。
『ちっ! 撃て、撃て!』
気づいた竜騎兵達が銃口を向けて引鉄を引くが、その時には既に灼滅者達は倒れた竜騎兵を越えて駆け抜けていた。
「この分なら、直にそっちに合流できそうかなー」
『合流か――させん!』
銃弾を掻い潜りながら舜が通信機にそう告げた直後、追撃に飛び出す竜騎兵が一騎。
「いや、そうさせて貰うよ」
足を止めて振り返り、旭はその突進を全身で阻んだ。
「宗教の守護者たるヴラド伯。彼には彼の正義があるのだろうけれど――それでも俺は。貴方たちの命を奪う『悪』となる」
そのまま、竜騎兵の横腹に縛霊手の拳を叩き付けた。
「レンはね、残念よ。ええ、とても残念なの」
霊力の網が絡んだ竜騎兵へ向けて、フローレンツィアが手甲を振るう。
「貴方達の血も良さそうだけれど、やっぱりレンも爵位持ちの小父様やお姉様方と遊びたいの。だからほら、疾く倒れてくれないかしら!」
恐れも気負いもなく、素直に告げられた欲求と共に放たれた数多の糸が竜騎兵に巻き付いて、馬にも騎兵にも傷を刻み込む。
「見えました!」
2人の後ろを駆け抜けた筆一が、上がる土煙の向こうにほぼ同数の灼滅者のグループを認めて声を上げた。
ここまで来れば、ヴラド本陣を背にした2点で後方部隊の竜騎兵達を食い止める布陣に持ち込む事が出来る。
「皆さん、早く――回復します!」
駆ける足を止めた筆一は、浄化の力を呼ぶ心温まる話を語りだす。
あとは、ここでどれだけ粘れるか。
想定外の上に逃げ場のない戦いが、始まる。
●響く蹄音
――ドドドッ!
「来い! 止めてやる!」
蹄の音を響かせ砲弾の様に迫る竜騎兵の真正面で、來鯉は船の錨に似た形の斧を地面に突き立てるように構えて言い放った。その隣に、霊犬の姿は既にない。
ガァァァンッ!!
蹄と斧がぶつかり、勢いに乗った馬体が甲冑を叩く鈍い音が響く。
その衝撃に來鯉の意識が飛びかけるが、斧を握る手は緩んでいなかった。
『まだ痛い目にあいたいと見える!』
「――……学園は僕等の第二のご当地……だからね! 全力で守り抜いてみせるよ!」
「その前に、お前が痛い目にあえ」
竜騎兵からの言葉に肩を大きく上下させながら答える來鯉を飛び越える形で、蓮太郎が竜騎兵に跳びかかる。
光を纏った両拳の連打の最後に、叩いた拳で騎馬の頭を掴んで、引き寄せる。更に間合いを詰めて、驚く竜騎兵の顔面に硬く握った拳を叩き込んだ。
『ぐっ……離せ!』
「畳み掛けます!」
振り払った竜騎兵に、心太が巨大に変異した鬼の拳を叩き込んで、殴り飛ばす。
「ねえ、竜騎兵団の採用試験とかあるのかしら? その内、レンも受けてみたいわ」
『!?』
衝撃に顔を歪めた竜騎兵は、背中から囁くような声を聞いて慌てて振り返る。
「ペイルホース、素敵だったもの。それもペイルホース? なら、羨ましいわ」
フローレンツィアは馬の背中から飛び降りながら片腕を振るう。手甲と繋がった糸が竜騎兵の首を切り裂き、鮮血が噴き上がった。
流石に力尽き、竜騎兵が消滅していく。
そこに、タタタッと銃声が響く。竜騎兵が双銃を向けて撃ち抜いたのは、更に後ろの3人、御理と舜と筆一だ。
「――俺の後ろに!」
他の竜騎兵達も双銃を構えるのを見て、旭が飛び出すと、射線を遮るならそれで構わないと言う風に、容赦なく放たれ続けた銃弾が旭の体を撃ち抜いていく。
更にガツガツと、蹄を鳴らす漆黒の竜騎兵。
「止まれぇぇっ!」
敵の力を奪う魔力を纏って駆け出した騎馬が、偶然手近にいたフローレンツィアを跳ね飛ばした所で、これ以上進ませまいと來鯉が割り込んだ。
戦艦を模した甲冑の所々がひび割れ、砕け散る。跳ね飛ばされた体は、既に限界を超えていて、流石に起き上がる力はもう残っていなかった。
(「このままでは……でも!」)
支えきれないなら、圧し掛かる重荷を砕けば――よぎった考えを、頭を振って頭の隅に追い払って、筆一は仲間を癒す為に温かな話を語り続ける。
「自分も癒しなよ」
額から頬を伝う血を拭おうともせずに仲間を癒す筆一に、舜が帯を包帯の様に巻き付けた。
突進も、銃撃も竜騎兵の攻撃の多くは灼滅者数人に被害を出す。対して、このチームの中で数人を回復できるのは1人だけだ。
戦術の問題と言うよりは、単純な戦力の問題だ。もう1チームでもいれば、消耗は減っていた筈なのだから。
そして――仲間を癒す手段を今この場で持っていないからこそ、迷わず決断に踏み切れた者もいる。
ゴウッ!
劈く轟音を立てて、突風が戦場を真っ直ぐに吹き抜ける。
『――ぅ――う、腕がぁぁっ!』
強力な風の刃に腕を斬り落とされた竜騎兵の口から、苦悶の叫びが上がる。
(「――うん、今回は大丈夫」)
「ここの白は、ひっくり返させません」
かつてこれを選んだ時とは違うと確信し。
そう言い放った御理の姿は、頭の左右に漆黒の角を持つ白髪の鬼となっていた。
●閉幕の時
「こちらを向かないなら、この鬼神の手で首を捩じってやるのです」
そう告げた御理がダークネスの膂力を持って振り下ろした鬼の拳は、手負いの竜騎兵の体をへし折って地面に叩き伏せていた。
『闇堕ちした奴には構うな! 他を蹴散らせば、1人程度どうにでも出来る!』
だが、それを見せつけられても、竜騎兵達の士気はまだ高いままだった。
ヴラドという指揮官がいないのに――或いは、いないからこそか。
力を奪う魔力を纏った黒い竜騎兵の急襲が、灼滅者達を吹き飛ばしていく。
「だめよ」
地面に叩き付けられた小さな体が、紅覗く灰色を翻し飛び起きる。
「ヴラド公の元には、レンが行きたいの。だから行かせないわ」
フローレンツィアがこうも爵位級に拘るのは、勲章を、力の証を立てたかったから。ならば、その兵卒相手に倒れてはいられない。
フローレンツィアの鉤爪が、迫っていた竜騎兵が振り下ろした西洋剣と交錯する。
共に紅い魔力を纏った刃と爪は互いの敵の体を通り抜け、少女と竜騎兵、どちらの体からも血が噴き出した。
そこに響く蹄の音。
別の竜騎兵の突撃で弾き飛ばされたフローレンツィアが、流石に力尽き倒れ伏す。
(「まだです、まだ……!」)
また1人倒れた光景に歯噛みして、筆一は放たれた銃弾で増えた自分の傷を癒すよりも仲間を支える事を優先し、温かな話を語る。
もう少し耐えれば、他チームがヴラドを倒す筈と信じて。
「後ろに味方がいると、ヴラドを倒すと信じているから、この手が使える。今、己の誓いを破り……『正義』を再び名乗ろう」
同じ事を信じて、それまでにもう損害を出さない為に。
ここで旭が、自身の闇に体を明け渡した。
「おぉぉっ!」
寄生体の力を受けてか、波打つ形に双刃が変化した馬上槍が暴風の様に振るわれ、竜騎兵の脚を薙ぎ払う。
『っ!? この力は!』
「いやぁ、後輩がこれ以上命を落としていくのを見たくないのでね。……出し惜しみは、無しだ!」
双刃が再び翻る。一撃は耐えた竜騎兵の脚も、流石にそれでへし折れた。
『ぐぉっ!?』
「ヴラド公灼滅の邪魔はさせません!」
2人目の闇堕ちで竜騎兵達の間に見えた動揺を逃さず、御理が振るったウサギっぽい形の連なる刃が、怯む竜騎兵達を斬り裂いていく。
『怯むな! 竜騎兵の誓いを思い出せ!』
『踏み潰せ!』
敵もさるもの。動揺が鎮まり、再び蹄を鳴らして走り出す。
「……伊庭君は殴り続けてください。支えます」
「心得た」
心太の手にしたお守りからの障壁を腕に頷いて、蓮太郎が飛び出した。元より、骨が砕けようが修羅を秘めた武人は止まるまい。
闇堕ちした御理と旭に蓮太郎が攻めを担い、心太はそのまま回復に専念する。
仲間が倒れた結果、回復の手数不足が釣り合いの取れるようになっていた。
とは言え、誰か1人倒れればそれも崩壊する。そして、その誰かが闇堕ちした2人のどちらかならば――それは死に繋がる。
「バカみたいに撃ちまくってさ……校舎まで壊す気かよ」
だから舜も、撃たれ続けて血塗れの体でそう毒づいて、意志持つ帯を伸ばして仲間に巻き付ける。
これが、恐らく最後の正念場。
いつ終わるとも知れないその時間は、もう何度目かも判らない竜騎兵の突撃が蓮太郎と心太を跳ね飛ばした直後に、唐突に終わりを迎えた。
「「……?」」
辺りに響く蹄の音が遠ざかって行くのを体で感じて、倒れたまま顔を見合わせる2人の上に屈んだ舜は、無言で外したヘッドセットをかざす。
――……殺竜卿ヴラド、灼滅完了!
振り向き、遠目に喝采を上げる仲間達の姿を認めて、安堵した筆一の手からスケッチブックが滑り落ちる。
闇堕ちした2人は、いつの間にか姿を消していた。
こうして学園内を舞台とした爵位級との戦いの一角は、灼滅者達の勝利で幕を降ろしたのだった。
作者:泰月 |
重傷:伊庭・蓮太郎(修羅が如く・d05267) フローレンツィア・アステローペ(紅月の魔・d07153) 森沢・心太(二代目天魁星・d10363) 崇田・來鯉(ニシキゴイキッド・d16213) 死亡:なし 闇堕ち:李白・御理(白鬼・d02346) 水無瀬・旭(両儀鍛鋼・d12324) |
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種類:
公開:2017年1月20日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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