「やあみんな、あけましておめでとう」
能登・誠一郎(大学生エクスブレイン・dn0103)が集まった灼滅者達にぺこりと頭を下げて新年の挨拶をする。
「シャドウとの決戦の前に、朱雀門との共闘を求めて交渉が行われたんだけど、そこで爵位級ヴァンパイアがシャドウとの決戦に合わせて、大軍を率いて武蔵坂に侵攻する計画があることが判明したんだよ」
朱雀門の会長から『武蔵坂学園がソウルボードで決戦を行う』という偽情報を流した上で、先鋒として朱雀門全軍を率いて攻めてくるという情報を得た。
「『朱雀門の軍勢が武蔵坂の奥まで侵攻する事を確認』すれば、爵位級の軍勢が怒涛のように攻め寄せてくる作戦みたいだね」
そんな事になればどれだけの被害が出るか想像もつかない。
「そこで、武蔵坂学園が取れる選択肢を3つ提示されたんだよ」
誠一郎が指を一本ずつ立てながらその詳細を説明する。
「1つ目は、先鋒である朱雀門全軍を撃退する方法」
朱雀門を撃退すれば、爵位級ヴァンパイアの軍勢は攻めてこないが、本当のシャドウとの決戦時に介入してくる可能性が高くなる。
「2つ目は、先鋒の朱雀門全軍を学園の奥まで引き込み、爵位級ヴァンパイアの軍勢を誘い出して、爵位級ヴァンパイアの軍勢を可能な限り撃破する方法」
被害を多く与えれば、爵位級ヴァンパイアが介入する事を防ぐ事が出来る。
「3つ目が、朱雀門高校の軍勢を引き入れた後に騙し討ち、侵攻してくる爵位級ヴァンパイアを撃破する方法だよ」
最も多くの戦果を得られる作戦だが、失敗の危険もその分大きくなる。
「その3つの選択肢から、みんなの年末年始の話し合いで1つの作戦が選ばれたんだ」
誠一郎が3つ立てた指の2本を下し、中指が残る。
「選ばれたのは2つ目の作戦。朱雀門高校の提案を受け入れ、爵位級ヴァンパイアを誘い出して灼滅する方法だよ」
デスギガスとの決戦時、爵位級ヴァンパイアからの襲撃があれば、防ぎきることは不可能に近い。この作戦ならばそれを阻止する事が可能だ。
「多くの爵位級ヴァンパイアを灼滅できれば、爵位級ヴァンパイアとの決戦でかなり優位に立てるよ」
だが朱雀門高校の戦力が裏切った場合、危機に陥るので警戒は必要かもしれない。
「有力な爵位級ヴァンパイアは、『バーバ・ヤーガ』『殺竜卿ヴラド』『無限婦人エリザベート』『黒の王・朱雀門継人』といった相手が想定されているよ」
どれも強力な敵で、配下の吸血鬼や眷属を従えている。仲間達で話し合いどの敵を狙うかを決定する必要がある。
「爵位級ヴァンパイアを撃退するには、3~5チーム以上の灼滅者が力を合わせなけれならないよ。そして灼滅するには、さらに倍以上の戦力が必要になるんだ」
作戦次第でそれよりも少ない人数で灼滅も可能となる。敵配下を分断できるかが作戦の成否を決めるかもしれない。
「今回は学園の防衛戦だよ。失敗すればみんなとの思い出の詰まったこの場所に被害が出てしまうんだ。相手は強力な爵位級ヴァンパイア。だけど今までの戦いを潜り抜けてきたみんなの力ならきっと何とかできると信じているよ」
誠一郎が灼滅者達一人一人を見渡す。どの顔にも迷いはなく、その瞳に強い意志の光を宿していた。
参加者 | |
---|---|
源野・晶子(うっかりライダー・d00352) |
守安・結衣奈(叡智を求導せし紅巫・d01289) |
神夜・明日等(火撃のアスラ・d01914) |
ヴァイス・オルブライト(斬鉄姫・d02253) |
米田・空子(ご当地メイド・d02362) |
川西・楽多(ウォッチドッグ・d03773) |
丹生・蓮二(エングロウスドエッジ・d03879) |
雪椿・鵺白(テレイドスコープ・d10204) |
●戦場の学園
いつもなら生徒で賑わい平和であった学園を、武装したヴラド軍の騎兵が踏み荒らしていく。防衛する灼滅者との剣戟が響き、それを校舎の窓から灼滅者達が息を潜めて覗いていた。
「今回はかなり高いリスクを背負った作戦だね……」
守安・結衣奈(叡智を求導せし紅巫・d01289)が窓から殺竜卿ヴラド軍の進行を見下ろす。既に仲間達が敵と戦いを始め、ヴラドを孤立させようと前衛部隊へ分断作戦が行われていた。
「それでも、学園の各所で戦い、守ろうとする大切な人やみんなを信じて。今は自分たちがやれる精一杯を、だね」
その言葉に仲間達も頷き、やれる限りの事はしようと気合を入れる。
「あれが竜の旗……ヴラドの本陣は予定通り通過したが、私達が楔を打って後方を分断しなくてはならないな」
敵の本陣を確認したヴァイス・オルブライト(斬鉄姫・d02253)が、続々と本陣に続こうとする敵部隊の動きに注視する。
(「爵位級ヴァンパイア、そして黒の王」)
震える手を押さえるようにメイド姿の米田・空子(ご当地メイド・d02362)がきゅっと拳を握る。
「たとえどんなダークネスが相手だとしても、空子は絶対に負けませんっ! この学園で得たかけがえのない想いが、この胸に宿っているのですから!」
勇気で震えを止め、その瞳には決して挫けぬ意思の力が宿っていた。
「ここでやるべき事をしっかりやって皆に繋げたいわ、わたし達がやるべき事をしっかりやりましょう」
皆で考えた作戦。やるべき事をやればきっと上手くいくと、雪椿・鵺白(テレイドスコープ・d10204)の落ち着いた声は皆の緊張を和らげる。
「来ました、それでは始めましょう」
眼下の後衛部隊から目を離し、川西・楽多(ウォッチドッグ・d03773)が隣の恋人に視線を向ける。
「こ、これから後方へ突撃を開始します!」
その視線に頷き返し、無線機を手にした源野・晶子(うっかりライダー・d00352)が、震える声で他のチームに連絡を入れた。
『同じく。最後尾、仕掛けるよ』
『了解、俺達も合わせて本陣に仕掛ける。頑張ろうな』
無線機から蒼間・舜(脱力系殺人鬼・d04381)と柳瀬・高明(スパロウホーク・d04232)からの返答があり、仲間達は顔を合わせて頷く。
「ヴラドと闘う仲間の邪魔はさせないよ」
丹生・蓮二(エングロウスドエッジ・d03879)が窓に足を掛けて飛び降りる。他の仲間達も一斉に続き後衛部隊への強襲を開始した。
「二度と学園に攻めてこないよう後悔させてあげるわ」
自らの心を奮い立たせるように強気の言葉を発し、落下中に神夜・明日等(火撃のアスラ・d01914)は帯を矢のように放ち、ウイングキャットのリンフォースは魔力をぶつける。
「何者!?」
「一人も先には進ませない、ここでサヨナラだよ」
頭上から蓮二は魔力を込めたロッドを、見上げた騎兵の顔に叩き込んで仰け反らせた。
飛び降りて対峙してみればよく解る。こちらよりも圧倒的な数のヴァンパイア。そしてその全てが騎兵。戦力の差は一目瞭然。だがそれでも学園を守る為、仲間を守る為にその軍勢へ突っ込んだ。
「どれだけ敵が多くても、ま、負けません!」
ライフルを構える晶子の銃口から放たれた青い炎が妖怪の幻となって馬を怯ませ、ライドキャリバーのゲンゾーさんが突進して撥ね飛ばした。その後ろに居た敵が馬上から二丁拳銃を晶子に向ける。
「いつもはディフェンダーでもう少し大人しいんですけどね……。今回はちょっと荒っぽく行きますよ!」
その相手の腕に楽多がベルトを放って突き刺した。撃ち出された弾丸は見当違いの方向へ飛んでいく。
「敵が驚いているうちに先制攻撃だよ!」
結衣奈が帯を飛ばして馬を走らせようとした敵の胸に突き刺す。
「後衛部隊の足をここで止めるぞ!」
シャドウとしての力を高めたヴァイスは、竜巻を起こして敵を吹き飛ばした。
「学園を守るメイドの力をお見せします。メイドキーック!」
その風に乗るように長いスカートを翻しながら跳躍した空子が、敵の顔に蹴りをめり込ませ、ナノナノの白玉ちゃんはしゃぼん玉を飛ばして追撃する。
「灼滅者か!」
騎兵達が馬上から長剣を振り下ろす。ビハインドの奈城が攻撃を受け止めながらも顔を晒して敵を怯ませた。
「少しでも数を減らしていくわよ!」
明日等はその敵の腹に槍を突き刺し、捻じり込んで傷を広げる。
「ヴァンパイアに関しては思う事がたくさんあるけれど、この学園で好きにさせるわけにはいかないわ」
その間に鵺白が奈城の傷に帯を巻き付けて治療した。
●激戦
「たったそれだけの人数で我らに向かってくるとは、舐められたものだ!」
長剣を振りかざした2騎が左右から同時に襲い掛かってくる。仲間を守ろうとゲンゾーさんとリンフォースが前に出て、剣撃を受けて傷つき薙ぎ倒される。
「舐めていませんっ、綺麗にお掃除をしているだけです!」
更に振り下ろされる刃を空子はフリルのついた縛霊手で受け止め押し返し、霊光を放って傷を癒す。
「あ、後方への挟撃は中止になったようです! こちらに合流するとの事ですぅ!」
通信を聞いた晶子が仲間に向けて声を張り上げながら、ライフルの銃身に炎を纏わせて騎馬の顔を殴りつける。
「それまでここで敵を押さえないといけませんね」
馬が驚いて前足を上げた隙に楽多が横から槍を突き入れ、騎兵の脇腹を貫いた。
「作戦通りにはいかないものだね。でもやるだけだよ!」
結衣奈は風の刃を巻き起こして騎兵の体を幾重にも斬り裂く。攻撃を受けてもすぐにその後ろの騎兵が馬を走らせ間合いを詰めてくる。
「数が多いわね、でも負ける訳にはいかないわ」
明日等は帯を撃ち出し兵の腹を貫く。だが騎兵は突進を止めずに凶刃を手に目の前に迫った。
「剣同士の戦いならば負けはしない」
ヴァイスは闘気を剣に変え、相手の剣撃を弾き縦横に斬りつける。
「学園は俺の大事な場所だから、仲間に傷は付けさせないし、アブソーバーにも触れさせない。守る為に剣を取るんだ」
敵に向かって駆け出した蓮二は、跳躍して飛び蹴りを叩き込む。だがその着地際に銃弾が襲い掛かる。
「仲間と力を合わせれば、きっと守り切れるわ」
鵺白が蓮二に帯を巻き付けて、銃弾の衝撃を和らげた。
「このような場で足を止めている暇はない、突っ込め!」
4騎が一気に馬を走らせてそのまま突進してくる。それに対してリンフォース達サーヴァントが立ち塞がり、身を挺して吹き飛ばされながらも突進の勢いを減速させる。
そんな時ガガッと通信機から音が入る。
『この分なら、直にそっちに合流できそうかなー』
「了解ですぅ! もうすぐ合流できるみたいです!」
ライフルから炎の花を撃って迎撃していた晶子が慌てて通信に返事をして、急いで仲間に報せる。
その声に反応したのか、騎上から銃口を向けられた。
「させないわ!」
そこへ明日等が氷柱を飛ばして敵の右腕を凍り付かせる。
「僕の大切な人には指一本触れさせませんよ!」
同時に楽多も槍を振るい、氷柱を放って左腕を凍り付かせた。
「学園を守るのもメイドのお仕事の一つです!」
その隙に空子がビームを放って敵を吹き飛ばして馬上から落とした。
「我等が進軍を止められると思うな!」
騎兵が縦横に駆け巡り灼滅者達を撥ね飛ばしていく。
「癒しと護りの力で倒させないよ!」
それに対抗するように結衣奈は黄色い標識を立てて仲間達の傷を癒す。
「まずは足を奪う」
反転しようとする馬の下に滑り込んだヴァイスは貫手を放つ。その腕が途中で刃へと変化し馬の腹を貫き、馬から騎手が投げ出された。
「おのれ!」
すぐさま次の騎兵が剣をヴァイスに向けて振り下ろす。
(「同じ班、同じ戦場に大切な人や友達がいる。息吹が聞こえる程側にいる」)
それを蓮二は槍を振るって弾き、穂先を敵の胸元に突き入れた。
「敵の方が戦力が上だわ、倒すよりも少しでも粘って時間を稼ぎましょう」
その背中を守るように鵺白がギターを奏でて仲間の心を奮い立たせる。
(「君なら大丈夫、俺も大丈夫」)
勇気を貰ったように蓮二の槍を振るう速度が上がる。
敵陣が乱れ視界内に味方の灼滅者チームが現れる。
「来てくれました! これでこちらの戦力は倍ですぅ!」
晶子はライフルから光線を放って騎馬の脚を撃ち抜いて動きを止める。
「フンッ、少々増えたところでどうだというのだ? 我等竜騎兵の前には塵芥も同然……」
だが2チームが集まっても全く戦力は足りていない。目の前には隊列を組む騎兵。そして灼滅者達の後方には敵本陣がある。敵将ヴラドを討つにはこの敵部隊を決して進ませる訳にはいかなかった。
「死ねぇ!」
騎兵が全力で駆けてくる。ゲンゾーさんと白玉ちゃんが撥ね飛ばされ、白玉ちゃんは撃ち抜かれ消し飛んだ。勢いが弱まったところへ空子が斧を盾にして突進を受け止める。
「次から次へとキリがないね」
蓮二はロッドを馬の尻に思い切り叩き込み、遠くへ走り出させる。
「でも諦めるという言葉はないわ」
鵺白はギター演奏を続けて誰も倒れさせないと仲間を癒し続ける。
「学園のみんなの戦いに応える為に! 絆の力の一撃だよ!」
結衣奈は魔法の矢を放って敵の胸を射抜き落馬させた。
「ヴァンパイアならこれは効くでしょう」
そこへ馬乗りになった楽多は腕に装着した杭打機を撃ち出す。高速回転する杭が兵の胸に大きな穴をねじ空けた。
「このままじゃ拙いわね」
追い込まれた状態でも冷静に判断し、明日等は仲間に帯を巻き付けて出血を塞ぐ。
「訓練された集団とは厄介な」
刃と化した腕で敵の銃弾を防ぎながら、ヴァイスは風を渦巻かせて騎兵を切り裂く。だが騎兵が剣を振るいヴァイスを斬りつけると、その体が癒えていく。その剣撃にはドレイン効果があった。
多少の攻撃をしても、敵が攻撃を当てれば癒えてしまう。持久戦は戦力で劣る灼滅者達を消耗させていく。連続で襲い来る剣撃にゲンゾーさんの車体が両断される。
「このままでは……メイドはどんな時も愛と正義を守るヒーローなのですっ!」
仲間を守り傷だらけだった空子の体が修復され、その身に纏うメイド服が煽情的なミニスカートに変わると、気配もまた一変した。
「悪い子はお掃除してしまいましょう」
闇に堕ちた空子が騎馬を持ち上げると、そのまま投げ飛ばして他の騎兵にぶつけて薙ぎ倒し、そこへ追い打つように飛び蹴りを叩き込んだ。
●死闘
「貴様等の血でこの傷ついた体を癒すとしよう」
走り抜けながら騎兵が剣を振るう。
「血の代わりにメイドビームをたっぷりご馳走します」
その刃を跳躍して躱した空子が光線を放ち、騎兵の上半身を吹き飛ばした。
だが後方からの銃撃を受けて空子は撃ち落とされる。その追撃を庇ったリンフォースが穴だらけになって消え散る。多少の敵を倒しても、敵の士気は高くすぐに穴が埋められてしまい攻撃の手は緩まない。
「足止めのつもりか、だがその人数ではただの捨て駒だったな!」
奈城が騎乗からの長剣に両断され、前衛を務めていたサーヴァントが全て消え去る。
「来ないでくださいっ」
近づかせまいと晶子は必死になってライフルから炎を撃ち出して敵の体を燃やす。
「近づきすぎです、それ以上は許しませんよ」
その前に立った楽多は槍を薙ぎ馬の足を払ってバランスを崩したところへ、騎兵の首にベルトを矢のように飛ばして突き立てた。だが次の瞬間、横から突っ込んで来た騎兵に撥ね飛ばされる。
「もう少し、もう少しだけ時間を稼ぐわ」
明日等は帯を放ってその敵の背に突き刺した。
「多勢に無勢。だが刃を振るえるなら戦い続けるだけだ」
ヴァイスは闘気を槍に変えて突き、刀を振るい、鬼気迫る様子で留まらずに攻撃し続ける。
「守りたいものが、大切なものがあるのに、引くわけがないだろ」
蓮二が銃弾を受けながらも突進し、跳躍して回転しながら放つ蹴りで敵を馬上から叩き落とし、馬の上に着地すると次の騎兵へと跳躍して蹴りを浴びせる。だがその背中を駆け抜ける騎兵に深く斬りつけられる。
「傷ついたって、わたし達は諦めないわ」
すぐに鵺白がその傷口に帯を巻き付けて治療を行う。
だが治療しても治療しても、敵の攻撃に味方の体力は削られていく。少しでも油断をすれば崩壊してしまう戦線を灼滅者は戦い続ける。
それも長くは続かず、蓮二の腹に長剣が突き刺さった。切っ先が背中から飛び出し血が口から溢れる。
「鬼神顕現」
傷ついた仲間の前に立ち、髪を解いた結衣奈はその身に宿るダークネスの力を解放する。頭部に角が生え紅の闘気が溢れ出す。
「荒ぶる、鬼神の力を以って……、絆を守る!!」
歓喜に震え支配しようとするダークネスの意思を押さえ、結衣奈が腕を振るうと禍々しい血のような色を帯びた暴風が巻き起こって敵の体を空へと打ち上げた。
殺到する騎兵達を結衣奈は指差すと、無数の魔法の矢が放たれて射抜いていく。
盛り返した灼滅者達はただ無心に武器を振るい、仲間に背を預け目の前の敵と戦う。
楽多は巨大な杭を打ち出して馬の体に穴を空け、投げ出された兵の頭を、晶子は炎を纏ったライフルで殴りつけた。
明日等は槍を振るい、剣戟を交わし一歩も引かない戦いを演じる。回り込もうとした敵へ結衣奈は帯を盾とし突進を受け止め、暴風を起こして薙ぎ払う。
銃撃を受けて血を流しながらもヴァイスは大剣を振るって馬の首を両断し、崩れた騎手に槍を突き入れる。その背後に迫る騎兵に空子が蹴りを浴びせ、反動で馬から馬へと跳び移りながら蹴りつける。
出血に顔を青くした蓮二は槍を振り回し返り血で頬を赤く染める。忙しなく鵺白は傷ついた仲間に帯を巻き、メロディで気力を保たせて戦線を保たせる。
だが楽多が敵の胸を槍で貫いたところで、背後から迫る騎兵に剣で斬り伏せられ動かなくなる。
ギリギリで踏み留まっていた戦線が崩れようとした時、急に敵軍の動きが鈍り、動揺した顔でバラバラに引き上げ始める。今にも倒れそうな体を気力だけで支える灼滅者達は油断なくそれを見送った。
そこへ銃弾で穴の空いた壊れかけの無線機から声が聞こえる。それはヴラド灼滅を告げる報告だった。
●戦いの末
「勝った……の?」
無線機を手にした晶子はぺたんと尻餅をつく。
「一先ずは勝利を得たが、まだやる事は残っている」
ヴァイスが周囲に視線を向ける。そこに居たはずの闇堕ちした空子と結衣奈の姿が消えていた。
「そうね、でも今は一休みしたいわ」
明日等が立てた槍で体を支える。
「まずは治療するわ、それから仲間と合流しましょう」
鵺白が倒れた蓮二と楽多の手当てを行う。
誰も彼もが傷つき疲れ果てた体で座り込むと、同じように放心するもう一つのチームの姿も目に入る。戦いの高揚が過ぎ去り鉛のように重く動かぬ体となって漸く、激戦の終わりを実感していた。
作者:天木一 |
重傷:川西・楽多(ずっと君の隣に・d03773) 丹生・蓮二(エングロウスドエッジ・d03879) 死亡:なし 闇堕ち:守安・結衣奈(叡智を求導せし紅巫・d01289) 米田・空子(ご当地メイド・d02362) |
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種類:
公開:2017年1月20日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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