武蔵坂防衛戦~Crisis

    作者:ねこあじ


     灼滅者達が教室に入ると、そこには園川・槙奈(大学生エクスブレイン・dn0053)が立っていた。
     一人一人へその目を向けた槙奈は、軽くお辞儀をしたのちに話し始めた。
     シャドウとの決戦を前に、灼滅者達は朱雀門との共闘を求めて交渉に赴いた。その結果、爵位級ヴァンパイアがシャドウとの決戦に合わせて大軍を率いて武蔵坂に攻め込む計画があることが判明する。
    「朱雀門の会長からは『武蔵坂学園がソウルボードで決戦を行う』という偽情報を流した上で、先鋒として朱雀門全軍を率いて攻めてくるという情報を得ました。
     そして『朱雀門の軍勢が武蔵坂の奥まで侵攻する事を確認』すれば、爵位級の軍勢が怒涛のように攻め寄せてくる手筈であるようです」
     改めて槙奈は説明をする。
    「みなさんには年末年始で話し合いと選択を行っていただきました。
     選択の1つ目は、先鋒である朱雀門全軍を撃退する事。
     朱雀門を撃退すれば、爵位級ヴァンパイアの軍勢は攻めてくることはありませんが、本当のシャドウとの決戦時に介入してくる可能性が高くなるでしょう。
     2つ目は、先鋒である朱雀門全軍を学園の奥まで侵攻させ、爵位級ヴァンパイアの軍勢を誘き出して、爵位級ヴァンパイアの軍勢をできるだけ多く撃破する事です。
     この作戦が成功すれば、シャドウとの決戦時に爵位級ヴァンパイアが介入してくるのを防ぐ事ができるでしょう。
     最後は、朱雀門高校の軍勢を引き入れた後にだまし討ちにして、その後、侵攻してくる爵位級ヴァンパイアを撃破する作戦になります。
     成功すれば最大の戦果を得る事ができますが、かなり危険な賭けになるかもしれません――といった3つです」
     そして、と一旦言葉を切る槙奈。
    「結果、朱雀門高校の提案を受け入れ、爵位級ヴァンパイアを誘き出して灼滅する作戦を取ることとなりました」
     来るべきデスギガスとの決戦時に、爵位級ヴァンパイアからの襲撃があれば、防ぎきることは恐らく不可能。
    「この戦いで、爵位級ヴァンパイア達を灼滅することができれば、爵位級ヴァンパイアとの決戦でかなり優位に立つことになるでしょう。
     ただ、朱雀門高校の戦力が裏切った場合は、大変な危機に陥るので警戒は必要かもしれません」
     くれぐれも油断なく、そう言い添える槙奈と頷く灼滅者達。
     爵位級ヴァンパイアの有力な敵は、『バーバ・ヤーガ』『殺竜卿ヴラド』『無限婦人エリザベート』『黒の王・朱雀門継人』であると想定される。
     この有力な敵に、配下の吸血鬼や眷属などが従っているようだ。
    「みなさんで話し合い、作戦目標を決定してください」
     爵位級ヴァンパイアを撃退するには、3~5チーム以上のチームが力を合わせなければ撃退することが出来ない。
     爵位級ヴァンパイアを灼滅するには、更に倍以上の戦力が必要になるが、作戦によってはより少ない人数で灼滅に追い込むことが可能になるだろう。
     爵位級ヴァンパイアと配下の吸血鬼戦力を分断できるか否かが成否のポイントになるかもしれない。
    「……私は、みなさんを見送ることしかできませんが……どうかお気をつけて……。
     みなさんが無事に戻ってくるのを、待っています」
     恐れは当然あるだろう。だが、背筋を伸ばした槙奈は灼滅者を真っ直ぐに見つめて言うのだった。


    参加者
    迫水・優志(秋霜烈日・d01249)
    ミカエラ・アプリコット(弾ける柘榴・d03125)
    志賀野・友衛(大学生人狼・d03990)
    桜井・夕月(もふもふ信者の暴走黒獣・d13800)
    三蔵・渚緒(天つ凪風・d17115)
    遠藤・穣(反抗期デモノイドヒューマン・d17888)
    七瀬・悠里(トゥマーンクルィーサ・d23155)
    九形・皆無(黒炎夜叉・d25213)

    ■リプレイ


     朱雀門軍勢が武蔵坂学園を攻撃しているかのような音が響き渡る。
     灼滅者の領域を侵す朱雀門を目にし、それぞれが思うところのある表情を浮かべた。
     時折、ゆらりと、九形・皆無(黒炎夜叉・d25213)の目は誰かを探すように動き、遠藤・穣(反抗期デモノイドヒューマン・d17888)は耐える表情を隠さない。
     迫水・優志(秋霜烈日・d01249)も警戒の色を瞳に湛えたままだ。
     長くも短くも感じた時間ののち、入った爵位級ヴァンパイアの侵攻開始の報せに、灼滅者達は急ぎ連絡を取り合い、屋上などから進行ルートの割り出しを行う。
     爵位級ヴァンパイア先鋒は魔女バーバ・ヤーガ率いる鶏の足の小屋と共に殺竜ヴラド率いる騎兵軍団。
     敵を学園内に引き込み、いかにも網を仕掛けるようなやや囲う形に位置していく灼滅者達。
    (「学園の中で戦うのは何度目になるかな? ヴァンパイアとはよくよく縁があるよね」)
     耳を澄ませていた三蔵・渚緒(天つ凪風・d17115)は、閉じていた目を緩やかに開く。
    (「それだけ向こうも本気みたいだけど、負けられないのはこちらも同じ」)
     ガカッと地を穿つ数多の音。騎兵部隊だ。
    (「これだけの班で対応する以上は灼滅しちまいたいな……ヴラドは生かしといたら後々厄介だろうし」)
     迫る軍勢の気配を感じ取り思う優志は、素早く偵察から戻り猫変身を解いた桜井・夕月(もふもふ信者の暴走黒獣・d13800)を見た。
     頷き応じる夕月。
     それを合図に七瀬・悠里(トゥマーンクルィーサ・d23155)が無線を手にする。
    「こちら七瀬、これから前方部隊に突撃するぜ!」
     窓に足をかけ、外へと跳ぶ灼滅者達の肌に触れる真冬の冷たさ、ざらついた戦場独特の空気――それらを一掃する前触れの風が、跳躍の途中に顕現した。
     ミカエラ・アプリコット(弾ける柘榴・d03125)の魔術で引き起こされた竜巻が敵陣を駆け抜ける。
     彼女と共に植樹の影から飛び出した志賀野・友衛(大学生人狼・d03990)が、己の片腕を半獣化させ鋭い銀爪を振るった。風を裂き、敵肉を切り裂く。
     二人の攻撃はまるで鏃のように、敵陣へと喰いこんだ。
     ヴラド軍からなる騎兵部隊。手綱を繰る騎兵が馬上から嘲りの声を降らせる。
    「わざわざ踏み潰されに出てきたか、灼滅者!」
    「……む、そういうわけではない、が!」
     やや強張った友衛の声に合わせ、夕月も消極的な声を出した。
    「これ以上、学園を蹂躙されたくはないので……まあ、懸命に踏ん張ってみせますよ」
     戦いに疲弊した声色を装うが、動きは洗練され、二人の踏みこみは果敢なものだった。無数の刃を召喚し、敵群を一斉に斬り裂く夕月。
     弧を描く刃と、真っ直ぐに放たれた魔法弾。
     銀の指輪を介し、己の中に眠るダークネスと一時的に同化した優志の攻撃だ。
     皆無が鬼腕を振るうが如くの動きで佛継弥勒掌を展開する。
    (「朱雀門との共闘、というより利用されてる感じが、少し気に食わないですが」)
     結界が構築され、霊的因子の強制停止。それは騎兵部隊と灼滅者達の間を無造作に飛び回るタトゥーバットをことごとく落とした。
    (「後顧の憂いを絶つ為、それも一つの手でしょう」)
     やや開けた空間に灼滅者の別動隊が垣間見える。ダグラス(d19431)達であった。
    (「よし!」)
     ギターをかき鳴らし音波を放つ悠里は、戦端を開いた二班の位置、奇襲が無事に成功したのを見て安堵する。
     完全なる分断のため深く切りこんでいく灼滅者達。並走するサーヴァント二体が、敵の攻撃から灼滅者を懸命に庇う。
    「ちッ、一旦下がるか」
     敵先行部隊が戻ろうとする気配を見せたその時、
    「このような小勢、どうという事は無い。騎兵部隊、そのまま前進、サイキックアブソーバーを破壊せよ」
     と、命ずる殺竜卿ヴラド。
     この命令に、内心笑顔になったミカエラが敵を乗せるべく「もー!」と叫ぶ。
    「どうしてこの手薄なときに~!」
     灼滅者達の周囲を取り巻くは敵軍勢の鯨波なる声だ。
     これで、先行部隊が引き返し、本陣らを叩く予定の灼滅者が危機に陥る道が回避された。
     更にヴラド本陣から出撃してくる気配にティンが吠えた。
    「増援かな」
     渚緒の足運びは的確に一体を狙う。
     踏みこみから更にのびた二尺は、渚緒の後を追う穣と息を合わせたもの。
    (「ナミダ姫の助力が無くてもやれると決めたからには、全力以上の力でもって頑張るだけだよ」)
     低めに屈んだ状態から全身を使い、伸びあがる蹴りは炎を纏っている。
     渚緒が馬首を穿つように蹴り上げ、上体が仰け反る騎兵を一刀するのは穣。
    「いっけぇぇ!!」
     叩くような攻撃。刃先から伝わる敵の肉厚。両断された騎兵が灼滅する。
    「共闘ってのが気にいらねぇ。要はあいつら全部ぶちのめしゃいいんだろ」
     穣の呟きは迫る四体の竜騎兵の轟音にかき消された。散開する騎兵、二体は向こうへ、二体はこちらへ。
    「アタシの出る幕じゃないと思うんだけど、ヴラド様の命だもの。仕方ないから狩ってあげる!!」
     巨体な黒馬に騎乗する女ヴァンパイアが槍を手に戦場を駆けた。黒蹄蹂躙撃が前衛を襲う。
    「危ない!」
     力強い脚力を駆使し暴れ回る黒馬の攻撃から、ミカエラを庇う渚緒。人の顔ほどの大きさを持つ重い蹄が、胴を強く穿ち肺を潰す。
     ビハインドのカルラが友衛を庇う――ヴラド遊撃竜騎兵の甲高い笑い声が響き渡った。
     思わず、といったように怒りを向けたくなる衝動に気付き、ハッとした渚緒が仲間に注意するよう言う。
    「こちらからも撃ちますよ。無様に受けてくださいねぇ!」
     間髪入れずに後衛が襲われる。銃口から吐き出される無数の闇の塊は灼滅者の加護を砕き、夕月の前に飛び出した霊犬・ティンを更に後方へと弾き飛ばした。
     白馬に騎乗する男ヴァンパイア、ヴラド双銃竜騎兵もまた嘲りながら戦場内を駆ける。
    「本陣に配置された精鋭といったところでしょうか、威力が段違いですね」
     闇の弾丸を受け、皆無が言った。
     後衛が前に出る可能性を見据え、鬼腕を模す手甲から発されるシールドで優志の守りを強めた。

     敵の多さに拮抗していた戦いは、数を減らしたところで灼滅者の勝ちへと天秤が傾く――が、新手の登場に場の空気が変化していった。
     本陣配置だった竜騎兵たちの攻撃に、灼滅者は防戦一方へと移行していく。


     敵の怒涛の攻撃を受け、時間の感覚がおかしくなりそうだった。
     無線から聞こえる味方の声は、後方部隊への襲撃、本陣襲撃を伝えるもの――悠里と穣からの伝達に、不屈の精神を増す灼滅者達。
     一見、混沌とした戦場にも見えるが、灼滅者側の戦法は統制の極みであった。
     前衛部隊を切り離し、前衛部隊だけ進軍させたのち本陣の援軍が合流、後衛部隊に楔を打ち込み、孤立した本陣を攻撃。
     狙撃手は風を読む。灼滅者に遅れたとはいえ本陣の様子に気付く双銃竜騎兵。
     彼の戦況説明に、一番慌てたのは遊撃竜騎兵の女ヴァンパイアだ。
    「なんてこと! アタシがヴラド様のお傍を離れたばっかりに!! そこの銃バカ! 道を開いて頂戴!」
     双銃竜騎兵が忌々しげに舌打ちし、退路を確保すべく銃口を立ち塞がる灼滅者に向けた。
    「そうはさせるか!」
     狼の耳を立てた友衛が馬上に向かって飛びかかる。ドラグーンチャージ、痺れをもたらす列攻撃を零距離で受けた。
    「無理をしますね」
     駆ける皆無の帯が友衛の着地を補助するように射出され、その身を覆い癒していく。
    「ですが、今が戦場の流れを変える時なのかもしれません」
    「ここで攻勢に転じる、ってわけだな!」
     皆無の言葉に、頷いた悠里。懐中時計に力をこめると淡く光り出し、外側の輪が回れば一気にオーラの光が展開された。
     線が刻まれ法陣となったそれが、後衛の味方を癒すとともに天魔を宿らせる。
     陣の光に、蒼く、時に白く見える優志の剣が輝きを増した。
    「悪いけど、邪魔はさせない。仲間がヴラドを倒すまで、俺達に付き合ってくれよ」
     瞬間的な破邪の光、視界に残る残滓が剣の軌道を明かす。それは遊撃竜騎兵を捉えていた。
    「そう、後ろにいる仲間が全力で戦えるようにするのが僕らの仕事――さあいこう、カルラ」
     カルラが顔を晒して敵群を攻撃するなか、渚緒が牙突の勢いで断斬鋏を繰り出した。過剰に装飾された黒馬の馬具と鬣を断ち切り、怯みを見せた巨体が揺らぐ。
    「……ッ!」
     揺らぐ竜騎兵の身体を裂いた鋏が傷つけたものを喰らっていった。
     奪われたモノを奪い返そうとでもいうのか、敵が槍を振るえば闇が放たれ前衛の体力を奪っていく。
    「何でもかんでもてめぇらの思い通りになると思ってんじゃねーぞコラ!」
     真横から襲う穣のストレートが馬首を逆へと向けた。繰り出される拳の連打から逃れようと手綱を捌く。
     しかし、その先にも灼滅者。遊撃竜騎兵が槍を振る。
    「ち、ちょーしのってんじゃないわよ、アンタ達!」
     敵群を牽制しつつ一体を狙い続ける灼滅者、列攻撃を重ねる竜騎兵。
     その時、双銃竜騎兵と遊撃竜騎兵の同時攻撃に、味方前衛後衛へと向かって庇い手が駆けた。
     カルラとティンが戦線の離脱と引き換えに、ミカエラと夕月を守り抜く。
     くっと唇を結ぶミカエラ。サーヴァントの名残に応じ頷き、夕月と目を合わせた。
    「ん、いきまっす!」
     そう言い加速するミカエラと、敵へ注意深く目を向けた夕月。
     攻撃を終える敵の挙動、一瞬の隙を夕月の風が捉えた。
    「――ここです」
     渦巻く風の塊が、花開くように散開した。夕月に降りたカミの力が清浄なる風刃を象り、遊撃竜騎兵を斬り裂いていく。
     二拍遅れてどこからか、ヒュッ! と軽やかな音が混じった。
     跳躍したミカエラがロッドを打ち下ろし、女ヴァンパイアを叩き落とせば黒馬もまた重々しく倒れ伏した。
    「な、なんてこと……ヴラド様……ッ」
     数多の裂傷は流しこまれた魔力に耐えきれず、大きく爆破するかのように敵は身を裂かれ絶命するのだった。


     馬に身を任せ、両手の銃は確実に灼滅者を捉える。
     力押しともいえた遊撃竜騎兵とは違い、双銃竜騎兵の動きは流れる水のようだ。
     畏れを纏うミカエラが身体全体を使い、しなやかに伸びる斬撃を放つ。軽やかな跳躍と共に武器を翻し、間合いを飛び退こうとするその瞬間、眼前に銃口が突きつけられた。
     赤の瞳と金の瞳が合う――間髪入れず闇の塊を叩きこまれ、ミカエラが後方へ飛ばされた。
    「ミカエラ! ……ッ」
     優志が呼ぶも、続く前衛への狙撃は止まず、それは前に位置する彼の身も穿つ。
     淀みなく照準が戻る銃口。
     それでも優志は彼女を追撃する弾道に入った。闇の塊を抱えたまま加わるもう一撃が、重い。
    「倒れる訳にはいかない。諦めは悪い方なんだ、これでも」
     無事か、と目を向ける前に、
    「いっったぁーい!」
     地面で身を削ったのち、即座に飛び起きたミカエラ。
    「躊躇いがまったく無いね」
     闇の残滓を払い、癒しの力に転換したオーラを飛ばす渚緒が、内心安堵しつつ敵の挙動を評した。
    「先程のお嬢さん相手にも思いましたが、灼滅者は意外と頑丈なのですねぇ――最も、庇い手がいなくなればあっけなく落ちるのでしょうが」
     そう嘲る双銃竜騎兵にも疲弊の色が見え始めている。
    「そうなる前に、倒させてもらいますよ」
     片腕を異形巨大化させた夕月が、よく通る声で言った。
     銃使いは目が良く、大きく振り被った鬼腕を思わずといった様子で追う。
     その対角線、後衛へと下がり精度の増した攻撃を繰りだす友衛が背後をとった。
     頑丈で重さのある青剣をスイングさせ、遠心のかかる鋭い一撃。破邪の光が跡を描く。
    「そういうことだ」
    「次はこっちですよー」
     友衛の声と同時に、膂力を駆使し怯みを見せた敵を殴りつける夕月。踏みこみを深くしたことで竜騎兵が殴り飛ばされた。
    「ぐ……っ、ここまでとは。貴様らが先か、私が先か、それとも――」
    「てめぇのが先に決まってんだろ!」
     寄生体による異形の大刀を横一文字に薙ぐ穣。
    「灼滅まであと少し、といったところでしょうか。では――」
     周囲をざっと見た皆無は即座に行動する。暴風を伴う回し蹴りの速度を増し、遠心の重さが伴う蹴りを双銃竜騎兵に叩きこんだ。
    「そのまま動くんじゃないぞ!」
     広がる翼の如く帯を放出し敵を捕縛する悠里。
     彼の動きに追随し、接敵するのは優志だ。
    「これで倒されてくれ、よ……っ」
     非物質化した剣が敵を貫き、霊的防護を砕いた。柄を両の手で握り、自重をかければ霊魂が破壊されていく。
    「……く、ここまで、か……ッ!」
     刃を握り呟くヴァンパイアの力が、徐々に抜けていった。
     数拍。
    「倒したの、か?」
     息を吐き、悠里が呟く。灼滅されたヴァンパイアを見、周囲を見回した。赤茶の瞳には警戒の色。
     その時、仲間の声が届く。
    『こちら高明班……殺竜卿ヴラド、灼滅完了!』
     改めて無線が入り、高明(d04232)の力強い声に外へと意識を向ければ、それとなく慌ただしい喧騒が風に乗っているのを感じ取る。
    「お疲れさん」
     優志の言葉に、ヴラドを討ち取れたことがじわりと浸透し、安堵の息を吐く灼滅者達。
    「ふう、よかった。勝ちましたね」
     夕月が緩やかに言った。
    「他の方達は無事なのか、気になりますね」
     皆無の言葉に、頷く悠里。
    「傷の手当てをして、みんなの様子を確認しないとな!」
     戦端を開いた二班の負傷具合は酷いが、十六人が無事に揃っている。
    『勝利』へ手を伸ばした灼滅者達は、決死の覚悟と戦略を抱え、見事にそれを掴んだのだ。

    作者:ねこあじ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年1月20日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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